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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第12話 碧風の支配者を求めて

 ーー飛翠は鉱山の洞窟で、ガルパトスさん。彼に剣技を、伝授されていた。


 またもや形態模写。完全なるガルパトスさんのコピーを、隣で真剣な顔でやっている。


 私は少し笑ってしまった。


 今回はガルパトスさんが二刀流なので、これまた丁寧に、剣を一本だけ持ち教えていた。


 それを見て……、私は戦う男の人たちとは、熱く優しいのだな。と、思った。


 なので……“飛翠の指導者”は、これで二人になったのだ。


「えっと……ガルパトスさん。着いて来ちゃっていいんですか? 他の人……困りません?」


 私は洞窟を一緒に歩いているガルパトスさんに、そう聞いた。


 だが、彼は二本の剣を背中に☓の様に背負い……


「ああ。ヒマだからな。」


 と、言ったのだ。


 暗めのブラウンの髪。オールバックでやっぱりなんかおっかない。


 それに左頬の傷。斜めにざっくり。これも戦いの勲章とやらなのかな?


 それに紅茶色の眼。


「ヒマ? 剣技伝授の為にこんなところにいんだろ? 人間は来ねぇのか?」


 グリードさんが、そう聞いた。


 蒼いハスキー犬に似たコボルトさん。両耳は黒。ぴんっとしてる。額についてる三日月の傷が、気になるんだよねー。


「来る訳がない。支配者に会う魔導士見習い。それと一緒について回る戦士見習い。ソイツらが居た頃は、流行ったが……。殆ど廃業だ。修行と遺跡警護。その為にいる様なもんだ。」


 ガルパトスさんは、ため息ついた。なんか……切実だな。でもなー。どっちもおっかないから、人も寄り付かないんじゃないんでしょうか?


 痛い思いしなくても……いい時代になった。って事なのかなぁ?


「参っちゃうよな〜。今回の件で廃業だよな。完全に。支配者いねぇし。居る意味がない。」


 ハウザーさんの声に、私は


「すみませんね。」


 と、言っておいた。


「嬢ちゃんのせいじゃないだろ。ヤヌスだ。ヤヌスが悪い!」


 ハウザーさんは慌てた様にそう言ったのだ。隣では、うんうん。と、ガルパトスさんも頷いてくれていた。


 なんだかなぁ〜……。


「さて。そろそろ次の目的地について、話してもいいですか?」


 鉱山の出口。


 そこで、ネフェルさんは振り返った。


 あらら。銀色のおめめが恐いですけど? 


「はい。お願いします。」


 私は……頷いた。


 ▷▷▷


 鉱山を歩き……入口とは逆。そこから出ると、ガトーの大河が広がっていた。


 キラキラ光る水面。しかし広い。イシュタリア。


 ここから、海列車(パウザー)に乗って、フィランデル王国方面へ。


 更に大陸を渡る。カンダカン大陸。そこに、風臥の砦。更に白氷の支配者のいる“シエラ雪原”が、あるらしい。


 ここからだと、先に風臥の砦。そこに行くのが早いそうで、私達はガトーの大河の最北端。


 大河の終わり。“サウス”と言う港街から海へ向かうのだった。


「うわぁ〜〜。めっちゃ速い!!」


 まぁまるで、豪華な船旅!


 とっても大きな船だ。今まで乗っていた船よりも大きい。ちょっとフェリーみたいだ。


 あそこまでどーん。って感じじゃないけど。


「これが……紅炎石と大地の原石で動いてるんだよな? スゴくね?」

「スゴいよね〜。溶岩みたいになってるんだよ。きっと。」


 私と飛翠は手すりに捕まりながら、大海原!!


 波を切り走る船の上で、そんな話をしたのだ。


「ヤッホ~〜〜〜!!」


 私は両手全開。風を受けながら叫んでいた。


「山じゃねーだろ。」

「他に思い浮かばなかった。」


 と言う訳で、向かうは風臥の砦!!



