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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第14話 飛翠の相手はアイスマン!?

 ーーシエラ雪原は、アトモーネスのいた“風臥の砦”。そこから船での移動になった。


 どうやらアレがそうなのだろう。


 海の向こうに氷山がずらっと並ぶ。


 私達はみんな、船に乗るために立ち寄った街。“フラン”で、もこもこのコートと毛皮のブーツを買った。


 毛皮のブーツなんて履いたことない。今はまだ着てないけど。ふわっふわな毛がこれでもか! と、ブーツを覆っているのだ。


「あ……。寒いね。」


 海の風が冷たくなってきた。氷山が近づいたからかな?


「今度は雪山連峰かよ。飽きねーな。この世界は。」


 飛翠は隣で黒のもこもこ毛皮のコートを、着だした。


「ねぇ? なんで黒一色なの? まっくろじゃん。」


 そうなのだ。彼は頭から爪先まで真っ黒。コートの下も、黒のノースリーブのシャツだし、ズボンもそう。


 しいて言えば……ブラウンのショルダーベルト。腰元もそのベルトがついてるけど。


 唯一、それとベルトを留める真紅の石のついたカバー。それだけが飛翠を彩ってる。


「あ? シンプルが一番だ。黒も好きだしな。」


 と、言いつつもさっさと……“黒の毛皮のブーツ”を、履きだした。


 ここは船の休憩所。そこで私達は、降りる前に準備をしているのだ。でも、窓はないので風は柱からびゅうびゅう。入ってくる。


「う〜ん。たまには……蒼い飛翠も見たいな。」

「はぁ? 絶対に着ねー色だ。」


 わかってますよ。そんなに拒否んないでよ。全く。制服はそうじゃん!


 私も隣で支度を始めた。私はブラウンにした。ピンクもあったので、ブーツはピンクにした。


「お前……。その色はねーわ。チアダンでもやんのかよ?」

「え!? カワイイじゃん!」

「ねーわ。」


 ショッキングピンクが……いけなかったのかなぁ? カワイイんだけどな。ふわっふわの毛皮だしなぁ。




 ▷▷▷


 海の上に浮かぶ雪の島。


 シエラ雪原に降り立ったのだが……


「寒い! 寒い! 寒〜いぃぃ!!」

「あーうるせー。雪だ。熱くてどーする?」


 私は即座に飛翠にしがみついた。背中に。


 盾になる! 風除けだ。


 そうなのだ。一面真っ白な雪景色。足が埋まる程ではない。普通にザクザク歩ける。雪は降っていなかった。


 更に目の前には高い氷山たちが、迎えていた。


 風もそれなりに強いし、冷たい。


 このコートが無かったら、凍えてますね。これは。こんな寒い世界には来た事がない。


「あの山の側に“雪の洞窟”はあります。」


 ネフェルさんは……真っ白な毛皮のコートを着ていた。雪と同色なんだけど、髪は碧なのでかぶらない。


 シロくんは飛翠と選んだのか……黒のコートとブーツ。お店は女性と男性分かれてたので、私は一人で、選んだのだ。


 なので……男性陣のお姿は……始めて見る。


 でもハウザーさんと、ガルパトスさんは……。すみません。ブラウンの毛皮のコートなんだけど……どう見ても……山男にしか見えません。


 グリードさんは意外にも、白と黒のストライプ。その毛皮のコートを選んでいた。あら。なかなかお似合い。でも、フード被って丸くなってるから、やっぱり雪男みたいだ。


「「寒い!!」」


 私とグリードさんはがたがたと、震えていた。


「グリードくんは、寒いの苦手ですからね。」

「シロ〜! 暖になるから抱えさせて! 頼むよ!」

「イヤですよ! 痛いのが目に見えてます!」



 両手広げて……お願い! 来て!! と、懇願してるグリードさんは笑える。


 おっかないハスキー犬に似たコボルトさんなのだ。


 そして、シロくんとグリードさんは……仲良しなのだ。いじめっこかと思ってたけど、本当はシロくんの事が、大好きなんだね。


 素直じゃない。


 風がちょっと強い。でもゴーゴーと、強風ではないので歩きやすかった。


 氷山の下で洞窟はぽっかりと、穴を開けて待っていたのだ。


「ここにいるの?」

「ええ」


 聞いたらネフェルさんからの返事。


 中は一面……氷。恐ろしいぐらい氷だ。

 地面も氷。だけど滑らない。このブーツのお陰かな?


 鏡……みたいだ。私達の姿が映り込んでる。それに……白く透き通っていて光ってる。キラキラと。だから、とっても明るいのだ。


「不思議な所ですね。」


 シロくんは……結局。グリードさんに抱えられている。ここもそれなりに寒い。ぶらんぶらん。足が揺れる。


 かく言う私も……飛翠の腕にしがみついている。あったかいので。


「白氷石か?」

「そうです。ここは白氷石の宝庫です。氷の世界ですよ。これらは全て原石。絶対に溶けない洞窟です。」


 ネフェルさんはそう言ったのだ。


「えっ!? これ全部!? 原石!? じゃあこのキラキラしてるのが、魔石ってこと!?」


 私は思わず……叫んでいた。壁とかでキラキラしてるのが……全部。魔石!?


