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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第2話 アトモス公国を目指して

 ーーローズさんの家で、暫く待つと彼女は大きな荷物を肩に担いでいた。


 それは黒っぽい革製のカバンみたいなものだった。でも紐が取っ手。


 更にそれをハウザーさんに渡した。


 ハウザーさんは何も言わず……受け取った!?


 あらら……完全な荷物持ち。しかも文句ひとつも言わない。表情すら変わらない。


 なんなの?? この関係。


「ローズさん。僕も行きます。」

「アンタは留守番。フェニックスの面倒を、誰が見るんだ? 」


 カイルさんは後ろで心配そうな顔をしている。へー、お供なのかな?


「ですが……僕がいないと“酒を飲みすぎ”ますよね? 迷惑かけますよね?」


 は……??


 私達……、ミリアと飛翠たちは、目を丸くしていたであろう。


 迷惑?? と言うよりも心配なのは、そっちかい!!


「大丈夫ですよ。カイルくん。ハウザーがいます。付き合いますから。」


 さらっと言ったのはネフェルさんだ。


「へ? 勘弁してくれよー。あ! ライア! お前なら酒飲めるだろ?」


 無茶振りしだした!! くるっと振り返ると、飛翠の脇にいるライアさんに、そう言ったのだ。


「ん? あームリムリ。オレ飲めねぇもん。飛翠は?」

「飲まねーよ。」


 ライアさん……彼は、未成年です。それにケンカはするけど、酒とタバコには手を出さない荒くれ者なんです。


 その分……女の娘は手当り次第だけど。


「強そうだけどな。」

「よく言われる」


 まじまじとライアさんは、飛翠を見ていた。


 ライアさんの方が、とってもお酒強そうだけど。飲まないんだー。と、私は思っていたのだ。


「酒の相手ぐらい幾らでもいるだろ。ねー? ネフェル。」


 ローズさんはにやっと笑いながら、ネフェルさんを見たのだ。


「嫌です。癖強いんで。」


 はっきりと拒否した! ネフェルさんが。あの優しいネフェルさんが!!


 はぁ。ローズさんはため息ついた。


「あっそ。まーいい。さっさとしな。行くよ」


 と、ローズさんは玄関に向って歩きだしたのだ。う〜ん。なんとも強い人みたいだ。でも、引退してからもこうして、元部下に頼られるんだなぁ。それは、凄いかも。



 お家を出ると、金色のフェニックス。二羽が門の所で待っていた。


 なんだかにこにこしている様に……見えるけど?? 鶴の顔が。


 でもローズさんは、二羽の前に立つと


「留守番だ。頼むよ」


 と、そう言った。

 するとどうでしょう!? フェニックス二羽は途端にがっくり。と、項垂れたのだ。


 すごい! 言葉わかるんだ! それにこのリアクションの強さ。もう見てわかる。残念! 無念! なんで置いてくの!! と、言わんばかりだ。


 長い首をもたげてしまった。


「カイル。頼むよ」

「はい。ローズさん。飲みすぎないでください。」


 カイルさんはとっても微笑ましい顔で、念を押したのだった。ローズさんは、ひくひくと顔を引き攣らせていた。




 ▷▷▷


 漁村ーー……恐るべしっ!!


 なんですかっ!? これは!


 そうです! 私達は只今! 海列車に乗っているのだーーーっ!!


 本当は叫びたい! この爽快感っ!! ハンパない!


 海の上を走る列車ですよ! こんなの見たことない! 実際に乗ってみるとそれはもう爽快!


 不思議なのは波が立たないのだ。まるで水面を滑るアイススケート! そんな感じで、海列車は走る!


 赤と青の機体。何で出来てるんだろう? 鉄??


 真四角なボディで4両編成。運転席のある車体。そこにエンピツみたいなカタチの煙突。そこからもわもわっと白い煙を、吐き出して走ってます。


 アレがない。タイヤ。ソリみたいになってるのかな?


「つーか。スゴくね? 沈まねーし波の上を走ってるぞ。」


 はい! きました! 飛翠くんはもうお子様みたいです。目がきらっきら!


「すげーよなぁ。浮かんでるみてぇじゃねーか?」


 ここの世界の人のはず。その隣で賑やかなのは、ライアさんだ。窓から顔まで出してます。


 海の上を走ってるからか、ちゃんと窓がある。ガラスなのかな?


 辺りは閉まってるけど、ここだけは全開! 運転席のすぐ脇。男達。スフィトくんとクライブくんまでもが、四角い窓の傍で大はしゃぎだ。


 修学旅行か!


「困ったものだ。ガキ!」


 ミリアはベンチシートに座っている。


 中もカワイイ! 青い壁に紅いベンチシート。しかもふわっふわっ! 毛じゃないのにふわふわ!


