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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第2章  私達の逃亡生活は、波乱万丈!
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第13話 アスタの森▷▷ヘッドスネーク登場!!

 ーーグレーの身体。

 長いその胴体をくねくねとさせ、頭は二つ。


 シャーっと長い真っ赤な舌を出すその顔は、恐ろしいとしか言えない。


 なんか食われて飲み込まれそうだ。


 それにこの眼! 霧のなかで光る黄色い眼。蛍光ライトみたいだ。


「なんであんなデカいの? アナコンダが一番じゃないの?」

「ここは“違う”だろ。」


 私の声に、飛翠はため息ついていた。


 怪獣ーー、私の頭にその言葉が浮かぶ。

 森の木よりもデカい。


 見下ろす頭が私よりも大きいんじゃないだろうか。


「これはなかなかの“大物”だね。あんまり出会さないんだけどな。君達……“魔物寄せ”とか特技あんの?」


 と、ラウルさんが私達を見ると、そう言ったのだ。

 その碧い眼は本当に、驚いている様だ。


「え!? なにそれ!? 飛翠、持ってるの?」

「は? んなワケねーだろ。」


 魔物寄せなんて特技あってたまるか!


蒼華(そうか)ちゃん。“紫雷石”は持っておるか?」


 カルデラさんが、ふと私の方を向いたのだ。やっぱり、なんか“不安”と言うか……厳しい表情だ。


 いつも堂々としてるイカついお父さんなんだけど。心做しか顎の下の赤ひげも弱々しい。


「あ。持ってる。」


 “紫雷石”は、雷の魔石だ。

 ロッドについている。


「ヘッドスネークは、“雷”に弱い。」


 カルデラさんがそう言った。


「そうなんだ。」


 私は銀のロッドを持ち、飛翠の少し横に立つ。あんまり、離れられない。


 いやいや。幾ら魔法を使えるとは言ってもね……こんなバカでかい双頭の大蛇を前に、堂々とは立てない。


 くねくねしてて……あの太い尾で殴られたりしたら、死ぬでしょ。間違いなく。


「えっと……なんだっけ?」

「“雷鳴(サンダー)”」


 私がそう言うと、飛翠が答えてくれた。


「よく覚えてるね。」

「気に入ってる」


 あーそうなんだ。 雷好きなんだ。

 お気に入りなのに淡々と言うんだな。


雷鳴(サンダー)!!」


 私はロッドを、向けるとそう叫んだ。

 紫色の魔石が煌めく。


 バチッバチッ!


 と、音がしながらヘッドスネークの頭上から、稲妻が落ちる。


 まるで電流みたいに大蛇の身体を、貫かんと落ちるのだ。


 この魔法の光景は、やっぱり見とれてしまう。

 何しろ……雷が落ちるところなんか、滅多に見ない。


 くねくねと、ヘッドスネークは身体をくねらせた。


「一気に叩くぞ!」


 カルデラさんの声で、ラウルさん、飛翠が、剣を手に駆け出した。


 男三人ーー、ヘッドスネークに向かってゆくのだ。


 にしても、飛翠は“度胸ありすぎ”でしょ。

 怖いという感情はないのかな?


 大蛇を前にしても、勇敢に大剣を奮う。

 カルデラさんが、双頭の頭の一つを引きつけてる間に、飛翠が胴体を斬りつけるのだ。


 その斬撃でゆらゆらと、揺れる大きな身体。


 ヘッドスネークの尾が動く。


「あぶない!!」


 私はそう叫んだ。


 ヘッドスネークの尾が、胴体を斬りつけられたことで、怒りに満ちたのか三人を、薙ぎ払おうとしたのだ。


 私はロッドを向けた。


「“雷鳴(サンダー)”!!」


 私の放つ雷魔法は、ヘッドスネークの頭から稲妻を落とす。


 閃光が走るヘッドスネークの身体は、ぐらっと横倒れしそうになる。


「“皇伽連撃(おうかれんげき)”!!」


 ラウルさんだ。

 剣の二連撃。ヘッドスネークが左に倒れそうになったところを、まるで十字の様に斬撃を繰り出した。


 くねるグレーの身体を斬り裂いたのだ。


「“黒の鉄槌”!!」


 飛翠だ。

 ヘッドスネークの頭の上から、閃光走る斬撃が、振り下ろされる。


 正に……鉄槌!!


「親父!」


 飛翠がそう叫ぶと、カルデラさんがすかさず剣を振り下ろす!


「“蒼の鉄槌”!!」


 おお! 親子連撃!!❨親子じゃないけど❩


 カルデラさんの蒼光りする斬撃が、ヘッドスネークの双頭の左側を、斬り裂いたのだ。


 これがトリプル連撃!!


