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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第11話 飛翠VS剣豪ガルパトス

 ーー私は、金色のバングル。そこにつけたタイラントの石。トパーズの様な黄色の石だ。それを見ていたが……


 あ! 


 と、思い立った。私はカーミラさんに目を向けた。


「カーミラさん。この石はなんて言うんですか? 魔石じゃないんですよね?」


 そうだ。支配者……つまり、神獣。その力の入った石だ。


 カーミラさんは、グレーの眼で私を見たのだ。


「“継承石”。支配者の力を受け継ぐ石。そう呼ばれている。このイシュタリアでは……最早。死語だがな。」


 ああ。そうか。今は精霊の力を借りる人の方が、多いんだっけ? 召喚士の人も。


 それはそうだよね。こんな感じじゃ……しんどいもんね。


「継承石……」


 私は金色のバングルについている石たちを、見つめた。


「さて。お前は大地の魔法を覚えた。“大地の怒り(アーススラング)”。“大地の揺らぎ(アースフリッカー)”。更に大地の支配者タイラント。次は……“風と氷”」


 と、カーミラさんは言ったのだ。


 アースフリッカー?? それはタイラントが使ってた魔法とは違うの??


 まぁ。いいか。後で使ってみればわかるよね。


 うんうん。


 私は頷く。ここのこの曖昧でいて、オールフリー。その感じにもすっかり慣れてしまった。


 変な所で細かいけど。


 カーミラさんは、ふとシロくんを見つめた。


「お前には“大地の怒り(アーススラング)”。それを与える。来なさい。」


 カーミラさんはそう言ったのだ。


「え? 僕は何もしてません!」


 シロくんはそう言ったのだ。


「支配者と戦い継承するのは、救世主の役目。お前はその救世主を補助する者。今のままでは……。」


 ごほん。


 カーミラさんは……何だか気まずそうに、一つ。咳をした。


 すると


「あ。僕は役立たず……ですよね。魔法巡りをしてませんから……」


 と、シロくんは俯いてしまったのだ。


 あー!! なんてこと!? この魔女!! かわいいシロくんに、なんて悲しそうな顔をさせるのよ!


 エグいのは真っ黒な爪だけにしてよね!!


 私はシロくんの前にしゃがみこんだ。


「気にしなくて……」


 と、声を掛けようとすると


「だから! 緊急事態なのだ! 特別処置を施せと。ゼクセン殿から言われている!」


 カーミラさんが……怒鳴ったのだ。


 私もシロくんも驚いて、カーミラさんに目を向けた。何だかとっても怒っている。


「全く! そうでなければ……お前のような“魔法”をわかっておらぬ、破天荒な奴に支配者などくれてやるものか! 忌々しい!」


 えっ!? 私にきた!? なにその飛び火みたいの!


「全くだ。」


 そう頷くのはネフェルさんだった。


 はいぃ!? ついに貴方は、私に牙をむくんですか!?


 私はネフェルさんを思わず見てしまった。


 ごほん。


 一つの咳払い。


「失礼」


 いやいや。今更、そんな涼し気な顔をされても! 聞きました! 貴方の本音!


「早くしなさい。時間がない!!」


 怒鳴られた。カーミラさんに。


 なにその……圧倒的な貴方がたのご都合は!


 シロくんはカーミラさんの隣で、黄色の結晶。そこの前に立つ。


 カーミラさんが結晶に手を翳すと、黄色の結晶は光り、シロくんのロッドは光った。


 真っ黄色の光が蒼いロッドを覆ったのだ。


「わ? 何ですか?」

「継承だ。ロッドに魔力が継がれる。お前はそれで、大地の魔法を使えるのだ。」


 シロくんは両手でロッドを持ち、とても驚いていた。私と飛翠は後ろから見守り隊。


「熱くないの?」

「ないです! 不思議な感じです。あったかいです。」


 シロくんの白いおてて。それは光るロッドを掴んでいる。不思議だ。手元まで光に包まれていた。


 やがて、ロッドと結晶の光は消えた。


 カーミラさんは、結晶から手を離す。


「良いか? シロ。今回は特別だ。お前もこのまま破天荒……」


 ごほん。


 咳払いしてますけど!? 


