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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第5話 作戦会議!!▷▷全面対決じゃっ!

 ーー「イレーネは、真っ直ぐ攻めてくるだろうな。」


 私はローズさんの隣で、地図を覗きこんだ。


 地図は、このアトモス公国のものだ。それと、その周りにある地形。


 ガトーの大河と草原だ。アトモス公国は、大河を背にある。その前に広がるのは広い草原。イレーネ国は、ササライ鉱山の向こう側にある。


 その鉱山を通り、この地に向かってくるのだ。国境は、鉱山の側にある。関所と書いてあった。


「イレーネ国の軍勢は5000弱。これはカイルに探らせていたから、間違いないよ。対するアトモス公国軍は、3500。それとあたし達……13人。」


 ローズさんの声に、ため息ついたのはアドリア大公妃だった。


「首を縦に振らない貴族たちがいてね。今回はこれで勘弁しておくれ。」


 そう言ったのだが、とても忌々しそうな顔をしている。



 5000に3500……。それは……。


 私はぎゅっと。ロッドを握った。いやいや。マイナスに考えてはならんのだ。


 それに、私達の仲間が13人。そんなにいること。そっちに驚いた。


「国境はどうするんだ?」

「解放する。」


 グリードさんの声に答えたのは、アドリア大公妃だった。


 蒼いワイルドなハスキー犬に似たコボルトだ。グレーの眼が、アドリア大公妃を見据えていた。


「被害は少ない方がいい。突破されるのは目に見えている。受け入れる。」


 そう言ったのはローズさんだ。



「ふむ。それで突破して来たイレーネ軍を、公国で受け止めるのか?」


 カルデラさんは、ローズさんの前にいる。そう聞いた。


「いや。アトモス軍が草原で、散らばり待機する。軍勢は2000。公国付近に1500。」


 ローズさんは地図の草原の辺りに、赤い丸い石。それを置いた。


 ん? これって魔石の粒!? え? こんなところでも使用されるんですか!?