 ▷▷▷



 砦……。


 森の奥地。なんだかとってもいや〜な感じのする薄気味悪いところだった。


 しかも、今にも後ろとかから何かが出てきそうだ。


 あんなに晴れてたのに、この森に入ったら薄暗くなってしまった。更に目の前に聳える緑色の山。


 砦と言うか山だ。これは。


 それにさっきから凄い風の音。ここは風に吹かれてないけど、まるで山が鳴いてるみたいだ。


「行きましょう」


 ネフェルさんの声で、私達は風臥の砦と呼ばれる山。そこを登ることになった。


 とは言っても、山の中の洞窟。そこを登っていくみたいだ。


「風が吹いてる……」


 洞窟の中は空洞だ。天井まで突き抜けている。私達は、その周りをぐるっと囲む様な道。それを登っている。


 竜巻。そんな渦の風が、空洞で吹いていた。


 私達に当たるのはそよそよだけど、この螺旋階段みたいな中心。そこの風は竜巻で強そうだった。


「何処にいるんですか?」


 私がそう聞くと先頭を歩くネフェルさんは、


「頂上にいますよ。」


 そう言ったのだ。


 風の支配者ってことだよね。なんだろ? 鳥? 獣? 神獣って言うんだから……動物系かな?


 とか、考えているうちに頂上についたのだった。


「え……??」


 う……ウソでしょ!?


 そうなのだ。頂上は、洞窟を抜けると崖!


 そこにカーミラさんと結晶。碧の大きな石の塊があったのだ。


 辺りはとっても広い山岳地帯が望める。それに森。


「なにここ? 崖の上!? こんなとこで戦うの!?」


 囲いなんてない。風の吹く崖。


 足場は広いし草とかも生えてるけど、ほとんど東○タワーの展望台だよね!? この高さ!!


 有り得ないんですけど。


「救世主。心の準備はいいか? 本日二度目だが。」


 カーミラさんは、碧の結晶に手を翳したのだ。


 私はロッドを握り、とりあえず足元見ながら前に……進んだ。


 あんまりそっちには行けない。


 てかよく立ってられますね!? そこ! 崖の端だけど!? 風に煽られて吹き飛ばされません!?


 そうなのだ。カーミラさんの黒いローブ。それが、足元でひらひら揺れてるのだ。


 全身……また被ってるけど。


「出でよ! “碧風の支配者”!! “アトモーネス”!!」


 カーミラさんの声で、碧い結晶は光り輝く。魔石と同じ。碧だ。


 ブワッと竜巻に包まれて現れたのは、巨大な鳥。


 碧の翼を広げ竜巻の中から現れたのだ。


「きゃっ!」


 風ーーに、私は煽られた。


 な……なんでこう……ド派手な演出で、出てくるの!? これはお決まり!?


 全身……碧かと思いきやお腹は白い。なんか顔はペンギンに似てる。それにしても大きな足! ニワトリみたいな足だ。


 ゆらゆらと頭の上で揺れるエメラルドグリーンの、羽根の様なトサカ。なのかな?


 羽根にしか見えないんだけど。年末の歌番に出る歌手がつけてるやつ。


 でも、顔はペンギン。だけど……眼は、深い緑だ。


 デカい……。本当に。カーミラさんが、小人みたい。


 のしのしと、私の方に近づくと頭を振った。エメラルドグリーンの羽根のトサカが、ゆらゆら揺れる。


「お前か? 救世主。」


 うわ! 声高っ!! えっ!? メス!? 


 女性みたいな声だった。


「そ……そうです。」


 じろっと見られて……思わず声が裏返ってしまった。


 恐いってば!! なんでそんなに睨むの!? カラスか!?


「宜しい。来なさい。お前の力を見せてみよ。」


 あら? 優しい。


 頭を上げるアトモーネス。しかも翼まで折り畳んで、行儀よく立っていた。


 なんですかね? 王者の余裕??


 えっと……碧風の支配者だから、風。それに強いのは、氷。


 ん?? あーまた!! 私って……どうしてこう運がないの!?


