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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第4章 動き出すとき
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章の終わり 次はどちらへ?▷▷魔法??それとも??

 ーー遺跡は、長く深い通路を通る。


 通路は相変わらず明るく照らされていて、とても歩きやすい。


 ん? この通路は壁画がスゴい。これ全部……壁画だ。それもなんか……歴史??


 魚の頭をした魚人みたいな人達が、何やら物を掘ったり、叩いたり運んだり。


 作業している姿などが、描かれている。


 尾がちゃんと魚だ。でも足は人間。それに手も。


 壁画だから水かきがあるのかどうかは、わからない。


「あ! 飛翠! シロくん!」


 私はその壁画の中に魚人たちと、作業をする“コボルト族”の姿を、見つけたのだ。


「コボルト? なんでアイツらが?」


 飛翠は建築する壁画を見ながら、そう言った。


「深海族に“建築技術”や“鍛冶”を教えたのは、コボルト族だと言われてんだ。壁画の通りだ。この遺跡……つまり、城を築き上げる時にコボルト族も、手伝ってんだ。」


 そう言ったのは、ライアさんだ。身体が蒼くなければ、とても竜族とは思えない。


 顔は人間そのものだ。それもかなりワイルドでカッコいい。クラスのサッカー部とかにいそうなタイプ。


 だけど、喋ると……残念。


「コボルト族ってそう言えば……鳶職人みたいな格好してたよね? グリードさんも村長さんのこと、親分とか呼んでたし。」


 コボルトの村には若い衆みたいな、男の人たちがいた。村長さんもナガイさんだったし。


 法被にニッカポッカ。そんな格好してたよね。あの人たち。


 グリードさんみたいに戦士っぽい人もいたけど。


「確かにな。武器も造るとか言ってたな。グリードが。」


 飛翠は何だか懐かしそうだ。仲良かったもんね。

 タイプは似てると思うけど……なんで、ライアさんとはうまくいかないんだか。


「何でコボルト族が深海族と繋がってたのかは、わかんねぇけどな。でもそのお陰で深海族は、陸地での生活が出来たそうだ。」


 ライアさんはそう言った。


 私は壁画に描かれる犬族と深海族を見つめた。


 不思議だ。魚と犬。


 ーー壁画の通路を通ると、大広間に出た。


「うわ。なにここ。水しかない。」


 ここが最下層なのかな?


 大広間には流れる滝の様な水。それから大きな泉。それしか無かった。


 でも水はさっきまでの、水色ではない。


 蒼く光る水だ。


「原石か。」


 飛翠は四方囲まれた広間の、目の前に広がる滝と泉を見て、そう言った。


「ここがこの遺跡の動力の源だ。水流の原石。それが、これだ。」


 ライアさんはやはりドヤ顔だ。


 腕組んでそう言った。


「浮上していた時は、動いていたそうですよ。この遺跡は。海の上を。」


 ネフェルさんがそう言った。


「え? そうなの?」


 こんなデカイ船あるの?? スゴいんだけど。


 ちょっと想像つかない。遺跡の外観を知らないってのもあるけど、建物が動く船??


 わからない。


「最下層ってことは……地上にはどうやって出るの?」


 そう言ったのはミリアさんだ。


 ミリアさんの両脇には、まるでお供みたいにスフィトさんと、クライブさんがいる。


 がっちり固めてるあたりが……微笑ましいんだけど。


「ここから出るんですよ。」


 ん?? この声は!!


 泉の前に現れたのは、黒いローブを羽織ったカーミラさんだった。


「あ。“番人“」


 ミリアさんがカーミラさんを見ると、そう言った。


 え? 番人?? それって支配者のことじゃないの? あ。でもミリアさんは、支配者と番人に見守られて結晶に触れる。……って、言ってたっけ。


 私はカーミラさんは、ただのナビゲーターなのかと、思ってた。


「ここから出るってのは……どーゆうことだ?」


 飛翠がそう聞いたのだ。


 カーミラさんは、フードを相変わらず被ったまま、真っ黒なローブ姿。


「言葉の通りです。その前に。一つご報告が。」


 カーミラさんの声が少しだけ強くなった。


「な……何ですか?」


 私がそう聞き返すと、カーミラさんはふぅ。と、息を吐いた。


「伝えるかどうするかは、迷いましたが……、私自身も見てみたい。貴女たちの運命を。」


 え? どーゆうこと?? なんかすっごいイヤな予感しかしないんだけど!?


