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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第3話 アトモス公国▷▷みんな!!会いたかったよ〜〜!!

 ーー海列車はアトモス公国の港に、停まった。乗るときもそうだったけど、普通の港に横付け。


 船みたいだ。


 あ。そうそう。“海列車(パイザー)”って言うらしい。港について私と飛翠は、車輪が無い底面。気になったので見てみたが……。


 何と驚き!!


 底滑り!! 真っ平ら! まるで磁石の列車だ。海面とぴったりくっついて走っていたのだ。


 底面から蒸気みたいに凍気。それがぶわぁっと出て、走りながら凍らせるんだとか。


 運転手のおじさんに聞いちゃったよ。


 海列車(パウザー)にも管理塔と言うのがあり、それで管理されてるから運転手の仕事は安全な海路横断。


 監視役らしい。




 来た。


 ついに!!



 アトモス公国!!




 長かった。ここまで。かれこれ国をあっちこっちと。最初の目的地が、ここだったはず。


 イレーネの城を逃げ出して、そこからここに来る!


 地図で見たけどめっちゃ近い!!


 随分な遠回りをしましたね。やっと目的地に着きましたよ。こんな旅行を、計画する彼氏がいたら、即別れるでしょう!!


 間違いない!!



 アトモス公国は貴族の国。と言うだけあって、とても綺麗な世界だった。


 そう! まさしく! 私の思い描く国!


 メルへ〜ンな世界! お姫様と王子様の世界です!


「わ〜……薔薇! 薔薇がすごい!」


 何ということ!! 大きな薔薇の花壇! それが出迎えてくれる。


 そしてこの開かれた門!!


 港から入るにもやっぱり門はあるんだね。大きな港から、銀色の開かれた門。その先に薔薇の花壇! 円形で花時計みたいなやつ。


 赤や青。黄色に白! ピンク〜〜! あーここにばさっと行きたい! そして私は待つのだ。あの先にある王城からやってくる白馬の王子様を!! ああ。そしてサラサラのブロンドの髪が、私を見下ろす!!


 ばしんっ!!


 思いっきり頭を引っ叩かれた。後ろから。


「痛い!!」

「痛くしてやった。いい加減にしろ。怯えてる」


 えっ!?


 私は目の前にいる皆様ーー、御一行の青ざめた顔を見て固まった。


 何ということっ!? 正に舞台の様に演じてしまった!! グフグフと笑う妄想変態野郎を!!


 きゃーっ!!


「大丈夫なの? あれ。」

「癖。みたいです。」


 お願いっ!! 引かないで!! もうやめます! こっちの世界で始めて出来た友達と、おねーさまっ!! どん引きしないで!!


 げしっ!


 尻を蹴られた。勿論。飛翠だ。


「だから。やめろって言ってる。バカ女。」


 とてつもない冷たい声が、聞こえてきた。


 私は頭から地面に突っ込みました。


 無意識に……おいてかないで!! ポーズをやっていたらしい。


「痛い……」

「目が覚めたか?」

「はい……。すみません。」


 私はおでこを擦って起き上がった。


 痛い。もー。


 アトモス公国は、洋館ばかりだった。もうそれはそれは、西洋系です。お美しい世界です。この少し古めかしい感じや、基本が白で屋根は青。金や銀色も使って、街並みは美しく染まっている。


「色んな店がありそうだな」


 飛翠は広い大通りみたいなこの場所。そこを歩きながらそう言った。


 そうなのだ。洋館ばかりなのだが、その中に木の看板がかたかたと揺れるお店がある。


 街灯に着けられていて、カタカタしてる。なんか信号機の標識みたいだ。交差点の名前とか書いてあるやつ。


 正方形だけど。日本は長方形だよね。確か。


「と言うか……あんまり人がいなくない?」


 そう。私は余りの美しい世界に目を奪われていたが、街中には人がそこそこしかいなかった。


 こんなに広い通りなのに。しかもたぶん。ここは首都みたいなものだよね?


「静かすぎるね。」


 そう言ったのはローズさんだった。


 美しい水色の髪。アースカラー。長い髪をふわぁさっ。と、避けた。


 うーん。香りもローズなのかな?



