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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第8話 決着!! 今日のところはこの辺で!!

 ーー私と飛翠の手元には、黒崎さん……。


 ギュッ。


 私はロッドの柄を握った。


 大魔導士ゼクセンさん。彼に貰った武器だ。


 二回目の進化をしたのだ。私のロッドは蒼いアクアマリンの宝石の様なロッドから、アメジスト。紫色の宝石みたいに輝くロッドになった。


 今回はついに……美しい銀色の翼が、ついていた。ロッドの先で翼がばさっと開いた様な。


 金色のフェニックス。それが翼広げたところに、似てるなー。


 まるで……幼稚園の頃に観てたアニメ。その魔法少女が持ってたステッキみたいだ。


 アレが欲しくて、お父さんにクリスマスプレゼントの手紙を、突きつけたのを思い出した。


 サンタさんに渡して貰う為に。


 同じ様なロッドを……今。私は握っている。でも、やっぱり嬉しくはない。


 クリスマスプレゼントは嬉しかったのに。


「もう一回。試してみねー? さっきの。」


 飛翠は隣で、曲刀。カマみたいな刃になった大剣を、握っていた。


 私のは濃い紫だけど、飛翠のは少し淡い。ラベンダーカラーより、ちょっと濃い紫。


 あれだ。珍しい宝石。ヴァイオレットサファイア。あの色に似てる。


 あ。持つグリップみたいなところは、金なんだ。


 へー。


「オイ。聞いてるか? バカ女。」


 飛翠の剣をじとっと見てたら、怒られた。睨まれた。


「あ。なんだっけ? ごめん。」

「お前は……よくこんな状況で、ぼーっとしてられるよな? まじでたまに尊敬する。」


 飛翠は呆れた様な声をだした。


 だってさ。キレイなんだもん。その剣。キラキラしてるし。こんな宝石みたいな剣なんて、見た事ないし。


 美術館とかに飾ってあってもおかしくないでしょ!? 世界の富豪とかが、持ってそーなんだもん。


「魔法剣」


 飛翠は……ため息ついた。


「あ。うん。でもさ。飛翠。大丈夫なの? なんか炎の玉がどどーんとぶつかったけど? それに炎に包まれてたよね? ホラー映画のゾンビみたいに。火だるま。」


 私がそう言うと


「あ? 知らねー。見えるワケねーだろ。そんなヒマねーし。熱くはねーな。ただ、身体の中からなんか変な熱さはあった。辛いモン喰った時みてーな感じか?」


 飛翠はそう言ったのだ。


「あー。急にぶわっとくるヤツね? ふーん。そうなんだぁ。」


 私はついでにもう一つ。ふーん。と、言っておいた。


 辛いの食べると、かーっ!! ってなるよね。うんうん。身体ぽかぽか〜じゃなくて、激アツ!! みたいな!


「蒼華。行くぞ」


 私は飛翠の声に、


「うん。」


 頷いた。


 イレーネ王。見れば……湯気! 黒い湯気が全身から湧き出る様に出ていた。


 アレはなに!?


 剣を握り構えているイレーネ王。その剣ですら、黒い湯気……に包まれている。


 焼き肉屋さんで、ホルモン焼いてる時に脂が落ちて、ぶわっってなるやつ!