 聞きたくないな。でも気になるな。


 と、私が思っていると


「何の話だ?」


 飛翠が食いついたのだ。


「“貴女方の仲間”を匿っている“アトモス公国”。どうやら“イレーネ王国”が、攻め入る様ですよ。」


 カーミラさんはそう言った。


 え? 


「それってどーゆうこと!? まさか! カルデラさんたち!? 飛翠! どーしよ!」

「落ち着け。」


 私が飛翠の腕を掴むと、そう言った。


「バレたのか?」

「“内通者”がいた様ですね。」


 飛翠の声にカーミラさんは、そう答えたのだ。


 するとネフェルさんが、


「アトモス公国ですか……。気になりますね。」


 と、そう言った。


「貴族の国だったよな?」

「ああ。内輪揉めしているのは、聞いてる。」


 ライアさんの声に、ハウザーさんがそう言った。


 そうだ。前にそんな話を聞いた。たしか……



『次の君主を狙ってるのは“スレイヤ大公”の弟君だ。表向きは”大公の右腕“みたいだけど、とんでもない。”元老院“を抱き抱えて、スレイヤ大公の失脚を、待ってるからね。』


 って、ラウルさんが言ってたよね。


 てことは……。あんまり仲良くないイレーネ王国に、カルデラさん達がいると、密告したのは、その弟ってこと!?


「飛翠! ヤバいよ! 絶対! 行こうよ!」

「ああ。」


 私と飛翠の声に待った。をかけたのは、ネフェルさんだった。


「蒼華ちゃん。アトモス公国に行くとなると……魔法は、中断する事になりますよ。次にいこうと考えていたのは、“風臥の砦”。“碧風の支配者”がいる地です。」


 そう言ったのだ。


「それって……アトモス公国からは遠いの?」


 場所がわからない。


 ネフェルさんはう〜ん。と、考え込む様に顎に手をあてた。


「遠回りにはなりますね。この大陸から西に行くんですが……。一つ山を越えて別の大陸に行くんですよ。アトモス公国とは反対側です。」


 別の大陸……。山越えってことは……距離あるよね。何度か……山越えたから、わかる。


 ああ。なんて広いんだ! イシュタリア!!


 遺跡だかなんだかは、ごろっと集まっててくれないかな??


