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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第2章  私達の逃亡生活は、波乱万丈!
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第6話 自由の街アムズ▷▷はじめてのお食事

 ーー訪れたのは、地下だった。

 どうやらこの宿の地下に、“お店”がある様だ。


 フロントの脇を通り階段で下に向かった。


 けれど……想像していたのとは違かった。

 円卓を囲み陽気な人達。


 カウンターでお酒を、飲む男の人たち。

 ウェイトレスは、なんだかひらひらのミニスカートはいてて、今にもお尻が見えそう。


 羨ましいぐらいの体型なんですけど。

 脚とか長いし胸も大きい。キュッと括れた腰。


 なんなの。この人たち。

 モデル?


「さすが“自由の街”だな。」


 飛翠の脇をハイレグビキニみたいな格好をした、女性が通ったのだ。


 スレンダーなのに胸元が、揺れる。

 それにこの流れるようなブロンドの髪。


 それを追うかの様な飛翠の視線。いや。目。

 その目は明らかに胸を追っている。


「飛翠!」


 私は思わず飛翠の、その左頬を抓ってみた。


 ぎゅっ。と。


「イデ……。は? なんだ?」

「見すぎ!」


 きょとん。とされてしまったが、いやいや。今の目はエロすぎ!犯罪の目だ!


 ハッハッハ!


 カルデラさんの笑い声が響く。


「ほれ。こっちじゃ。」


 私達は、席に座る。

 円卓は木のテーブルだった。

 ウッドデッキみたいだ。それに椅子もベンチみたい。


 私と飛翠は隣に座った。

 カルデラさんにはこのテーブルが、なんだか狭く見える。


 少し薄暗いけど、レンガ造りのお店は、ちょっといい雰囲気だ。


 ガヤガヤしてるけど、こんなものでしょう。


「いらっしゃ〜い。」


 近寄ってきたのは水色の髪をした女性だった。

 ボニーテールしたお人形みたいな顔をした人。


 凄く綺麗だ。紅い胸元がっつり開いたシャツ。それに、腰にひらっとフリルのついた白いエプロン。


 グレーの布地のスカートなんだけど、短い。

 ぴたっとしててボディコン? って言うの?

 見えちゃいそう……。


「へぇ? すげーな。自由の街」


 飛翠は頬杖つきながらそう言った。

 その目はこの胸元だ。


 ぎゅっ!!


 私は足を踏んづけてみた。

 思いっきり。


「イテ! なんだ? さっきから。」

「べつに。」


 またもやきょとん。とされてしまったが、いやいや。犯罪は許しませんぞ。私は。


「この“モリルのオススメ”と、“ベアー盛り合わせ”これは、ミディアムで。あとはそうじゃな。“カナカナ酒”と、“ベリージュース”を二つ。」


 メニューなのかな?

 なんか木の板みたいのを持ちながら、カルデラさんは、女性にそう言っていた。


 タブレットみたいな大きさだ。

 ここからだと木の板にしか見えない。


 注文している内容もよくわからないけど。


「パンは? “クルミ”と“ヘーゼル”あるけど。」


 と、女性はそう言った。


 ヘーゼル? ヘーゼルナッツ??


「カルデラさん。私……ヘーゼルがいい。」


 私がそう言うとカルデラさんは、驚いた様な顔をした。


「大丈夫か? かなり“渋み”があるぞ。」


 と、そう言ったのだ。


「シブい??」


 私は少し驚いた。


「うむ。酒のつまみにはいいんじゃが……クルミにしといた方がよいぞ。飛翠くんは、さっき食べたからわかると思うが。」


 と、カルデラさんがとても心配そうにそう言ったのだ。


「ああ。クルミにしとけよ。それでも少し渋いぐれーだ。」


 飛翠が私にそう言った。


「そーなの? ふーん。わかった。そうする。」


 食べた人の意見は大事だよね。

 ここは別世界なんだし。やっぱり違うんだな。


 注文が終わるとあとは、待つだけだ。


 私達は、お店のちょっと、奥にいる。


 それにしても……賑やかだ。

 男の人が多い。みんな冒険者とかなのかな?