「救世主と同じ……支配者を巡り、アズール魔導館へ向かえ。魔導士になるのだ。でなければ、これから先の戦いには通用しないだろう。」


 カーミラさんはそう言ったのだ。


「ま……魔導士ですか!? 僕が!?」


 シロくんは蒼い瞳をきらきらとさせた。


「アズール魔導館で、試練が待つ。あまり役には立たないと思うが……救世主の戦いを、目に焼き付けよ。」

「はいっ!!」


 いや。シロくんの返事はとっても良いお返事。


 でも! お〜い。棘! すっごい棘ある! その言い方!!


 私は後ろからカーミラさんを睨んでいた。


 ぷっ。と、隣で飛翠が吹き出した。


「破天荒バカ女。最強だな。」

「バカにしてるでしょ!? それ!」


 なんなんだ! コッチはこれでも痛い思いしてるっつーの!!



 ▷▷▷



 シロくんは魔法を手に入れた! なんと嬉しいことでしょう! 隣では嬉しそうだ。


 コラボとかできるかな?? 楽しみだな〜。


 とか、思いつつタイラントのいた場所から、更に奥。洞窟を歩く。


 ひんやりとしてきた。


「飛翠。お前の番だ。」


 ハウザーさんの顔にかかる赤茶混じりの長い前髪。纏めてるからちょい垂れですが。


 右目は傷があるので、見えていないだろう。左目は金色。


 その目が飛翠を強く振り返った。


「ああ。」


 飛翠は頷くだけ。たぶん。もう気合いを入れ始めてるんだろう。最近、わかってきたことだけど。やたらと無口。いつも以上に顔が恐い。


 洞窟の先。黄色の原石が煌めくその広間。そこに、男は立っていた。


「え!? 二刀流!?」


 私は思わずそう言った。宮本武蔵ですか!?


 でも日本刀ではない。大剣だ。それを二本持ち立つ男。


 デカいのは言うまでもなく、筋肉質なのももう当たり前。浅黒い肌。けれど、アメリカンな顔立ちをした男。


 暗めのブラウン。その髪はオールバック。肩よりちょっと長め。纏めてある。


 剣豪ーー、その雰囲気そのまんま。強そうだった。


 飛翠は男を見ると背中から、大剣を抜いた。進化したばかりの、曲刀に近い刃をした剣だ。


 ガルパトス。そいつの前に向かっていった。


「ハウザー。このガキか?」


 ガルパトスの低い声。更に左頬。そこに斜めの刀傷。紅茶の眼。それが、飛翠を睨んだのだ。


「おー。そうだ。ソイツが飛翠。生意気だが、腕は確か。」


 ハウザーさんはにやっと笑った。


 なに? 知り合いなの?