 お尻がとても気持ち良い。


「ここからだと見えませんが、水面は氷になるんです。それが“道”になり、海面を走る事が出来るんですよ。」


 ネフェルさんはそう教えてくれた。


「えっ!? 氷!?」


 私は思わず立ち上がった。


 飛翠の隣で窓から海面を覗く。


「見える?」

「飛沫しか見えねー。あ。でも音は滑ってるみたいな感じか。風の音が凄すぎて良くわかんねーな。」


 波を掻き分けてはいないのだが、飛沫は上がっている。あ。でもこれは氷を削ってるってこと!?


「完全なアイススケートじゃん。」

「白氷石か?」


 私と飛翠は必死で海面を覗くが、氷になってるのは見えない。


 通り過ぎた後を見ても、波が静かに漂ってる。


「ネフェルさん。白氷石の力なのになんで、海は凍らないの?」


 私は顔を戻し、ベンチシートに座るネフェルさんに聞いた。


「このスピードと瞬間的凍結。そう力を制御しているからですよ。海はその為、列車が通り過ぎると水で覆う。薄氷なので溶けます。」


 ネフェルさんはそう教えてくれたのだ。


「……原石は他に何だ? 火じゃねーんだろ?」


 飛翠がそう言うと


「ええ。碧風石。風を使ってます。この列車は風で動き、氷を滑って走る。」


 ネフェルさんはそう言った。


 うひゃ〜〜。すごい。恐るべしっ! 魔石!! しかも自然を大切にしてるのね。


「マジか……」


 飛翠は窓から顔を出していた。風は確かに強い。新幹線とまでは行かないけど、相当速いよね?


 飛翠の黒髪がばっさばっさ揺れてる。


 因みにトープからこの海列車で、アトモス公国まで行けると言うんだから、驚きです。


 ローズさんに会わなかったら、この列車に乗る事は出来なかった。


 あ! そうだ!


 私は足くんで座ってる美しい女性。ローズさんの隣にちょこんと、座った。


「なに? 観光はもういいの?」


 ローズさんはちょっとキツい言い方するけど、別に怒ってる訳じゃないみたいだ。


 さっき。私がこの列車に乗るときに、躓きそうになったら


『前を見ろ! アブないね!』


 と、言いつつも引っ張ってくれたのだ。優しいのだ。きっと。


 飛翠には呆れられたが。


「観光はいいです。あの。フェニックスって魔物なんですか?」


 そうだ。気になっていたのだ。


「ん? ああ。そうだよ。でも魔物だけど、人間よりなんだ。アイツらは夫婦で、戦争の置き土産だ。敵陣の飼い主が死んでね。あたしが預かった。」


 ローズさんは少しだけ悲しそうな顔をしていた。


 魔物にも色々いるんだ。知らなかった。


「“鳳凰山”が巣なのさ。群れで棲んでて、あいつらも返そうかと思ったんだけど。どうにも人間慣れし過ぎててね。野生には帰れない。だから面倒見てるんだ。」


 そうなんだ。巣があるんだ。なんかあんな金ピカなのが、たくさんいるのもあまり……見たくないなー。


「人間に飼われると……そうなりますよね。」


 変わらないんだな。魔物も。


「そうね。ま。色々いるよ。」


 ローズさんは膝の上に肘をつくと、頬杖ついた。


「……あの、カイルさんは家族なんですか?」

「ん? あー。そうね。そんなモンね。アイツも戦争で拾ったんだ。何処にも行く当て無さそうだし、戦士には向かないし。」


 ローズさんはそう言うと、くすっと笑った。思い出したかのように。


「でも生きたそう。そう見えたから拾った。」


 生きたそう??


「……どうゆう事ですか?」


 私は聞いていた。何故か。


「戦争で人の死を見ると、負の感情に持ってかれるんだ。そうは思ってなくても、呑み込まれる。わかりやすく言うと、言葉は悪いけど、流される。だね。」


 ローズさんは手を開いた。


 私はその手がぎゅっ。と、握られたのを見ていた。きっと……この手は、たくさん戦ってきたんだろうな。長い指だけど……。骨はやっぱり太い。


 手も軟弱じゃないし。


 色んな人を見てきたんだろうな。このコスモス色の眼は。


「強い気持ち。それが無いと勝てない。戦争ってのはちょっと特殊だ。魔物と戦うのと訳が違う。カイルはその中でも、呑まれなかった。」


 ローズさんの横顔は、とても凜としていた。キレイだった。


「そうなんですね……」


 強い気持ち……。


 私は言葉で思うだけしか出来なかった。ローズさんは、きっといろんな人を見てきたんだろうな。


 真っ青な海を走る海列車。私はその外を見ながら、戦争になったらどうしよう? と、不安でいっぱいだった。


 何とかならないのかな? 話し合いとか。


 ムリだよね。きっと……。怖いな。

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