 私は思わず拍手した。


 パチパチと。


 ヘッドスネークは、身体をくねらせながら倒れたのだ。


 素晴らしい!! ビューティふぉー。


 三人のトリプルな攻撃の前に、ヘッドスネークは、消滅したのだ。


 その体を弾けさせながら。


「やるね。飛翠くん。」


 ラウルさんが、ふぅ。と、息を吐いた。


「アンタもな。」


 大剣を右肩に担ぎ、ドヤ顔な飛翠。


 いやいや。どんだけだよ。

 相手は元騎士だっつーの。アンタはただの荒くれ者。それも、ケンカ大好き人間でしょ。


「……ヘッドスネークが出て来おるとはな。」


 カルデラさんは、渋い表情をしながら剣をしまった。


「どうゆうこと?」


 私はやっぱり気になった。


 カルデラさんは、腕を組む。


「ヘッドスネークは、“水辺”を好む魔物だ。まさかこんな森の中で遭遇するとは、思わなんだ。確かに、冒険者の地だ。魔物生息率は高い。だが……」


 と、何やら考えこんでしまったのだ。


 ラウルさんが腰に剣をしまいながら、


「深く考えても仕方ないでしょ。カルデラさん。今はとにかく……この二人を、“アトモス公国”に連れて行くだけだよ。」


 と、そう言ったのだ。


 へ? アトモス公国?? 連れて行く??


「ちょっとどうゆうこと?」


 何だかイヤな予感しかしないんだけど。


 ラウルさんのブロンドの纏め髪が、揺れる。

 コッチを振り向いたからだ。


「アトモス公国は……“イレーネ王国”と、ちょっと“不仲気味”でね。君達の“盾”になってくれる筈だ。」


 と、ラウルさんはそう言ったのだ。


 すると、カルデラさんが私を見つめる。

 オレンジ色の瞳は、暖かな色をしている。


「ワシやラウル殿だけでは、“イレーネ王”からお主らを守れんでな。昨夜の“討伐命令”からしても、お主らが“偽物”だろうと本気で殺しにくるだろう。」


 と、そう言ったのだ。


 ちょっと待って……それって……


「そんな事したら、“ケンカ”になるんじゃねーの? 国同士の。」


 飛翠だ。


 そう。良く言った! そうだよ。


「大丈夫だよ。“アトモス公国”の“スレイヤ大公”は、気さくな方なんだ。“ヤヌス”とは違う。」


 よっぽど……イレーネ国王の事が嫌いなのだろうか。ラウルさんはしかめっ面だ。


「安心せい。何があってもワシは、お主らと共に行く。それに“情報”を知るにも、“大公”のお力は必要だ。イレーネ国とは近隣でもあるしな。」


 と、カルデラさんはそう言って笑ったのだ。


 飛翠は大剣を下ろす。

 握った。


「親父……。“何かいるぞ”」


 と、辺りを見回したのだ。


 は?? なにセンサーなの!?


 私は近くにいるトーマスくんに、近寄った。


 何かの傍にいないと落ち着かない!


 トーマスくんは、優しい。私を見てくれる。

 つぶらなお目々で。


「囲まれてるね。蒼華ちゃん。もう一戦イケる?」


 と、ラウルさんが剣を抜いた。


 は?? ウソでしょ!?


 と、私が思った時だ。


 霧の森の中から何かが飛び出してきたのだ。

 それは、私達をあっとゆうまに囲んだ。


 向けられるのは弓。


 周りを囲むのは“犬”だった。

 犬の顔をした人間……。


 ずらっと弓矢を私達に向けて取り囲んだのだ。


 猫人(アイウラ)族の次は……犬人ですか??


「“犬人(コボルト)”族か。」


 カルデラさんは、目の前にもいる犬人たちに向けてそう言った。


「懸賞金掛かってるって、聞いたんだ。ソイツらよこしな。」


 と、蒼い毛をしたとてつもなく凶悪そうな顔をした犬が、現れたのだ。


 完全に悪人面をした狼みたいな人……なのか?

 犬なのか……。


 銅みたいな色の甲冑を着ていて、その右手には斧? なんだけど、私の知ってる斧とは違う。


 両刃のハンマーみたいなカタチをした、大きな斧だ。


 兜はつけていないから、その黒い両耳がしっかりと見える。額には三日月型の傷。


 カルデラさん並みに大きい。

 190ぐらいあるのかな?


 カルデラさん、なにげに大きいのよね。

 飛翠よりデカいし。


「このお方達は違う。」


 カルデラさんは怯む様子もなく、そう言ってくれた。


「なに? 似てるけどな。」


 蒼い顔をした犬は、顔を顰めた。


「似てるだけ。だよ。」


 ラウルさんもため息ついた。


 大きな斧を、右肩に担ぐ。

 その肩にも銀のパッドみたいなのが、ついている。


 しかもなんかトゲみたいなのがついてるけど。

 痛そうだな。当たったら。


「まあいい。“親分”に会わせる。ついて来い」


 牙の見えるその口で、そう言ったのだ。

 その蒼い狼みたいな犬人は。


 はぁ。これは……無限に広がる逃亡者の予感。


 何処に行ってもこんな感じなのかな。


 こうしてーー、私達は弓矢に囲まれながら、蒼い犬人に連れられ“コボルトの村”に案内されることに、なったのだ。

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