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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第3章 仲間を紡ぐ
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第23話 罠っ!?大蜘蛛??▷▷遺跡の出会い

 ーー遺跡と言う概念は、本日を持ちましてカンペキに消え去りました。


 こんなの知らない!!


「ちょっと! どーにかしてよ! 飛翠っ!!」


 私は只今……天井から吊り下がっております。どうやら歩いていたら、何かを踏んづけてしまったらしく、それに足を取られ……逆さ吊りの刑に処しました。


 ぶらんぶらん。してます。


「あー。わかったから待ってろ。」

「なにそれ! 助けてよ!」


 天井はかなり高い。


 下を見れば……なんで、私だけなのよ。皆何ともないし。


 そうなのだ。私だけが天井から逆さ吊りなのだ。この蔦なのか何なのかわからないけど、それに足を取られてぶら下がっているのだ。


 飛翠は大剣持ちながら、見上げている。


「高っ。ムリだろ。」

「ムリ言うな! 何とかしてよ!」


 高さあるのはわかってるけど! このままだと頭に血がのぼる!


「飛翠。下で受け止めてやれ。」

「了解」


 飛翠は大剣を背中にしまった。


 ん? そう言ったのはハウザーさんだ。え? ちょっと待って! 刀構えてるけど!?


 まさか! ぶった切るとかしないよね!?


「ハウザー。助けるなら早い方がいい。何か来ますよ。」


 下の通路でネフェルさんが、神導書持ちながらそう言った。


 え? その戦闘モードってことは、敵!?


 と、私が思っているとハウザーさんが、飛び上がって私の足に絡む蔦を切り裂いてくれた。


 勿論。そのまま私は落下だ。


「わ! きゃー!」


 結構な高さなんだけど!?


 ですが……


 どさっ。と。


「お前って罠にも好かれるのな。」


 飛翠が受け止めてくれた。


「心配してくれます?? 少しは。」

「五人いて引っ掛かるのがお前だけ。ってのが、笑える。」


 お姫様抱っこ状態なんだけど、全然! うれしくない!


「何か来るぞ」


 そう言って海竜刀を構えたのは、ライアさんだ。


 私は飛翠から降ろされた。


「何かってなに?」


 当然の如く……私は、飛翠の後ろに立った。


 ネフェルさんも皆……通路の奥を見つめていた。物音が聞こえるからだ。


 カサカサ……と、何やらいや〜な足音が聞こえる。


 天井を這う様な影。更に紅く光る眼。それが向かって来ていた。


 でも……私は気が付かなかった。


「え? きゃーっ!!」


 そうなのだ。大きな蜘蛛が真上にいたのだ。しかも、私に白い蜘蛛の糸を噴いた。


 私はまるで蚕のように糸に包まれてしまった。


「蒼華!」


 飛翠の声が聞こえるけど、身体は動かない。そうなのだ。今、天井から降ろされたばかりなのに、私はまた天井に逆戻り。


 しかも蜘蛛の口元まで引き揚げられた。それはもう、一本釣りの魚の様に。


「やだ! なにこれ! 飛翠!」


 しかも大きな蜘蛛は私を、糸に包んだまま天井を猛スピードで、這うのだ。


 飛翠たちから離されたのは、言うまでもなく。天井には彼らの方に向かう大蜘蛛がいた。


 その脇を私は蜘蛛の口元に張り付いたまま、素通りしたのだ。


「どこ行く気!? 離してよ!」


 とりあえず足は動くんだけど、肩から腰元まではぐるぐる巻きだ。包帯ミイラか? 私は。


 どうでもいいけど! めっちゃ速い!! 何このスピード! 蜘蛛ってこんな速く天井這うの!?


 巨大蜘蛛だから??


 見た事ない蜘蛛の大きさなんだけど、見れません。間近で見れないので気配だけは、とりあえず背中に感じています。


 足八本。それが天井を這い、私は広い場所に連れて来られた。


 更にそこから落とされたのだ。


「ちょっと!! なんなのよ!」


 意外にも……落とされた場所は柔らかかった。


 え? なにここ? 


