第12話 実は? 蒼華と神獣たちは最強説。
緑の草原にでっかいクレーターが出来ていた。大きな穴……。
巨大隕石でも落下したのかと思うぐらいの凹み。緑の草原だったのに抉られた地面は、真っ黒だった。
そして……その前に立っているのは大地の暴君。大地の神獣だ。
彼はグレーっぽいセメント色した長い髪が特徴的で、腰元まであるんだけどゴツゴツしてる。なんか岩みたいに固まっていて風が吹いても靡く気配はゼロ%。頭の上には黄色の山のカタチした、石が3本突き刺さってるんだよね。や、生えてるのか。それが角みたいに見える。
鬼みたいな風貌と顔。角もあるし口元の両端には白い牙もある、だから鬼だと私は思っている。眼も黄色く光る三角眼。身体もイフリートみたいにむっちゃ筋肉ムッキムキ、腹筋8パック。それに腰に虎巻してるんだ。虎柄のサロンみたいなヤツ。その下からナマ足全開なんスけども……、筋肉がエグい。
無駄な脂肪を無くし、鍛えあげた筋肉質な身体を持つ世界イチのボディビルダーもビックリすると思う。
さすがにしっぽはないけど、両手両足には長い白い爪が生えてて、これだけでも凶器になりそう。つか、引っ掻かれたら痛そう。や、皮剥げるな。うん。
首には大っきな数珠を提げてる。トパーズみたいな黄色の数珠で、野球のボールみたいな大きさ、むっちゃ重そう。
そして、彼は無邪気な笑顔を向けている。巨体で鬼が牙だして笑っても可愛くないんだと、私は失礼ながらに思ってしまった。
けれども、タイラントは言った。
「蒼華、バハムート殺したから“神獣のお供”くれよな。」
と。
「や? 殺したって……何?? つか、なにがどぉなってんだよっ!!」
見てたけど? や、半分は目潰ってたか。でも、見ててもきっと解らないだろう。なので、私はタイラントに聴いたんだ。けれど、タイラントはぶっとい首を傾げた。ん? と。
「だって居ないだろ? “バカムート”。」
とってもきっと……無邪気で愛くるしい笑顔なんだろうけども、でも笑えんのよ、タイラントさん。貴方……顔面が鬼面なので。ただ、不気味なのよ。
(でも、確かにバハムートは居ない。イフリート達の攻撃で拘束されて、ライムスとタイラントの連携技で消えた。)
私はクレーターの向こう側に居るブロンド髪靡かせた王女ティアを見た。
さぞや? 焦ってるか、悔しそう? かと、思いきや彼女は笑った。
「あっはっはっはっ。」
黄金のロッドを右手に握り締めて高笑いをしたんだ。しかも、蒼い瞳がきらっ。と、煌めいた。宝石みたいに。
「え? なんでそんなヨユーなのっ!?」
私がビックリする番だった。
ティア王女は私に黄金のロッドを向けた。
「ムダだよ。“合成神獣”すなわち、魔術で産み出された者達は“死なない”。そんな事も解らぬお前に、いや……そんな事も解らぬ“クソ支配者”達では、私は愚か“合成神獣”は倒せない。」
彼女はそう言うと黄金のロッドを天に振り翳そうとした。けれども、それを止めたのは隣で黙って見ていた“黒髪の騎士シェイド”だった。彼女の右手を掴み言う。
「ティア、もういい。“目的”は果たした、ココに居ても時間の無駄だ。」
彼が言うとティア王女はすんなり。だった。ロッドを下げたのだ。
「そうね……。」
けれどもティア王女は私を見て くすっ。と、不敵に笑った。
「また逢いましょう。“蒼華”。」
そう言うと彼女の黄金のロッドが カッ! と、光った。
「離脱!!」
ティア王女がそう叫ぶ。黄金の光が、シェイドとティア2人を包んだ。更に2人はその光に吸い込まれる様に消えてゆく。
「なにあれ?? アレも魔法なのっ!?」
私は少し後ろに居るネフェルさんに聴いた。彼は頷いた。
「ええ、“正攻法の魔法”ですよ。この場から“立ち去る”為の魔法です。」
ネフェルさんの声に私はティア王女とシェイドを見たけど、彼等はもう姿はなくて、黄金の光も消えていた。
まるで……“時代劇のどろん状態”で消えてしまったんだ。
(あれも……“魔法”……。ちょい待て! どんだけ覚えなきゃならんのじゃっ! 数学の数式超えてね??)
私は……少しお先真っ暗な気持ちになった。
だけれども……ティア王女とシェイドが居なくなったからといって、何かが変わる訳ではなかった。
そう……彼女に放置された“召喚獣”たちが緑の草原には居るのだ。その中には飛翠の第2の剣の師匠、“ガルパトス”さんも。
そして……10人越えの黒騎士集団“ディアマントス”。
あんまり助けたくないけど……や。シロくんの“お願い”なので、兎に角どうにかしなきゃいけない、“雷の神獣グローム”さんも居たりする。
“戦神オーディン”……合成魔術で創られた神獸……。
よーは、“AI”みたいな認識で宜しいのでしょうか??
「蒼華ちゃん、この中でも1番ヤバいのは“ディアマントス”です。」
「えっ!?」
私はネフェルさんの言葉に聞き返していた。
(てっきりオーディン言うかと思ったから。)
でも、ネフェルさんは神導書を閉じたまま、言った。
「ディアマントスは“イシュタリアの騎士”達の亡霊です。つまり、この世界で無残にも命を落とした者達。それらを“闇魔術”で集め“神獣”にした。合成神獣とは、人間が“糧”に出来る存在を魔術で“強大”にした生物です。」
ネフェルさんの言葉に私は言われる事もなく、
「は? え? どぉゆうことっ!?」
聞いてました。ネフェルさんは私を見て言った。
「つまり……操るに容易い者達。人間、魔導士が“力”だけで捻じ伏せられる者達。術で“奴隷”に出来る者達。言葉は要らない、主従関係の肯定も。力で“塗り替える事の出来る存在”。」
けれども……私はきょとん。で、解らなくてネフェルさんを見て再度聴いた。
「あの……ごめんなさい、師匠……解らない……。」
けれども、ネフェルさんは言った。
「これから解りますし、これはね……、“実際”に見ないと解らない。その時に貴女はきっと“強くなる”。」
え? と、私は聞き返したけども、
「嬢ちゃん! 来るぞ! なんか、コイツら動きだした!」
ハウザーさんの声が聴こえた。
私は はっ。と、して緑の草原を見た。
ティア王女に放置されたガルパトスさん達が、皆……今迄ただカカシみたいだったのに、剣を握り、臨戦態勢になってた。
そう。10人の暗黒騎士ディアマントスも、揃いも揃って剣を構えていた。
「蒼華ちゃん、いいですか。神獣達と僕達で倒さなければならない。それには貴女の“力”が必要だ。メンタルブレてる場合じゃないよ。」
ネフェルさんが私を見てそう言った。でも、少し優しく笑ってくれた。
「はい!!」
私はロッドを握り臨戦態勢状態の、ディアマントスを見た。
「イフリート! コイツらをブチ殺せっ!!」
私はそう叫んだ。
イフリートは、その声にウォウッ!! と、吠えた。そして……、アトモーネスが言う。
「ゆくぞ。創られた者達と、元より生命として現存していた者達との闘い……。」
バサッ。
大きな碧の両翼が羽ばたく。
「女王様っ!! アイツらを蹴散らせっ!!」
私がそう叫ぶとアトモーネスは、大きな碧の両翼を羽ばたかせ叫んだ。
「“碧風”!!」




