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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第2章  私達の逃亡生活は、波乱万丈!
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第10話 クタンの村▷▷私達の逃亡理由

 ーー時が止まった。


 私は……今。まさに、この目の前の“ちょっと頼りなさそうな兵士”の言葉に、止まった。


 ダークブラウンの髪から覗くその瞳は、私を明らかに……“憎悪”としか見えない目で睨んでいた。


 どうゆうこと?

 フレア王妃……殺害?


 聖剣が……輝石(クリュス)が……なに??


「オイ! コッチだ!」


 そんな声が聞こえた。


「マズいな。カルデラさん。」

「そうじゃな。飛翠くん! 一旦退くぞ!」


 私は、ラウルさんやカルデラさんの声を聞きながら、振り返った。


 銀色の鎧を着た兵士たちの姿が見えた。

 コッチに向かってくる。


 それを見てなのか……私の目の前にいた男は、隣で倒れている兵士に手を貸した。


 ぐったりとしてはいるものの、肩に腕を回して起き上がっていた。


 生きてた……のは良かったのだが、私はそれよりも“追われる理由”に、頭が真っ白になった。


 本格的に“極悪人”らしい事が、わかってしまったからだ。


 飛翠が、駆け寄ってきた。


 兵士たちは立ち去ってゆく。


蒼華(そうか)! 大丈夫か? お前……真っ青だな。」


 私はぺちぺち……と、左頬を軽く叩かれていた。


「飛翠……」


 私はその手を掴んでいた。


「あ? どーした?」


 飛翠の声すら……遠くに聞こえる。


「私達……“殺人犯”だ。」

「は?? まじで頭沸いたか?」


 私達は……王妃とやらを殺して、王家の秘宝とかを奪って逃げた……“極悪人”で、逃亡者。


 この世界では。


「どうゆうことっ!?」

「あ? だから何だ? ワケわかんねーな。」


 飛翠の心配してるんだか、呆れているんだかの顔を、見つつも私は……どうやら本気で、逃げなきゃマズい! 


 と、そう思っていた。


 ん? いやいや。違うだろ。

 捕まえなきゃマズい! だ。


 本音がぽろぽろと溢れる。弱気な本音が。


「蒼華ちゃん。大丈夫か? 飛翠くん!」


 カルデラさんの声が聴こえる。


「蒼華! 行くぞ。乗れ。」


 飛翠の手を借りながら、私は頭と身体を少し下げてくれるトーマスくんに、跨った。


 飛翠は私の後ろに跨った。

 飛翠が手綱を掴むと、トーマスくんは、走りだしたのだ。


「逃げるぞ!」

「カルデラ様!!」


 兵士たちの声が聴こえる。

 追いかけてくる。


 トーマスくんが走るその足元には、倒れた兵士たちがいた。


 どうやら他四名……撃退したらしい。


 飛翠たちが、兵士たちと戦った所は見られなかったが、いや。この際、そうではなく……。


 私は“逃亡劇の理由”をようやく知ったのだ。


 アムズをーー、走り抜ける。

 馬たちは。


 ラウルさんは、飛翠の乗っていた白馬を走らせている。



 パカ……パカ……


 軽快に走るトーマスくんの背中で、私は飛翠に支えられる様に、跨っていた。


 紅いフルムーンが空の上から、三頭の馬を……私達を照らしていた。



 ✣


 草原を走り抜け、私達が来たのは小さな集落だった。


 森の中にあるその集落は……見た事も無い。

 いや……どっかで見た事はあるんだけど、何だか変った人達の住む村であった。


「ここは“クタンの村”と言ってな。“獣人族”の一つ。“猫人(アイウラ)”族の住む村だ。」



 カルデラさんのその説明を聞きつつも、私は目の前をすたすたと通る“猫”にとても良く似た顔をした人達を見て……納得していた。


 猫ーーなのだ。

 けど……私の知る猫。とは少しちがう。

 街中で、見かけるアメリカンショートヘアとか、所謂、ミケネコとか、スノーシュ。


 可愛らしいネコ。と言うよりも、サバンナキャット……ヤマネコに似ている。


 両耳がぴんっと立っていて、眼が鋭い。

 野生っぽい。


 毛の色は様々で、眼の色も色々みたいだ。

 ただ、人間の様に二足歩行をする猫の姿をした人。背も私より高い人もいれば、同じ様な人もいる。


 服もちゃんと着てる。シャツっぽいのに、ズボンと、オーソドックスだけど、鉄なのかな?

 灰色の胸当てをつけている。


 ただ、足はみんな裸足。爪もしっかり生えてる。


 足の裏には肉球もあるのかな?