 カルデラさんみたいに、鎧を着てる人が少ない。


「ベリージュースと、カナカナ酒。」


 女性が運んできてくれた。


 なんだか“樽”みたいなジョッキできた。

 ベリージュースって美味しそう。


 茶色の樽ジョッキに、私は鼻を近づける。


 くんくん。匂いは甘酸っぱそうだ。

 ほんのりとイチゴみたいな薫りもする。


 こく。


 私は飲んでみた。


「わ! 酸っぱい!!」


 隣でも同じ反応をしていた。

 これは……レモンを丸ごと飲んでるみたいな、酸っぱさだ。


「そうか? 人気があるんじゃぞ。」


 と、カルデラさんを見れば口元があわあわだ。


 ビールでも飲んでるのかな?

 白い泡とオレンジのヒゲでなんだか、おかしな事になってる。


「これ……なんのジュース?」


 ベリーって言うから、イチゴとかラズベリーぐらいかと思ってたんだけど。


「“プラムベリー”と言ってな。丸っこい紅い実じゃ。旅先で栄養素として齧ったりする果実のことだ。」


 と、カルデラさんはジョッキ持ちながらそう言った。


 プラムベリー?? クランベリーなら知ってるけど。それとは違うのかな?


「おまたせ〜。ベアー盛り合わせと、クルミのパン。それに、モリルのオススメ」


 注文したものが続々とテーブルに並ぶ。

 お肉だ!


 それもステーキ!!

 まだジュージューいってる。


 それになんだろ? コッチは、モリルのオススメ。だっけ?


 クラッカーみたいのや、チーズみたいの。

 それから葉っぱ。レタスとかじゃなくて、ミントの葉とか、シソの葉みたいなやつが、乗っかってる。


 それに……サラミソーセージ??


 店員のお姉さんは、フォークとナイフをテーブルに置いてくれた。


 へぇ。ちゃんとフォークとかナイフとかあるんだね。箸……はなさそうだけど。


 あ。でもナイフもフォークも持つところが、木だ。なんかお洒落。


 だけど……ナイフはとても鋭い。

 果物ナイフみたいだ。いや。彫刻刀かな?


「いただきまーす。」

「いただきます」


 私と飛翠は手を併せた。


 すると、カルデラさんはジョッキを置いた。


「飛翠くんも言っておったな。それはなんじゃ?」


 と、聞いてきたのだ。

 私はお肉のステーキをフォークでさす。


 銀の大皿に並べられたステーキは、とてもボリュームがある。

 何人前なんだろう。


「食べる時のあいさつ。私は……お母さんに教わったの。“命を貰うからいただきます”だって。」


 と、私は……母親からの教えを伝えた。


「ほぉ。いい事を言うな。命を貰うか。」


 と、カルデラさんのオレンジ色の強い瞳が丸くなる。こうやって暗いところで見ると、ライトブラウンよりも、オレンジに見える。


「食べ終わったら“ごちそうさまでした”。命をいただきました。って言う意味があるんだって。」


 と、私はお肉を頬張った。


 ん〜……美味しい。

 ちょっと硬めな気もするけど、美味しい。


 脂が少なめで、ヘルシーな感じがする。

 ロースみたい。焼き肉の。


蒼華(そうか)ちゃんの母上は、良い方だな。心配しておろう。」


 カルデラさんはふとそう言った。


「……大丈夫だよ。私の両親は“いない”から。」


 隣で飛翠の手が止まった。


「蒼華」

「カルデラさんにはお世話になってるし、それに卑下する事でもないでしょ。本当の事なんだから。」


 飛翠の心配そうな声がした。

 それに、カルデラさんの瞳も少し揺らぐ。


「そうじゃったか。面目ない。」

「お母さんは病気で亡くなったし、お父さんは交通事故。カルデラさんが謝る事じゃないよ。」


 カルデラさんは目を丸くした。


「こうつうじこ? それは……アレか。船や荷馬車などの事故か? 」


 あ。そっか。車が無いのか。


「そう。乗り物の事故。」


 私がーー、両親の事をこうして飛翠以外に話すのは、はじめてだった。父親が亡くなった時に、少し嫌な思いをした。


 だから、誰にも言わなかった。

 こうして淡々としてしまうのも……口にしてしまうと……今でも“涙がでそうになる”からだ。


 お母さんは本当に私がまだ小さな頃のことだから、そこまで感傷に浸る事もなくなったのだけど。


 お父さんは……まだ、浅い。

 だから、やっぱり……口にすると正直。


 それでも、カルデラさんに嘘はつきたくなかった。


「そうであったか。飛翠くんがおって良かったな。これからはワシもおる。安心せい。」


 カルデラさんは……“お父さん”みたいだ。

 その笑顔を見るとホッとする。


 なんだか……私は、嬉しかった。

 お父さんといるみたいだった。

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