 フル活用ですね。


 お金の代わりになったり……作戦会議のマグネット感覚。凄い世界だ。


 魔石の粒は囲碁とかに使うあの壺。そんなのに入っていた。


 小壺だ。そこから紅い魔石を取って、地図の上に置いていた。


「草原じゃ隠れらんねーな。」


 飛翠だ。


 何ということ!? 作戦会議に堂々と発言!? ほんと。なんなの。この人。


「隠れる必要はないさ。迎え討つのはわかってるだろう。サデューとバルト。その軍を蹴散らせればそれでいい。」


 ローズさんは次に紫雷石の魔石。それを置いた。


「ん〜……いいとは思うけどね。逃げられるかな?」


 ラウルさんはそう聞いた。


 紅い魔石は、五ヶ所。草原を囲む様に置かれていた。どうやら真っ直ぐ突っ込んでくる軍に、周りから攻撃する様だ。


 紫雷石の魔石。それは関所に二箇所置いた。


「残りの五百が二つ。タイミングを見て後方から、仕掛ける。これは“魔法隊”。軍の隊列を乱し、撹乱すること。それさえすればいい。」


 ローズさんはそう言った。碧の魔石を公国付近に、並べた。


 公国付近でイレーネ王を迎える1500の軍だ。こっちは、真っ向勝負。全面対決だね。きっと。


 するとグリードさんが、


「その国境辺り。そこに1000。コボルト族と猫人(アイウラ)族を、いれてくれよ。」


 と、紫雷石の粒。それを指差したのだ。


「え? グリードさん! まさか……」

「ああ。明日には来る。親分が寄越してくれる。ちょっと少ねぇか? 悪いな。」


 グリードさんの声に私は首をふった。


「そうじゃなくて! その……イレーネ国と戦争になるんじゃないの?」

「なに言ってんだ。これも戦争だ。カレン族長も動いてくれた。」


 グリードさんはきょとん。としてしまった。


 アトモス公国もだけど……カレンさんの所まで。


「コボルトとアイウラか。久々だなー。オレも会うの。」


 と、笑ったのはライアさんだ。海の深い蒼。そんな身体をした人間の姿をした、ドラゴンだ。


 アクアマリンのような綺麗な眼をしている。


「……そうか。それなら後方には、グリード。ライア。お前たちが回れ。」

「りょーかい!」


 グリードさんがそう言うと、その隣にいるライアさんは、


「いいねー。宜しくな。」


 と、グリードさんに手を差し出した。


「こっちこそだ。」


 グリードさんは手をしっかりと掴んだ。


 戦争ーー。そうなんだよね。そうだよね。これも戦争なんだよね。


「ローズ殿。サデューの軍。そこにワシ。ラウル殿は、バルト殿の軍に向かう。」


 そう言ったのはカルデラさんだった。


「じゃ。そこに俺も便乗だな。」


 そう言ったのは、ハウザーさんだった。


 ローズさんは三人を見ると


「わかった。草原の部隊。その頭角にそれぞれ着いて貰う。いいか? あくまでも撹乱だ。タイミングを見計らい、兵を連れ引き上げろ。」


 と、そう言った。


 草原の五部隊を率いて……あのサデューに。


「イレーネ王の軍は、迷わず突進してくる。ここで食い止めるのが、蒼華。飛翠。」


 ローズさんは私達を見たのだ。


 さらに


「ミリア。クライブ。スフィト。ネフェル。シロ。そして、あたし。退く戦いではないかもしれない。」


 と、ミリア達の方を見た。


「大丈夫よ。頼りないかも? だけど。」


 ミリアはそう言って笑った。


「及ばずながら。」


 ネフェルさんがそう言うと


「嫌味に聞こえるよ。ネフェル。」


 と、ローズさんは苦笑いしたのだ。


「飛翠。存分に暴れてやれ。」

「ああ。」


 ハウザーさんの声に、飛翠もフッと笑った。


「4500。心許ないが何とか凌ぐしかない。みんな。明日は締めてくよ!」


「「「オー!!」」」


 ローズさんの声に高らかに声をあげるみんな。


 ホッホッホ。


 アドリア大公妃は扇子をひらひらさせて、笑っていた。


 私はそれを前に、少し震えていたのがわかった。


 ばらばらになる。皆が。戦争ってそうゆうことなの?


「しっかりしろ。まだ始まってねー。」


 私は飛翠に軽く頭をたたかれた。


「わかってる。」


 そうだよね。


 本番は明日なんだから。



 ▷▷▷


 その日の夕食は、アドリア大公妃が用意してくれた。


 皆で広い食堂の様な部屋。そこで立ち食いスタイルで食べたのだ。


 みんなは楽しそうに話をしていた。不思議だ。はじめて会った人ばかり。


 なのに、もう仲良くなっちゃってる。


「蒼華ちゃん。聞いたよ? クランヒル行ったんだって? よく行ったね。」


 ラウルさんだ。飛翠と一緒にいる私に、声を掛けてきたのは。


 飛翠もさっきまでグリードさんと話をしていた。


「うん。リヴァイアサンに会った。と言うか……蜘蛛の巣にも捕まった。」

「相変わらず……“寄せ付けるね”」


 ラウルさんは隣で細長いグラスを持っている。


 そう言えば……大公様はどうしちゃったんだろ? 公妃さんも。いなくなっちゃったよね? いいのかな? 国が戦争にと言うか……戦いに巻き込まれるんだよね?


 そうなのだ。さっきの作戦会議にも顔は出さなかったし、今もいない。


「ラウルさん。大公様はどうしたの? いなくなっちゃったよね?」


 ラウルさんは私が聞くと、う〜ん。と、なんだかとっても言いずらそうな顔をした。


 綺麗な顔がしかめっ面になってしまった。


「俺達がここにいる事を、イレーネ国に密告したのは、“スレイヤ大公の弟君、セルディン卿”だったんだけどさ。これまた思った通りなんだけど。」


 でた! 血肉の争い! そして本当に思ったとーり! 


 私はラウルさんの長い前髪から覗く、きらっとした碧の眼を見たのだ。


 あ。前髪伸びたな。


「ちょっと……やっちゃったんだよね〜……」


 と、ラウルさんはぽりぽりと、頬を指で掻いた。


 ん?? なにこの気になる感じ! しかもとってもとっても……うふふ。私の好きそうなニオイがするぞ! これは!


「女か?」


 そう聞いたのは飛翠だ。隣で、腕くんでた。


 あ。聞いてたの?? いつの間に。おいおい。アンタも好きね〜!


 にやっとしてる飛翠に、私は思ったのだ。


「セルディン卿に話をしたのは、大公の愛人。まぁ。そこまではよくある話で何とかなるんだけど。」


 うんうん。愛人なんて幾らでもある話だ。たしかに! 王や殿様。武将にはつきものだ。


 私は強く頷いた。


「その愛人がね〜。セルディン卿の愛人でもあったんだよね〜」


 と、ラウルさんは言った。


 ええっ!? ま……まさかの!? 兄弟オンナ取り合い騒動勃発か!? これはまさにどろっどろの深夜ドラマ展開!? 


「まじか。ありえねー。」


 飛翠はとてもイヤそうな顔をした。


「ん? なんか心当たりおアリか?」

「は? 普通に考えて気持ちワリーだろ。」


 あ。そうね。たしかに。


「大公もかなり落ち込んじゃってね。アドリア大公妃は、愛人がいるのは知ってるみたいで、納得してるみたいだけど……。」


 ラウルさんのその声に、私は


「え? そうなの? 奥さんはなにも言わなかったの?」


 と、聞いた。


 私はてっきり奥さんからの鉄拳制裁との、ダブルパンチで、オチてるのかと思ったけど。


「あの人も愛人だからね。元。」


 は?? 


 私は思わずアドリア大公妃を見てしまった。


「まじか……。すげーな。イシュタリア。」


 飛翠はそう言ったのだ。


 な……なるほど。だから髪の色とか違うんだ。顔も。そして公妃のあの眼。大公妃をずっと睨んでた。堂々と私達に説明するお母さんを。


 何ということ!? リアル対決!!


 ある意味……この家族も戦争だ。



 そしてーー、私達は決戦を迎えるのだ。

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