第10話 ウラヌス鉱山▷▷タイラント!おーマイガッ!!
ーー来ました。はい。猛スピード。ハイクオリティな感じで、お送りしてます。見えませんよね? すみません。
桜木蒼華です。
ウラヌス鉱山です!!
でかっ!!
氷山!? と言うほどに、金色に近い眩しいほどに煌めく岩山は、私の目の前にあります。
と言うか……
「エベレストっ!?」
「行ったことあんのかよ?」
はい。飛翠からのツッコミも頂いたところで、
「ありません。」
はぁぁ。
いや。怖いのよ。こー見えて。わかります!?
またもや……支配者。しかも大地。わかってるんですよ。はい。私には……“魔石の雷”しかないんです。
つまり……今回もまた……。
死んでしまうかもしれません。
「行きましょう!」
私はシロくんに、手を引かれて鉱山の中に入る。
中はとてもひんやりしていた。眩しいくらいに、光が岩から出てる。
蛍光灯みたいに、明るい。
「この土も原石が入ってるのかな?」
そうなのだ。キラキラとしている。とっても。
「そうですよ。鉱山ですからね。魔石を掘り出す場所でもあります。奥の方には……紅炎石もありますね。」
ネフェルさんは前を歩きながら、そう言ったのだ。
「へー。大地って何に使うの? やっぱり……畑とか? 農作物系が良く育ちますように?」
と、私が言うとネフェルさんは
「建物の土台。それらを作る時に埋め込みます。頑丈になるので、天災に強いんですよ。後は……さっきのキングシップ。あれの動力は大地の原石と紅炎石です。」
と、言ったのだ。
「え? それってまさしく溶岩!?」
「……石油ねーのにどうしてんのかと思ったが、なるほどな。マグマみてーな熱を産み出してんのか。」
飛翠は隣で目を丸くしていた。
「石油? それはわかりませんが、強力な動力ですよ。」
ネフェルさんはそう言ったのだ。
なんだか凄いな。私達が当たり前だと思ってるエネルギー資源。それが……魔石の原石。それで作られてるんだ。
それも天然だからエコだし。
「最近では雷と風、火。それらを使い電熱。それにも挑戦してるみたいですね。フィランデルのリュートで。」
ネフェルさんはそう言ったのだ。
「電気!? 電気も作るの!?」
「やべーな。イシュタリア。」
私と飛翠は驚いてしまったのだ。
「もっと言うと……」
ネフェルさんは振り返った。碧の髪がさらっと揺れる。
「イシュタリアの“大地”。そのもの。なので、度重なる戦争にも、この世界が姿を保っていられる。それも大地の原石が、世界に散らばっているからです。」
優しい銀色の光を放つ眼は、とってもあったかかった。世界の神秘。それを大切にしている。そんな気持ちが、伝わってくるみたいだった。
「ドラゴン達は……“天然の原石”。魔石と共に生きてますから。世界を傷つけたくない。傷つける事は、自分たちに命を与えてくれる物に、傷をつけることになる。そんな想いがあるんですよ。」
そうか。なんか今……わかったかも。
だから人間と上手く行かないんだ。人間は、生きて行く為に……物を造る。街をつくる。その時に……少なくても世界を削るしかない。
ドラゴンたちにしてみれば、傷つけてる事になるんだね。それに……戦争もするし。
イレーネ王みたいのもいるしね。
そんな話をしていると、鉱山の奥地。そこに辿り着いたのだ。
ササライ鉱山とか、国境越えしようとして入ったファイアードラゴンのいた場所。
あんな所を想像していたけど……、この鉱山は、本当に歩きやすかった。しかも、広いし。
道も真っ直ぐだった。
ので……目的地は直ぐだったのだ。
広い洞窟。きらきらと岩壁が金色に近い光を放つ。凄い。地面まで光ってる。
でも全体的じゃなくて……まるで、地面の中や壁に埋め込まれてる魔石の原石。それが、幾つも光っていて、星空みたいだった。
だからそこまで、眩しくない。
綺麗だった。
「良く来た。救世主」
でた!! 黒いローブで顔隠してる、カーミラさんだ。もう! 顔バレしてるんだから、姿見せてくれてもいいのに。
その隣にはやっぱり、金色に近い光を放つ結晶。魔石の結晶だ。
それが白い台の上に乗っかっていた。丸くない。本当に岩の塊。そんなカタチだ。ゴツゴツしてる。
あの中に、魔石の原石があるんだ。きっと。
「こんにちわ。」
私はとりあえず、挨拶したが……スルーされた。カーミラさんは、結晶に右手掲げたのだ。
はぁ。もう。もうちょっとさ。コミュ力だしましょーよ。何回も会ってるんだし。
と、思っていたら
「いでよ。“大地の支配者 タイラント”!」
さっさと……呼んでしまった。
光輝く金色の結晶。その前に、これまた金色の光に包まれたその者は、姿を現したのだった。
ウォーーッ!!
