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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第3章 仲間を紡ぐ
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第19話 目的遂行!! 目指せお宝っ!!

 リング上には、二人の男が倒れている。


 いや。リングではない。

 ただの遺跡の床だ。


「飛翠!」


 技力と体力を使い果たしたってことだよね?


 でも橋が無いと渡れない! ここから飛べっての?? 無理!


 自慢じゃないけど、私は飛翠と違って飛べません。あの人は異常だ!


 と……私が、思っていると、競り上がってくる様な音がしたのだ。


 この音は! 正に神の架け橋!!


 こっちと飛翠のいる場所を繋ぐ橋だ。湖の中から、競り上がってきた。


 石の床は、ガコン。と、橋になった。


 私達は駆けつけていた。


「飛翠!」


 直ぐに抱き起こすが、飛翠はぐったりとしていた。


「蒼華ちゃん。“回復魔法”を。」


 ネフェルさんが私の側に、しゃがむとそう言ったのだ。


 あ。そっか。使えるんだった。私。リヴァイアサンから……水流の魔法を継承したんだった。


 えっと。


 ロッドを持ち何となく……飛翠の上に、掲げてみた。


「“水流の雫(アミナス)”」


 ポゥ。


 不思議だ。魔石は無いのにロッドが光った。丸くなっているロッドの先端が、蒼く煌めいたのだ。


 やがて飛翠の身体の上に、一滴の水が落ちる。それは円を描き、彼を包んだ。


「水面の揺れ?」


 そう。そう見えた。水面に落ちた雫。それが波紋を描くように見えた。


 飛翠はその蒼く光る揺らめきに包まれ、やがて傷ついた身体が癒えてゆく。


 すごい。


 ぐったりとしていた飛翠の青白い顔。それすらも赤みを出していた。


 傷が消えていく。


「回復魔法は即効性。故に“重宝”されるんですよ。」


 ネフェルさんが、隣でそう微笑んだ。


 彼の銀色の眼が煌めいて見えた。


 そうか。だから魔法を使うと言うのは……この世界では、大事にされるんだ。


 アイテムでは即効性ではない。確かにとても強い力を持っているけど……。


「“水流の雫(アミナス)”は、それだけじゃありません。」

「え?」


 私が言うと、ネフェルさんはネプチューンを指差した。


「あ……」


 私は驚いてしまった。

 ネプチューンの身体も、飛翠と同じ蒼い曲円に囲まれていた。


「ど……どうゆうこと?」

「全体魔法ですよ。彼にも効果があります。」


 それは……


「敵にも通用するの?」


 ってこと??


 私はネプチューンの身体が、癒やされていくのを見ながらそう言った。


「いえ。“魔法を使う者の意志”です。蒼華ちゃんが、無意識に彼を敵だと認識してない。“心”で使うものですからね。」


 碧の髪を揺らめきさせながら、ネフェルさんは言ったのだ。


 魔法……。心。意志……。


 呟いてはみるが、心のなかで。


 奥が深い……。


「……蒼華……」


 飛翠の声が聞こえた。私は咄嗟にロッドを床に置いた。


「飛翠!? 大丈夫?? どっか痛くない??」


 目を開ける飛翠を、私は両手で支えていた。


「……もーちょい。」

「え?」


 飛翠がそう言ったのだ。


「いや。その小せー胸が顔に当たるかな。と。」


 は??


 私はその時。飛翠を離したのだ。


 ごんっ。と、飛翠は抱えられた私から離され、頭を床に打ち付けていた。


 私は立ち上がっていた。


「イテーな。」

「バカ者!! 人が心配してるのに!!」


 なんてヤツだ! 変態だ!!


