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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第3章 仲間を紡ぐ
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第24話 魔導士見習い▷▷ミリア御一行

 ーー「え? ウソ? あのリヴァイアサンと“契約”したってこと?? なんで?」


 蜘蛛の巣を出た私達は、とりあえず出口に向かう事にしたのだ。


 だが、そこで私はここに来た理由について、同じ魔導士見習いのミリアさんと、話をしていた。


 思いっきり私を見るミリアさんの、アッシュピンクの髪は揺れる。更にそのマリーゴールドの眼が、キラキラしてる。


 ん〜……顔は驚いてるけど、これは……私と同じ“匂い”がする。


 そう!! 興味津々! 聞きたい症候群!!

 もしや? 妄想癖おありか??


「召喚士になるのはわかるけど……なんで、“神獣”? “精霊”でしょ?」


 そう言ったのだ。


 しんじゅー?? え? なに?? 私は死ぬつもりはないけど!


 あ。違うよね。種族だよね。


 精霊……。


 私はう〜ん。と、少し思い返した。


 あ。そっか。そうゆうことなんだ。


 イフリートが言ってた。


『支配者を継承するのはティア王女と、私だけ』って。


 そうなんだ。そうゆう事だったんだ。つまり、他の人たちは“精霊”と契約を交わすんだ。


 ん? そもそも精霊ってなに??


「ミリアさん。精霊って何ですか?」

「え? 知らないで魔導士目指してんの? ウソでしょ!?」


 ミリアさんの少し高めの声。

 あらら。思いっきり呆れられてしまった。


 だって! 誰も教えてくれないんだもん!!


 と、言いたいが堪らえよう。ここは。もうこんな事で、キレても仕方ないのだ。


 それよりもやっと魔導士見習いの人に、会えたのだ。出来るだけ話を聴いておこう。


 いつまた、何が起きるかわからないんだから。ここは。


 とにかく大型ドッキリがちょいちょい、仕掛けてあるんだから。この世界は。


 でも……ミリアさんには、違う世界から来た話をした方が良いのかな? 


 でもそうなると……お尋ね者の話もしなきゃならないし。


 巻き込む事になったらイヤだし。



「その……魔導士になる。って決めたのは決めたんですけどね。何もわかってない状態で……」


 と、私が言うと


「あーもう! わかったわ。教えてあげます! あたしが!」


 どんっ! と、ミリアさんは胸を叩いてそう言った。


 なんか……すっごい仲良くなりたい。この人と。なんだろ? なんかフツーにスイーツ食べに行きたい。



「順番に行くわね。魔法を継承する話からするわよ?」


「お願いします。」


 ようやく私は……、ミリアさんに出会った事で、この世界の魔法システムを知ることになったのだ。


 なんと言うことでしょう?? 色んな事が起きていて……、そんな事も知らんと、良く無事に生きて来れたな。ホント。


 皆さんのお陰ですけど。


「“火、水、(もしくは氷)、地、風、雷”この五大魔法をまず“継承”するの。各地の“魔石の結晶”を巡って。そこには“番人と支配者”がいるのは、わかってるわね?」


 ミリアさんは順をおって話をしてくれたのだ。


 私は聞き入った。うんうん。と、頷きながら。


「わかってます。戦いました。」

「これがしんどいのよね。」


 ミリアさんもやっぱり……痛い目に合ったのかな? なんかスゴいイヤそ〜な顔してる。


 しんどいなんてもんじゃないんだけどね。私は。毎回……死にそうになってます。



「支配者の試練を乗り越えて、五大魔法を継承。これは番人と支配者が見守る中で、魔石の結晶に触れる事。これで、継承出来るわ。って……知ってるか。そこは。」


 ミリアさんが私を見るとそう言ったので、とりあえず頷いた。


「はい。わかってます!」


 ここがきっと、皆と違う所なんだろうな。私は。結晶ではなく……支配者で継承をしてるんだよね。



「で、魔導士のいる“月読(つくよみ)の塔”に行くの。」


 ん?? 月読!? またしてもここで! 黒崎さん!?


 何しろ黒崎さんは“月読”と言う、古書店の店主だった。私が立ち読みに通っていた店だ。



「大丈夫? 聞いてる?」

「はい! 聞いてます!」


 やばっ! こわっ! 


