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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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第1話 トープの村▷▷今度はフェニックスですかっ!?

 ーー大きな日本家屋。と言うか武家屋敷みたいな家の前。


 門前。


 まるで私達は門破りの悪党みたいだ。その前に立ちはだかるのは、マッキン金。


 あー眩い。


 フェニックスが二羽。孔雀みたいな姿だけど、どうにも!


 デカい……。デカすぎる。


 それに羽根を広げると後光が射す! 金ピカすぎて、もう私には何がなにやら。


 極楽浄土にでも案内してくれるんですかね?


 と言うか! つがい?? 夫婦?? 片方はトサカないんだよね。それだけじゃオスかメスかわからん!


 でも二羽! 仲良く二羽!


 なので勝手にそう思った。


 う〜ん。ハリネズミみたいなトサカ。


 あ。そこだけちょっと碧だ。へー。フェニックスってなんか、炎ってイメージあったけど。


「蒼華! いい? フェニックスは“風属性”なの。“氷”よ!」


 初対面のフェニックス観察。それをしている私に、声を張り上げたのはミリアだった。


 見れば、メタリックピンクのロッドを、握っていた。


 完全に戦闘モードですね。


「氷……」


 私はそう呟き……あ!! と、思いたってしまった。


「ごめん。ミリア。私……“魔石”しか使えない。」


 そうなのだ。氷の支配者には会ってない。なので、初歩的で誰でも使えます。お試し魔法。


 “白氷石の魔法”しか使えないのだ。


「ええっ!? ウソでしょっ!? 水流の魔法を継承しに来てたから、てっきり“三大魔法”は受けてるのかと思った。」


 ミリアは……とても目を丸くした。


「え? 三大魔法?? なにそれ?」


 私がそう聞くと、はぁぁ。と、大きなため息をついたのだ。


 ミリアは項垂れた。長いアッシュピンクの髪が、垂れ下がった。


 黒髪じゃないからオバケみたいに見えないのが、うらやましい。


 とか、思ってるとつかつかと、ミリアは向かってきたのだ。


 え?? なに? すっごいキレてない!?


 わかりやすい! 見てわかる。歩き方! そして膨れた顔。


 あらまー。カワイイ顔が台無しですよ。姉さん。


「お前な! 三大魔法も知らねぇで、魔導士めざしてんのっ!? なめてんのかっ!?」


 ひえぇっ!! 


 私は思わず……身を引いた。


 おっかない! マリーゴールド色の眼が、キラッとしてるから余計におっかない!


 口調が変わった……。いえ。この口調は前にも聞きました。蜘蛛の巣で怒鳴った時に、こんなでした。


 まじか……。コワすぎっ!! ガン飛ばされてるし!!


「えっと……なんでしたっけ?」


 私はとりあえず聞いた。


 くわっとミリアの美しいお華の様な顔は、鬼オンナみたいになった。


 まじ……どっかのヤンキーみたいな顔つきになってしまった。


 髪の色も鮮やかなので、ちょいパンク??


「火! 氷! 雷!!」


 わっ!! 怒鳴られたのだ。思いっきり。それも顔が近い!!


「わかる?? これ基本だから! 始めはここから使い始めるでしょう?? 魔石で!」


 ミリアはちょっと落ち着いたのか、口調が戻った。


 あ!! 黒崎……ゼクセンさんが、そんな事言ってた! 基本的な初歩的な魔法だとかなんとか。


「あー! わかった! うん。貰った!」


 うんうん。 と、私は頷いたのだ。


 はぁぁ。ミリアはため息ついておでこ、抑えた。



「ちょっとヤバめ? な娘とは思ってたけど……ここまでとは。」


 ミリアは目の前で大きくため息ついたのだ。


 ん?? ヤバめ?? 何が?