「ご無事で何より」


 ネフェルさんは笑っていた。


「あー。まーな。」


 飛翠は頭を擦りながら、起き上がった。


「負けちまったな。」


 そんな声が聞こえた。


 ネプチューンだ。


 大の字で寝転がっていた。

 どうやらご無事で。


「相打ちだ。」


 そう言ったのはハウザーさんだった。


 ネプチューンのそばで、しゃがみこんでいた。


 飛翠は立ち上がり、大剣を握っていた。


「俺はな。“海竜”の一族だ。海神(ネプチューン)ってのは、その中の長。つまり……一番強い奴がなるんだ。」


 ネプチューンはよっ。と、言いながら起き上がった。その手には海竜刀を掴んでいた。


「名を引き継ぐってのも、けっこーしんどい。俺の名前は“ライア”。ネプチューンは、継いだ名だ。」


 ネプチューン……ライアさん? は、飛翠を真っ直ぐと見つめていた。


 名前を継ぐ? あれかな? 歌舞伎役者みたいなものかな? 襲名とかあるよね。


「飛翠。“柏木飛翠(かしわぎひすい)”だ。」


 え? なんでフルネーム??


 あ。いいのか。だよね。私達の名前だもんね。


「か……かしわぎ? ひすい?? 変な名前だな。」

「うるせー」


 飛翠は背中に大剣を背負った。

 ライアさんは、とても不思議そうに飛翠を見ていた。


 わかる。ここはカタカナだからね。漢字は無いし、私達の名前はちょっとおかしいよね。


 うん。


 ハウザーさんは、立ち上がる。


「で? 名を継ぎし者。飛翠は剣技修得の為に、俺らに会いに来てる。どうする?」


 と、そう言った。

 地面に“ハルシオン”。ハウザーさんの大剣を突き刺していた。


 ここの人たちは、皆。剣に名前があるんだねー。


「ああ。教えてやるよ。何がいい? 飛翠。特別に選ばせてやるよ。」


 ネプチューン……。あ。ライアさん。は、そう言った。


 飛翠はそれを聞くと、少し考えこんだ。


 だが


「いや? いらねーな。お前の技は“気に入らねー”」


 と、言ったのだ。


 は??


 この発言には誰もが……驚いたのだ。


 私だけではなかった。ハウザーさん、ネフェルさん。そして……ネプチューン。


 目がテン。


「何がだ! 何処がだ!」


 あ。キレた。


 そりゃそーでしょう。


 だが、飛翠は腕を組んだまま


「俺の“意”に反する。つーか、水で動きを封じるってのが気に入らねー。男なら正々堂々。力勝負だろ。」


 と、言ったのだ。


 その言葉に、笑ったのはハウザーさんだった。


 アッハッハ!


