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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第3章 仲間を紡ぐ
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第4話 ササライ鉱山▷▷空洞での遭遇

 ーー蒼く光る一筋の太刀筋。


 それは横一直線に、私達に向かってきた様に見えた。


蒼華(そうか)ちゃん!!」


 カルデラさんが、私の前に立ちはだかったのだ。


 銀の鎧を着たカルデラさんの背中だけが、見えた。


「カルデラさん!!」


 私はその巻き起こる閃刃のなかで、叫んでいた。


 とにかく何かが向かってきていたこと。

 それだけしかわからない。


 突風の様に感じたその風が、止む。

 私はカルデラさんの後ろで、静かになったのを感じた。


「腐っても騎士。なるほどな。」


 サデューの声が聞こえる。


 カルデラさんの後ろ姿を見上げた。


 ふと、剣を降ろすのも見えた。


「サデュー殿。そなたが王を護る様に、ワシは“罪なき民”を護る者でもあると、心得ている。通して頂きたい。」


 と、カルデラさんはそう強く言った。


 だが、その身体はぐらっ……と、前屈みになった。


「え?」


 私の目の前で、カルデラさんが膝をついたのだ。

 立て膝をついてしまった。


「カルデラさん!」


 カルデラさんに、私は即座に近寄った。

 しゃがみ込むカルデラさんは、少し痛そうな顔を、していた。


 お腹の辺りを手で押さえていた。


「大丈夫じゃ。“衝撃波”でな。傷はこの鎧のお陰で、負ってはいないが……反動を受けるでな。」


 地面に剣を置き、カルデラさんは苦しそうにしながら、そう言ったのだ。


「でも……しんどそうだけど! 大丈夫なの!? 私を庇ったからだ……。ごめんなさい!」


 悲しくなってしまった。

 こんな苦しそうなカルデラさんの顔は、見た事ない。


 私は隣でカルデラさんの背中を擦った。


「大丈夫じゃよ。」


 やっぱり痛いのかな? 力の無い笑いなんだけど……。


 と、カルデラさんのオレンジ色に近い瞳は、隣を見ていた。


 私もその視線に目を向けた。


 飛翠がグリードさんと話をしていた。


「グリードが庇ったのだ。飛翠くんも“衝撃波”には、慣れておらんからな。」


 と、カルデラさんはそう言ったのだ。


「グリードさん……」


 私はグリードさんが、飛翠の前で笑っているのを見ると、そこになんか“友情”みたいのを感じた。


 飛翠もとても嬉しそうだったからだ。まるで“友達の隼人くん“と、話をしてる時みたいだ。


 だが、ふと私は心配が過ぎった。


「あ! ラウルさんは?? 鎧着てないよね??」


 私はラウルさんの方を見た。

 が……、全くもって平然と立っていた。


 心配そうにコッチを見ている。


「カルデラさ〜ん。なまったんじゃない? 反応鈍いよ。」


 と、思ったのだが、そう笑ったのだ。


 なんかスゴい。よくわからないけど、スゴい。

 全然! 平気そうだ。


 カルデラさんは、剣を持つと地面に手をつきながら立ち上がった。


「ラウル殿は“鍛錬”を怠らないからな。そこは感心するところじゃ。」


 笑ってそう言ってるけど……。

 なんか皆、すごすぎる。私には……理解できない。


 あんな“カマ”みたいなのが、飛んできたのに……無傷だし。


 それに人を庇う事もできるなんて。

 私なんて、ただ圧倒されてただけなのに。


 キェェェェェッッッ!!!


 その時だったーー。


 その雄叫びみたいな奇妙な声が、聴こえたのは。


 その直後だ。


 空洞の上空から、バサッバサッと大きな羽音が聴こえたのだ。


「え? なに?」


 急に辺りが暗くなった様な気がした。

 上を見上げると、大きな身体をした者がいた。その身体と羽で、陰ったことを知った。


「なに? なんなのあれ?」


 身体が真っ赤!!


「“炎龍(ファイアードラゴン)”か。引くぞ。」


 え!? 


 サデューがそう言ったのだ。


 なに? ドラゴン??