「あら。貴女も?」


 そんな声が聞こえたのだが、私は白い綿の様なもの。その上に寝っ転がっていた。


 顔を動かすとそこには同じ様に、白い糸でぐるぐる巻かれた女の人がいた。


「え? なんなんですか? これ。」

「さあ? 連れて来られて結構経つけど……。何なのかしらね?」


 綿の様なものは弾力性があった。だから私は反動を利用して、身体を起こす事ができた。


 どうやら白い糸が張り巡らされた、カゴみたいな場所。そこに落とされたみたいだ。


 天井はそこまで高くないけど、下は……かなり、高い。やばい。落ちたらアウトだ。これは。


「ちょっと待って! コレって蜘蛛の糸!?」


 ようやくであった。私は大きな柱二本。その間に張り巡らされた蜘蛛の糸。それに気がついたのだ。


 そう柱の間にまるでハンモック。それみたいに蜘蛛の糸が張られている。私達はそこにいたのだ。


「そう。さっきの蜘蛛の巣なんじゃない? でも来たのは貴女だけよ。」


 きれいな人だった。アッシュピンクの髪。それにマリーゴールドの眼。ミント色のローブ。


 あ。ロッド持ってる。


 糸に包まれてるから私と同じ。ロッドだけは、抱える様に持っている。


 この人のロッドはピンクメタリックだ。スゴいキレイな色してる。


「あのー。魔法使いですか?」


 見ればわかるだろ! と、飛翠にツッコまれそうだが、聞いてみよう。


 色々いるからね。


「ええ。そうよ。魔導士見習いってところかな。」


 笑うと若い。大人っぽいからかなり年上かと思ったけど、もしかして同じぐらいかも。


「あ。私……蒼華です。」

「ソーカ? あたしは“ミリア”。貴女も魔導士?」


 ミリアさんか。やっぱりキレイな人だ。


「見習いです。」

「一緒ね。遺跡の入口にいたわよね? なんか美形ばっかり連れてたけど。みんなお供?」


 え?? お供!? あーよかった。飛翠がいなくて。問答無用でブチっとしてた。


「違いますよ! 仲間です。ミリアさんも一緒にいましたよね? 男の人たち。」


 ミリアさんは背もたれみたいになってる、蜘蛛の糸のハンモックに寄り掛かって座っている。


 何だかくつろいでる様にも見えてしまう。


「うん。あの人達は“雇い冒険者”。着いて来て貰ったのよ。」


 と、そう言った時だった。


「ミリア! 大丈夫か!?」

「ミリア姉さーん! 大丈夫っすかー?」


 いやいや。雇い冒険者じゃないでしょ。どう考えても。めっちゃフレンドリーじゃん!


 私は覗きこんだ。


 下には男の人が二人いる。


「あ! あなたも捕まったんですか? ミリア姉さんいます!?」


 何だか軽いなー。


「いますよー。ここからどうにか出たいんですけど! 何とかなりません!?」


 とりあえず聞いておこう。飛翠たちはきっと大蜘蛛退治をしているだろう。


 なので、私もどうにかして脱出して戻らなくては!


 まー……私がいなくても大丈夫なんでしょうけど。ツワモノばっかだし。ネフェルさんも神導の術使える人だし。


「この柱を降りて来る。ってのはどうですかねー?」


 と、男の人が叫んだ時だった。


「はぁ?? 降りられる訳ねーだろ! なめてんのか!? とっとと何か探してこいや!」


 えぇっ!?


 ミリアさんの怒鳴り声に、私は驚いてしまった。

 キャラ違いすぎでしょ!!