えぇっ!? 雄叫びですかっ!?
いきなり登場したかと思いきや、両手広げて吠えられました。
「えっ!? 鬼!?」
ではないんだろうけど……グレーっぽい、泥の色。その長い髪は、ゴツゴツしてる。硬そうだ。頭の上には黄色。三角の山。あのカタチが三つ。
それがまるで角に見えた。
顔は獣みたいだし、身体もイフリートみたいな獣人っぽい。さすがに、しっぽはないけど、両手両足は爪。褐色の身体は、やっぱり巨体で筋肉が凄い。
腹筋八パック!
完全な鬼! それも牙まである。
あ。わかりやすい! 腰には虎巻!! トラ模様のサロンみたいの巻いてる!
首には大っきな数珠。トパーズみたいな黄色の数珠だ。ゴルフボールより大きそう。野球のボールかな? 大きさ的に。重そうなんだけど。
「良く来た。さぁ来い。」
「えぇっ!? いきなりですかっ!?」
心で思う前に叫んでいた。
しかも、ちょっと嬉しそうだけど!? なに? もしかして……バトルマニア!? 楽しみにしてた感じ!?
褐色の怖そうな顔。私を見る黄色の眼。輝いて見える。
「蒼華。ありがたく答えてやれよ。」
飛翠の声だ。
「あのね! 私はあんたじゃないんだけど!」
まーなんてヤツ!! 腕くんで優雅に鑑賞モードだよ! サッカーの試合かっ!?
「タイラントですよ! 蒼華姉様! スゴいです! 大っきいです!」
シロくん……。嬉しいんだね。会えたから。
はぁ。
私はロッドを握った。
「来ぬならゆくぞ。救世主。」
タイラントは大きな足を地につけて立ったまま、私に両手を向けた。
「“大地の怒り”」
飛び出してきたのは、岩石! それも大きな岩の塊。
れ……連射っ!?
そうなのだ。まるでロケットランチャーだ! しかも五発!!
えっ!? ウソでしょ!!
私はとにかく逃げるしかない!
ぶっ飛んでくる岩石を前に、避ける為に走り回ったのだ。
「んんっ!? 何をしとるのだ? アレは?」
「彼女の戦い方。だそうです。」
はい! 聞こえてますからね! そこのお二人さん! タイラントとカーミラさんだった。
逃げる人いないんですかっ!? 私は逃げますけど!? フツーに!!
ゴッ!! と、乱射された岩石は、地面に落下していく。落ちてぐしゃっ! と、勝手に壊れてくれるのは良かった。
ジャンピングして跳ね返ってきたら、どうしようかと思った。
はー。はー。
あんなのぶつけられたら、死ぬわ! 幾らなんでも!!
とりあえず五発。私は走り回って避けたのだ。
地面にはコナゴナになった岩石が、散らばっていた。
んむぅ。
とっても険しい顔をしたタイラントは、
「お主……魔法に魔法で返さんのか?」
と、そう聞いてきた。
「返したいけど! 返せない! その様な余裕はありません!!」
私は紫色のロッドをタイラントに向けたのだ。
五発連射ですよ!? ファイアーボール五発連射すれば……良かったのかな?
そんなの思いつかない!! あんなどでかい岩石が、飛んでくるんだもん! ムリ! パニックですよ!
「うむぅ……なめとるな? よかろう。本気で相手をしてやろう。」
タイラントはぎらり。と、その黄色の眼をギラつかせたのだ。
えぇっ!? ちがうっての!! なめてるワケじゃない!!
あーもう! なんでこうカンタンにみんな、スイッチ入っちゃうかな!?
もっとこうやわらか〜くいこうよ! 人生!
「“大地の震撃”!!」
右手を向けてきたタイラント。
その瞬間、私の立つ地が揺れた。
まるで地震。更に上から岩の塊が落ちてきた。
地は浮き揺れる。
これは……挟まれる!?
そう。まるで天井落下に地面が浮き上がり、超高速で挟まれるパターンだ。
潰される!!
私は揺れながら浮く大地の塊。それから上から落ちてくる岩石。
ロッドを向けた。
「紅炎の弾丸!!」
これだと……上にしか撃てない!
でも挟まれるよりはマシ!
大きな炎の弾丸は、落ちてくる岩石にぶち当たる。でも壊れてはくれない。
それどころか、私の炎の魔法のせいで岩石は、火に包まれ溶岩みたいになってしまった。
さっきの話じゃないけど。これがキングシップのエネルギー。
いや! 違うっての!!