「嬢ちゃん。」


 ハウザーさんが、私を呼んだ。

 私はハウザーさんに視線を向けた。左目の金色の眼が、優しい輝きをしていた。


「嬢ちゃんが決めるんだ。俺達はついて行く。この旅は、嬢ちゃんと飛翠の旅だ。ここにいるのは、お前達に付き合うと決めた奴らだ。」


 ハウザーさんはハルシオン。大剣の上に肘を乗せていた。


 でも私を見つめる眼は、とても強い眼差しだ。あったかい。


「俺はなんでもいーぞ。お前らについて行けば、暴れられる気がする。」


 ライアさん……。貴方もソッチですか。


「蒼華。お前が決めろ。」


 え? 飛翠だった。


 私は飛翠を見上げた。


 何だかとっても優しいな。今日の飛翠は。瞳すらも優しく見える。


「……飛翠だって……剣技。」

「あー。それな。」


 飛翠はそう言うと、腕を組んだ。


「遅いか早いか。だけだ。」


 としか……言ってくれなかった。黙ってしまった。何かを考えている……と言うよりも、黙ってしまった。言いたそうだけど……言わない。みたいな。


 何だろう? 何を考えてるのか、わからない。


 前は顔を見ればなんとなくわかったのに。今はわからない。


 カルデラさん。ラウルさん。シロくん。グリードさん。


 私の答えなんて決まってる。


 魔法を使いたいと思ったのは、彼等の役に立ちたいから。助けたいから。


 だから。


「アトモス公国に行く。カルデラさん達を、助けたい。お願いします!」


 私はロッドを握って、頭を下げていた。


 みんなに。


「行こう! 蒼華ちゃん!」


 ぽんっと肩を叩いてくれたのは、ミリアさんだった。私は肩を掴まれて、身体を起こされたのだ。


「ミリアさん……。でも……魔導士……」

「言ったでしょ? 一緒に行く。って。魔導士になるのも一緒よ。だから行こう!」


 ミリアさんはやっぱりもう一度、肩を叩いてくれた。ぽんっと。


「うん。」


 こうして、私達は“アトモス公国”に向かう事にしたのだ。


 カーミラさんの案内で、私達は泉の前に集まる。


 総勢八人……。随分と増えた。不思議だ。最初は、私と飛翠しかいなかったのに。


「では道中お気をつけて」


 スッ……と、ローブから差し出された右手。


 あ。出た! 真っ黒な魔女ネイル!


 何度見ても……おっかない。長い爪が。


 ポウッと、私達の身体を包んだのは、蒼いバルーンだった。でも薄い膜みたい。


 包まれたと思ったら浮いた。


「えっ!? 巨大バルーン!?」


 八人ですよ!? ウソでしょ!? 


 そうなのだ。全員を包みバルーンは浮いた。それも天井。


「ええっ!? 天井!? ぶつかるけど!?」


 私は押し迫ってくる天井を見上げて、飛翠の腕を掴んでいた。


「お前な……。いい加減慣れろ。この世界に。」


 飛翠は深くため息ついた。


「なにがよ!? 慣れるわけないでしょーが!」


 そうこう言ってるうちに、バルーンは天井にぶつかった。


 へ?? ウソ!!


 すり抜けたー!! なっなんなの!? どうなってんの!?


 そうなのだ。まるでエレベーターだ。


 天井すり抜けて上がって行く。しかも徐々にスピードは増した。


「な……なんでこう大型どっきりなのよ!」

「知るか」


 まるで“スカイハイ”だ。


 あ。アトラクションです。テーマパークの。絶叫系マシーンです。


 ミリアさんもキャーキャー言ってる。


 本当に絶叫系なのだ。風は感じないけど、早い!!


 あっという間だった。


 入口についたのだ。そしてーー、これまたお決まり。私達は着いたと同時に放り出された。


「あーもう! 痛い!!」


 お尻を打ちましたよ。またもや。


 バルーン……。どうせならネフェルさんの術みたいに、優しくふわっと降ろしてよね!