 氷の中にたくさん散りばめられているのだ。星空の様に。でも球体の石ではない。欠片みたいだ。



「そうです。ここだけは、原石の中で“既に魔石”が存在しています。この島を覆う冷気。雪の世界を作っているんです。」


 魔石は掘り出さないと……わからないんだった。そうだ。


「そっか。この雪の島は……白氷石の塊みたいなものなんですね?」

「そうです。氷山の中にもたくさんの魔石と、原石が眠っています。ここはずっと変わらない。」


 ネフェルさんの声に、私と飛翠は顔を見合わせていた。


「凄くない?」

「スゴすぎだ。」


 温暖化とか関係ないってことだよね? それは凄い……。この島自体が、魔石の島なんだ。


 感動したのも束の間だった。


 氷の洞窟の先。


 そこにで出ると、広い氷の世界が広がっていた。


「氷の結晶……」


 まるで氷の岩。それが地面から突き出てる。なにここ。氷と鏡の世界ですか!?


 そこに水色なんだけど、ちょっと銀も入った髪。まるで氷の塊で出来た髪をした男の人がいたのだ。


 長い髪なんだけど……ゴツゴツしたウロコを、つけてるみたいな髪質だ。


 それに……全身が白混じりの水色。まるで氷の様な身体。キラキラしてる。


 蒼い……なんだか、ローマの人が着そうな服。布を巻いていて、下はズボン。白いズボンの下は裸足。うわ。冷たそうな氷の足。


「飛翠くん。彼です。」


 ネフェルさんの声に


「えっ!? “アイスマン”!?」


 私は思わずそう叫んでいた。


「失礼な女だな。私の名前は“フォルス”。樹氷の妖精……エルフだ。」


 フォルスとか言うその人は、そう言ったのだ。氷の大剣を持ったままで。


「えっ!? エルフ!? あのつらら女の仲間ってこと!?」


 そう。私はエルフに一度だけ会った。それも樹氷のエルフだ。つららで攻撃されたことは、忘れもしない。


「仲間ではない。エルフにも色々いる。私は……精霊の護衛をする者だ。」


 フォルスさんは、剣を持ったままだ。そう話始めたのだ。


「この世界で皆、支配者と精霊、エルフは、共存していた。そこで支配者……つまり。神獣だ。それを精霊が護っていた。私達エルフは、精霊に付く者達だ。だが、それぞれが“個”になったのだ。」


 なんだかここに来て……やっとまともに、自分たちの話をしてくれる人に、出会えた気がしますが。


 この話は前に……ミリアからも聞いた。色々あった。そう言ってた。


「個?」

「“それぞれの種族”。それに分かれたのだ。考え方や捉え方、容姿の違いなど、分かれた理由は様々だが、世界に散らばった。」


 フォルスさんはそう言うと、私と飛翠を見た。キラッと光る水色混じりの白い眼。


 つらら女とはなんか……ちょっと違うよね。やっぱり。あのエルフは蒼い身体だった。


「だが、その中にもやはり支配者を護る精霊が存在した。付き添う者達だ。この世界のエルフは精霊の子の様な存在だ。自然と精霊と共存し護る者達も多くいた。」


 う〜ん。つまり……支配者が旦那で、精霊は奥さん。エルフは子供。ってことなのかな?


 え? イフリートが旦那!? イヤなんだけど!

 あんな乱暴な野獣!


「だが……支配者と精霊の“戦争”が起きたのだ。」


 え? まさかの夫婦喧嘩!?


「それが原因で……支配者と精霊は、完全に別れた。私達エルフも完全な“個”になった。そのせいで、魔物の様に人間を襲うエルフも現れた。人間とも色々あったからな。」


 つまり……離婚したから、グレたってことだよね。あー。なるほど。そこに人間との何やらいざこざが、あって魔物みたいになったエルフがいる。ってことね。


 ふんふん。私はとっても納得した。


「その中にもアンタみたいな“昔チック”な連中もいる。ってことか。精霊にくっついてる奴らってのが、そうなんだろ?」


 飛翠はそう聞いた。


「そうゆう事だ。自由気ままな奴ら、人間を襲う奴ら、私の様に精霊を護る事を辞めない奴ら。それらが、この世界のエルフだ。」


 フォルスさんは飛翠を真っ直ぐと見たのだ。


「あの〜。一ついいですか?」

「なんだ?」


 私はとっても気になったので、聞いてみることにしたのだ。


「エルフもやっぱり……女性と男性で、姿の感じが違うんですか? フォルスさんはあのつらら女とは、違いますよね? 氷みたいなのは同じだけど。」


 私はそう。彼女とフォルスさんの容姿の違い。男女で違うのかなぁ? と、思ったのだ。


 何しろあのつらら女に会って以来! なのだ。エルフに対面するのは。


「そうだよ。外見は異なる。」


 フォルスさんはそう教えてくれた。


 そっか。やっぱり違うんだ。


「で? そのエルフとやらが、人間に剣技を伝授ってのは何でだ? 人間を嫌ってるんじゃねーの?」


 飛翠はそう聞いていた。


「始めは精霊の護衛のつもりで、剣を交えていた。だが……触れ合いとは楽しいものだと知ったのだ。ここに訪れる人間たちを見て……私の力を、何となくだが貸してやりたくなった。そんな所だな。」


 フォルスさんはそう言ったのだ。


 それは……絡んでみたら、意外と気が合った。ってことなのかな?


 ん? 精霊??


「え? てことは……ここって精霊もいるんですか?」

「ああ。いるよ。ここは“樹氷の世界”だ。イシュタリアには、支配者や精霊がここ程……棲みやすい地はない。」


 あ。すごい島だ。支配者に精霊に……エルフ。正に揃ってるんだ。


 だから……魔力が強くて魔石が、たくさんあるんだ。きっと。


 何と言うことでしょう。この島自体が、魔法の島じゃないの! 


「では。早速……始めようか。」


 フォルスさんはそう言うと、飛翠を見たのだ。


 飛翠は大剣を抜いた。


 こうして……飛翠の、剣技を指導してくれる人は、エルフだったのだが……。


 どうなるの??


 私は……とても不安だったのだ。

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