 ▷▷▷


 王城ーー。ここにはスレイヤ大公が住んでいる。街中から坂を登ったところ。


 あの花壇から見えていた三角の塔が建ち並ぶお城だ。西洋の城。正にそのままだった。


 門は開かれていた。大きな噴水のある通り道。そこを通り、私達はお城に入った。


 誰もいなかった。


 門番も。玄関の所にも。普通はいるよね? 門番とか玄関で待つ執事とか。


 なのでーー、ハウザーさんが大きな扉を開けたのだ。


 するとその広い玄関の間。そこに


「蒼華ちゃん! 飛翠くん!」


 オレンジの温かな眼をしたーー、カルデラさんがいたのだ。


「カルデラさん!!」


 私は迷わず飛び込んでいた。銀色の鎧を着たお父さんみたいな人に。


「良かった。本当に良かった。無事だとは聞いていたが。良かった。」


 カルデラさんは私を、ぎゅっ。と抱きしめてくれたのだ。


 銀の硬い鎧のはずのなのに、なんだかあったかい。胸元で受け止めてくれている。そんな温もりがあった。


「カルデラさん!」


 私はーー、何を言えばいいのかわからなかった。ただ、会いたかった。それに会えたこと。この逞しく優しい腕に抱きしめて貰えたこと。


 それが何よりも嬉しかった。


 お父さん。そう。お父さんにやっと会えた。そんな気持ちだった。


 カルデラさんは私の頭を撫でてくれていた。あったかい大きな手だ。


「すまぬな。守ってやれんで。だが……」


 カルデラさんの声が止まった。


 私は顔をあげた。カルデラさんは真っ直ぐと一点を、見つめていた。


「飛翠くん。さすがだ。恐れ入った。良かった。無事で。顔を見せてくれ。」


 カルデラさんは私の後ろにいる飛翠に、そう言ったのだ。


 私はそれを聞くと離れた。


 カルデラさんが少し手を緩めていた。飛翠はとても照れ臭そうにしながらも、歩み寄ってきた。


 がしっ!


 飛翠の頭。それを鷲掴み。カルデラさんは乱暴にぐりぐりと撫でていた。


「イテーな。」

「我慢せい! 父子の再会じゃ!!」


 私はそれを聞いて、嬉しかった。


 飛翠には父親がいるが、誰なのかはわからない。お母さん……“柏木 舞桜(かしわぎまお)”さんは、占い師をしていて……ちょっと変わっているのだ。


 スピリチュアルなコメンテーターや、エッセイストとして、テレビとかにも出ちゃう人で、有名な人なのだが、それも本名で。


 離婚歴が……五回。子供は飛翠の他に一人。それでいて……三十八歳。一週間離婚もあった。


 他にも子供がいるんじゃないか。と、飛翠は思っているらしい。私もそれは思っている。


 ただ、飛翠は舞桜さんを恨んでも憎んでもいない。父親の事も何も聞かないらしい。私が、舞桜さんから相談されるぐらいだ。


 だから……カルデラさんに、頭を撫でられちょい恥ずかしそうな飛翠を見て……私は、嬉しかったのだ。


 本当の父親と息子みたいだった。その荒い再会の仕方とか。


「蒼華姉様!!」


 きゃーっ!! この声は!!


 とたとたと駆け寄ってくるのは、シロくん!!


 紀州犬に似た真っ白な白いわんこ! 犬人(コボルト)族の子だ。成犬だけど。


「シロくん!!」


 私は彼をーー、しゃがんで受け止めた。愛くるしい顔で駆けてくるその姿! もう可愛くてたまらない! 


「姉様っ!! 良かったです! どうしようかと思いました!」


 この可愛い顔のワリには、大人な声は未だに慣れないけど。でも!


 そんなのはどーでもいい! ああ。良かった。会えた。また会えた。


 私はシロくんをぎゅっと抱いていた。


 子供みたいな背格好の彼を。


「ごめんね。心配かけて。会いたかったよ〜〜」


 あーごめんなさいっ!! 感無量!! シロくんのやわらかな毛を感じたら、涙が出てしまった。あったかい。


「僕もです!! ……が。苦しいです。蒼華姉様。」


 シロくんは、私にぎゅうっとされているので、胸元でそう言った。


 申し訳なさそうに。


「ごめんっ!!」


 私はシロくんを離した。ちょこんと立ったまま、シロくんの蒼いつぶらな眼は、私を見ていた。


「会えて良かったです。」


 ムリ!!


