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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第6章 イシュタリアの闇
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第21話 本当にキレさせてはいけない男

 「僕……キレていいですか?」

 はっ。とした。

それは我らがアイドル……白柴犬のシロくんで、振り返ると、ブルーロッドを握り締めていてお父さんに向けていた。

 「わっわっ!どーしたよ!?シロくんっ!」

 私が言った時、彼はそのロッドの切先をお父さんから空中に向けた、更にロッドを下げて何やからブツクサと言い始めた。130㌢程度の体長しか無いシロくんにこのロッドは大き過ぎて、私と飛翠はプレゼントする時にとても困惑し、彼に合う様な短めのロッドを勧めた、でもシロくんは笑顔でこれが良いと買ったモノだ。そのロッドは正直……私の身長155㌢より高く、多分170近くはあると思う。蒼い魔石で造られた“水流の魔石”のロッド。尖端に大きな水流の魔石が埋め込まれていて、杖の内部はまるで水が流れているかの様に流動していてとても美しい。

 「シロ?どーした?」

飛翠が彼の言動に驚き声を掛けた。けど、シロくんはぎゅっとロッド握りしめてガッ!と、地面に突き刺した。そして両手で蒼いロッドを握り締めて、私達の頭上をうようよと飛んで廻る黒龍を睨みつけたんだ。それは、まるで“飼い主”に危険が押し寄せているのを悟った……わんこの様な恐ろしい顔だった。

 「シロくんっ!?」 

 私は驚いて彼に声を掛けたんだけど、シロくんはその顔で空を飛び交う黒龍達を睨みつけながら言ったんだ。でも……日本語では無いので声は聞こえるけど何を言ってるのかは解らなかった。

 「阿呆ども死ねや。」

だけど、それが終わると彼は言った。

「「は??」」

 私と飛翠は同時だったーー、その1言に驚いて啞然として声を発していた。でも、シロくんは全く私達に興味はなくて、蒼いロッド握り締めながらまた何かを言い始めた。でも、今度は聞こえた、ハッキリと。彼は上空を飛ぶ黒龍達を睨みながら叫んだ。

 「水流の女神!制裁をっ!」

カッ!!

 と、彼の小さな身体が蒼く閃光放った。

「うわっ!」

 それはとても眩しくて日光サンサン、太陽直視したみたいな感じで私は眼を瞑った。でも、シロくんの声は聴こえる。何時もの可愛らしい声じゃなくて野太くて警戒してるわんこの吠え声みたいなトーンだった。

 「“戒め受けし水流の女神アディーテ!開門!!”」

シロくんの声が聞こえた。

 私は何??と、思い眼を開けた。ムリヤリ!

そしたら見えた……、シロくんのロッドの尖端から蒼い弾丸が空に向かって放たれるのが。

 「えぇ………っ!?」

私は驚いてもう……言葉がそれしか出なくて、青空快晴真っ青なお空様に蒼い弾丸が放たれるのを眺めていた。

 (私のファイアーボールより威力あるしデカいじゃんよー。)

 なんか、全てに置いて負けた気がした。

でも、そんな事よりも……シロくんの弾丸がブチ当たった白い雲が突き抜けた。ボールでも当たったかの様に穴開けてもっと上空に突き抜けて、その穴から蒼い光を放つ雲がまるで雲の抜け穴埋める様に降りて来たんだ。

 「ちょ…何あれ?」

 私は例の如く飛翠の腕を掴み聞いた。彼は眺めながら言う。

「つか……見ろ、何か降りて来た……。」

 え??と、私はその声に雲を見た。白い雲が渦を巻きなが動く中、さっきシロくんが放った魔弾で穴が開き蒼い雲で補填された場所から、蒼い光を放った人型が降りて来たんだ。

 「は??何?」

私は驚いてそう叫んだが、ネフェルさんの声がした。   

「ああ……彼は……“禁呪”の遣い手でしたか……、これはちょっと……計算違いでしたね。」

 え??と、私がネフェルさんを見た時だった。カッ!と、上空で何やら光が放たれた。はっ。として、私は空に目を向けた。蒼い光に包まれた人型が降りて来た。

 顔は蒼い兜を被っていて鼻先と口元しか見えないけど、その兜の額には銀色のユニコーンみたいな角が生えてた。しかも兜の下からゆらゆらと靡く銀色のロング髪は腰元まであった。

 蒼い全身アーマー……、それを着て両手で蒼い光放つ刃のレイピア握り締めながら降りて来たんだ。

 でも、驚いたのはその大きさ。彼女はデカい。

プロレスラーみたいな体格なんだけど……体長がデカい。どんぐらい?って聞かれても解んないぐらいデカくて、身長180越えの飛翠より圧倒的にデカいのは解った。

 「な……なんなの?」

私から出る言葉なんてそれぐらい。驚くばかりでもうどう反応していいか解らなかった……。

 「禁呪とは?」

飛翠が横でそう言った。

「は?知らんがなっ!」

 私が取り敢えずの反応で答えると、飛翠は ふぅ。と息を吐き握っていた黄金の光を放つ大剣を下げた。

 「だよな。」

 彼は言うと少し後ろに居てロッド握り締め未だ力を籠めているシロくんを見て言った。

 「シロ、アレは何だ?つかお前……何しよーとしてんだ?あ?正直に話せ、てめぇはなにを何処まで隠してんだ?」

 飛翠は彼を睨みドス効いた声でそう言った。

(え?シロくんが隠してる??どーゆうこと??)