 睨まれてしまった。ギロッと。美人が睨むと迫力あるね〜。


「そこで“高等魔法”を教わるんだけど、先に召喚の話をするね?」

「はい」


 なるほど。月読の塔とやらで、高等魔法を教わるのか。


「高等魔法の中に“招霊(コール)”って言う魔法があるの。それが、精霊を呼び寄せる魔法。それを覚えてから精霊の棲む地に行くのよ。」


 ふむふむ。


 私は頷く。


「彼等はコールを使えば、簡単に姿を現してくれる。そこで“召喚の契約”を結ぶの。後は、バトル中に精霊を召喚すればいいだけ。」


 へー。そうなんだ。


 ん? なんかとっても簡単そうだな〜……。


 と、私が思ってるとミリアさんは、ごほん。と……咳払い。


 はいはい。聞いてますから。睨まないで。


 この“気質”似てる。飛翠みたいだ。


「精霊はこの世界に、五大魔法の属性の他に、森、光、闇。といるわ。全てを集めるのもよし。好きな精霊とだけ契約するのも良し。そこは自由なのよ。」


「え? そうなんですか?」


 出た! この変にアバウトなところ! まぁ。これがイシュタリアのいいとこなんだろうけど。私はこれで未だに、嬉しい!! と、思った事はない。


 一度もない。


「召喚の力に頼らなくても、高等魔法で充分だったりするからね。そこは皆、好き勝手よ。」


 ミリアさんはそう言うと、私を見つめた。マリーゴールドの眼は、不思議と強く煌めく。


 金色に見えるから不思議だ。


「で。ここからは、蒼華ちゃんの話ね?」


 ミリアさんはちょっと真剣な顔をした。


 え? なに? 


 人がこうゆう顔をする時は、特にこの世界の人! 何かおっかない事や、とてつもない“意味”があったりする。


 これは学んだ。えぇ。学びました。


 私は変に身構えてしまった。


「顔がおかしい。」


 ぱしっ。と、私は後ろから頭を引っ叩かれた。


「なによ?」

「顔が怖ぇ。つーの。」


 振り返ると飛翠が笑っていた。


 この人は私の頭から顔が見えるのか?? 私は後ろを向いてましたけど??


「話すよ?」

「あ! はい! すみません!!」


 あーもう! なんでこんなトラに挟まれた気持ちになんなきゃならんのだ!!


 その心は?


 どっちも顔が恐い。喰われそう。


 座布団三枚!! 飛んでこないかな??


「蒼華ちゃんは、“神獣”と契約するのよね? そうなると……かなり、“巡る”わよ? 」


 え?? な……なにそれ??


 ミリアさんはとても真剣な顔をしたのだ。


 ちょっと待って。てことは……私は一体……、後どのぐらい神獣とやらと戦うんだろうか?


 え? そもそも神獣ってどんだけいるの!?そこだよね! 問題は!


「アレっすね。大昔の“七聖戦争”みたいっすね。その時……“召喚士”ってのが、神獣を召喚して戦ってたんですよね?」


 そう言ったのは、少し後ろを歩く“スフィト“さんだ。紅い髪にマリーゴールドのバンダナ。この三人の中では、一番幼そうな感じの人。


「そうよ。そこから暫くは神獣を従える召喚士が、主流だったけど……。」


 ミリアさんは後ろを見てそう言った。けれど、直ぐに私の方を向いた。


「“神獣”に遣えていた精霊たち。それから“妖精(エルフ)”たちとの“決別”があって、彼等は各々の存在になった。」


 ん〜……。なんかこの感じの話は、前にカルデラさんからちらっと聞いた様な気がする。


 この世界にも、色々あった。的な。


 詳しくは聞いてないけど。


「その時に召喚士も“神獣と精霊”と、選ぶ様になったの。神獣とは上手くいかない人間もいるからね。」


 ミリアさんの言葉に、私はとても納得した。


 わかる。わかる! あの上から目線のドSな連中と、上手くやれる訳がないっつーの!


 当たり前だ!