「すんませーん!」


 二人はばたばたといなくなってしまった。


「まったく! いつまでたっても使えないね。」


 ミリアさんは身体を起こすと、そう言った。


「ミリアさん……あの二人とは?」

「“幼なじみ”なの。うちら。」


 あ。そうなんだ。幼なじみなんだ。へー。


 不思議と私はそれを聞いて……ホッとしていた。始めて……この世界で女性。しかもこんなに親近感沸く人に、出会えたからだ。


 カレンさん達はちょっと……年上すぎなので。失礼だけど。


「二人ともダメなの。ホントに! さっきからああやって来るんだけど、助ける方法を見つけては来ないんだよね。まーったく困ったものだ。」


 ミリアさんはそう言いつつも、何だか嬉しそうだ。きっとここにいる間に、何度も彼等は来たのだろう。


 ここから助ける方法は見つけられなくても……心配で、声を掛けに来てるんだろうな。


「にしても……あの蜘蛛の巣って事ですよね? ここにいたらヤバくないですか?」

「でしょうね。でも、降りるにしてもこの糸……切れないし。」


 ミリアさんは身体を捩りながら、糸を何とか解こうとした。


 何度か試してるのかな? 少ししたら止まった。


「すごいキツいのよね。」


 と、ため息ついたのだ。


 私も身体を捩ってはみたが、どうにもなりそうもない。手も糸の中だし。


「あ! この糸! クッションとかになりませんかね? 硬そうだし。」


 私は揺らした。座りながら。


「え? これで落ちようとしてんの? 穴開いたら落ちるでしょ。」


 あ……。そっか。だよねー。


 ミリアさんの呆れた顔に、私はとても深く反省した。バカ女だな。私は。


「あ。蒼華ちゃん。来た」


 ミリアさんがそう言ったのだ。


「え??」


 私はその声に振り返った。大蜘蛛だ。天井から柱を伝い降りて来たのだ。


 速すぎる! それに全身がメタリックな紫で気持ち悪い!!


 これは後で思い出して泣きたくなるパターンだ!


「ど……どうしましょ!」


 あー。なんかアリみたいな口開いて、降りてくるよ!


 ミリアさんが……ふぅ。と、息を吐いた。


「なる様になるでしょう。」


 そう言ったのだ。


 えぇっ!? それは諦めると言うことっ!?


 と、私が思っているのもつかの間。大蜘蛛は這いおりて来たのだ。


 カサカサと音をたてながら。柱を降りてきた。


 ブーッ!!


 噴き出されたのは白い蜘蛛の糸だ。

 私とミリアさんはハンモックの上で、とりあえずそれを避けた。


 柱に引っ掛かる蜘蛛の糸。ぴたっと張り付いた。なんかテーブルとかに置くレースのやつみたい。


「ちょ……まさかの!?」

「完全に糸人間にされそうね。」


 えぇっ!? なんと言うこと!!


 ミリアさんのとても……冷静な声に私は驚いてしまったが、コッチはとにかく手が動かない。


 動けばここはばしっとロッド向けて、魔法を、使うんだけど。


 とにかく糸人間だけはイヤだ!


 私とミリアさんは柱に止まり、糸を噴く蜘蛛からとにかく避けた。


 ハンモックは大きいからじたばただけど、とにかく糸から逃げるしかない。


 大蜘蛛は柱に止まったままハンモックの上で、倒れたりしながら避ける私達に、糸を噴いてくる。


 あぶなっ!! 頭にかかるかと思った。


 倒れた頭の上に蜘蛛の糸が、びしゃっと広がった。


「ミリア!」


 あ! なんか下で声が聞こえる。


「ライア!」


 あれ? この声って飛翠??


「“海神天昇破”っ!!」


 この声は……。ライアさん??


 技だよね??


「ミリアさん!!」


 私は何となくだけど、ライアさんがこのハンモックを突き破ろうと、あの“海竜”の頭を波動にした剣技を放ったのだと、思った。


 だからミリアさんの身体に体当たりした。


 二人揃って中心からズレた。ハンモックの上に倒れ込んだ。


 その直後だ。


 ハンモックは真ん中からぶった斬られたのだ。そう。海竜の頭がまるで喰い破るかの様に、大口開けて飛んできたのだ。


「え? きゃーっ!!」


 ミリアさんの一瞬の間の声。その後に悲鳴。


 気持ちはわかります。

 落ちてますからね。真っ逆さまに。


 蜘蛛の糸で出来たハンモックが、破れた事で、私とミリアさんは落ちたのだ。


 更に柱にいたはずの大蜘蛛。それも何かに攻撃されて落下した。


 大蜘蛛と私とミリアさんは、高速で床一直線。


浮遊する心(グラシオス)


 その声が聞こえた時だ。私とミリアさんの身体は、何かふわっとしたもの。それに乗っかっていた。


 まるで柔らかなクッション。その上に身体が乗っかり浮きながら下に降りたのだ。


 大蜘蛛は隣で真っ逆さまに落ちていた。


「ネフェルさん??」


 私とミリアさんの下。この透明な金色の丸い物体。光なのだろうけど、クッションみたいな感触がある。


 その下では神導書を開いたネフェルさんがいた。


「本来は“空中遊泳”の術なんですがね。改良版です。」


 とっても涼しい顔でそう言われてますが、そんな術までお持ちで!


 何なんだ? この人たちは! スゴすぎでしょ!


