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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第6章 イシュタリアの闇
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第13話 チーム蒼華の誕生

 「“碧風”!!」

 碧風の神獣アトモーネスが、空に浮きながら バサッと、碧の両翼を羽ばたかせて叫んだ。

 両翼から放たれたのは碧色の風。

でもそれは突風の様な強力なモノで、1列に並んでるティア王女が残していった彼女の神獣達に直撃したんだ。

 それは物凄い衝撃だったらしく、一斉に揃って吹き飛ばされたんだ。神獣たちが。

 戦神オーディンは乗ってる馬ごと吹き飛ばされてた。 

黒い全身鎧着てる真っ黒な騎士たちも、総勢10人が揃いも揃って吹き飛んだ。

 「すげっ。」

 隣に居るサラ艶、黒髪の飛翠(ひすい)が目を丸くしていた。 

 「え? ちょっと……スゴ過ぎん?? 私、あんなの喰らってたら即死で御座い。」

 何しろ彼等は数キロは吹っ飛んだ、目の前から消えたんだから。私はこの魔法を使われなくて良かった。と、つくづく思った。

 あー……隣で飛翠が強く頷いた。

 「ソクシでうぇい♪だったな。お前。」

 飛翠はぷっ。と、笑った。

 「あのねっ。なんか最近、軽くない?? グリードさん寄りなんだけど!? キャラが。」

 飛翠は至って真剣な顔をして言った。

 「キャラゆーなし。」

 バサッ、と、背後で大きな羽音が聴こえた。振り向くと碧の雄鶏の姿をした大きな鳥様が、ふぅ。と、ひと息つきながら草原に優雅に着地した。

 碧色の豪華なトサカの羽根達がひらひらしてる。しかも、何か煌めいてるし、その顔は正にドヤっ。だった。

 「あー……女王様、お怒りになっても私にはアレ使わないでね、ソクシでうぇい♪なので。」

 私が言うと

 「は?」

 碧の眼を大きく見開いて きょとん。とされてしまった。

 「(ねぇ)さん、アイツら問題無さそうだけど? どーするよ?」

 そう言ったのは鬼のタイラントだ。

 「姐さんっ!?」

 私は驚いてアトモーネスと並ぶタイラントを見ていた。

 (今迄……彼等とじっくりゆっくり話したこと無かったけど、なんか“立ち位置”むっちゃしっかりしてそー。) 

 う〜む。と、アトモーネスは草原の先の方を見て唸った。私もその視線の先を追った。吹き飛ばされた神獣達が、のしのし。と、歩いて来るのが見えた。確かに生きてるし動いてる、彼等は。

 でも、紅い炎を口から吐く紅炎の神獣イフリートが言ったんだ。

 「術者(ティア)は居ない、消し飛ばせば戻っては来ない、バハムートが降臨しないのもソレが理由。」

 すると、イフリートの隣に居る蒼い海蛇のリヴァイアサンが言った。

 「ならば簡単。我等で消せると言うこと、この地から。」

 リヴァイアサンの身体はまるで水が流れてるみたいに揺らいで不思議だ。

 「あー…つまり? 一時的に消し飛ばせるってハナシ?」

聴いたのは飛翠だ。すると、アトモーネスが頷いた。

 「ああ、奴等は“創られた存在”。つまり、“契約してる召喚士”が死なないと何度でも復活する。それが私達と先ず“異なる点”だよ。」

 あ。と、私はイフリートとリヴァイアサンを見た。

 「そか、イフリートもリヴァイアサンも“消滅”したんだった、1度。」

 そう、彼等は私を庇い生命を落とした、それは紛れもなく事実だ。更にアトモーネスは言った。

 「私達“神獣”と“精霊”は、現存する生命体だ、だから生命も落とすし傷つく。人間と何ら変わらない、その為に“回復魔法、アイテム、生命回復魔法”がある。けれども、“合成神獣”達は召喚士が死なない限り生命は消えない。だから、“魔導士”でないと“契約”出来ない。魔法使いでは“器”が足りないのだ。」

 碧の眼が私をじっ。と、見た。

 (あ……むっちゃ心がイタいっ。つか、解ってますよっ!)

私は彼女のその視線に敢えて言いました、ハイ、心抉られるけど言いましたともっ。

 「そーね、 はい。私みたいなド素人の魔法使いじゃ、そりゃ彼等の生命は守れませんね。」

 (う〜……心抉られるっ。)

けれども? 女王様アトモーネスは ふふっ。と、なんか愉快そうに笑った。

 「あれま。私はそこ迄言うておらぬぞ? そなた、自覚あったのか。」

 ムカちんっ。と、私はイラっとしました。

 「言ってねーけど眼は言ってたっ!」

 「ホホホ。気の所為、気の所為♪」

アトモーネスはとっても楽しそうに笑った。

 あー……と、飛翠が何やら顔を引き攣らせたのはそんな時だった。

 「蒼華(そうか)、お前の“メンタル師匠”がすげ睨んでっけど?」

 「えっ!?」

 私はその声に視線を向けると、アトモーネスから少し離れて横に居る、ネフェルさん、シロくん、ハウザーさん、グリードさんが視界に入りました。 

 で、ハウザーさんとグリードさんは引き笑いしてるんだけども、、、シロくんがネフェルさんを、何だかとっても不安そうに見上げてた。ネフェルさんのお美しい整った顔が……歪みに歪んで、ブチ切れ5秒前みたいになってた。