 と、大きな声が響く。


「とことん“剣の真髄”を求めるか。なるほどな。」


 ハウザーさんだけだった。


 力強く頷いたのは。


 私達はきょとん。だ。だが、ネプチューンはとても機嫌が悪い。


「俺の剣が偽物とか言いたいのか!?」


 と、いきなり怒りだしたのだ。


「いーや。そうじゃない。飛翠の求める“力”じゃないんだろう。ライア。俺はいいと思う。お前の力は強い。特別な力だ。魔法剣とも違う。」


 ハウザーさん。なんだか学校の担任教師みたい。クラスの悪ガキどもを、宥めてるみたいになってる。


「そうか?」


 ライアさんは、嬉しそうにそう言った。ハウザーさんは、澄ました顔の飛翠に目を向けた。


「飛翠。お前は“剣と剣”。それを求めてるって訳だ。」


 飛翠はその声に


「ああ。正真正銘の力だ。魔法みてーな力に頼るんじゃなくてな。」


 と、そう言った。


 うーん。よくわからない。剣技そのものが、魔法みたいな力だと思うんだけど。


 不思議だし。強いし。


 あ。でも、ライアさんみたいに……水の力を使うとかは、ないか。


 カルデラさんやラウルさん。それにグリードさんも、そうだ。


 彼等は剣の太刀と、剣閃。それに身のこなし。そう言うのを、技として使っていたんだった。


 あ。なんだっけ? あのレーザーソード。サデュー。あれはやっぱり。魔法みたいだった。


「なんか良くわからんが! 否定されてるのか? 俺は!」

「いや。すげーとは思う。だが、俺はいらねー。」


 ライアさんの声に、飛翠はガン! として、言い放った。


「ライア。飛翠くんに同行してはどうか? それならわかるんじゃないか。彼の“意志”が。」


 ネフェルさんがそう提案したのだ。


「は? 俺は勘弁だ。面倒臭せー。」

「飛翠! お前……けっこー今のもハラがたつぞ!」


 うーん。ドラゴンと人間。


 仲悪いのが何となく……わかる気がする。この二人を見てると。


「いや。いいんじゃないか? どーせ。お前も力を持て余してたんだろ? 剣技修得に熱心に通う人間なんて、いないからな。」


 ハウザーさんがそう言うと、ライアさんは


「知るか! 今の人間どもが弱いんだ! 全く! ちょっと負けたぐらいでヒーヒー言う! コッチは善意で付き合ってやってるのに。」


 と、怒ったのだ。


 そもそも……挑戦者待ちのスタンスってことだよね。チャレンジャー求む! みたいな。


 この感じだと……なかなか。チャレンジャーがいないのかな? ハウザーさんも着いてくるぐらいだし。 いなくなって困らないってことだよね?


「会いたくねーんだろ。 面倒くせーから。」

「なにをっ!?」


 あーもう。なにこの小学生みたいなノリ。この二人……。いいコンビなんじゃないの?


「さあ。行きましょう。他に挑戦者も来ないみたいですし。」


 ネフェルさんは、そう言うと橋を渡り始めたのだ。


「え? ネフェルさん? どこ行くの?」


 私はすたすたと歩くネフェルさんに、聞いた。


「折角です。遺跡探検と行きましょう。魔石やお宝もあるかもしれません。」


 え!? お宝!? 魔石!? 魔石は売れる!


 貧乏脱却!! そう! これこそ正に私が、ここに来た理由だ!


 何しろ貧乏なのだ! マジックメイトを買うお金がほしい!!


 私はさっさと着いて行った。


「飛翠! 置いてくよ!」

「はぁ??」


 ふふーん。ふざけんな! みたいな顔をしてるが、お構いなしじゃい!


 いざ! 探検!!