 網の上で肉が火に包まれて、あわあわするやつ! あんな感じだ。


「え!? なんかヤバくない??」

「やべーのはいつもだろ。」


 あーそうね。確かに。いつもヤバいわ。私達の相手する敵は。強くてワケわかんない。それにデカい。


「行くぞ。ガキども!」


 黒い剣だ。もう。それを構えてイレーネ王は、紅い眼を光らせた。


 私は飛翠にロッドを向けた。


「“紅炎の剣(ファイアーソード)”!!」


 飛翠に向かって、どんっ!と真っ赤な火の玉は、撃たれた。


 なんか攻撃してるみたいで、イヤだな。大砲撃ってる気分だよ。


 飛翠は炎を受けてやっぱりロケット! 超加速! 吹っ飛んでいった。


 ロケット花火。そんな感じでイレーネ王に向かって、飛んでった。


 身体は炎に包まれてる。


 背中から撃たなくても真っ直ぐ飛ぶんだね。魔法って良くわかんない。


 普通……横に吹っ飛びそうだけど。


 私は隣にいる飛翠に撃ったのだ。大砲みたいな紅炎の弾を。だけど、飛翠はイレーネ王に向かって飛んでいった。


 イレーネ王は飛翠が、吹っ飛んで来るのを剣を振り上げ待ち構えていた。


「不味いですね。」


 ネフェルさんだった。怪我をしていたみたいだけど、治癒されている。


 神導書片手に、私の傍に来たのだ。


「え!?」


 私がそう言うとネフェルさんは


「蒼華ちゃん。“視えますか? イレーネ王の力”。僕は視えないんですが、感じる事は出来るんですよ。」


 と、そう言った。


「え!?」


 私はイレーネ王の剣。それから身体。それが黒い湯気。それに包まれてる。それしかわかんない。


「“聖なる守護(ホーリーアウト)”!!」


 金色の光。それが飛翠の身体を包んだ。


 ネフェルさんがそう言うと、飛翠の身体はイレーネ王……その傍にいたのにまるで……ぐいっ。と、引っ張られる様に、私達の方に戻ってきたのだ。


「な……何ですか!? リプレイみたいなんですけどっ!?」


 当の本人もひじょーに驚いた顔をしていた。


 でもそれよりも


 ドゴォッ!!


 まるで落石でもあったのか!? と、思うぐらいの音。更にイレーネ王が剣を振り下ろした地面。


 そこはクレーターの様に大きく陥没していた。


「ど……どうゆうことっ!?」

「何だ? なにした? ネフェル。」


 私と飛翠がネフェルさんに、そう言ったのはその直ぐあとだ。


 イレーネ王は、ちっ。と舌打ちしていた。


 ネフェルさんの神導書は、ぱらぱらとページが捲られている。自動で。


 まるで風が捲っているみたい。


「……ヤバそうだったんで。水を挿しました。」


 な……なんでそんな涼し気!? クールフェイスにも程があるっての!!


 とは思ったが……ネフェルさんの、銀色の眼。それはとても真剣だった。


 それにちょっと……冷や汗?? 額に出ていたのだ。


「イレーネ王!!」


 そんな時だった。


 叫ぶ声がしたのだ。


 叫んでいたのは、銀の鎧を着た男性騎士。イレーネ王は、それを聞くとガトーの大河。そっちに目を向けた。


「どうやら……間に合いましたね。」


 ふぅ。と、ホッとした様に息を吐いたのは、ネフェルさんだった。


 私と飛翠も大河に目を向けた。


「船です! あれは……軍艦(キングシップ)です!」


 シロくんだった。


 ガトーの大河をまるで、これから戦争でもやりますか!? と、言わんばかり……大きな船が、何艘も連なってこっちに向かって来ていたのだ。


 大きな帆。それに黒や翠。紅。蒼の船体。船の上には、ヒラヒラと国旗。碧の国旗が揺れていた。ド派手なご登場。


「今度は何だ?」


 飛翠は大剣を握りそう言った。


「“フィランデル王国のキングシップ”たちです。」


 ネフェルさんはそう言ったのだ。


「“グロウ”……」


 イレーネ王は、大剣握りながら顔を引き攣らせていた。


 正に不機嫌! そんな顔をしていた。


 ガトーの大河に停泊したキングシップとやら。そこから堂々と登場したのは、フィランデル王国で、私達を捕まえようとした……あの。“グロウとか言う総帥”だった。


 それに……その隣には、キレイなおねーさん。アイリスさんだっけ?