 すると……


「ソイツは“バカ女”なんだ。しかも超ド級のな。まじで手かかるぞ。つき合うなら。」


 飛翠の声だった。


「ちょっと!!」


 私は振り返った。


 だが、


「あ〜。やっぱり?? アブないとは思ってたのよね〜。まぁ。だから放っておけなかったんだけど。まーいいわ。面倒みますよ。ちゃんと。」


 ミリアからの呆れた様な声に、私は振り返る。すると、ミリアはとてもあったかい目をしていた。


 あれ?? この表情……この目……。


 私はその時……“カルデラさん”を思い出していた。あのあったかいオレンジ色の眼と、優しげな笑み。ヒゲの生えたおじさんで、ちょっとコワモテなのに……お父さんみたいな……優しい表情をする人。


「蒼華? 聞いてるの?」


 ハッとした。ミリアが私を覗きこんでいたからだ。


「え? うん。ごめん。」

「聞いてないよね?」


 ぎろりと睨まれた。


「ごめん。」


 はぁ。と、深いため息ついたミリアは、


「いい? あたしがサポートするから……」


 と、そう言ったのだが


「大丈夫だ。嬢ちゃんには必殺技があるからな。」


 遮ったのはハウザーさんだった。見れば肩に大剣担いで笑っていた。


 バカにしてる顔だ。あれは。にやついてる。


「必殺技?」


 ミリアがきょとんとしていた。


「「「ブッ倒れるまでぶっ放せ。」」」


 飛翠、ネフェルさん、ハウザーさんが、ハモったのだった。


「え? なにそれ。」


 ミリアはやっぱりきょとんとしている。


 はぁぁ。だから必殺技じゃないんだってば!!


 と、ひと騒動あったが、とうとうフェニックスとの戦いだ。


 フェニックスは本当に金色。


 光を放っていた。大きな身体に美しい翼。孔雀によく似た姿だ。でも、顔はどちらかと言うと鶴。


 首も長い。それにあの尾。キラキラした一文銭みたいな尾だ。


 時代劇だと小判だけど、教育番組系の歴史特集だと、ちゃんと一文銭に四文銭も出てくるんだよね。


 好きだから見ちゃうんだけど。


 両翼広げたフェニックスは、二羽揃い私達の前で鳴いた。大きな吠える様なその鳴き声。


 威嚇されてるのがわかる。さー来い! どーだ!? このデカい身体が目に入らぬかっ!? と、言わんばかりだ。


 トサカを持たないフェニックスは、その紅い眼を私達に向けて、金色の翼をバサッバサッと、仰ぐ様に動かした。


 これはまさしくーー、風が来る!


 コカトリスでわかっているのだ。風属性の鳥は、翼動かし攻撃してくるのだ。


 これまたあの突風系ですかね??


 私はいちお経験からそう考えていたが、想像はかる〜く超えられてしまった。


 ゴォォォ!!


 舞ったのは炎。それも真紅の熱風が渦を巻いて向かってきたのだ。


「えぇっ!? 炎なのっ!?」


 私は咄嗟だった。


 炎には風魔法だ。


風の切り裂き(ウィンドカッター)!!」


 蒼いロッド。円形の環。その根元についている、碧風石。それが煌めく。


 何度もお世話になってる碧風の魔法だ。


聖なる壁(ホーリー)!」


 ネフェルさんだった。


 風の手裏剣を放った私の後に、金色の光だった。私達全員をまるで津波の様に、その光が壁となって下から湧き出たのだ。


 え!? なにこれ。スゴいんですけど。


 シャットダウン! フェニックスの炎の渦を、津波の様な金色の壁が、遮ったのだ。


 シャッター!? 放火シャッターですか!?


 そんなシンプルなものじゃないんだけど、それに似ていた。


(つがい)で、炎と風を使います。因みに炎は奥さん。」


 パラパラと神導書が、手元で捲られている。ネフェルさんは、相変わらずの涼しい顔でそう言ったのだ。


「鬼嫁か。」


 は?? 


 私は隣の飛翠の余りにも、素っ頓狂な反応に驚いてしまった。


 なんなんだ? このクール対応合戦は!


「それ。知らなかった。風属性かと思ってたわ。」


 ミリアは炎を防いだ壁が、消えるとそう言った。


「普段は奥さんは、出てきませんからね。」


 ネフェルさんはさらっとそう言ったのだ。


 えっ? ちょっと待って。フェニックスって魔物なの??


 出て来ないってどーゆうこと??


 私の風の切り裂きは相変わらず……、たいして役に立たなかったらしい。


 ただ、“旦那様の怒り”を買ってしまった。


 嫁さんをちょっとでも傷つけられた事で、碧のトサカを突き立てた旦那フェニックス。


 彼は怒りを向けた。


 グェェ!!!


 それはもう物凄い雄叫びだった。大きな翼を広げ、輪の金色の光。


 彼の身体の前にそれは煌めいた。


 まるで曼荼羅(まんだら)だ。


 ブワッ!!