 ふっ。と、ガルパトスは笑ったのだ。


「見た目はそこそこか。それに闘気。それもまあまあ。これは……久々に楽しめそうだな。」


 余裕でいて大胆不敵。そんな表情だ。


「なめんじゃねー。」


 飛翠は大剣構え、そう言ったのだ。


 剣豪と……荒くれ者のバトルは始まった。


 大剣と二刀流。


 飛翠は構わず突っ込んでいった。ガルパトスは、重そうな大剣を二本。


 右手の剣を振り下ろした。


 飛翠は一刀を難なく飛び上がり、避ける。着地すると、直ぐにそこに薙ぎ払う様に左手の剣。


 更に、振り下ろした筈の右手の剣が、上がっていた。


「飛翠!」


 私がそう叫んだ時だ。


「“斬骸”!!」


 ガルパトスの声と同時。大剣二本は、飛翠を十字。斬りつけていた。


 それだけではない。勿論。剣技だ。そこに閃光走る斬撃が伴う。


 ただ十字に切り裂くだけではないのだ。突風や疾風。それらが相手を襲う。


 剣技は振り下ろすだけで……斬撃になるのだ。


「飛翠!!」


 突風だった。斬りつけられて飛翠の身体は、吹っ飛んだ。


 更に身体についた十字の傷。バックリと服が切れていた。


 倒れた飛翠は立ち上がるが、十字の傷から血を流していた。


 痛そうだ。


「お前にやる剣技だ。俺を倒して奪え」


 二本の大剣。それを悠々と構え、飛翠にそう言ったのだ。


「……そのデカい身体で随分と速ぇーな。そこは、すげーと思う。」


 飛翠は大剣を構えた。ガルパトスは目を見開く。


「が。尊敬はしねー。お前クラス、吐いて捨てる程、見てきたからな。」


 あちゃ〜……。余計な一言!!


 ガルパトスの目が恐い!! ギラついてる!


「なめるなよ。小僧」

「引き篭もりジジィに言われたくねーな。」


 飛翠はそう言うと、駆け出した。


「飛翠はクチが悪いよな〜」


 腕組んでグリードさんはそう言った。うんうん。と、頷いている。


 いや。あなたも負けてない。


 飛翠は飛び上がり、


「黒の鉄槌……からの……烈風斬!!」


 おーっと!! 二連撃!!


 脳天直撃の剣技に、更に飛び降りると、薙ぎ払い。


 ガルパトスの身体を旋風が包む。


 これ風が起きるから、烈風斬なのかな? よくわからないネーミングなんだよね。飛翠。


 ガルパトスは倒れないぃぃっ!!


 おっーと! そこに剣を振りかざし何やら光始めた! 刃が光り右手の剣を振り下ろした!


「“斬鉄!!“」


 左手の剣もまさに! 右手が振り下ろされると同時に、逆手持ち。


 まるで飛翠の足元から竜巻。そんな風が舞い上がり、飛翠は吹っ飛ばされた!!


 えっ!? 何が起きたの??


 左手の逆手持ちはどうしたの??


「ハウザーさん。解説お願いします。」


 私はロッドを握ったままそう言った。


「ああ。視えねぇよな? 嬢ちゃんには。振り下ろした一撃は右肩。更に左から逆手で斬り上げた剣は、腹を斬りつけた。見てみろ。飛翠の身体。」


 ハウザーさんはよろけながら立ち上がる飛翠を、指差した。


 横を向いてるけど……飛翠の正面は、斜めに抉られる様な傷がついていた。


 さっきの十字の傷。そこに新たに抉られた斜めの傷。それに右肩に斬りつけられた傷。


 血だらけになっていた。


「通常なら斬り裂かれてる。あの竜巻にもな。だが、飛翠は寸でで後ろに下がって避けた。俺の与えた剣技を放つ余裕は無かったんだな。」


 ハウザーさんはそう言った。


 な……なるほど。躱すことしか出来なかった。ってこと??