私はとりあえず向かってくる溶岩。火の岩石に、ロッドを向けていた。
考えろ。えっと……これをどうにか、崩すのだ。壊すのだ。火を消すのだ。当たったら焼けるし、熱い!
あ!!
「“水流の渦”!!」
私は水流の魔法。水の渦の噴射。それを放ったのだ。
洪水とまでいかないけど! 岩をも砕く水の力!
そう。それを思い出したのだ。
でも、効いてはくれない。
壊れる気配はない。ならば!!
「アミュストリーム!!」
連射じゃ!!
私はとにかく溶岩めがけて、ぶっ放した。お陰で、私の紅炎の魔法は消えた。自分のだからだろうな。
ん? ちょっと待って?? 岩を砕くのは水もそうだけど……雷!!
「“サンダー”!!」
私は稲妻。それを放った。落雷。それが頭に浮かんだのだ。
属性のことはすっかり、忘れていた。
水の噴射に続いての稲妻。でも、岩は壊れない。
「サンダー!! も一つおまけのサンダー!!」
もう連射しかない!
ぶつかる!
私の目の前だ。
岩石は本当に目の前にまで迫っていた。稲妻の魔法。それが撃ち落とされ、目の前で岩石は砕かれたのだ。
「きゃっ!!」
コナゴナになってくれたのはいいが、岩の屑が吹っ飛ぶ。
私はせり上がり上昇する岩の上に、頭抱えて倒れこんだ。
とりあえず頭だけは守らないと! これ以上、バカになったら困る!!
「蒼華!」
私をいつもひっぱたく飛翠の声が、聴こえた。
崩れ落ちて石を投げられてるみたいに、身体に当たってくるけど、なんとか……おさまったみたいだ。
「きゃあっ!!」
でも、せり上がって動いてた岩の塊。私がうずくまってる岩が、落下した。
お……落ちてる! え!? どうなるの!?
私はこのまま……地面に、落ちて岩石みたいにコナゴナになるんでしょうか?
イヤなんですけど!!
と、思っていると
「勝負あり!」
そんな声が聴こえた。
この声はカーミラさん??
私の身体はその時。浮いた。うずくまったまま。
更に下を見ると私のいた岩石。それが浮いていた。だが、消えたのだ。
「カーミラ。甘いぞ!」
「わかっておるだろう? お前にも」
タイラントとカーミラさんの声だ。
私は白い光。それに包まれて浮いていたのだ。そのまま、地面にふわっと着地した。
ふと見ると、カーミラさんはローブを降ろしていた。顔が見えた。
銀色の髪をアップにした小顔のキレイな女性。真紅のティアドロップ型。そのピアスが両耳で揺れる。グレーの眼が、私を見ていた。
額につけたサークレット。紫水晶がおでこの真ん中でキラっと光る。
「蒼華姉様!」
シロくんと飛翠。二人が駆けつけてきていた。私の身体を纏う白い光。それも消えていた。
「……助けてくれた……??」
え? なんで??
私は驚いていたのだ。でも、とっても助かった!! あのままだときっと、落ちてぺしゃんこ。はい。さよなら。だったはずだ。
タイラントは私を見ていた。黄色の眼が、とても強い光を放っていた。
でも、とっても不満そうだ。その顔は。
はぁ。
私は息を吐いてロッドを眺めた。進化した魔法の力なんて、見てる余裕なかった。
でも……あれだけ撃ったのに、私の身体はまだフラついてない。これは……少しは成長したんですかね!?
「大丈夫か? ケガしてねーよな?」
「うん。大丈夫。なんとか。」
飛翠はこの時ばかりは、とても優しい。いつもは、おっかないけど。
私は、カーミラさんに目を向けた。
「あの……助けてくれてありがとうございます。」
そう言うと、カーミラさんは
「助けた訳ではない。“必然”なこと。こちらへ。」
顔はとっても綺麗なんだけど、やっぱり冷たい言い方だ。と言うか淡々としてる。
私は結晶とカーミラさん。それからタイラントの方に、向かったのだ。
「致し方ない。力を貸してやる。」
あらら。とっても不満そうだ。それにムッとしたままだ。おっかないなー。鬼。
タイラントの身体は、金色の光に包まれた。
消えてゆくその身体。コトン。
足元に落ちる石。ブリリアントカット。ダイアモンド。そんなカタチだ。
やっぱり綺麗なトパーズ。黄玉の煌めきをしている。バングルの穴。それに嵌めた。
蒼、紅、黄。私の右腕には三色の宝石が煌めく。
これで……。ようやく三人。支配者の力を借りる事が出来たのだ。
ん? ちょっと待ってよ。あと何回これやんの?? まだ続くの?? 身体もつかなぁ??
不安になった……。