 とっとと消えちゃったし。


「入口か。」


 私は飛翠に引っ張られながら、立ち上がる。


 遺跡の入口だ。私がファイァーボールを撃った石版がある。


「ミリアさん達も、ここから落とされたの?」

「ええ。そうよ。リヴァイアサンの試練を受けて、うろうろしてたらあのスパイダーとやらに、捕まったの。」


 遺跡を出ながら、私はミリアさんと話す。


「なんで、来なかったんだ? お前ら。番人に案内されなかったのか?」


 そう聞いたのはライアさんだ。クレイブさんとスフィトさんに、話かけている。


「いや。オレたちは付き添いなんで。」


 そう言ったのはスフィトさんだった。


「まったく。ダメダメなんだから。」


 ミリアさんはふんっと、鼻で笑った。


 あらら。クレイブさんがとっても落ち込んでしまった。


 海底遺跡クランヒル。


 不思議な場所だった。水流石の原石の溜まり場。更に深海族の住んでいた場所。


 いつかーー、会ってみたい。



 ▷▷▷


 フィランデル王国からアトモス公国。


 そこに行ける船に乗る。


 定期便とやらはまだ出ていた。私達はガトーの大河を越える船に乗り込んだ。


 大きな船だ。遊覧船とは全然違う。甲板にはちゃんと、ベンチとかもあって座って行ける。


 それに船室もあるらしい。中には食堂みたいな場所もあった。


 とりあえず私達は、腹ごしらえをする事になったのだ。


 飛翠はそこで地図を広げた。


「ここら辺でちゃんとしとかねーとな。そろそろ訳わかんなくなってきたな。」


 と、丸いテーブルの上で地図を広げた。ネフェルさんから買ったものだ。


「今いるのは、“フィランデル王国”です。これから向かうのは“アトモス公国”。見てわかる通り、大陸の中心にガトーの大河。これが区分けです。」


 私達のいる大陸はとても大きく、“パーシアン大陸”と言うらしい。大陸が別れていないので、国と国の境に国境がある。


 私達のいたイレーネ王国。とこのフィランデル王国は、ガトーの大河で分断されている。


 この世界の国境は、曖昧な所が多いらしく、大きな国と国の間。そこに国境が存在していて、関所があるらしい。


 この大河を越えて、アトモス領に入る所に関所があるそうだ。


 因みに、ネフェルさんの言う“風臥の砦”は、“カンダカン大陸”にあるそうだ。


「ケネトスに入る時に国境が無かったのは、デカい国がねーからか。」


 飛翠はそう言った。


「ケネトスの台地は“自由領土”ですからね。国境は必要ないんですよ。」


 ネフェルさんの話を聞きながら、私は地図を見つめた。


 なんて広いんだ。ガトーの大河。その先に海。


 そこを中心に大陸が両端にある。どうやらこの“パーシアン大陸”が一番大きいみたいだ。


 イレーネ王国、フィランデル王国、アトモス公国。とりあえず知ってる名前の国が、ある大陸だ。


 その次が”ラナティア大陸“。パーシアン大陸の反対側にある大陸だ。魔導館のある場所。ネフェルさんが行こうとしていた“ターナ大聖堂”がある場所だ。


 その他にも小さな大陸や、細かな島国などがある。目を引くのはこの二大陸。


「ネフェルさん。大聖堂はいいんですか?」


 私は気になってしまった。恋人のアイリーンさん。彼女の弔いの為に……巡礼すると言っていたのに。


 だが、ネフェルさんはクリスタルのグラスを手にした。


「これも巡礼です。それに……貴女たちの手助けも、彼女はきっと理解してくれると思いますよ。」


 そう微笑むとグラスを口にしたのだ。


 飛翠は何も言わず地図を片した。


 ちょうど食事が運ばれて来たのだ。


「アトモス公国に行く前に……“トープ”と言う漁村に立ち寄ってもいいですか?」


 ネフェルさんが、食事の最中にそう言った。


「トープ? 何しに行くんだ?」


 聞いたのはハウザーさんだ。


 その手にはクリスタルのジョッキ。どうやらお酒らしい。ついでにライアさんもお酒を、飲んでいる。


「ハウザー。忘れました?」


 ネフェルさんの銀色の眼が、ハウザーさんに向けられる。ちょっと冷たい。


 にしても……この二人。知り合いなのかな? ずっと気になってたんだけど。


「ん? ああ。」


 ハウザーさんはそう言うとジョッキを口につけ、お酒を飲み干した。


「お。これウマいな。」


 飛翠は隣でお肉を満喫中。


 幸せそーな顔してるし。お肉好きだもんね。飛翠。


「スープちょーだい。」

「肉を食え」


 私は飛翠にスープを貰おうとしたが、お肉を口に運ばれた。


 ん〜……これは、美味しい。この世界の肉料理には、少しトラウマがある。だからか、ちょっと毛嫌いしてきてしまった。


「アトモス公国とイレーネ王国が、戦争になると“フィランデル王国”は、どうするんですかね?」


 そう言ったのはクレイブさんだった。


「様子見でしょうね。」


 ネフェルさんが答えた。


「立ち位置的には……“中立”か。フィランデルはイレーネとはいざこざあるが、アトモスとは特に絡みがねぇからな。」


 ハウザーさんは骨付き肉を、齧りついていた。


 そうなんだ。私達ってこの世界のお国事情とか、全く知らないんだよね。そういえば。


 ちらっとしか聞いて来なかったもんな〜。


「何だかややこしくなりそうね。」


 ため息ついたのは、ミリアさんだった。


 そうーー、この時。予想もしてなかった。


 ここから……イシュタリアは混沌の中に、包まれるのだ。


 私も飛翠もそこに巻き込まれようとしていた。

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