 「あ。師匠っ!」

 私は焦ってそう言ったんだけども、ネフェルさんは言った。ギロリ。と、私達を銀色の眼で睨みつけながら。

 「揃いも揃って緊張感はねぇのかっ! あ"?」

 怒鳴られたのである。

 「「「「「さーせんっ!!」」」」

 勿論、謝ったのは私と神獣達である。

 

✢✢✢✢

 

 草原に風が吹く。

ゆっくりのんびりピクニックでもしたい。なんて、思う草原だけど、そんな場合ではない。当然。

 数キロ程度、吹っ飛ばされたティア王女の神獣達がのっそのっそと歩いて来る中、私達は神導者ネフェルさんを囲んだ。勿論、神獣たちも。まるで、ツーアウト満塁、逆転のチャンスを臨む野球部員達の様に円陣組んでたんだ。

 彼の手の中にある“神導書”が捲れ、開く。そして、ネフェルさんは呆れた顔をしながら言った。

 「お前達に任せてると終わらない。」

私達……、いや、私と神獣達は前屈みでネフェルさんを見てるんだけれども、飛翠達は堂々たる姿勢でネフェルさんを眺めている。       どうにも……エラーしまくり、ここぞと言う時に打てず三振ばかりの野球部員の気持ちになった。

 「スミマセン。」

 私が言うとネフェルさんは はぁ。と、溜息ついて言った。私ではなく、なんか悄気げてる神獣たちを見て。

 「召喚士が阿呆なら召喚獣も阿呆ばかりか。良く解った。」

 (うわっ。毒! 毒吐くじゃんよーっ!)

グサっ。と、私のメンタルは彼の1言がナイフみたいに突き刺さった。

 「ネフェルさん……俺ら頑張ってると思うけどなぁ?」

 そんな中、言ったのは鬼のタイラントだ。けれども、ネフェルさんは彼をギロリと睨み言った。

 「何を? バハムートを倒す事に躍起になり、術者(ティア)を逃しておいて何を言う? アトモーネス!」

 更にネフェルさんはアトモーネスを睨みつけた。

 「ハイ!」

アトモーネスはびしっ。と、翼折り畳み直立不動になった。

 「お前が指揮を取るならしっかりと役割を伝えろ! 感情、衝動的に動いてる様じゃ指揮を取る資格はない!」

 ネフェルさんが言うとアトモーネスは ああ……。と、大きな頭を項垂れさせた。しょんぼり。としたのだ。

 更にネフェルさんはイフリートに言った。

 「お前達は戦争も経験してる筈、なら解るだろう? “合理的”に動け! そして“目的”を見誤るな!」

 イフリートはそれを聞くと はっ。と、した顔をしたんだ。

 「……人間と共に戦うと言うことは……、ソレか。」

イフリートがぼそっ。と、言った。すると、ネフェルさんは言う。

 「自由気儘に振舞う……それは“強者”になれば誰もが望む事だろう。だが、お前達は既に“強者”だ。その力を無駄に誇示する必要はない、誰もが解っているし誰もが認めている。」

 ネフェルさんの言葉に彼等は、自然と身体を起こし真剣な顔をし始めた。私も……ネフェルさんを見つめた。彼は今……“私達をチーム”として纏めてくれてる。そう思ったからだ、それに私ではこんな言葉も伝え方も出来ない。“経験と器”の違い……それを、私は知った。

 「卑屈になり力を見せつける事ばかりの“支配者”ではなく、この先、新たな“支配者”として君臨する為にも、お前達は変わらなければならない。それが今だ。」

 ネフェルさんが言うと神獣達は目を輝かせた。イフリートが私と飛翠を見た。紅炎の息を吐きながら彼は言った。

 「ああ……、“蒼華”……“飛翠”……、お前達は俺達を変える“救世主”だったんだ……。」

 何だか呟く様だったけど、でも彼の紅炎の眼にメラメラと炎が宿った。そして、アトモーネスがバサッ。と、翼を羽ばたかせた。

 「ゼクセン殿も……喰えぬわ。最後の最後まで。そうか……、私達は“変われる”のだな、まだ。」

 碧の眼が煌めく。そして、その隣に居る鬼のタイラントが言う。

 「人間と共に戦う……、“目的”……。うん、なんか解った。」

 白い八重歯の様な牙を見せて彼は無邪気に笑った。

そして……樹氷の獅子ライムスが私を見つめた。

 「蒼華……すまぬな。酷いことをして。幾ら試練とは言え……お主を傷つけた。我は共に戦うよ、お前がこの先、何処に向かおうとも。」

 白氷の様な煌めきを持つ眼で私を見つめて、氷の獅子は言った。そして、蒼い海蛇……リヴァイアサンも。

 「蒼華、そして…飛翠。お前達に出逢えたことはやはり……“ゼクセン殿の土産”。人間と共に戦う……、未知数だが俺はお前が好きだよ、蒼華。お前は不思議な人間だ、だから共に戦う。この先も。」

 私は……驚いてしまっていた。皆のその言葉に……。

でも、これから先……何が起きても大丈夫。そう思えた。彼等の強い眼差しを見て。

   

 

    

        

 

 

 

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