 でも凄いケガ。


「さすがですよ。飛翠くんは。天賦の才能でもあるんですかね。」


 ネフェルさんはそう言ったのだ。


 天賦の才能?? ただの荒くれ者だ。


「嬢ちゃん。飛翠はいつからケンカを?」

「えっと……小六。その頃から中学生に絡まれてた。デカくなっちゃったから。」


 そうなんです。彼は小六で170近くあったので、しかも目つき悪いし。絡まれてたんです。


 地元の中学生とか高校生に。


 みんな小六だと言うと……びっくりしてたけど。見えなかったんですね。きっと。


「小六? それってなんだ?」


 グリードさんがそう言ったのだ。


「あ。12歳ぐらいのこと。」

「へー。そのぐらいからもう……戦ってたのか。そりゃー強くなるな。」


 いやいや。戦いじゃなくて……ケンカ。目立ってしまっただけ。


「中学生?」


 ネフェルさんがそう聞いてきた。


「あ。荒くれ者です。」


 もーいいや。これで。


 私がそう言うと、ハウザーさんと顔を見合わせていた。だが、どうやら納得してくれたようだ。


 ふぅ。


 飛翠は息を吐くと、大剣を握った。


「邪魔くせーな。その剣。」


 二刀流のことだよね。きっと。


 ガルパトスは二本の剣を持ち、飛翠を見下ろしていた。180超える飛翠。コッチではそんな背の人は、たくさんいる。


 アッチではデカいんだけど。


「お前の剣も邪魔臭い。来い。終わりにしてやる。」

「上等だ。」


 男と男の戦いは、決着は一瞬だ。力と力の勝負!


 飛翠は構わず突っ込む。


 ガルパトスは受けるのか、わからないが構えたまま動かない。


 くるっ。


 飛翠はガルパトスの前で、反転。


「“バックグラウンド”!!」


 遠心力いっぱいの裏拳。そこから身体を戻しながら、相手を何度か斬りつける技だ。


 旋風と同時に斬撃が繰り出されてるはず……。光と速さで良くは見えない。


「“斬骸”!!」


 だが、ガルパトスの大きな身体。ぐらつくこともなく、飛翠の斬撃を受け止め件は振り下ろされた。


 最初の技だ。


 斜め十字に斬りつける剣技。右手と左手の動きは、素早い。


 あんなに重そうな剣なのにまるで、振り回すかのようだ。


 斬りつけられてるはず。


 なのに飛翠も倒れないし、吹き飛ばされない。


 ジャンプした。


 かと思ったら、蹴り!?


 飛翠はガルパトスの顔面にドロップキック。


 それはそれは……ガルパトスも驚いたのか、後ろによろけたのだ。


 飛翠は着地すると一気に間合いをつめた。


 なんなんだ? この人は……。


 そして……お得意の、カルデラさん直伝!


 飛翠の必殺技!


「“黒の鉄槌”!!」


 脳天直撃の技が繰り出されたのだ。


 だが、さすが剣豪! 二本の大剣でそれを受け止めた!!


 右足があがる。


 ガルパトスのミドルキック。飛翠の腹元に直撃。


 飛翠はふっ飛ばされていた。


「飛翠!」


 地面に倒れるが、直ぐに起き上がった。


 ボタ……。


 驚いた事にガルパトスから血が垂れた。見れば胸元。そこに縦一直線。切り傷。そこから血が滴っでいたのだ。


 更に少しだけ顎。そこにも切り傷。余り……深くは無さそうだが。


「な……何が起きたの? ねぇ?」


 私がそう言った時だ。


 パチパチパチ……。


 え!? ハウザーさん、ネフェルさん。そしてグリードさんが、拍手していた。


「やるねぇ。」


 ハウザーさんはそう笑ったのだ。


「見せてくれますね。飛翠くん。」


 ネフェルさんまで!? これはプロレスじゃないっつーの!! 観戦かっ!?


「かっけー!! 飛翠いいぞー!」


 グリードさんなんか、拳つきあげて飛び上がっちゃったよ。


 なんなの? この人たちは。


「ガヤは黙れ。うるせー。」


 飛翠はそう言うと、ブッ。と、血を地面に吐いた。唾吐きだ。


「なるほどな。やるな。蹴られながらの斬り上げか。見事だな。浅いが。」


 ガルパトスは笑いながら、顎についた血を親指で拭った。


「口が減らねーな」

「お互い様だ。」


 ガルパトスは、フッと笑うと


「認めよう。気に入った。」


 そう言ったのだった。


 はぁ……。


 私はどっと疲れてしまった。


 思わず地面にへたれこんだ。


 こんなに疲れたのは、始めてだった。

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