 こんなのがたくさんいるの?? この世界は。


 グシャッ! と、音がした。


 うわ。大蜘蛛が潰れてしまった。


 これはちょっと見れない……。


 私とミリアさんはネフェルさんの術。そのクッションみたいな光の上に、乗っかりながら無事に地面に到着した。


 ポンッ。と、消えてしまったのは、私達が地面に足が着く頃だった。


 その時にはネフェルさんは、神導書を閉じていた。


「ミリア!」

「ミリア姉さん!」


 着地するとミリアさんの所には、二人の男の人が、駆けつけていた。


「ケガしてねーか?」


 私は飛翠の剣で、糸から解放される。


「うん。大丈夫。あの蜘蛛を倒したのは飛翠?」

「ハウザーだ。」


 ブチっと切られてようやく糸は、身体から解けた。ミリアさんも幼なじみの男の人に、剣で縛られていた糸を、解かれていた。


「ハウザーさん?」


 え? どんな技使ったんだろ? でも。助かった。


「ありがとうございます」


 私がハウザーさんに言うと、剣を肩に乗せながらハウザーさんは、にやにやとしていた。


「いやー。参った。飛翠がおっかねぇんだ。これがまた。嬢ちゃん。愛されてんなー。」


 は?? え??


 私はそんな言葉を言われて思わず……びっくり。


「ええ。本当に。全く。参りました。」


 ネフェルさんは神導書をフッと消した。だが、とても疲れた様な顔をしていた。


 あら? 消えるのね。


 いやいや。え? どーゆうこと?? 


「うるせーな。余計な事言うな」


 ん? 飛翠は全くもってフツーみたいだけど。今もとてもキレてるし。


「よく言うよ。さっきまでキレまくってたよな? 人のハナシ聞かねぇし、突っ込むし。お陰で“スパイダー”は、かる〜く退治出来たけどよ。」


 と、海竜刀を持ちため息つくのはライアさんだった。


「まじで殺すぞ」

「なんだよ! ホントのことだろ。その姉ちゃんの顔見たら、ホッとしてたよな?」


 えっと……それはとても……心配してくれてた。って事だよね?


 私はライアさんと睨み合う飛翠に、視線を向けた。


 いつものキレた飛翠の顔だ。ムキになって怒る。


 どうなんだろ? 私達……。“あの頃”より……少しは……近くなってるのかな?


 それとも……こんな世界に来ちゃって……二人しかいないから……、大切。って言葉だけが、先に突っ走ってるのかな?


 幼なじみだから……ずっと一緒だったから……それだけ。の事なんだよね? 


 私達の“境界線”は……消えてないんだよね。


「助かったわ。ありがとう。」


 その声に……私は、現実に引き戻された。


 いやいや。ここは変な事を考えてる場合ではない。そうだ。ここはまだ遺跡なのだ。


「ミリアさん。ケガしてません? 私……体当たりしちゃったんで。」


 頭突きした様な気がするんだけど。どこかに。


「大丈夫よ。ありがと。にしても……やっぱ羨ましいメンツね。美形ばっかり。」


 ミリアさんは飛翠たちを見ると、にこっと笑った。


「……」


 私は後ろで何だか……とても、心配そうにしてる男の人に、目を向けた。


 綺麗なブロンドの髪をした、優しそうな人だ。それにかっこいい。優しくて包んでくれそうだ。


 それに、何よりも……ミリアさんの事を、とても大切そうに見つめてる。


「そうですか? 私は……ミリアさんの方が羨ましいです。」


 私の言葉にミリアさんは驚いていた。


 でも、ブロンドの髪の人の横にいる……ちょっと、やんちゃっぽい人。紅い髪のバンダナ巻いた人も、ミリアさんの事を、とても心配そうに見ていた。


 やっぱり……大切な幼なじみなんだ。でも、それだけじゃなさそうだけど。


 何だかこの三人の関係が気になる所だ。ミリアさんを巡って……恋の旋風巻き起こってそうだ。ドラマっぽい展開が、想像出来てしまう。


「オイ。やめとけ。」


 私は頭をひっぱたかれた。


「え??」


 ハッとすると、目の前のミリアさんがとても怯えていた。


 と言うよりも……ドン引きの顔だった。


「あ!!」


 やってしまった!! 私のフル妄想癖!!これはまた、ぐふふと笑いヨダレ垂らしてたんだ! あーもうっ!! そりゃひかれるわ!!


「ちょっと……恐いけど? 大丈夫なんだよね?」

「あーはい! 大丈夫です! クセなんです!」


 アハハ! と、私は笑って誤魔化した。


 隣では飛翠がとても呆れていた。


 ちょっと……自嘲しよっかな。妄想。











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