 私はがしっ!! と抱きしめた。なんてカワイイ!! はにかむその顔なんてもう!! 帰って来るのを待ってたわんこそのもの!! ふわもふ最強!! けもみみ恐るべしっ! 


「わ〜〜! 苦しいです!!」

「ムリっ!!」


 私はぎゅうっと抱いて、シロくんの胸元ですりすりした。


 ぬいぐるみではないが、それ相当の抱擁を与えたのだった。



 ▷▷▷


 再会は、落ち着き、私達は何やら広い会議室みたいな部屋に通された。


 そこにはスレイヤ大公と大公妃。更に、公妃さんがいた。


 スレイヤ大公と公妃は、血統なのかブロンドの髪に、蒼い瞳。ただ、大公妃は黒い髪に碧の眼だった。顔立ちも大公と公妃の西洋風ではなく、アジアンだった。


 なんだかとても異質に思えてしまった。


「歓迎して差し上げたいが、然程。猶予は残されておらぬ。ローズ」


 翠色の羽織。それに扇子。どう見ても……その格好は、和と中が交じっていた。


 公妃は長い髪をふわっとさせていて、大きな宝石のついたサークレット?? それをつけていて、ピンク色のドレスみたいな格好だ。


 なのに、お母さんは中華な服装。楊貴妃とか着てそうな服。翠の羽織の下は銀色の着物。きらびやかだけど……。


 ローブを着てる大公とドレスの公妃。その前では、なんだかちょっと……変。


 ちょんまげ刀の武士と、ドレスアップした王女様。それぐらい差がある。異質だった。


 金色の扇子をひらひらとさせながら、纏め上げた黒い髪。アップだ。完全な。その美しい顔は、ローズさんに向けられていた。


「はい。」

「聞いておろうな? ゼクセン殿から」


 ローズさんは大公妃の声に、とてつもなく改まった。


 ここで全てが語られた。


 この部屋の中ではこの方。つまり、大公妃がトップ! 何故なら! その脇の真っ赤な王座に腰掛けている大公は、とても物静かな面持ち。


 そしてその隣。大公妃とは反対側にいる公妃は、とても不機嫌だ。


 どうやら。この家族は……“仮面家族”!!


 母と娘は血みどろなのだ! そしてそれに挟まれる父親!


 それがこの空間で一瞬でわかった!! 


「はい。イレーネ王国。その数五千。小手試し程度でしょうが、明日には到着予定。」


 ローズさんは、跪きはしないが改まっていた。


「そんなにいるの?」


 あれ?? ラウルさん?? いつの間に!!

 グリードさんまで。


 この部屋には私達の一行と、シロくん。カルデラさんしかいなかった。会えると思っていたラウルさん。グリードさんはいなかった。


 でもドアの側にいたのだ。


 ブロンドの髪と碧の眼をした長身イケメン。ラウルさん。それに蒼い毛に覆われた額に三日月の傷のあるコボルト。グリードさん。


 二人はいたのだ。


 私と飛翠の顔を見ると、二人とも笑ってくれた。


 思わず私と飛翠は、顔を見合わせていた。


「焦っているな。ヤヌスは。」


 ローズさんは、ラウルさんにそう言ったのだ。


 焦ってる??


「やはり。“マーべルス”か。あの土地は、イレーネ国王の唯一の土地じゃったからな。」


 カルデラさんはそう言ったのだ。


「いや? それだけじゃないさ。ゼクセン殿の話だと、“輝石(クリュス)”が絡んでいるんだろう?」


 ローズさんはカルデラさんに、目を向けた。


「クリュスは破滅の秘宝。同時に力の象徴だ。今までイレーネ国に従ってきた国も、クリュスを恐れなくてすむ。更に……“王女の王妃殺害”。直ぐにでも、王女の首を世界に掲げ……秘宝奪還。」


 ローズさん声は広い部屋に、澄み渡る。


「あ。そうか。だから……私達……」


 私は飛翠を見つめた。


「だとしても。秘宝とやらが手元にねーのは、バレるんじゃねーの?」


 と、飛翠はそう言ったのだ。


 すると扇子をひらひらとさせた大公妃が、口を開いた。


 えっと。“アドリア大公妃”。だった。


「フレア王妃殺害。本当はーー、イレーネ国王。その説もある。お前達を殺されれば、さすがのティア王女も観念するであろう。」


 え??