 と、私達は全員、金色の風に包まれ浮いたのだ。


 宙高く。


 そこから一気に叩き落された。


「きゃーっ!!」


 それだけではなかった。


 風の切り裂き。それが全身を切りつけてきた。


「“浮遊する心(グラシオス)”!!」


 私達はネフェルさんの、空中遊泳とやらの術で、地面に叩きつけられるのだけは、回避できたのだ。


 全員を金色の円盤みたいな光が、クッションになったのだ。


「凄いな。」


 はぁ。と、浮きながら息を吐いたのはクライブくんだ。


 同じ歳なので、さんではなく“くん”にした。


 手には剣。ミリアさんの隣でクッションに乗っかりながら、そう言ったのだ。


 ターコイズの色をした瞳が、とても印象的な優しそうなイケメン。クラスにいるよね。こーゆうタイプ。


 頭良くて、優しくてそんでもって、イケメン! しかもさらっさらのブロンドの髪。


 モデルっぽい。ハーフタレントにいそうな顔!


 ちょっと前なら“王子様”扱いだよね。飛翠とは真逆。絶対、優しい。うん。この人は優しい。


「スフィト。大丈夫?」


 ミリアはクライブくんの隣にいる、スフィトくんに、そう言った。


 紅い髪……。染めた感じじゃない綺麗な色。それにミリアと同じ眼の色。


 マリーゴールドのバンダナ巻いたやんちゃっぽい人。


 クッションの上で、アグラかいてる。ヨユーですね。


「大丈夫っすよ! 姉さん! ケガしてねーっすか?」


 すっごい愛嬌ある顔で笑うんだよね。なんか……弟みたい。ミリアもそう思ってるのかな?


 すごくホッとしていた。


「良かった。」


 お姉ちゃんの顔だ。なんか。


 んー。だけれども! クライブくんの顔が怖い。意外と……嫉妬深いんだな。


 爽やかなイケメンっぽいのに。


 私達は、フェニックスの前に降り立つ。


 クェェ!!

 キェェ!!


 フェニックス達は、顔を見合わせて鳴いた。


 なんか話してるのかな? わからない。鳥語はさすがに、ゼクセンさんの腕輪してても聞こえない。


 と、そんな時だった。


 ピシッ!!


 と、地面を叩く何やらとてつもなく痛そうな音がした。


 あーこれは……“鞭”の音だ。


「うるさいね! 敵わないならとっとと諦めな! 酒がマズくなるよ!」


 ハスキーな声。更にピシッ!! と、地面を叩く鞭の音が響く。


 勇ましいフェニックス達は、頭を下げてしゅん。としてしまった。


 そう。


 いつの間にやら門前にいたのは、水色強めのアースブルーのゆるっとした髪をした、……ちょっと待って。


 グラマラスバディ!!


 ヤバい。これは同じ女として負けました! ええっ!?


 なんであんなにおっきいの!?


 なに食べてるの!? しかも! キュッとしてるんだけど! 腰!!


 うそぉ!! 脚ながっ!!


 服装はチャイナドレス!? それに近いんだけど、スリットから除くその脚!!


 細くて長い!!


 鮮やかな翠と金色のチャイナ風ドレスが、これまた大人の魅力満載!!


 ヤバい。これは……


 私は飛翠を見た。


「やべーな。」


 案の定!! このドSな女王様みたいなグラマラスな人に釘付け!!


 しかもはち切れんばかりのあの胸元に!!


 あー……目がいってしまっている。


 これは……何も言えない。


「“ローズ”。」


 そう言ったのはハウザーさんだ。


 えっ!? 薔薇(ローズ)!? なんですって!? 似合いすぎでしょう!?


 この鞭とナイスなバディ! 女王様!! 毒々しい真っ赤な薔薇が、目に浮かびますよ!


 正に夜の女王様!!


 はぁ。


 ため息つきつつギロッと睨む眼は、コスモスでとても綺麗なんだけど……。


 て言うか、美しすぎでしょ!


 この人。マンガ!?


 そう。八頭身さながらで、小顔。しかも美人。


 それにチャイナ風ドレスにナイスなバディ!


