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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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序章 トープの村▷▷ネフェルさんの知り合いですか!?

 ーーフィランデル王国から船でぶらぶらと。


 やって来たのは小さな漁村だった。海が本当に近い。私が想像していた漁村とは、ちょっと違う。


 海の近くの村って、少しこう……防波堤とかあって、高台になっててちょっと海から離れた所に、ぽつんとある。


 みたいなのを想像していたんだけど。


 ここは直ぐ砂浜。浜辺。そして雄大なエメラルドグリーン!! ではなく、青と紺が混じった綺麗な海だった。


 真っ青! 遠い所は紺。砂浜は白と灰色の砂が混じってる。


 浜辺に打ち付ける波ですら、蒼い。それに凄く澄んでいて、きらきらしてる。


 なんて綺麗な蒼! そしてなんて綺麗なんでしょう!? 透明感ある波しか見たことない。


 やっぱり違うんだね。


「こんなブルーの海。観たことあるか?」

「ない。私……蒼好きだから、ちょっと嬉しい。」


 隣で飛翠は伸びとかしてる。何気にこの人。自然とか好きなんだよね。こんなだけど。


「名前にも入ってるしな。お前……ライアみたいに、肌も蒼く焼けよ。」


 飛翠は気分がいいのか、スゴい笑ってる。


「あのね。人をどうしたいんですか?」


 機嫌がいいならもっとこー、良い感じの言葉を言ってみろ! 全く! 


「蒼華〜。飛翠〜。行くって!」


 砂浜の向こうから、ミリアさんが呼んでいた。あ。ミリアって呼んで。って言われたんだっけ?


 聞いたら同い年だった。! 17! とても見えない。大人っぽい。


 私はまだ16なんですけどね。数えで17なんです!

 そうなんです! 花の17! って昔は言われてたらしいですね。


 スフィトさんも、クライブさんも同い年。私達にしたら、初めてだ。みんな年上だったから。


 シロくんはわからないけど、コボルトだから、やっぱり……歳上なんだろうな。


 あんなにかわいいわんこなのに。


 トープの村は石の家だ。白い壁の石。箱型って言うのかな? なんか……コンビニのカタチに似てる。


「お待たせしました。」


 砂浜から村の中に入ると、ネフェルさんがそう言った。ここに来るなり、ハウザーさんとどっか行っちゃったんだよね。


 それで……私と飛翠は、海を見てたんだけど。ミリア達は、町中うろつく〜とか言って、ぶらぶらしてたらしい。


 そこにちゃんとお供みたいに、くっついて行くクライブさんと、スフィトさんがなんとも可愛らしい。仲いいのが良くわかる。


「何処に行くんですか?」


 私がそう聞くと


「あの丘です。そこにいるらしいので。」


 ネフェルさんは村の裏。ちょっと高台になってるところを指した。


 茶色の家がある。 あれ? 木造っぽいけど。木の家だ。それも……なんか日本の昔話に出てきそうな家。さすがに藁葺き屋根じゃないけど。


 丸太だね。あれは。


 その家の周りには木がたくさん。裏側は森みたいに、なってるのかな?


 丘とは言え、ここは海のそば。周囲に高い建物ないし、視界はばっちり。だからとても良く見える。それに高いから目立つ。


「十年ぶりか?」

「そうですね。ハウザーもまだ、勢いだけ。の頃です。」


 私達の前で、ハウザーさんとネフェルさんは歩きながら、話をしている。


 こうして見てるとハウザーさんの、ガタイの良さが丸わかり。


 背も高い。対称的なんだよね。この二人。ネフェルさんは、さらっとした碧の長い髪だし、ハウザーさんは赤茶混じりのぼさっとした髪。それを纏めてるんだけど……どうにもワイルド。


 生徒会長とやんちゃ坊主みたい。


「ネフェルさんとハウザーさんって、知りあいなんですか?」


 ここらで聞いておこう。


「あ? 言ってなかったか?」


 ハウザーさんは振り向いた。サイドに垂らした髪が、揺れる。


「聞いてなかった。」


 私は首を振った。


「俺とネフェルは、“ノクトワール戦争”で同じ軍にいたんだ。その時からの付き合いだな。」


 ハウザーさんは大剣“ハルシオン”を、肩に担ぎながら坂を登る。


 ノクトワール?? あらまた、新しい名前が。


「結構……大きな戦争でしてね。最後の戦いは、一年を費やしました。色々と合わせると……三年は、掛かりましたね。」


 え? ウソ? 三年も戦争??


「七聖戦争が余りにもデカく……有名だからな。どうしても……皆そっちに目を向けるが、“ノクトワール戦争”も、それなりにこの世界では有名なんだぞ。」


 ハウザーさんはちょっと得意気に、見えた。でも、直ぐにネフェルさんからお叱りを、受けたのだ。


「自慢する話ではない。多くの犠牲がその下にはあったんですよ。」

「わかってますよ。はいはい。」


 ハウザーさんは……叱られた生徒みたいだ。

 しゅん。としてしまった。


「そんなデケー戦争やってんのか? あんたら。」


 飛翠がネフェルさんの後ろから、そう言ったのだ。


「これでも少しは長く生きてますからね。」


 ネフェルさんは振り返りはしないが、きっと微笑んでるでしょう。


 いつもの優しい感じで。


「戦争なんて語られないだけで、幾らでもあった。オレ達、竜族と人間。それに人間と異種族。この世界は、たくさん血を流してきた。」


 飛翠の隣にいるのは、ライアさんだ。


 彼は背中に海竜刀を背負っている。


 ん? いつの間に?? 手で持ってなかった??