「ちょっと待って! どうゆうこと!?」


 私がそう言うと


「“クリュスの力”と……“闇魔石”」


 ネフェルさんはそう言った。


 私は振り返った。


「闇魔石!? 何それ。」


 ネフェルさんは、相変わらずの綺麗な顔で私達を、見つめた。


「この世界には……貴女たちの使う魔石の他に、光と闇。その魔石が存在します。ただそれは……“個を喪失する強大な力”」


 ネフェルさんはそう強く言ったのだ。


「な……なんなんですか? それ。個を喪失? どうゆうこと?」


 私が聞くと、答えたのはアドリア大公妃だった。


「言葉の通りだ。光の魔石は光の者となる。闇の魔石は闇の者となる。イレーネ国王は……“闇の魔石”。それを手に入れている。」


 ちょっと……待って。


 どーゆうこと!? なに? お国騒動! 父娘問題じゃなかったの!?


 なにその世界を巻き込みます! みたいなお話わっ!! 聞いてない!


「落ちつけ」

「られますかっ!!」


 私が悶絶の如くうなされていると、飛翠はそう言った。


 落ちつけるか!! あーもう!! 帰りたい! 今すぐ!!


 あ!!


 私はとてつもなく重大な事を思い出した。


「ファイアードラゴン……。クリュスを取り戻せ。そう約束した。あー! しちゃった!!」


 私は飛翠の腕をつかんだ。


「帰れない!!」

「はぁ? 落ちつけ。蒼華。帰り方知らねーだろ。」


 とてつもなく涼しい顔で、そう言われたのだ。


 あーー!! 知らない!!


 私は頭を抱えしゃがみこんだ。


「知らない! なんなの! どうゆうこと!?」


 私は叫んでいた。


 ふわっ。と、頭の上になにか……乗っかった。


 あったかい。そのぬくもり。


 私は顔をあげた。


 飛翠だった。しゃがみこみ、パニック状態の私の事を見ていた。


 優しい眼だった。頭の上に手が乗っかっていた。


「蒼華。一人にしねーから。大丈夫だ。」


 私はーー、この言葉を前にも聞いた。お父さんが亡くなった時だ。こうして、飛翠が同じ様にそう言ったのだ。


 あのときもこんな優しい眼をしていた。


「……帰れるよね?」

「終われば帰れるだろ。」


 飛翠の声は優しかった。


 落ち着いた。


 少しだけど。


「蒼華。敵は直ぐに来る。それは変わらない。」


 私はローズさんの声に、顔を向けた。


 ローズさんはとても悲しそうな顔をしていた。


「戦争になる。」


 そう言ったのだった。


 戦争……。少しだけどローズさんから、戦争の話を、パウザーで聞いた。


 そうだ。大変だ。そんな事になったら……。


 この国に攻めてくるんだよね? 私達の事を狙って。


「戦争………」


 私は飛翠の腕をつかんだ。飛翠は私を真っ直ぐと、見ていた。とても強い眼で。


「蒼華。決めたのはお前だ。俺は傍にいてやるし、守ってやる。決めた事はやり通せ」


 私はーー、その言葉を聞いて立ち上がっていた。


 そうだ。決めたんだ。


 私はーー、皆を助けたい。


「ローズさん。どうしたらいいんですか?」


 逃げる訳にはいかない。もう。私達は、足を踏み入れている。敵がどんなでも、どんな事情になってても、私達は、変わらない。


 やるべき事は一つ。


 お尋ね者扱いをチャラにすること。更に自由になること。そして……戦うこと。


 その後ーー、作戦は練られたのだ。


 私達はイレーネ王国。ヤヌスを迎え撃つことになったのだ。

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