 紅の軍服。周りが男ばっかりだから、紅一点。すごく華やいで見える。


「イレーネ王。たかが娘一人を連れ戻すのに、戦争か? ご乱心にも程がある。」


 碧の軍服が今日もまたとても色鮮やかだ。


 蒼い軍服、翠の軍服。さらに紅い軍服。軍隊引き連れてのご登場。


 コーヒー色の鼻の下のヒゲ。それが何ともチョビひげで、どうしても笑ってしまう。


 今は我慢してるけど。


 グロウ総帥の蒼い眼と、イレーネ王の紅い眼。それが睨み合っていた。


「そちらこそ……アトモス公国に、何を吹き込まれたか知らんが、わざわざ大河を越えて来るとはな。ヒマを持て余すのも大概にしておけ。」


 イレーネ王はそう言うと、私達の方を見たのだ。


「小娘。ガキ。逃げられると思うな。」


 そう言うと、踵を返したのだ。


 ゾッとはしたが……、私はこの時。倒さなければならない。そう思っていた。




 ▷▷▷


 イレーネ王は兵士引き連れ、帰って行った。


 グロウ総帥とローズさんが、話をしていた。今回の援軍は、ローズさんが頼んだものらしい。


 更に美しい紅一点。アイリスさん。紅い軍服に、サファイアピンクの長い髪。ビンクグレーの眼。


 この人とは“知り合い”の様だった。


 軍隊とか騎士とか、兵士とか。私にはよくわからないけど、こうやって助け合うんだね。


「闇魔石の力に、完全に支配されてる様子ではありませんでした。ですが……強大な力である事は、変わらないでしょうね。」


 大河の前。軍艦たちの並ぶ岸。そこで、ネフェルさんはグロウ総帥に、そう言った。


 グロウ総帥はコーヒー色の髪をしている。そらっとはしてないけど、ツヤがある。でも、相変わらず怖そうなおじさんだ。


「うむ。“輝石(クリュス)”……。」


 グロウ総帥は、そう言うと何故か……、私と飛翠を見て止まった。


 でも直ぐに



「“ティア王女”も追ってはいるが、マーベルス。そこで途絶えた。フィランデルの領地で、唯一のイレーネの領土だ。」


 と、言い換えたのだ。


 ん?? なんかイヤ〜な感じ。


「ティア王女様はご無事なのか? シェイドド殿は?」


 カルデラさんだ。


 皆……いる。ここに来た時はすっごいケガしてたけど、シロくんとネフェルさん。それに、私。みんなで回復薬と、回復魔法で治療した。


 因みにシロくんは、指輪をつけていたから、回復魔法が使えたらしい。


「無事だと思われます。マーベルスの街の生き残りの民。その者たちの話だと、聖剣を奮い民を殺し……召喚獣の力で、街を破壊したとか。その後……逃亡しています。」


 そう言ったのはアイリスさんだ。


「一体なんで? マーベルスってティア王女の伯母さんがいるよね?」


 そう言ったのはラウルさんだ。ブロンドの髪をした今は……冒険者。でも元イレーネ国の騎士。


「そこまでは何とも。ただ、領主であった“カタール卿”。ティア王女の伯母上…“ミラース”様は、共に殺害されている。」


 アイリスさんは首を振ったのだ。横に。


「おいおい……。なんかハナシが物騒になってきたな。その王女ってのはイレーネ王国でも潰す気か?」


 そう言ったのは、蒼いハスキー犬みたいな顔をしてるグリードさんだ。


 すると隣にいたシロくんが、俯いていた。


「シロくん? どうしたの? 具合悪い?」


 私はしゃがみこんだ。シロくんは少しだけ震えていた。紀州犬に似たわんこだ。


 小学一年生ぐらいの背格好をしてる。でも、今は俯いているから……もっと小さく見えた。


「コボルトのシロ……だったな。」


 そう言ったのはアイリスさんだ。私が振り向くと、とても悲しそうな目をしていた。


「……ありがとう御座いました。」


 え??


 シロくんがそう言ったのだ。


 え? なに?? 知り合い??


 私は俯いているシロくんと、アイリスさんを見てしまった。キョロキョロと。


「いや。あの時は“ゼクセン殿”が動いて下さった。そのお陰で、猫族(アイウラ)と、コボルト。そなた達を救えたのだ。」


 アイリスさんはそう言った。


「ま……まさか……シロくん……」


 私はとても……悲しい現実。それに気がついてしまった。


 シロくんは顔をあげた。大きな蒼い瞳は、うるんでいた。


「マーベルスの街は奴隷制度が廃止されているのに、奴隷を従えてたんです。僕達……コボルトや、アイウラの人たち。たくさんの人たちが……貴族たちに、飼われていました。」