 こんな人芸能人しか、知らない。


「なんなの? 揃いもそろって。どうでもいいけど、酒は?」


 酒ーー、ああ。酒やけなのね。そのハスキーな声。


 カラオケ行ったら高音でなそう。


 失礼だけど。


「頼みたい事があるんですよ。ローズ。」


 ネフェルさんの神導書はいつの間にか、消えていた。




 ▷▷▷


 私達は、ローズさんの部屋とやらに案内された。


 とても広い部屋だ。


 外は武家屋敷だったのに、中華風な室内だった。


 ただ、円卓。そこには瓶が転がっている。


 その脇にある椅子に腰かけると、美しい酔っぱらいは、長い脚を組んだ。


 その脇でとぽとぽと、細長いグラスにポットの様なもので水を注ぐ人。


 ヤバい。凄い綺麗な人。


 と言うか、なにこのイケメン比率! イシュタリアってイケメンしかいないの!?


 どちらかと言えば、執事。そんな雰囲気だす人だけど……ローズさんよりは年下。っぽい。


 ジャ○○ズ系の、イケメンだ。それに……ブラウンの髪だから、とっても親近感わく!


 チャイナ系の衣装だけど。


「ローズさん。飲みすぎです」

「うるいよ。“カイル"」


 そうは言いつつも、カイルさんの淹れた水を飲むローズさん。


 不思議な雰囲気が漂う。


 なんだろう? 恋人未満??


「ローズ。頼む。手を貸してくれ」


 ふと、そう言ったのはハウザーさんだった。


「わかってるよ。ここに来た。ってことは、そうゆう事なんだろう?」


 美しく煌めくヴァイオレットのクリスタルのグラス。


 それを円卓に置くとそう言ったのだ。


「あの……」


 私はコスモスの眼をしたローズさんを、見つめた。


「なに?」


 ローズさんは視線だけ向けた。


「巻き込んでしまう事になるんです。私……ずっと、この世界に来て、巻き込まれた悲劇のヒロインみたいな気持ちでした。」


 知らない人ーー、その人を巻き込む。私にしてみたら、ちょっと考えられない。


 だって、ネフェルさんも巡礼の旅あるのに、私達に付き合ってくれてる。


 それはとても気を遣ってくれてるんだろうし、ミリアだって。


 私に話を聞いてしまったから、きっと、今更いや。とは言えない。


 カルデラさんだって、ラウルさんだって。


 ハウザーさんだって。私……。


 いつもそうだ。何かを人に頼んだり、投げかけたり提案したり……。


 わからなかった私の代わりに、この世界の人達が頭を下げてる。


 でも、それは全部。私達のこと。


 たしかに、ゼクセンさんの事もあるし、皆頼まれていたのかもしれない。


 カルデラさんやラウルさんは、そうだった。


 でも! ネフェルさんもハウザーさんも、ミリアも、シロくんもグリードさんも。


 そして、ここにいる人達は……違う。


 私達に出会い……少なからず手を貸してくれようとしてくれている。


 だから! ここは私が言わなくちゃ!


 巻き込むのほ私なんだから! 


 あ。ついでに飛翠。


 飛翠も巻き込まれたみたいなものだ。私に。


「ローズさん! 貴女がどんな人なのか存じません! 鞭持ってる調教師?? かも? だけど! 力を貸してください!」


 私はそう叫んでいた。


 すると、あっはっーはっ!!


 高らかな笑い声が聞こえた。


 はい。ローズさんです。


「調教師はよかったね。違うよ。あたしはコイツらの元“上官"。困るとこうやって泣きついてくるんだよ。」


 は??


 私は頭をあげた。


 上官?? 上司っ!? 正に!! ムチ持ったドSな女王様上司!?


 ウソでしょっ!? 完全なマンガの世界じゃん!!


 私の妄想に火がつかない訳がない。こうしている間にも、変態的な能力。妄想癖は、働くのだ。勝手に。


「蒼華ちゃん。気にしなくていいですよ。この人は、元軍官ですが、今は……“情報屋"ですから。」


 と、ネフェルさんはそう言ったのだ。


 え?? 軍官!? それって凄いんじゃないの!?


「ただの酔っぱらいじゃねーんだな。」


 そう言ったのは飛翠だった。


 あーっはっは!


 大声あげて笑うローズさん。


「そ。これでもね。昔は何千って言う軍隊率いてたんだよ。今は隠居して、情報屋。」


 がたっ。


 ローズさんは立ち上がった。


 椅子の背もたれに手を乗せて、私と飛翠を見たのだ。


「宜しく。お尋ね者さん。」


 そう笑ったのだ。


 こうして、アトモス公国に行く前に、私達は新たな仲間に、出逢えたのだった。

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