 兵士たちが慌てた様子になっていた。

 でも、ドラゴンとやらは降りて来ながら、炎を吐いた。


 真っ赤な火炎放射みたいな炎だった。


「うわ!」

「逃げろ!」


 兵士たちは逃げ惑う。

 静かだった空洞が、一気にパニックホラーになってしまった。


「いかんな。炎龍(ファイアードラゴン)など、相手にはできん。」


 カルデラさんの声が聴こえたけど、私は目の前で火炎放射から逃げる兵士たちに、目を奪われていた。


「急げ! ここから出るぞ!」


 サデューの声が響いた。

 怒鳴っていた。


 余裕そうな顔ではない。その感じから……私はこれが、とてつもなく“ヤバい奴”である事を知った。


「カルデラ。運が良かったな。炎龍(ファイアードラゴン)に、喰い殺されるのも騎士としては、“名誉”だろう。」


 サデューはそう笑うと、兵士達を引き連れて空洞から出て行ったのだ。


 ドンっ!!


 と、音がした。

 地面が揺れた。


 目の前には真っ赤な身体をしたドラゴンがいた。


 いつの間にか……降りて来ていた。


 口から火を吐いてる。

 それも上に向けて。


 あれはなに? 威嚇??


「うわ〜……。なんでまたこんなのが、出てくるかね。ホント。蒼華ちゃんと飛翠くんは、“寄せコンビ”だね。」


 ラウルさんは、剣を構えながらそう言ったのだ。

 とてつもなく……バカにされてる気が、したけど……それどころじゃない。


 私は産まれて始めて“龍”と言うのをみたのだ。あの……“月読(つくよみ)”で、見た本にそう言えば……火を噴く龍の絵が描いてあった。


 なんとなくそれを思い出していた。


「え? コイツらが“呼んだ”のか? すげーんだな。お前ら。」


 グリードさん……。そんなワケないでしょう。


「そんなワケねーだろ。」


 私の心の声を代弁してくれたのは、飛翠だった。やれやれ。とでも、言いたげな顔でため息までついた。


 うんうん。と、私は大きく頷いた。


 にしても……デカっ!!


 私は目の前にいる炎龍(ファイアードラゴン)とやらを、まじまじと見てしまった。


 本当に大きい。


 “トカゲ”みたいな顔してるけど、どう考えてもトカゲじゃない。


 それにコッチをじろっと見てるその眼!!

 コワすぎ! 真っ赤な眼だ。


 なんかめらめらと炎が燃えたえぎってる様な眼!


 おっかないんですけど。


「か……カルデラさん。これはなに?」


 私は思わずカルデラさんに、擦り寄っちゃったよ。コワいんだもん!


(ドラゴン)と言う種族でな。このイシュタリアでは、“神”として崇められてる者たちだ。こんな所で出会すとは。」


 カルデラさんの横顔は、思いの外……苦渋だ。

 と言うか……ビビってる。


「え? 神なのになんでそんな……コワいやつなの?」


 私は聞いてしまった。

 余りにもビビってる様な感じがしたからだ。


「神は言い過ぎでしょ。カルデラさん。コイツらはただの“暴れたい奴ら”だよ。まあ。一目置かれてるのは当たってるけどさ。」


 と、ラウルさんはそうは言ってるが、やっぱりどこか渋い顔をしていた。


「ヒトガ……偉ソウニ吠エルナ……」


 え!? 喋った!?


 しかもドス効いてて響くんですけど。


「龍ってのは“悪”なのか?」


 おいこら! また挑発する様な事を言うんじゃないよ! この毒舌オトコ!!


 私は飛翠のすっとぼけたその声に、思わず睨んじゃったよ。


「ああ。簡単に言っちまえばそうだ。人間とは“色々あった”みたいでさ。こいつらは“人間”を目の敵にしてんだ。だから、よく襲う。」


 グリードさんまで……。


 誰か止めて。この“ワルガキコンビ”みたいなの。


 真っ赤な眼が睨んでるし、口元がひくついてる。

 そこから牙なんかも見えちゃって……。

 あ〜……おっかないんですけど!?


「“恐れられる存在”は、神として等しい。間違いではない。」


 カルデラさんは、剣をしまった。


 えっ?? しまうの!?

 この状況で??


 カルデラさんは、頭を低くしてコッチを睨みつける、大きな紅いドラゴンの前に立った。


「すまんのう。こんな所で会うとは思ってもみんかった。ワシらも色々とあってな。お主と一戦交えるつもりは毛頭ないのじゃ。ここを抜けたいだけなのだ。」


 なんて勇敢な人!!


