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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第3章 仲間を紡ぐ
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第1話 コボルト村▷▷ササライ鉱山!国境を越えろ!

 ーー水流の指輪について。


 カルデラさんやグリードさん。

 ラウルさんの答えはーー「NO!!」だった。


 断固お断り。と、拒絶された。


 なので、私と飛翠。シロくんが装備する事になったのだ。


「気をつけてな。」

「ありがとう御座いました!」


 コボルト村の村長さん。ナガイさんを始めとするコボルトさん達に、見送られ私達は村を出たのだ。


 グリードさんは、自分用の馬を持っているらしくトーマスくんよりも濃い茶の毛をした馬に、跨っていた。


 シロくんは、カルデラさんと一緒に乗った。グリードさんが声を掛けたのだが、困惑気味に言葉を濁し、カルデラさんが“道案内”をして欲しいと、機転を利かせていた。


 グリードさんはちぇ。っと諦めていた。

 何だか……素直になれないタイプなのかもしれない。気に入ってる人をイジメてしまう厄介な、性格の持ち主みたいだ。


 いじけるグリードさんが、なんか可愛く見えてしまった。


「国境を越えるでな。」


 ケネトスの台地を走りながら、カルデラさんはそう叫んだ。


 少し先を走ってくれている。黒馬の“ブラッド”くんと。因みにラウルさんを乗せてる白馬は“ジーク”。グリードさんの馬は“ホースト”と言うらしい。


「ようやく“クソ王国”とはおさらばか。」


 と、飛翠が後ろでそう言った。


「そうだね。でも……大丈夫なのかな? アトモス公国に逃げ込んで……。仲悪いんでしょ? 私達は、イレーネ国の罪人になってるんだから、(かくま)うみたいな事をしたら……問題になると思うけど……」


 そうなのだ。

 カルデラさんもラウルさんも、ナガイさんもカレンさんも“心配無用”とは言っていたけど……。


 どう考えても心配だ。


「俺達が考えた所でどーにもなんねぇよ。この世界の事を、まともに知らねーんだからな。」


 飛翠は相変わらず……強気だ。

 それに思い切りがいい。


「そうだけど……」


 私はそんな飛翠の様にすぱっとは、切り捨てられない。考えてしまう。


「その時になって“後悔”しねー選択をすればいいだけだ。今考えても疲れるだけだ。」


 飛翠はやっぱり強い口調だ。


「……そうだね。」


 考えても仕方ない。

 たしかに。何にもわからないんだから。


 大きな川を右手に、草原を馬四頭は駆け抜ける。

 青空には白い太陽が昇っていた。


 太陽が白い。その光さえも白い。

 暑くもなく寒くもない。


 太陽の光は暖かい。

 こうして風を切っているけど、日本で言う春の気候みたいで、心地よい。

 不思議な世界だ。


 国境を越えるにも、やはりケネトスの台地から峠とやらを越えるしかないらしい。



 ーー。

 “ササライ鉱山”……ここが、国境前の難関だとラウルさんは教えてくれた。


 険しい鉱山道。幾つもの穴が空いたその山は、洞窟の様になっていて、“魔石の原石採掘”に使用されているらしい。


 鉱山の入口には、まるで門番の様に男の人が二人。立っていた。

 簡単な“管理所”みたいな施設もあった。


 その人達の向こう側……暗い洞窟が、まるで私達の侵入を待っているかの様に、大きな口をぽっかりと開けていた。


 私達は、馬を降りた。

 呼び止められたからだ。


「鉱山巡りか? それとも“国境”か?」


 そこに立っていたのは、大柄な紅い髪の男。

 髪型はツンツンとしている。

 何だか怖そうな人だな。


 武器とかは持ってないけど、筋肉が……。

 かなりマッチョ。


 それに飛翠ぐらい大きい。

 胸当ては銀製だよね。それをつけてやっぱりTシャツと言うか、少し厚めのポロシャツに近い布地なのかな?