 尻尾もふりふりさせながら、歩いていた。


「……猫一族……。すげーな。」


 飛翠はトーマスくんの手綱を引きながら、目を丸くしている。


 私もきっと同じだろう。

 開いた口も塞がらない。


 テントみたいな小屋がたくさん並んでいる。

 集落の真ん中には、焚き火をしていて周りを丸太のベンチみたいのが、囲っている。


 そこに猫人達は、腰掛けていた。

 ちゃんとズボンの後ろから長い尻尾が、にょき。と、出ている。


 あれは……専用のズボンなんだろうか。


「こっちじゃ」


 カルデラさんとラウルさんに、先導されながら、私は槍などを持つ猫人たちを、眺めつつ歩く。


 こんなところで、猫人に会えるとは思わなかった。空想の世界だと思っていた。


 大きなテント。

 黄色い三角テントが、森の奥にあった。


 さっきの集落から少し奥に入ったところだ。


 この森の中で生活しているんだね。


「よく来たね。なんだか騒がしいのは、お前たちの“お陰”かい?」


 テントの中に入ると、少し年代高い女性の声が聞こえた。


 ゴザの様な敷物の上に座る猫人(アイウラ)

 黒いヤマネコに似た人だった。

 両耳がシルバーだ。


 眼は紫色。なんだか綺麗。アメジストみたいにキラキラしてる。


 けれど、その眼はおっかない。

 今にも飛びかかってきそう。


 立膝ついてちょっとアラビア衣装みたいなズボンを、履いている。真っ赤なズボンだ。


 だぼっとしててなんだか履き心地が良さそうだ。

 紫色のショールみたいのを、右肩から掛けていて白の半袖シャツの様なものを、その下に着ている。


 小柄な身体だと思ったのは、その後ろに猫人の男性達がいたからだ。


 真っ黒な毛に覆われた上半身裸の猫人と、その脇には、肩にショルダーパットみたいな銀色のものをつけた白猫の人。


 白猫の方は、黒いズボンに紺のシャツ。

 黒猫は、だぼっとした渋めのグリーンのズボンを履いている。


 どちらも顔はヤマネコっぽい。

 こうして見ると……毛の色は違うけど顔は同じなんだな。男の人の方が、シャープな顔つきだ。この女性は、少し丸みのある顔つきをしている。


 男の人は体格もかなりいい。


 二人とも右手には、鋭い槍を持っている。

 まるで、この女性猫を護るみたいに。


 テントは広く籐の様な枕が置いてあるふかふかそうな、布団が敷いてあった。

 マットレスみたい。


「すまんな。こんな急に。“カレン殿”」


 カルデラさんは、そう言うとござの様な敷物の上に胡座を掻いた。


 下はその敷物しかない。

 ただ、木の床になってるみたいだ。


「急く用があるから、来たんだろ。一泊してけばいいさ。朝になれば“お国”に帰るだろう。」


 黒いヤマネコの“カレン”さんは、右腕に蒼い数珠の様なブレスレットをしていた。


 マーブル模様で少し白が、入っている。

 綺麗な石……。ちょっと見つめてしまった。


族長(リー)。ですが……そちらの者達は。」


 白猫の男の人が、私と飛翠に目を向けた。グレーの眼だ。綺麗な色だけど、おっかない。

 すごく睨まれている。


「違うよ。この二人は。“顔は似てる”けどね。」


 え!? なんか凄く嬉しいんだけど!?

 初めて……違うと、コッチの世界の人に言われたんじゃなかろうか。


 カレンさん! なんていい人!


「そ……そうなのですか……」


 白猫さんはとても、驚いている。


 よっぽど似てるんだな。まあ。あの手配書見ればそうなるか。私でも思ったんだから。


「“シェイド”と“ティア”じゃない。別者だ。」


 膝に右腕乗せながら、カレンさんの紫色の眼が私と飛翠を見つめる。


 シェイド? ティア? その二人が……フレア王妃を殺して……“聖剣”とやらと“王家の秘宝輝石(クリュス)”を、盗んだ極悪外道!!


 ようやく名前がわかった!


「よく見ればわかるんだけどね。ティア王女は、もうちょい……美人だからね。」


 なにをっ!?


 きっ!!


 私はラウルさんを思いっきり睨みつけた。


 え?? ちょっと待って。


「もしかして……”お母さんを殺して逃げてる“ってこと?」


 私はそう聞いた。


「そうだ。ティア王女は……”フレア王妃“。つまりご自身の母上様を……殺害され、王家の秘宝と聖剣を持ち、逃げているのだ。」


 と、カルデラさんの声が聴こえる。


 え!? 私はその“王女様”とやらのせいで……逃亡生活をしている。


 つまりーー、そう言うことだ。


 私は、頭を殴られた様な気がした。

 とてつもなく硬い石かなにかで。


 それぐらい……ショッキングであった。

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