私はそう思ったけど……、実際にこのちょっと怪奇現象みたいな感じにはついていけてない。だからぎゅっ。と、自身のロッドを握っていた。

 「……………。」

 シロくんは黙ってたけど、空から降りて来た蒼い騎士が気になるのかそちらをチラチラと見てた。すると、飛翠が自身の持ってた黄金の光放つ大剣を、ドカっ!と、地面に突き刺した。ビクッと、私は隣で放たれたその物音にビクついた。

 彼は腕を組み俯いたシロくんを見て言った。

「俺に言えねー力なん?あ?てめぇ……蒼華に近付いたのは殺すつもりじゃねぇだろーな?」

 あ?え?と、私は驚いた。けれども、シロくんが慌てた様に私の驚きのリアクションを吹き飛ばした。

「違いますっ!!“禁呪”は危険なんです!僕は……ずっと誰かを救いたくて、その方法は無いかと探ってました!そこで行き着いたのがこの“禁呪”なんです!」

 シロくんはそう言うと上空に目を向けた。私はそれを見て彼の視線に習う様に目を向けた。大きな女性騎士が空から降り立ち、とうとうこの草原に足を着けていた。

 シロくんの必死な声が聞こえた。

「飛翠さんっ!後……10分もすれば僕は死にます。“禁呪”とはそうゆうことなんです!」

 えっ!?私がシロくんを見るとネフェルさんが言った。少し張り裂けそうな声で。

「その通りです!彼は貴女達の為に“解放”した、この局面を終え次に進む為に。飛翠くん、君は出来るか?それが。」

 ネフェルさんの言葉に私はーー飛翠を見れなかった。怖くて。でも、彼は地面に突き刺した大剣を抜き言った。

 「あ?舐めんな、惚れた女の為にくれてやるよ、この命で済むなら。」

 私はーー、飛翠の顔は見れなかったけど、顔が熱くなったのは知った。

 (………私だって……!)

同時にそう思って、私は顔を上げてネフェルさんを見て言った。

 「私だってそうだ!飛翠の為なら例え火の中水の中だ!」

そして、、、シロくんを見て言った。

「シロくん!私は貴方も大切!だから時限爆弾みたいな力は使うなっ!貴方が死んだら私はきっと私を怨んで貴方の後を追う!貴方は私にとって特別なのっ!」

 「……………っ。」

 とても驚いた顔をしたシロくんを見て、私は言ってて情けないけど涙滲んでしまった。でも、言わずにはいられない。

 「死ぬなっ!!これは私からの命令だっ!破ったらお前のこと一生嫌いになるからなっ!大っ嫌いだからなっ!!」

 そう叫んだらシロくんは……ふふっ。と、力無く笑った。でも、くりくりっとした黒いお目々からは涙がほんのり滲んでた。

 「……大っ嫌いは……イヤだな……僕。」

シロくんのその言葉に私は怒ってたのに、きゅぅぅんっとキてしまった。

 (ちきしょーっ!!小型柴犬可愛い過ぎんだろがいっ!)

可愛いのよ。小型柴犬の困り顔は。くりくりっとしたお目々で見つめられたらそりゃア〜タっ!なぁんも言えませんわっ。 

すると、飛翠が言う。

 「で?シロ、その禁呪とやらで呼んだ奴がお前の命奪うまであと何秒?」

 あ。と、私はその1言に緊張感が一気に漂った。シロくんは、飛翠を見て言った。

 「9分35秒です。」

 「は?何でそんな正確なん?」

飛翠が聞くとシロくんは右手を少し掲げた。ポンッと、そこに怒り顔の黒い球体が現れた。更にその眉間にシワ寄せた野球ボールぐらいの球体の額にデジタル時計が表示されていたんだ。

 「えっ!?バチの時限爆弾っ!?」

私が聞くとシロくんは言った。

 「“禁呪”修得するとコレ貰うんですよ、僕は“ゼクセン様”に貰いました。」

 は??と、私と飛翠は同時に聞き返した。でも、シロくんは真剣な顔で言った。

 「僕があの時……奴隷の世界から抜け出す為に必要だったのは“力”です、仲間を逃がす為の。その時にゼクセン様がこの“禁呪”を授けてくれたのです。ですが僕は魔法使いではないので、ゼクセン様が貸してくれた力で使えたんです。だから、僕が魔法使いになろうと思ったのはこの禁呪を使う為なんです。」

 恐ろしくも…………真実の言葉。

シロくんの本心を私は聞いて思わず……、草原に立つ蒼き騎士を見てしまった。

 

 “シロの命……残9分”                       

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