 ▷▷▷


 不思議だった。


 海底なのかな? ここは。


 さっきの所を出るとただの通路だった。でも今はキラキラと光る大きな水のある場所。


 まるで水が煌めいてるみたいだ。


 そこにやっぱり少し、崩れかけた遺跡の名残り? そんなのがゴロゴロと転がっていた。


 水色の泉。宝石みたいに煌めく。


「魔石か?」


 そう言ったのは飛翠だった。


「え?」


 私が聞き返すと、飛翠は大きな正方形の床の中に、枠組みされたみたいになっている泉を見つめていた。


 しゃがむとその水に触れる。


 ぱしゃっと音をたてる。


 サラサラと流れ落ちていく水も綺麗に、煌めいていた。


「おかしいとは思ってた。ここは“魔石”で動いてるのか。」


 飛翠は手を見つめていた。


「あったかいの? 冷たいの?」

「ちょっと冷てーな。」


 私は飛翠のそばに近寄りしゃがむ。泉は本当にキラキラと光っている。発光しているみたいだ。まるで、宝石で出来てるみたいだ。


 手を突っ込んでみたけど、確かに少し冷たい。でも普通の水の冷たさだ。


 ひやっとする冷たさではない。


 にしても……さらさらしてる。水じゃないみたいだ。それに手にしても光ってる。粒みたい。


「そう。この遺跡は“水流石”。その力で動いてる。ここは海底だが、息が出来るのも水流石の力で、覆ってるからだ。」


 答えたのはライアさんだ。

 この人も名前が二つあるから、間違えない様にしないと。


「水流石で覆ってる? そんな感じしない。」


 私は辺りを見回した。


「目に視えるものじゃない。わかりやすく言うと……大きな水球で覆ってる。みたいなものか? 酸素もちゃんと作り出してるんだ。」


「え? スゴい! それも魔石の力なの?」


 ライアさんにそう言うと、どや顔された。


 ん〜……彼がスゴいわけじゃないんだよね? まーいいか。


「俺達の身体が浮いたりしたのも、そうゆう事か。魔石の遺跡。」


 飛翠はそう言いながら天井を見上げた。


 とてつもなく高い天井だ。どこが終わりなのかはわからない。屋根が見えない。


「昔はな。浮上して上にあったみたいだ。けど、陥落して海底に沈んだ。だが、ここは水流石の宝庫だ。廃れることもなくこうして残ってる。」


 ライアさんがそう言った。


 ふーん。ライアさん達が住んでた訳じゃないんだ。てっきり海竜の一族の家なのかと、思った。


 飛翠は隣で何やら難しい顔をしている。これは、考えているな。何かを。


 わからないけど、放置しておこう。


 またおっかない事しか言わないんだ。きっと。


「魔石はないの? 出来れば持って帰りたい。売りたい。」


 私がそう言うと


「バカな事言うな! ここにあるのは大事な動力だ。持って帰る?? 売る?? ふざけてんのか?」


 ライアさんに思いっきり怒鳴られてしまった。


 蒼いドラゴンみたいな顔で、叱られると迫力がある。顔は人間なんだけど……一瞬。ドラゴンに見えた。


「え? でもさっき。人いたよね? ね? 飛翠。」

「あー。」


 ダメだこりゃ。

 考え事してて上の空だ。


 がっくりとしてしまった。余りにもカラ返事で。


「それならお前みたいなバカ者だな。どっかで罠にでも引っ掛かって、今頃泣いてるな。」


 ライアさんは、ふんっ。と、荒々しく鼻で息したのだ。


「え? 罠!? そんなのあるの??」


 なにそれ。お宝がないのに罠?? どーゆうこと??


「荒らす者がいるんですよ。遺跡は。どうしても神秘的な場所ですからね。」


 ネフェルさんはそう言ったのだ。


「この遺跡って動かねーのか? 昔は浮上してたんだろ?」


 飛翠がようやく自分の世界から、ご帰還した。


「大昔だ。でっかい戦争があって滅んだ。って聞いてる。」


 ライアさんはそう言った。


「戦争? ここって誰が住んでたの? ドラゴン?」

「いや。“深海族”だ。海に棲む亜人種族だな。わかり易く言うと。」


 亜人?? 深海族?? なにそれ? マーメイドとか?? それなら見てみたいけど……。


 きっと違うんだろうな。怖いんだろうな。


 ライアさんの声に私は、一瞬ふわっと妄想したが、諦めた。この世界は想像を本当に超える。


 私の知る世界の話など通用しないのだ。


「動かすにしても……この遺跡は、眠りについてる状態ですよ。浮上するだけの力があるなら、動いてるでしょう。」


 ネフェルさんは辺りを見回しながら、そう言ったのだ。


 眠りについてる。それは電源オチってことかな?あ。でも、動いてるんだから半停電??


 飛翠はまた何やら考えこんでしまった。


 しかし、このお方は……好きだね。こうゆうのが。昔よく、何とか戦隊とか、ロボ系のとか観てたっけ。なんか変わらないんだな。興味のあるものは。


 昔は可愛かった。本当に。


「あ。ねぇ? それならその罠に掛かった人たちを、助けた方が良くない?」


 私はふと思いついたのだ。

 罠に掛かるなんて困ってるだろうし。


「あぁ?? ほっとけばいいんだよ! そんなの! 大体な。遺跡と名がつけばお宝! そう考えるヤツがおかしいんだ。」


 ライアさんの言葉に私はとても……耳が痛い。


 あーすみません。


「いや。ちょっと見てーな。付き合え。蒼華。」


 と、何故か飛翠がそう言って歩き出したのだ。入って来た道とは逆。大きな通路への入口に向かっていた。


「え? なに? 遺跡に興味なんてあった?」

「ま。行ってみるか。せっかくだしな。」


 ハウザーさんがそう言うと飛翠を、追いかけたのだ。


 こうして私達は、海底遺跡の奥深くまで行って見る事にしたのだ。

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