 臆することなく両手を広げ、まるで戦意が無い事を主張するかの様に話していた。


 私は……凄い人だと、本当に思った。

 こんな怪物を目の前にして、堂々として……しかも、話し合いをするなんて。


 今まで見た魔物たちより、遥かに大きなドラゴンを前に、私は動く事も出来ないのに。


 人間の器の大きさを感じていた。

 この広い銀の背中に。


 ドラゴンは、カルデラさんから頭を反らすと、炎を吐いた。私達の方ではなく、あっちの方向だ。


 ため息にしては大きな火の息だ。


 頭が動くと、大きな翼まで動く。

 もう“ジュラシック”な世界に、飛び込んでしまったみたいだ。


 ティラノサウルスっほいし。


 それに、歩み寄ったカルデラさんは、何とも……“勇ましい”


 父親みたいだ。



「スゴいです。こんな間近で、炎龍(ファイアードラゴン)を見たのは、始めてです。」


 と、そこに“怖いもの知らずな声”が。


 その声に私は横を見た。


 ん? 誰もいない。


 ああ。下にいた。


 白いわんこのシロくんだ。

 そうだった。シロくんは私の腰ぐらいの背だった。


 周りがデカいのばかりだから、ついつい見上げる癖がついてしまった。


「そうなの?」


 まー。きらきらした目をしてること。


「はい。蒼華様は見た事ありますか?」

「ありません。私の世界にはこんなのいません。いたらパニックホラーで、大騒ぎです。」


 きらきらした目でおっかない事を、言われてしまった。


 こんな大きな恐竜みたいな“ドラゴン”が、街中うろついたら大パニックですよ。


 それはそれは。


「騎士ニ……戦士。オ前ラノチカラトヤラ……見セテミヨ。」


 え??


 炎龍(ファイアードラゴン)は、突然そう言うと、火を噴いた。それはカルデラさんに向けてだった。


「カルデラさん!!」 


 私は真っ赤な炎に包まれるカルデラさんを、見て叫んでいた。それはもう燃え盛る炎だ。


 だが、カルデラさんは


「やはり無理か。」


 と、炎に包まれながらそう言ったのだ。


 え!? 大丈夫なのっ!?


 炎ですよ!? 凄い勢いで燃えてますが!


 銀の鎧を着たカルデラさんの、全身を包む炎。けれど、カルデラさんは、その中で剣を抜いた。


「王国騎士カ……“加護”ヲウケタ厄介ナモノタチ。」


 加護?? え? どうゆうこと??


 ファイアードラゴンは、何だかとてもしかめっ面だ。それにその鱗のついた鼻辺りが、シワが寄ってる。


 これは怒ってます。的な顔だよね。きっと。


「お主らの様な“者達”がおるでな。王国騎士は、皆。魔道士から“加護”を受けておるわ。今は少し“感謝”じゃな。」


 カルデラさんの全身を包む炎が、消える。

 ファイアードラゴンは、カルデラさんではなく私達の方を見たのだ。


「面倒ダ。全員デ、カカッテコイ。」


 その眼はギラギラしていた。


「あ〜……やっぱ。そうなるか。飛翠くん。グリードくん。気をつけなよ。」


 と、ラウルさんは剣を構えた。


「蒼華ちゃんは、俺達の後ろにいた方がいい。それにそこで“何か嬉しそうなシロくん”も。」


 と、その碧の眼が私とシロくんに向けられた。何処と無く呆れた顔で、シロくんを見てる。


 シロくんは、さっきから“目が輝いてしまってる”。それに、すごいなぁ。大きいなぁ。などと、ぶつぶつと言っているのだ。


「飛翠。俺の後ろにいろよ。俺ら“コボルト”は、火属性に強いんだ。盾になってやれるぜ。」


 グリードさんの勇ましい声が聞こえる。


「そんなのもあんのか? 奥が深けーな。コッチは。」


 飛翠はそう言いつつも、全く下がろうとしない。


 この御方の怖いもの知らずは、気狂い並みだ。

 それに何か……嬉しそうな顔してるけど。


「ドラゴンなんて見れねーからな。どんなモンだか興味あるな。」


 好奇心と言うよりも、“力試し、腕試し”の気持ちが、勝ってる様だ。


 なんなんでしょうか。この人は。ケンカじゃない。っつーの!


「致し方あるまい。炎龍(ファイアードラゴン)。お手合わせ願おう。」


 カルデラさんの声が、何だかとても“強く”聴こえた。


 えっ!? 戦うの!?


 ウソでしょ〜〜〜!!


 どうやら……私達の旅とやらは、“波乱万丈”が憑き物の様だ。












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