第10話 私も神獣もメンタルは大事っ。
広い草原にそよ風が吹く。
そこに倒した筈の、銀色の戦士“オーディン”、そして、黒い龍みたいなどデカい神獣“バハムート”が降り立っていた。
「師匠! どぉすれば!?」
私は黄金のロッドを握ってネフェルさんに聞いた。すると、彼はちらっ。と、元支配者、そして今は神獣のイフリート達を見たんだ。
「彼等の“底ヂカラ”………。」
ネフェルさんは言うと私を見た、そして少し挑発的な目をして言った。
「賭けてみますか?」
と。
「え? 底ヂカラ??」
私が聞くとネフェルさんは少し真剣な目をして言う。
「彼等は“天然者”、つまりこの世界に従来から居た存在、けれど、バハムート、オーディンは“人間”が魔術で産み出した存在。これね、、、“戦争”の銃爪でもあるんだよ。まぁ、それはイシュタリアの歴史なんで、今は置いといて。」
「ん? は??」
私は聞き返したけども、ネフェルさんはにっこりと笑った。そして言った。
「“天然者”と“合成者”………、それでも同じ“神獣”。未知の力を持つ者。だからね。」
「あの……師匠……すみませんが……わかり易く言って貰えます?? で? どぉしたら宜し?」
(ごめんなさい! これ以上は頭がパンク満杯、満腹ですわ!)
兎に角、何をどぉすりゃこの草原は穏やかに静かになんのかね!? そして! 飛翠の第2の師匠、ガルパトスさんは帰って来るのかね!? と、私は思うのである。
「だから、“神獣VS神獣”だよ。」
「おぉ〜〜♪♪」
ネフェルさんの言葉に私は思わず拍手した。パチパチパチと。
「すっげわかり易っ。ですよね! それは私も思ってましたとも!!」
と、私が言った時、声が聴こえた。
「あの〜…蒼華姉様? むっちゃ“マジックメイト”は買ってましたが、“ハートメイト”は買いました?」
シロくんだった。
「え?? 何それ? ハートメイト?? お菓子??」
「いや……“精神力回復薬”です。召喚士には必要なアイテムです。精霊召喚、神獣召喚には精神力使うので。」
シロくんはそう言った。
「は?? メンタル!? どぉゆうこと!?」
(この期に及んでまだ私のメンタル奪おうってか!? 舐め腐ってんなっ!? おいっ!!)
私はシロくんに取り敢えず聞いた。けれども、師匠……ネフェルさんが言った。
「シロくん、“慈愛魔法”は勉強した?」
「はい! 勿論です!」
シロくんはとても笑顔で答えた。すると、ネフェルさんは微笑んで言った。
「それなら大丈夫だよ。君は“魔法使い”なんだから。“フィリア”を使えます。」
そう言うとシロくんは あ。そか。と、少し驚いた目をしたが、直ぐに私を見た。
「大丈夫でしたっ。蒼華姉様っ。ごめんなさい、不安にさせて!」
彼は散歩前のわんこみたいに笑った。
「あ……いえ、ごめん。散歩はまたあとで。」
「は!?」
私はとてもビックリされた。
ネフェルさんは私を見て言った。
「あの神獣達を貴女が従え、貴女が共に“戦う”。今がその時だ。蒼華ちゃん。行きなさい、貴女はまだ強くならなくてはならない。」
私はネフェルさんに背中をとんっ。と、押された。でも、私に不安は無かった。彼は私を見てとても優しい眼差しをしていたから。そして……
「大丈夫です! 蒼華姉様! 僕はちゃんと傍に居ますから!」
シロくんの声が聴こえた。
「うん!」
私は応えて向かう。5体の野放しにされていた元支配者の元へ。そう、今は私の支配下。つまり彼等はバハムート、オーディンと同じ立ち位置。未知なる生物“神獣”だ。
イフリート……“紅炎の支配者“赤色眼で、赤黒い身体をした大きな獣だ。獅子と言うよりどちらかと言うと犬よりの顔立ち。あーもぅ、犬! お前は紅炎の犬だ!
で、そのイフリートは言った。
「どうしたい? 蒼華。」
と。
「は??」
私はとても驚いた。けれど、イフリートは息が炎で呼吸する度に口元から、紅い炎が出る。なので、溜息なのか呼吸なのか解らない。
「どうしたい? なんそれ?」
私が聞くとイフリートはとても困った顔をした。身体はデカい大犬なのに。
「や? なんかこー……あるのかと。」
「は?」
私が睨むと、隣に居る碧の羽毛の雄鳥の姿をした女王アトモーネスが、ばっさばっさと大きな羽をバタつかせた。
コケーコッコ!と、言わんばかりに。
「いや? 違うのだよ? 蒼華。私達は確かにティアにも飼われていた、そう、他の人間にも飼われていた、けれど元より自由な世界で生きてる者。その……人間と共に戦うとしても、私達は自由なのだよ。」
碧の眼が煌めいて私を見ていた。更に隣の樹氷に覆われた獅子“ライムス”が言う。
「すまぬな。人間。いや……蒼華。我らは兎角自由気儘、力はその時に勝手に使うモノ。“支配”と言う関係性はティアが始めてで、まぁ、その何だ? 失敗したのも初なもんで………」
ライムスは大きな氷に包まれた獅子の頭を擡げた。いや、項垂れた。はぁ。私はそれらを見て溜息ついた。
「あっそ。つか、私は貴方達のことを知らないので、ドSな鬼畜としか思ってねぇし?」
う………。と、彼等は揃いも揃ってまたもや身を竦めた。
(あ〜クソ。こーゆう時、まじ強ぇ召喚士は何も言わせんと力使わせて、敵を粉砕するんだろーな。こりゃメンタルやられるわ。)
私は何となく“メンタル回復薬”の意味が解った。これはいる。絶対に。
でも、こんなことしてる場合じゃない。コイツらはクソだけど、力はあるので。兎に角、力を借りるしかないのだ。敵が多いのだから。
「兎に角! お前らの持ってるチカラ出してこいやっ!! そんでダメでも、イイコイイコはしてやんよっ!!」
と、私は言い黄金のロッドをティア王女に向けた。すると、
大地の暴君“タイラント”がその黄金の眼を向けた。虎柄の腰巻きのどデカイ茶色の筋肉ムッキムキ鬼だ。
にやっ。と、彼は口端の白い牙を見せて笑った。
「蒼華、アレくれ、ほら、お前が前にくれた“神獣のお供”。アレ美味かった。」
「あ〜……人間で言う“酒”ね? はいはい。わかりましたぁ。」
何となく買って渡したモノ。それを彼は覚えていて、何かちょっと嬉しくなった。
「あ。じぇら。」
と、鋭い眼したのは蒼い身体した大きな海蛇、リヴァイアサンだ。タイラントを睨んでいた。
「え……えぇ?? リヴァくん……そんな嫉妬深い奴だった?」
褐色肌の鬼は蒼い海蛇に引き笑いだった。
はぁ。私は溜息ついた。
(何なんだ……コイツらは。立ち位置変わるとこーも、掌返しすんのかよ。まぁ……可愛いけども。)
そんな事を言ってる場合ではないので、私は兎に角
彼等を見て言う。
「あーもぅ! いいか! 行くぞ! お前らっ!」
「「「「「イエッサー!!!」」」」」
(は?? 舐め腐ってんよなっ!?)
私は思うが面倒臭いのでツッコむのはやめといた。