「精霊は神獣とは違って……“温厚”だし、人間とは相性がいいのよ。時の流れと共に、神獣はいつしか、身近な存在じゃなくなっていったの。」


 ミリアさんはそう言うと、腕を組む。


「それに精霊は魔法についても協力的で、高等魔法を創りあげたときに、彼等が協力してくれたらしいわ。その甲斐あって魔導士たちと、精霊の関係も築かれていったのよ。魔法。精霊。魔導士。このトライアングルが、出来上がったってわけ。」


 今ならすっごくよくわかる。わかってしまう自分も恐い。


「神獣って……この世界には、必要ないの?」


 私がそう聞くと


「魔石は神獣の力の“零れもの”って、言われてるわ。彼等の力そのものが、魔石の原石となり世界に散らばる。原石の中でもより強く彼等の力を継いだもの。それが魔石になるのよ。」


 ミリアさんはそう言ったのだ。


 あ。そっか。だから原石は……それぞれの姿をしてるんだ。


 私はロッドにつく魔石を見つめた。丸い球体。その中に原石が煌めく。


 紅炎石は、紅い宝玉の中にオレンジと紅。その炎そのものが閉じ込められている。


 光を放ちまるで炎が燃えている。そんなカタチなのだ。


 つまり……イフリートの力。それが強いと“魔石“になる。


 えっと。確か。カルデラさんが言ってたな。




 ーー『魔石とは不思議なものでな。“人の手”は一切加えておらん。天然ものだ。掘り出し外に出した後、勝手に魔石になるのだ。お主たちの持っているものが、“魔力”を秘めた魔石だ。』


『他にもあるのか?』



『宿屋のランプ。あれも“魔石”じゃよ。』


『え? そうなの? あのランプが?』


『そうじゃ。“灯り”をつける為に魔石を使う。魔力を持たない元素の塊を、“原石”と呼ぶ。その原石は、この世界にとって大切な“資源”なのだ。用途は様々。火を起こし、灯りになり動力ともなる。そのうちわかるじゃろ。』


