章間話 もう一つの再会
ーー私達が、感動の再会をしていた間……。こそこそっとクライブくんの影に、隠れる人がいた。
そしてーー、それを見ると
「ミリア!!」
いつもは温厚でいて優しい顔を、私達に向けるカルデラさん。
彼がとてつもない険しい顔をして、怒鳴っていた。
ミリアはやっぱり。ブロンドのイケメンくん。クライブくんの後ろにこそっとしていた。
顔だけは覗かせているけど。
「ミリア! お前はまた! クライブくんとスフィトくんを、巻き込んでからに! 今度は何をしとる!?」
ずかずかと。
えーもう。大股で歩き隠れるミリアの腕をつかんだ。
「痛い……イタタタ……」
ぐいっ! と、引きずられるミリア。カルデラさんは、全くもって容赦ない。
これは。もしかして……。
私がずっと。ミリアに感じていた“懐かしく優しい面影”。
「離してよ! お父さん!!」
やっぱり!!
「えっ!? ミリアってカルデラさんの娘さんっ!?」
案の定。とは思ったが、やっぱり驚いた。びっくりだよ。これまた。大掛かりなどっきりだこと。
「そ。あたしにとっては口うるさいだけの、いや〜な親父です。」
ミリアは腕を離してもらい、ふんっ。と、そっぽ向いた。
「ミリア!」
カルデラさんはそう怒鳴る。
「すんません。カルデラさん。姉さん。どうしても“リヴァイアサン”に会いたい。なんて言うもんですから。」
マリーゴールドのバンダナ。それを巻いた赤毛のスフィトくんは、カルデラさんの前で頭をかいた。
とってもすまなそ〜な顔をしてる。
「いや。ミリアが巻き込んだんじゃろ? すまんな。いつも。この我儘放浪娘が。」
カルデラさんはミリアをとても厳しい顔で、見ていた。でも、その言葉も瞳もあったかい。
父娘なんだなー。と、私は思ったのだ。
「いえ。今回はちゃんとした目的ありましたからね。俺もそれで付き合ったんですよ。いつもの思いつきで、ぶらっとする感じじゃなかったんで。」
クライブくんはとっても大人対応だ。やっぱりこうゆう対応が、出来るのがカッコいいよねー。飛翠なんて……うるせー。とか、バカ女だから。とか、そんなぐらいしか言わないんだから。
「あ?」
ちょっと睨んだら、睨み返された。腕組んで偉そうな態度で。
「思いつきってなによ。それに! 別に付き合ってくれ。って言ってない。」
ミリアはとっても不貞腐れている。
それにしても。カルデラさんは赤っぽいオレンジに近い髪で、ミリアはアッシュピンク系。
あ。でも瞳はカルデラさんも明るい茶より、オレンジに近いし、ミリアはマリーゴールド。鮮やかな黄だけどオレンジに近い色だよね。
お母さんの髪の色とか気になるなー。ここの世界の遺伝もきっと、変わらないよね。人間だから。
「放っておけないだろ? クランヒルなんて危ないじゃないか。それに、放っておくと後でうるさいよな?」
クライブくんはハッキリとそう言ったのだ。
「そーっすね〜。姉さんはあとでぐちぐちと言う。絶対。」
うんうん。と、スフィトくんは頷いた。
「重ねてすまん!!」
カルデラさんは手を合わせて、頭を下げていた。ミリアは横で、ぶすっとしている。
「慣れてますから。」
クライブくんはそう笑った。
「蒼華。耳が痛くねーか?」
「う……。痛くない。」
隣の飛翠の冷た〜い声に、私はぼそぼそっと答えた。ま! イヤミな人っ!!
幼なじみ達と、その親ってやっぱりこうゆう感じなんだなー。近いんだよね。本当に。家族みたいなんだよね。
懐かしいな。うちのお父さんと飛翠もそうだった。
飛翠は良く、私の事を頼まれてたからなー。栃木に日帰りバスツアー。それ行こうとした時も、頼んでたっけ。
あれも……たしか。ふらっと思いついて、未成年だからお父さんの許可が、必要だったんだよね。一人だったから。
『すまん! 飛翠くん! 一緒に行ってやってくれないか? 蒼華だけじゃどうなるか。』
『あー。いいよ。ヒマだから。』
手を合わせて頭下げるお父さん。必死で頼んでたっけ。飛翠はいつもの感じだったけど。
でも、お父さんと飛翠は仲良かったな。よく家で、一緒に夕飯食べてたもんね。
「それにしても……何で、蒼華ちゃんといるんじゃ? まさか、蒼華ちゃん。クランヒルに行ったのか?」
カルデラさんは私に視線を向けた。
「あ。うん。そうなの。そこでミリアたちと、会ったんだよ。」
私がそう言うと、カルデラさんはとても驚いた顔をしていた。
でももっと強いリアクションしたのは、この子だった。
「リヴァイアサンに会ったんですか!? いいなぁ。僕も会いたかったです!」
シロくんがきらきらとした瞳で、私を見上げていた。
ふっふっふー。
私は笑った。
「どうかしたんですか?」
シロくんはちょっと引き気味。
もー。妄想の笑いじゃないんだから、引かないでよね。
「会えるよ〜。シロくんも。」
じゃじゃーん。とばかりに、私は右腕についてる金色のバングルを見せたのだ。
そこについてる蒼い涙石を、見せる。
ちょっと屈んで見せると、シロくんは目を輝かせた。
「こ……これは何ですか? 見たところ……魔石みたいですが?」
「リヴァイアサンの力が入った石。なんだって。これをつけてると、リヴァイアサンを呼べるらしいんだよね。まだやったことないんだけど。」
私がそう言うと、がばっと顔をあげた。真っ白な顔のわんこは、もう満面の笑み。
「リヴァイアサンを呼べる?? 蒼華姉様! 支配者を召喚出来るんですか?? 凄いです!!」
うう……っ。この羨望の眼差しと、とてもきらきらした純真な眼差しはやめて!
スゴいというか……とても大変な事になりつつあるんだから。私。
「あ〜。行きたかった。蒼華姉様とやっぱり一緒に行って、ちゃんと見ていたかったです! 僕も!」
シロくんはとても残念そうに言ってくれたのだ。あ〜〜カワイイっ!! なんでこんなにカワイイんでしょうか!? この子わ!
「行けるよ。それにシロくんも魔法を使える様にならないとね。まだ会わなきゃいけない神獣が、いるんだって。」
私は魔法使いを目指すシロくんに、そう言った。
「はい! 今度こそ付いていきますからね! 蒼華姉様!」
私はシロくんにぎゅっと、可愛らしい肉球の量でで、手をつかまれた。
やらかい。 そしてあったかい。
行きましょう!! どこにでも!
と、思ってしまったのだ。




