第17話 蒼華父、降臨!
緑の台地……、と言うか真っ直ぐに何処までも続く草原。そこで、私と飛翠の魔法剣は炸裂した。
黒い騎士達……ディアマントス達の身体が吹っ飛んだ。
いや? 最後の電撃みたいな雷鎚で木っ端微塵に吹き飛んだ。
(つか……イレーネ王にやった魔法剣とは全然違う……、格? や? 力が違う。)
爆風と黄金の光が荒れ狂う草原を見て、私はア然、茫然だった。けれども、直ぐに聴こえた。
「すっげ! 飛翠、嬢様っ。すげぇっ!」
蒼い狼犬のグリードさんがむっちゃ笑いながら言った。更に、
「蒼華姉様っ! 凄過ぎですっ! なんですか? 今のは。聞いたことの無い“魔法”でした。」
白い紀州犬に似たわんこのシロくんが、グリードさんに何故か抱きかかえられて歓喜の声をあげていた。グリードさんはシロくんを抱っこしながら、戻って来る飛翠を見て更に言った。
「飛翠、最強過ぎんだろ? つか、何なの? 今の。」
狼犬なのに人間みたいな笑顔で飛翠に聞いてるグリードさんを見てると、人間と別種族の違いって何なんだろ。って思ってしまう。だって、飛翠はそんなグリードさんを見てむっちゃドヤ顔で、無邪気に笑ってるんだ。
親友の“隼人くん”と居る時みたいに。
「お前まで聞くんじゃねぇよ、解るワケね。」
飛翠は右肩に黄金の大剣乗せながら笑ってそう言った。グリードさんは、それを聞くとシロくんを降ろしながら
「あー……だよな。つか、やっぱ謎。お前らのその“武器”と、“チカラ”。」
そう言った。
地面に降ろされたシロくんが、蒼い“水流の加護”を受けたロッドを携えて言った。
「“聖上界”の魔法なんでしょうか? 僕は魔導書を読んで来ましたが……“聖上の怒り”、それに前にも蒼華姉様の放った魔法は聞いた事がないんです。」
シロくんは言うとつぶらな黒いお目々で飛翠を見た。
「飛翠さんの“剣技”……、いえ、アレは僕の思うところ……“剣技と魔法”が一体化していて、どう考えても“魔法剣”なんですよね。剣技と炎の力を合わせた技でした。」
シロくんが言ったその後でネフェルさんの声が聴こえた。
「アサイラムは謎多き民であり、“流浪の城”。」
「え?」
その声に振り返ると、ネフェルさんはディアマントスが消え去った草原を眺めていた。
けれども、彼は言った。
「それは聞けば解るでしょう。」
と。
その声に私は はっ。とした。何故なら気配を感じたから。
私達の少し後ろに金色の光に包まれて“その人達”は降臨したのだから。
キラキラと金色の光に包まれて2人は降り立った。緑の草原の中に浮いた存在、そんな感じだけどその光は優しくて目を細めなくてもいいぐらいの……、春日和の陽射しみたいだった。
「………親父さん?」
声を発したのは飛翠だった。
(あ。やっぱ………似てるんだ………。)
私はそう思った。私も思ったからだ。
飛翠は……私の父親を知っている。まぁ、幼馴染なんで、家族ぐるみの付き合いしてましたので。
それよりもお父さんに似た人は、金色の光の中で着たことねぇだろ。な、と言うシーラさんと同じ様な“キトン”姿だった。
しかも、全身を布に纏って黄金の光放ってるから、なんかむっちゃ神々しい。けれども、その人は笑って言った。
「飛翠、久し振りだね。元気?」
と。
笑った顔は……そう、“お父さん”なんだけど……、その髪は私と同じダークブラウンじゃなくて、なんか金色の髪になってた。しかも、むっちゃさらさらっとしてるブロンド。
でも、そう言って笑った顔は“お父さん”だった。
(や、落ち着け。私。ここは異世界、お父さんが居るワケない、つか、お父さんは私が中2の時に交通事故で死んでる。)
私はぎゅっ。と、ロッドを握った。
(……それに……何? あの女の人は……。)
そう、お父さんにとても良く似た人の隣に居るのは、三編みサイドアップのブロンド髪をした女性。
それも、美しい人でキトン着てて正に“女神”みたいな人。優しげに微笑んでるけど、蒼い眼が煌めいてる。マリンブルー。そんな色の瞳が、私を見ていた。
(何なの? 本当にお父さんなの? つか、その人はなに?? むっちゃ神々しいんですけど??)
私は瞬間的だった。黄金のロッドを2人に向けた。
「何なのっ!? 今度は“お父さんの偽物”作って手配書でもバラ撒く気っ!? 私のお父さんは死んでる! 交通事故で!」
そう叫んだ時、隣に居たシロくんとグリードさんが同時だった。武器を向けたんだ。
「は? 嬢様、亡霊かっ!?」
グリードさんは両刃の大きな斧を向けて言った。そして、シロくんは蒼いロッドを向けて怒鳴っていた。
「何者だっ!! 蒼華姉様をこれ以上苦しめるなっ!!」
でも、そんな私達の激昂振りに反する声が聴こえた。
「阿呆。良く見ろ。“親父さん”だ。」
飛翠の声だった。彼は私達を振り向くことなく、構えていた大剣を降ろして言った。
「俺にこの“剣”をブン投げたのも親父さんだ、聞いた事のある声だった、だから俺は“察した”。何となくだが、俺らに与えられた“チカラ”に意味がある。と。」
私はそれを聞いて飛翠に言った。
「そーゆうの言って貰えますっ!? 私は独りでてんやわんやなんスけどっ!?」
でも、飛翠は私を振り返って言った。
「お前は百聞より一見な奴なんで。つか、リアルに見ねぇと納得しねぇし理解しねー、想像力乏しいバカ。言っても解かんねぇだろーが。」
私は……うっ。と、言葉に詰まってしまった。
「え? てことは? お父さんなの??」
私は、けれども聞いた。ダークブラウンの髪がブロンド髪になった、中年男性……はい、私の父親にそっくりな人に。
黄金の光に包まれたキトンを着たその男性は答えた。にっこりと笑って。
「はい、“桜木颯“、正真正銘、お前の親父です。」
(まじかっ!!)
私はそれを聞いてただ、目を見開くだけだった。