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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第2章  私達の逃亡生活は、波乱万丈!
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章の終わり コボルトの村▷▷強い意志と新たな仲間

 ーー大きなコボルト達に、笑われている子犬並みのシロくん。


 その“表情”は、“強い意志”を滲ませていた。


 だが……


 ぶわっはっはっはっ!!


 大爆笑が起こってしまう。

 腹を抱えて笑うーー、と言うのはこうゆうことであろうか。コボルト達は、仰け反りながら笑ったのだ。


「魔法使いだと? また言ってるよ!」

「ムリムリ。お前になれる訳ねぇさ。」

「“魔導書”買い漁ってもムダだっての。」


 え? 魔導書?

 そんなのがあるんだ。


 そうか。シロくんは……それが欲しいから、あんなコカトリスに襲われるかもしれない山に、登ってお金になる“カナカナの実”を、取りに行ってるってこと?


「おいおい。やーめとけ。って。いいか? シロ。魔法使いってのは、単独じゃ不利だし。増して、お前みたいに“ひ弱”じゃ死に戦だ。戦士に護って貰いながら、うろちょろするしかねぇんだぞ?」


 グサッ!!


 う……。なんだろ?


 グリードさんの言葉が、とても強く私に突き刺さった。それはそれは“イタい話”だ。

 イタすぎる。


「僕は……“蒼華(そうか)様”のようになりたい。この方は、とても“強い”。憧れます。だから、お傍にいたいのです。」


 えっ!?  


 ウソ!? 私っ!?


 私はーー、驚いてしまった。

 シロくんを見つめてしまった。とても。


 でも、シロくんはつぶらな蒼い眼で、私を見上げていた。 


「僕は“貴女のようになりたい”。そして……いつか貴女をお助け出来る“魔法使い”になりたい。」


 ここにきて……ついに……ついに!!


 “異世界ファン一号”!! 蒼華のファンクラブ創立決定!!


 いやいや。そうじゃないだろ。


「シロくん……。どの辺でそう思ったのか……わからないんだけど。私……ダメな感じよ? ホントに。飛翠いないとムリだし。」


 あ〜……絶対。ドヤ顔して頷いてるよな。

 言いたくはないが、現に……私が何とかなってるのは、飛翠やカルデラさん。ラウルさんのお陰だからね。あと。トーマスくん。


 ここは、ハッキリとお伝えせねば。

 間違った認識は良くない。


 でも、シロくんは“私を強く見つめた”んだ。


「いえ。“強さ”は“力”ではないと思ってます。“大魔道士ゼクセン様の書”にも、記されてました。“本当の強者とは心の強い者”だと。」


 え? 黒崎さんが?

 なんだか、いい事言うな〜……。胡散臭いのに。


「蒼華様は、皆さんをお助けする為に……怯みませんでした。僕は“その姿”を見て、思ったんです。この人の様な魔法使いになりたい。」


 シロくんは、強くそう言ったのだ。

 この子供みたいな背格好で、愛らしいわんこが、今は……逞しく見えた。


 強い気持ちを持つ人は、それだけで“大きく”見えるのだ。人間もコボルトも関係ない。


 私はーー、しゃがんでいた。

 いつの間にか。


 シロくんのその小さな手を掴んでいた。


「シロくん。危ない旅だけど、大丈夫?」


 そう。これは言っておかないとね。

 何しろいつ狙われるか、わからないので。


「はい。心得ております。」


 ブレない。この人は……“意志が強い”。

 こんな小柄で守ってあげないといけない様な感じなのに、一人で……あの山に登るだけある。


 シロくんは、“強い”のだ。


「お願いします。」


 私はそう言っていた。


 知りたい。と思った。

 この“ブレない強さの秘訣”が。

 甘ちゃんな私は……シロくんに、追いつきたいと思ったのだ。


「こちらこそです。蒼華様。」


 と、シロくんが嬉しそうに笑ったところで、水を差す者がいる。


「いいのか? お前と……シロ。他のメンバーの“負担”が増すぞ?」


 グリードさんだ。

 私とシロくんを覗き込むそのグレーの眼。


 あ!!


 私はその声に後ろを振り返った。


 飛翠は腕くんで呆れ顔。

 カルデラさんとラウルさんは、何故か。

 とても優しい笑みを浮かべていた。


 だが、


「別に。蒼華みてーのが一人や二人いても、構わねーけど? 鍛錬になるからな。」


 と、腕を組む飛翠がそう言ったのだ。


 うぬぬ。なんで上から目線!?

 それじゃー、私が“足を引っ張るダメ人間”みたいじゃないか!!


 実際はそうだけど。


「ワシは“お主の意見を尊重”するでの。したいようにしたらよい。元より……“自由の利かぬ旅”だ。少しでも“蒼華ちゃんが笑顔”になるならそれでよい。」


 カ……カルデラさんっ!?


 今……なんとおっしゃいました!?


 えっ!? 神! 神なんですけど!!


 私は泣いてしまいそうになった。


 でも、ラウルさんも


「いいと思うよ。“魔法”の事はわからないからさ。俺は。切磋琢磨にもなるだろうし、博識っぽいもんね? 安心しなよ。付き合うよ。とことん。」


 と、笑ってくれたのだ。


 ああ。なんて神々しいイケメンスマイル。

 くらくらしてしまいそうだ。


 そしてなんていい人なんだ。

 軽いとか思ってたけど……撤回します。


「良いのか?」


 と、ナガイさんが暫く……様子を伺っていたのだろう。口を挟むことは無かった。

 だが、そう聞いたのだ。


「ナガイ殿。シロくんを連れて行っても良いか? 蒼華(そうか)殿を手助けする“仲間”として、迎え入れたい。」


 カルデラさん!


 やばい。涙が。


 優しい“お父さん”の様な眼差しが、私に向けられていた。この暖かな人を私は……“大切”だと、思い始めていた。


 かけがえのない人だと……そう。思っていた。


「こちらこそ宜しく頼む。シロ。支度をしなさい。」

「はい! 村長さん!」


 こうしてーー、私達に新たな仲間が出来たのだ。


 博識の魔法使い見習いシロくん。

 護衛にぴったり荒くれ者のグリードさん。


 コボルトの村で、私と飛翠に“力強い味方”となる人達に出逢えたのだ。


 それは、ここに来てから“巻き込まれ型”ではない、始めての“仲間”であった。


 私達は、“アトモス公国”へ向かう事になったのだ。

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