 私はシロくんの小さな手を掴んだ。ぎゅっと握った。


「ゼクセンさんが、助けてくれたの?」

「……はい。隣国のアイリスさん達が、乗り込んで来てくれたんです。王国の垣根を越えて。」


 ああ。そうか。だから……“ゼクセン様はスゴいのです!!”。


 そう言っていて……魔法使い。


 ゼクセンさんに憧れているんだ。シロくんは。助けて貰ったから。そして……アイリスさん達に、助けて貰ったから……人間を、憎んで嫌えないんだ。


 ぽんっ。


 私はシロくんの頭に手が置かれたのを見て、びっくりした。


 飛翠だった。


 脇にしゃがみこみ、シロくんの頭を軽く撫でていた。


「お前。やっぱ強ぇーわ。尊敬する。」


 飛翠はそう言っていた。


 シロくんは驚いて顔をあげたのだ。


「飛翠さん……。僕はなにも……」

「いや。助けて貰ってヨシ。としねーで、強くなろうとしてんだろ? 」


 飛翠はそう言うと立ち上がった。


 私もシロくんも飛翠を見上げていた。でも、飛翠は笑っていた。


「腐って間違った方にいかねーのが、すげーよ。」


 そう言ったのだ。


 シロくんと私は……直ぐに、照れ臭そうにクールフェイスに戻った飛翠に、思わず顔を見合わせて笑ってしまった。


 優しくて熱いんだけど……照れ屋さんなんだよね。飛翠は。


「さて……ここからだ。蒼華。飛翠。お前達は、このまま“闇魔石”。それに対応する力を身につける必要がある。」


 ローズさんだ。


 私はその声に立ち上がった。


 闇魔石……。つまり、イレーネ王を倒す力。


「僕もついていきます! 今度こそ!」


 シロくんはそう言った。


 ローズさんは、ふっと笑った。腰に手を充てたのだ。


「わかってるよ。とことん、ついて行きな。で。ここからだが、ミリア。クライブ。スフィト。お前達も力をつけてもらう。」


 ローズさんはミリア達に目を向けた。


「うん。わかってます。」


 ミリアはとても真剣に頷いた。隣にいるクライブくん。スフィトくんも……なんだか、とっても逞しい感じ。


 何かあったのかな?


「ライア。ラウル。」


 ローズさんはライアさん。蒼い身体をした、竜族。海王ネプチューンを見たのだ。


「ん?」


 ライアさんは首を傾げた。


「お前達が掩護に回れ。ああそう。」


 ローズさんはそう言うと、アイリスさんの方を見たのだ。


 すると……アイリスさんの隣には、白いローブ。それを着た男性がいたのだ。


 ロッドを持っていた。


 セミロングの蒼い髪!! まーなんてキレイな髪! それにヤバい!!


 格好いい!! なにあの人! ワインレッドの瞳!? 王子様!!


 そうなのだ。ローブを着たその人は、まるで王子様みたいなキレイな顔をした人だった。


 もう後ろからバラの華が、たくさん咲きそうだ。それに絶対! いいにおいする!


 優しそうだし! 


「“セレスト”と言います。宜しく。ミリアさん。」


 ルビー色のロッドを持ったその人は……なんと! なんと!


 ミリア狙いっ!? ミリアを選んだ!!


 キャーっ!! 私は撃沈っ!! 沈む!!


 ばしっ!


 と、頭をひっぱたかれた。


「お前。まじイラつく」

「えぇっ!? なんで心の声を聞くのよ!!」


 飛翠のバカぁっ!! 私の男運の無さはお前のせいだっ!!


「フィランデル王国の魔導士だ。今回は力を借りた。ミリア。しっかり励みな!」

「はいっ!」


 あれまー! なにあの満面の笑顔っ!! 


 なんてうらやましい!! なんなの!? ねぇ!? なんで?? あんな格好いい王子様の魔導士と、どーして主役の私が!!


 旅をできないんだぁ〜〜〜!!


「蒼……。蒼華!!」


 ローズさんの叱る様な声が聴こえた。


「はいは〜い」


 私は不貞腐れ度120%!! ローズさんを見たのだ。


「ハウザー。ネフェル。グリード。飛翠。シロ。お前達は蒼華の掩護だ。」


 ローズさんの声が聴こえた。


 はぁ……。いつもの悪ガキコンビと、ガラの悪いおっさんと、クールフェイスだけど……意外と冷たいネフェルさん。



 癒やしてくれるのはシロくんか……。


 ラウルさんも行っちゃった……。あっち。


 はぁ……。


「「「オイ!!」」」


 飛翠とネフェルさん。ハウザーさんのツッコミを頂きました。


「蒼華姉様! 頑張りましょうね!」


 シロくんがとってもカワイイ顔で、私を見てくれた。


 はぁぁ。王子様……。それも魔導士。なんてこと!!


「うん……。頑張る……」


 私はとってもとっても……がっくりと、項垂れたのだ。


 こうして……魔法を求める旅は、始まるのだった!!


 ずるいっ!! ミリア!!








































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