 魔石の氷魔法しか使えない!!


 私は頭を抱えてしまった。


「どうした? 救世主。お前の力を見せてみよ。我の力を借りたいのだろ?」


 早くしろよ! と、飛翠に言われてる様な気分だ。アトモーネスはそんな顔をしていた。


「はい。」


 私はロッドを握る。


 しょうがない! いつものことだ! 


「“樹氷(ライム)”!!」


 私のロッドの先で、白氷石は光る。青白い光だ。


 氷の結晶。それは大きなアトモーネスの身体を、覆った。


 パキーンと凍りつかせる様に。


 威力は強くなってそうだけど……。何しろアトモーネスの身体は、氷の塊。そんな風になったのだ。


 でも、パリーンと粉々に砕け散った。


 ガラスみたいに。


 ふるふると、頭を振るアトモーネス。羽根が揺れる。


「有り得ない。」


 え!?


 私はそのドスの効いた声。それに驚いた。


 ブワッ!!


 大きな翼を広げアトモーネスは、浮かんだ。


「有り得ない! 魔石で我と戦うつもりか!? 小娘!! 吹き飛ばしてくれる!!」


 うわぁ!! キレた!! 眼が光った! 緑の眼が!!


 口を開けたアトモーネス。


「“碧風の嵐(ウィンドストーム)”!!」


 アトモーネスから放たれたのは、私の身体の下から巻き起こる風の竜巻。


「きゃあっ!!」


 私は竜巻に巻き込まれその中で、切り刻まれていた。


 身体が浮いているのがわかる。渦の中でぐるぐると、回転させられてるのも。


 更に


「“碧風の旋空(ウィンドスラッシュ)”!!」


 竜巻が消えたかと思うと、私はまるでねずみ花火! ぐるぐる回る風の円。


 それに身体が包まれていた。


 身体が回転しながら、斬りつけられていく。


 この円陣みたいのが、もう風の刃!!


 痛くて堪らない! それに吹き飛ばされていた。


「蒼華!」


 飛翠の声が聴こえた時には、私は地面に倒れていた。


 うぅ……。痛いんですけど。全身から血が流れてませんか? これ。


 腕とかくっついてるから、切断! まではいかないんだけど……でも、それに近いと思う。


 もうどこが痛いのかわからない。とにかく痛い。涙が出てきた。


 動けない。


 どうしよう。手とか動かない。


 回復薬とか……。


 あ!!


 私は思いついてしまった!


 地面には私の手。そして右手。ロッドを握ってる。あら。血だらけ。だらっだらだ。


 ホラー映画の死体みたいだ。


「……“水流の雫(アミナス)”……」


 私はそう呟く様に言っていたのだ。


 ポゥ。


 ロッドが蒼く煌めく。温かな光。私はそれに包まれたのだ。


 そうだった! 私は……回復魔法を使えるんだった!! リヴァイアサン!! この時ばかりは、ありがとう!! そして思い出した私はエラい!!


 褒めてあげよう! あとで、チョコミントアイス奢ってもらおう。飛翠に。


 あ。ないや。ここには。


 私は光に包まれ身体から、痛いのが消えてゆくのを感じながら、しばしそんな事を思っていた。


「なるほど。水流は継承しているのか。」


 アトモーネスの声が聞こえる。


 私は……立ち上がっていた。


 今の攻撃はちょっと……イラっとした。


 私はロッドをアトモーネスに向けた。彼女は、地に降り立っていた。


「あんたね! 支配者なんでしょ!? 大人気ない! コッチは初心者! 見てわかるでしょ! この羽根アタマ!!」


 頭にきたので、怒鳴っていた。


 アトモーネスは目を丸くしたが、


「ほぉ? いい度胸だね。小娘」


 頭を低くしたのだ。


「うっさい! 派手ペンギン!!」


 ここから……私の反撃は始まるのだ。


 はぁ。良かった。アミナス覚えてて。

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