 ノースリーブなんだけど、その逞しい二の腕に、目がいってしまう。


 両腕には黒の革製のサポーターみたいのをつけてる。腕当てとか言うのかな?

 何だろ? ズボンは黒いものなんだけど、道着? そのぐらいの厚さかな?


 足首にも黒い革製のサポーターみたいのを、巻きつけてる。


 あ。ブーツじゃないんだ。グレーの靴だけど、ローカットスニーカーに似てる。


 その横にいる人は、銀の剣を持った戦士みたいな人だ。でも鎧は上半身だけ。

 足元は、白いズボン。

 でもカルデラさんと同じ様に銀製のブーツみたいのを履いてる。


 膝当てつけて、脛辺りからブーツだ。

 カルデラさんは、鎧だから全身銀製なんだけどね。


「国境越えじゃ。」


 カルデラさんは、怖そうな男の人二人を前にしても、全然怯まない。


 それを聞いてブルーの眼をした戦士みたいな、男の人は、険しい表情をした。


 この人はブロンドの髪だ。

 でも顔が怖いから、美形とは言い難い。


 若そうにも見えるけど、しかめっ面だし目が鋭すぎる。眼ヂカラが強くてコワモテだ。


「ケネトスからの国境越えで、なんで“監視”がいるんだ? いつもはいないよね?」


 と、聞いたのはラウルさんだ。

 こうして見ると、同じブロンドで元騎士のラウルさんは、なんだかとてもカッコよく見える。


 野武士と殿ぐらい差がある。見た目も。

 失礼だけど。


「頼まれただけだ。別に“手形”寄越せとは言ってないだろ。通って構わねぇよ。」


 と、顎でくいっ。と、洞窟の穴の方を指すのは、赤髪の男の人だ。


 “手形”? 通行手形みたいなものかな。

 あるのか。へぇ。


 私は日本だけなのかと思っていた。

 昔……関所を通る時に、通行手形とやらを見せていたと聞いたことがあったのを、ふと思い出したのだ。


 とか言って……“時代劇”なんですけどね。


「なんだか怪しいな? 何かあったのか?」


 ラウルさんは、白馬のジークくん。を、どうどうと宥めながらそう聞いた。


「“怪しい者”がいるかどうかの、監視だよ。アンタらは特に問題なさそうだな。行きな。」


 と、腕を組んでその“格闘家”みたいな人は、言ったのだ。剣を腰に挿している人は、隣で何だか不機嫌そうだ。


 ん? 通っていいの?

 え? 私達の顔を見て……“驚かない”んだけど?? どうゆうこと??


 ここまで、“お尋ね者”扱いばかりなので、本当に不思議だった。


 だって、二人とも私と飛翠の顔をちゃんと見てる。じっくりと。

 でも、何も言われなかったんだ。


 鉱山……は、茶色と黄土色。それに少し赤土混じった洞窟だった。


 何だか不思議な岩壁だ。グラデーションされてて、絵に描いたみたいだ。


 そこに“魔石”の原石だろう。

 青白い光や、オレンジっぽい光。それに……ちょっと緑っぽい光まで、岩壁の中から光っていた。


 これがまた……綺麗なのだ。


 幻想的な空間で、いちお洞窟の岩壁には、ランプがついているが、いらないぐらい光っている。


「カルデラさん。私達……何も言われなかったけど……なんでかな?」


 トーマスくんを引いてくれてるのは、飛翠だ。

 シロくんは、私の隣を歩いてくれている。


 なんだか、散歩中みたいだ。


「あの者達は、恐らく……“アトモス公国”の君主。“スレイヤ大公”か、もしくは“貴族”に頼まれた者達であろうな。」


 カルデラさんは歩くと銀鎧の音がする。


「え? 貴族?」


 あ。そっか。“公国”って、王様じゃないんだっけ。貴族の国なんだっけ。

 確か……“公爵”だか、“伯爵”……だっけ?