「あたし達は、話しか聞いたことない世代だけど、昔は多かった。って言うのは聞いてるわ。でも、余りにも長く続く戦争は……大魔導士ゼクセンが、終わらせる。って聞いたけど。」


 え?? ゼクセンさん。改め黒崎さん??


 な……なんなのあの人は。


 ミリアの言葉に私はびっくりだ。思わず


「そうなの??」


 と、聞いていた。


「ゼクセン殿は……凄いんだ。“秩序の大魔導士”と呼ばれているのは、そこだ。」


 そう言ったのはハウザーさんだった。


「俺達の戦争の時も、終わらせたのはゼクセン殿だ。魔導士達と“神獣”引き連れて何処からともなくやって来てな。“両軍に怒りの魔法攻撃”だ。それも、神獣も暴れ放題。」


 うわ。それはちょっとスゴそうだ。ハウザーさんの顔見ればわかる。


 思い出したくなさそうだ。


「アレは参りましたね。恐れ入ったと言うか……。滅茶苦茶でしたね。」


 ネフェルさんも黒歴史。とでも言わんばかりの顔をしていた。


「ま。お陰で戦争は終わったがな。それはもう疾風の如く。」


 ハウザーさんは思い返してるのかな? なんだかとってもにが〜い顔になってしまった。


「あのジジィ。ただの老いぼれじゃねーな。」

「とてもじゃないけど……あの古くさ〜いお店の人とは、思えないよね。」


 飛翠の声に私も頷いた。


 ホント。潰れないのが不思議な店だった。お客もいっつもいないし。


「でも……いつも止めに来る訳じゃねぇんだよな? その線引きはなんなんだ?」


 ライアさんはふとそう言ったのだ。


「余りにも“私情”が絡むと出てくるみたいですよ。」


 ネフェルさんはそう言った。


 なんだかなー。なんか法律家みたいだな。その立ち位置。中立!


「秩序の大魔導士……会ってみたいなー。あたしは、まだ会ったことないんだよね。」


 ミリアだ。そう言ったのは。


 会ってみたい?? 黒崎さんに?? 私からしたらただのおっさんですよ。はい。古臭い書店のおっさん。


 言えないけど。こっちではどうにも偉大な人らしいので。


 あ。でもシロくんも憧れみたいな顔してたなー。今のミリアみたいに。


「あ。見えて来ましたね」


 ようやく。目的地が近づいた様だ。

 丘の上にある木造の家だ。と言うか……屋敷??


 デカくない?? 本当に武家屋敷とかみたいなんだけど。


「でけーな。」


 飛翠は門の前にいるその“大きな金色の鳥”を見ると、そう言った。


「門番?」


 としか、見えなかった。金色の神々しい像が二つ。玄関脇に建っていたのだ。


 どちらも翼を折り畳み、まるでこの家を守るみたいに、建っている。


 なんか孔雀みたい。あのコカトリスとは違う。尾が長い! なに? なんか昔のお金みたいなくるくるっと丸いカタチで、繋がった尾だ。


「“金色の鳳凰(フェニックス)”。」


 そう言ったのはネフェルさんだった。


「え?? フェニックス?? あの伝説の不死鳥??」


 私は思わずそう言っていた。名前ぐらいは知ってる。聞いたことある。伝説上の生物だけど。


 私達が家に近づくと、二体の鳥の像の眼がギロリ。と、動いた。


 それも紅い眼だ。ルビーみたいな眼なのに、めちゃくちゃぎろっと睨んできた。


「動いた??」

「像じゃねーのか?」


 私と飛翠がそう言った時だ。


 鳥ーーは、光った。ええ。もうそれはそれは、マッキン金な光を出したのだ。


「な……なに??」


 余りの光の強さに目を瞑ってしまった。


 もー眩しい!! なんなの!? この強力フラッシュライトみたいなのは!


 キェェェェッ!!


 とても嫌な予感がしたので、目を開けた。


 わっ!! 広げてる! 翼全開! しかも二羽になった! 像じゃなくなった!


 そうなのだ。金色の大きな鳥は、私達の前で像ではなく生き物になった。


 それも両翼広げ鳴いたのだ。


「マジか……」

「ねぇ? どーゆうこと?? なんで像が生きてるのよ!」

「俺に聞くな」


 呆れる飛翠の声にも負けず……私は


「ネフェルさん! どーゆうこと!? まさか! 知り合いですかっ!?」


 と、ネフェルさんに聞いてみた。飛翠に聞いてもわからないからね。


「この家の守り神。みたいなものですかね。」


 ええっ!? なに?? そのさらっと流した感じ! 爽やかスマイルもいい加減にして!


 ネフェルさんは手を広げて涼しい顔で、そう返してきたのだった。


 そしてまた、私はとても嫌な予感がしたので、聞いてみた。


「まさかと思うけど……戦います??」

「そうですね。そうなりますね。必然的に。」


 と、言うネフェルさんの手には既に……“神導書”が開かれていたのだ。


 その隣にいるハウザーさんも、ハルシオンを握っていた。


「歓迎されてねぇな。こりゃ。」


 と、そう言った顔はなんだかとっても苦い。


 なんなの?? こんな所で伝説上のフェニックスとやらと、なんで戦うの!?


 どーなってるのよ! この世界わっ!!


 そしてなんでこんなのしか出てこないのだ!! もっとカワイイ弱そうな魔物とかで、いいんですけど!? 私は。見習いなので!


 そして……私達はフェニックスの洗礼を、浴びる事になったのだ。

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