第16話 魔法剣とは
“魔法剣”……、えと? 確か……魔法使いと戦士が力を合わせて発動する“魔剣技”だっけ?
私と飛翠は1度、コレに似たよーなモンをやった事がある。正解かどーかは解らない、でも、あの時たしかに私の魔法を飛翠が受止めて、彼は“紅炎の魔法剣”を使った。
そう、イレーネ王との戦いで。
(出来たんだから、今回も大丈夫。)
私はぎゅっ。と、黄金のロッドを握り締めた。目を閉じる。
(集中っ! 兎に角……何でもいい。魔法と剣の力なら。でも……何を? )
何の魔法を使えばいいのか。それが解らない。紅炎? 樹氷? はたまた、大地? それともオラオラな碧風??
(待って。飛翠は魔石しか持ってなくて……、私の魔法が魔石よりも強いのは、“継承石”があるからだ。つまり、イフリート達との“契約の証”。それがあるから強い魔法を使える、てことは? 私は精霊と契約してない魔法使いだから、まだヨワヨワ?)
聖上界とやらの魔力とロッドでなんか有耶無耶になってて、良く解んない状態だから、ココは一旦整理!
(あ。でも 待てよ? ゼクセンさんのお陰で私は魔法使いになったんだっけ? てことは? 継承石とか関係ないってこと?)
今迄は、魔石……所謂、基礎中の基礎その魔法と、継承石の魔力で何とか魔法使いに仕立て上げられた私。
でも、今はゼクセンさんの力で私は魔法使いになった。つまり、精霊と契約してる魔法使いと同じってことだ。よね?
(でも、不確定。答えは解らない。ゼクセンさんはもういない、聞きたくても聞けない。それに……。)
私は目を開けた。目の前には飛翠が居る、イフリートとタイラントの力技でブッ倒れてるディアマントス……“騎士達の亡霊”……、10人も居る召喚獣だ。それを睨みつけてる飛翠が。
私は彼の背中を見ながらぎゅうっ。と、ロッドを握り締めた。
(魔法剣……、私が飛翠に魔法を放ってそれを受けて、彼は“化身”みたいになる。でも……もし間違ってたら……? 只の攻撃になって……飛翠を傷つけるかもしれない。)
私は不安になる。
(あの時は上手くいった……でも、今回は? どうしよう……、何を放てばいいの? ゼクセンさん、教えて。ディアマントスを倒す為にはどうしたら……っ。)
私がそう思ってると飛翠が言った。
「蒼華! 武器の力。それでいい。」
「えっ??」
飛翠が私を振り返ってそう言ったんだ。彼は黄金の大剣を握りながら、私を見て強い口調で言った。
「お前が持ってる“ロッド”の力、それを放てばいい。悩んでんじゃねぇよ、そんなヒマねーわ。」
飛翠はそう言うとディアマントス達の方を見た。
(ロッドの力?? )
私は黄金のロッドを見つめた。
黄金のロッドの先端には煌めく円球。でもそれは黄金の光放つ水晶みたいなものだ。その円球の周りに生える黄金の両翼。それは、バサッ、バサッと羽ばたいてる。
(この力をどーしろって?? つか、放つって……、闇雲に思ったことを言えっつの?? 失敗したら飛翠はどぉなんのよっ!?)
相手に……飛翠に魔法をぶち当てて発動させる? か、どーかは解らない魔法剣。でも、私達はそれで上手くいった。その時は無我夢中で、魔法の事も良く解ってなかったし、イケちゃったけど、今は怖い………、正解が解らんから恐い。
(どうしよう……何をどうすれば……。)
私がそう思ってる時だった。
『蒼華……、大丈夫だ。お前の持つロッドは、“聖魔女の杖”。それは、お前の為のロッド、武器。そして、飛翠の持つ大剣……、“聖戦士の大剣”は共鳴する。信じよ、お前達の“絆”を。』
聴こえたんだ………。
それはとても懐かしい声だった。
(………お父さん??)
そう、私のお父さんの声だった。少し掠れた優しい声、それが私の頭の中に響いた。
『蒼華、いいか? 念じろ。お前のロッドは“力”になる。大丈夫だ、飛翠はいつだってお前と共にある。』
(お父さんっ! 聞きたいこといっぱい……)
『ハイハイ、こっちも言いたいこと沢山なんで。兎に角、今は集中しろ。蒼華。お前は知ってる、“魔法の言葉”を。』
お父さんの言葉を聞いた後だった。
私の脳内に何やら色んな“呪文”と言うか……何やら色んな言葉が巡った。そして、その中で1つのワードがぴこりんっ。って、光った。や? 残った、脳内に。
(あ。コレ??)
私は脳内に光るワードを浮かべながら、お父さんに聞いた。
『そ。ソレ。ブッ放せ、蒼華。』
お父さんの声に私はぎゅっ。と、ロッドを握り締めた。
「おけぇい♪」
私はロッドを握り締め目を閉じた。
(大丈夫。私と飛翠なら大丈夫。お父さん………、お願いっ。飛翠を守って!!)
恐いので兎に角、それだけは念じつつ、私は飛翠にロッドを向けた。目を開き叫んだ。脳内に煌めくワードを。
「“聖上の怒り”!!!」
私のロッドの先端……黄金の水晶が煌めき、カッ!! と、閃光は放たれる。それは、飛翠に一直線に飛ぶ。黄金の波動が。彼はそれを背に受け、黄金の光に包まれる。
飛翠は黄金の光に包まれ……弾丸の様に猛スピードで、突っ込んだ。大剣を構えディアマントス達に。
けれども、彼はその大剣をディアマントス達の前で大きく薙ぎ払う。騎士達の身体を一刀両断……、上半身と下半身を切り裂いた。10人もの騎士の身体を。
ズバァッ! と、切り裂く音が響きその後で黄金の炎が彼等を焼く。更にその頭上から黄金の雷鎚が降り注いだ。
ドゴォォォッ!!
物凄い衝撃音と、黄金の雷鳴、雷鎚。ディアマントス達は、閃光の中で焼け焦げ焼失した。
突風と閃光で私は目を半目しか開けてられなかったけども、彼等が消えたことは解った。
「………まじか………。」
私は目を見開くしかなかった。