 カルデラさんはあの時……。私達にわかり易く説明する為に、“魔石”と表現した。


 でも今ならわかる。


 動力となるのは……“神獣の力”が世界に散らばったもの。つまり“原石”。


 イフリートの原石は、炎。それは世界に散らばっていて、それらを掘り起こし動力にする。


 その中に“イフリートの力”。つまり、強い魔力を秘めたもの。


 それが“魔石”となり魔法を産み出す。


 だから、“炎の大空洞”みたいな完全にホームグラウンド。そうゆう所だと、魔石は結晶になるほど、強い魔力を秘める。ってことね。


「魔石って神獣がいないと、産み出されないんだ。」

「“支配者”だからだろ。元素の。」


 私が飛翠を見ると、そう言った。


 聞いてない様で聴いてるんだな。この人は。


「そう。この世界の元素。ありとあらゆる“力の根源”。それは神獣たちそのものなの。わかり易く言うと空気がカタチになる。それが神獣ってこと。」


 ミリアさんはそう言った。


 はぁ。何だか頭が痛いけど……、でもとてもわかりやすい。


 だけど! 私のやるべき事は変わらないのだ。


 そう……ミリアさんの話を纏めると、五大魔法。それを取得しないと魔導士になれない。


 高等魔法が使えない。それはもはや論外ってことだよね。


 そもそも。私が精霊ではなく……神獣。つまりこの世界の“元素の支配者”に会い、召喚士になる事。


 それをしないと……“ティア王女には勝てない”。


 そうゆう事なんだよね。黒崎さん……。


 ぎゅっ。


 私はロッドを握り締めた。


 まだ会った事も無い人なのに……、戦う事が決まっている。


 救世主。そう言われた時点で、私は……ティア王女と、シェイドさんが……敵。なんだと、認識させられたのだ。


 何もわからないのに、周りは勝手に動き出して、担ぎ上げている。私と飛翠を。


 私達はその“大きな波”みたいのに、呑み込まれてしまった。


 そう。ここに来たこと。それがもう全ての始まりだった。それすらも“人の意志”が少なからず……動いてた。


 偶然じゃない。もうそれは“決まってた事”。そして……その意志。願いみたいなもの。その為に……私達の歩む道は、決まってしまっている。


 そうならざるを得ない。そうしなければ、生き残れない。そう言われているみたいに……、目の前に作られた道。


 そこを突き進むしかないのだ。


 その道は決められていて、最終的な目的地も決まってる。


 そこの中でこうして、迷い、疑い、悩み、考え……答えを出して進む。


 なんてちっぽけなんだろう。


 私達の意志は……その波の中では、たいしたことではないのだ。


 到達地点は決まっているのだから。


「ちょっと……大丈夫? なんか顔が恐いけど? またなんか考え事??」


 ハッとした。


 見ればミリアさんがとても心配そうに、私を覗きこんでいた。


 それも温かな眼。


 あ。カルデラさん。


 私はーー、カルデラさんのオレンジの交じるあの優しいブラウンの眼を、思い出した。


 お父さんみたいな……あの眼。優しい人。


 そう。私が……“魔導士”になると、魔法を使いたいと思ったのも……カルデラさん。


 それにラウルさん。シロくん。グリードさん。


 それに……飛翠。


 そう。みんなを助けたいからだ。


「大丈夫。ありがとうございます。ミリアさん。」


 私はミリアさんにお礼を言った。


 考える事。迷うこと。願うこと。それが、例えちっぽけでも……、私は出会った人。その人たちのことを、大切に思いたい。


「ねぇ? 一つ提案。よかったら話してくれない? 貴女たちの旅の目的。魔導士になる。その時点で、あたしと目的は同じ。たぶん……、行き先も一緒よね?」


「え……?」


 私が聞き返すと、ミリアさんはとても優しい微笑みを向けてくれた。


「何も出来ないかもしれないけど、話し相手にはなれるわ。“心の拠り所”って言うのかな? 手伝わせてよ。だから教えて。貴女たちの“旅の目的と行き着く先”。何を背負ってるのか。」


 ミリアさんは微笑んではいたけど、とても強い眼差しで私達を、見ていた。


 どうしよう?? 嬉しいんだけど! ヤバい! こんな事ははじめてだ!


 この世界にきて。同じ目的を持った女のコ。

 出会えた事だけでも嬉しいのに、まさか……こうやって言ってくれるとは、思わなかった。


 私はーー、飛翠に視線を向けた。


 飛翠は何も言わなかったけど、私の頭にぽんっと手を乗せた。


 うん。話すよ? 私達のこと。


 聞いたあとで拒否られてもいい。


 話したい。私は。


「ミリアさん……」


 私はーー、全てを話した。



 ▷▷▷


「あー。そーゆうことね。なるほどねー。」


 あっさりだった。


 しかもブロンドの髪をしたあの優しそうな人。(何となく勝手に私が、ミリアさんの本命だと思ってる人)


 “クライブ”さん。が


「だから“手配書”に似てるのか。」


 と、そう言ったのだ。


「え?? 知ってるんですか??」


 私と飛翠は顔を見合わせていた。


 けれど、ミリアさんは笑った。


「最初は似てるなーって思ってたけどね。でもこうして話をしてると、似てるだけ。なのかな? って思ったの。だからかな。気になったのよね。」


 ミリアさんがそう言うと


「聴いてる感じだと……手配される様には、見えないしな。それに……彼等。」


 クライブさんはネフェルさん、ハウザーさん。それにライアさんを見たのだ。


「極悪人に手を貸す様には見えないよ。」


 う……。久々にきた! 極悪人。ちょっとキツい。違うけど。


「まー。これでも“そこそこ”は、人を見る目ってのがあるからな。」


 ハウザーさんが長いレッドブラウンの髪を、かきあげた。右眼に掛かる刀傷。それがとても目立つ。


 ミリアさんはそんなハウザーさんを、見ていたが……私に、目を向けた。


「決まりね。一緒に行くわ。蒼華ちゃん。」


 ミリアさんは私に右手を差し出した。


「え??」


 驚く私の左手を掴むとぎゅっ。と、握手ではなく手を握ったのだ。


「同情とかじゃない。ただ、手を貸したい。そう思っただけだから。勘違いしないで。何も出来ないかもしれない。でも……聴く事はできる。」


 ミリアさんはそう言うと笑った。優しく笑いかけてくれた。


「ミリアさん……」

「同じ魔導士見習い。よろしくね。」


 にこっと笑うミリアさんは、やっぱり同じ年ぐらいに見えた。


「よろしくっす!」

「よろしく」


 スフィトさんとクライブさん。彼らもまたそう言ってくれたのだ。


 こうしてーー、私と飛翠にまた。新たな仲間が出来たのだ。


 魔導士見習いミリア御一行。


 私達は一緒に遺跡を出ることにしたのだ。





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