「左様。アトモス公国は“貴族”が君主でな。スレイヤ大公が、今は統治しておるが……住んでおる者達も殆どが、貴族だ。故に……“イレーネ国”とは、反りが合わんのだ。」


 と、カルデラさんは唸りながらそう言ったのだ。

 後ろ姿だから表情は見えないが、きっととっても眉間にシワが寄っているであろう。


「へぇ。なんか派閥とかありそう。」


 率直な意見である。

 貴族や華族と聞くと、どろっどろのいがみ合いがありそうだ。

 イメージだけど。


「あるよ。次の君主を狙ってるのは“スレイヤ大公”の弟君だ。表向きは”大公の右腕“みたいだけど、とんでもない。”元老院“を抱き抱えて、スレイヤ大公の失脚を、待ってるからね。」


 でた。骨肉の争い。そして“血の兄弟対決”。

 正に……どんぴしゃだ。イメージ通り。

 きっとその嫁たちも、嫉妬と妬みで戦いを繰り広げているんだ。


 それも陰湿などろっどろの戦いだ。

 正に! 女の戦い。


 私はちょっと興奮してしまった。

 これだけで、ご飯三杯はいけます。この妄想で。


「蒼華様……。顔が恐いです。」

「ほっとけ。いつもの“妄想癖”稼働中だ。当分、帰ってこねー。」


 グフフ……。


 シロくんと飛翠が、そんな事を言ってるとは露知らず。私は妄想の世界にいたのだ。


「“セルディン卿”の依頼ですかね?」

「どうだろうな。」


 セルディン!? それが“兄を失脚させよう”としてる、弟か?? ふんふん。なんだか楽しそうだな〜………。テレビじゃなくリアルで、観れるんだ!


 私は小さくガッツポーズした。


「蒼華様……。顔が気持ち悪いです。」

「ほっとけ。」


 うへへへ。


 ヨダレでちゃうよ。おねーさん。


 でも、そんな私の妄想は、直ぐにふっ飛ばされる。

 現実は……甘くはないのだ。


 入口から少し中に入った時だ。


 ここから鉱山なのだろう。

 幾つもの穴が開く、開けた場所。


 そこに……私達を待ち構えていたのか……。

 銀の鎧を着た男たちがいたのだ。


 空洞の中で、待っていたその集団。

 そこまで多くはないけど、その中に……“彼”はいたのだ。


「やはり“国境越え”に、船を使わない。その考えは、正しかったみたいだな。」


 蒼い鎧……。

 流れる様なブロンドの髪。すらっと高いその姿。

 美しい男の人なのだが、その“碧の眼”は、とても冷たく光る。


 


 スッ……と、直ぐに銀の刃が少し長めの剣を、腰元から抜いたのだ。


 カルデラさん達が持つ剣よりも、長い。

 ただ、飛翠の様に刃が太い訳ではない。


 細さは剣と同じ……。日本刀を思い出した。

 それより少し太いぐらいで、長さもそのぐらいだろう。


 木刀。そのぐらい長いかもしれない。


「サデュー殿……」


 カルデラさんも剣を抜いた。

 隣では、ラウルさんも抜いたのだ。


「ほぉ? 上官に向かって剣を向けるか。中々、“悪党”が板についてきたか? カルデラ」


 その声を合図に、7人程度はいそうだ。

 銀の鎧を着た男たちも、剣を抜いたのだ。

 みんな、頑丈そうな鎧に、兜をつけている。


「おいおい。なんだ? コイツらは?」


 と、斧を担ぎ呆れた声を出したのは、蒼い狼犬に似た、コボルトのグリードさんだ。


「イレーネ王国……“国王護衛軍統括騎士”である。その名も“サデュー•ナタク“殿。ワシがいた“蒼騎士団の団長”でもあった。」


 ササライ鉱山の、広い空洞の中でカルデラさんの、低い声が響く。


 私達は、この人から逃げられるのだろうか。

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