第3話 古代からの支配者
この世界……“イシュタリア”の原石、命の源、その“支配者”たちは、神獣と呼ばれる生命体。彼等が存在する事によって、人間達は豊かで快適な暮らしが出来ている。それは彼等が世界に散りばめている“魔石”のお陰である。魔石は、この世界にとって必要不可欠の資源である。人間はそれを“利用、活用”し、利便性のある世界を創り上げた。そしてそれは“魔石”を使った人間が創造した1種の“文明”。現在のイシュタリアはその文明のお陰で、暮らしをより快適化させ、古代とは異なる世界を創造した。
古代とは“神獣”達が圧倒的支配者であった頃の時代である。
彼等が居なくては水も飲めない、食物、作物も育たない、光も与えられない、根本的に大地すらない世界に放り出される時代だ。その先に待つのは“闇”、それは絶対的な“死”を意味した。
つまり人間は生存すら許されない世界で、“飢餓”に苦しみ息絶えて逝くしかない、“絶対的弱者”‘であったからだ。
だから、自分達の“生命”を死守する為に、支配者を崇拝し敬い機嫌を損ねない様にしてきた。その先にある“制裁=死”を恐れて。共存ではなく“恐怖の支配”。それが古代の支配者❨神獣❩と、人間の関係である。
だが、人間は“知識と頭脳”を蓄えて来た。そしてそれが“魔法使い”を産み出した。つまり“圧倒的支配者との共存”である。人間は支配者たちよりも頭脳が優れている、それは“力”になった。
彼等は共存と言う名の支配を始めたのだ。長い年月、強者であり支配者であった神獣達は、イシュタリアの構造を知っている。つまり、原石❨自分達❩が無ければこの地に“生命体”が存在しないと知っている。けれども、人間は永き支配時代の中でそれを打破し、塗り替えようと“頭脳”を力に変えたのだ。
それは、技術を産み出し、新たな力を産み出し、創造力を、想像力を産む。当然、限られた資源を守る事も人間は考慮している。“暗黒時代”……つまり、支配者達に喰われる世界だ。それを打破し、護ろうとした人間達が“古代とは違う“異世界”を創造した。
そして、それに気付かなかったのは“古代の支配者”、“神獣”達であった。
故に……彼等は“絶対必要不可欠な存在”であるにも関わらず、人間の創る文明の世界では、“削除される存在”となっていったのである。
そして………時は流れ、全く別の異世界から訪れた“破天荒な強者達”。
そして、かつての“絶対的支配者”達は、“絶対的守護者”を喪失し、“支配”される側になるのであった。
そう、“異世界”からの来訪者、現役高校2年生“桜木 蒼華×柏木 飛翠”である。
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紅炎、樹氷、碧風、水流、大地。5体の生命体、“支配者”達が、黄金の炎に包まれてる。
私はそれを見据えていた。
彼等はとても苦しんでいて、嘆きの悲鳴みたいなのをあげながら、身体を捩り、捻り何とか炎から脱出しようとしていた。でも、力は使えないのか誰も抵抗しようとしてはいない。
そう、さっきまでバッサバッサと、大きな碧羽をバタつかせてたアトモーネス。巨大鳥だ。
あーもう、言っちゃいますね、女王様は“鶏”。言われるのイヤみたいで、言わなかったんですけど、彼女むっちゃ巨大な鶏なんですよ。それも姿は雄鶏。はい。スッキリしたわ。
そんなアトモーネスが私を深い緑の眼で睨んだ。
「救世主!! そなたは何を考えているっ!? この世界を救う存在ではないのかっ!!」
すると、今迄黄金の炎に耐えていた紅炎の支配者、イフリートが ぐぬぅ。と、眉間にシワ寄せて唸った。私を見つめるレッドアイ。
「もう良い………、お主らに従おう。我等のこの命、もう1度、イシュタリアの為に。」
「え?」
イフリートの声に私は聞き返した。けれども、彼は苦痛なのか顔を歪めて、俯いたんだ。
「飛翠、どうゆうことかな?」
私は直ぐに隣の飛翠に聞いた。けれども、彼はもう既に顔を顰めていた。
「飛翠?」
私が聞くと、飛翠は言った。
「何度も聞いてるだろ、“戦争”。」
「あ。」
私は飛翠の言葉に はっ。とした。飛翠は更に言った。
「解かんねぇが、イフリートの言葉から察するに、アイツらは戦ったんじゃねぇか? この世界の為に。それが“何の為”かは知らねぇが。」
飛翠は少し俯いて考えこんでいた。
私は即座にイフリートを見て黄金の光放つロッドを向けた。そして叫んだ。
「イフリート! どうゆうことっ!?」
「……………。」
でも、イフリートからは答えが返って来なかった。その代わり、シロくんの声が聞こえた。
「蒼華姉様、ドSにも程があります。拘束状態では、喋れませんよ。」
とっても冷静な声が聞こえた。
「あ………。」
私は産まれて始めてドS言われた。
カッ!!
私の持ってる黄金のロッド、更に5体の支配者の身体は黄金の光にまたもや包まれた。けれど、彼らの姿は縮小して行く。炎に包まれていたその身体が。
「えっ!?」
私が驚いていると彼らの身体は縮んで、石ころに姿を変えた。黄金の炎は石ころになると消えて、さっきの黄金の光が石ころを包んでた。
不思議なことに彼らの大きな身体から変化した石ころ達は、彼らの居た場所で浮いてるんだ。しかも掌サイズの石ころで、それが黄金の光纏って浮いてた。
「な……なんなの??」
私は独り言の様に言っていた。
でも、その石ころ達は私目掛けて飛んで来たんだ。黄金の光纏ったまま。それは、球体みたいな大きさだった、そうバレーボールみたいな。
「えっ!? 何っ!? レシーブしろってか!? ムリだろ!! あんなクソ速球、受けれるかいっ!! しかも5発て!!」
私はガチで思ったので、叫んでた。
でも、その黄金の光に包まれた石ころ達は、ぴたっ。と、私の目の前で止まった。
「は?? 何??」
瞬間……私の右腕に嵌めてる金色のバングル。右手首から肘まで覆う鎧みたいなモノが、じわっ。と、熱くなったんだ。
「えっ!?」
そのバングルを見ていたら、空いてる宝石型にその石ころ達は、嵌まっていった。
「な??」
黄金の光が消えて、私のバングルには5つの宝石達が嵌められていた。私はそれらを眺めた。
“紅炎の紅炎の継承石継承石” 真紅の宝石。煌めくその石は“エメラルドカット”と言われる四角だ。
“樹氷の継承石” 淡い水色の宝石、白氷のティパーカット、細長い楕円形のカタチ。
“水流の継承石” 蒼い宝石、涙型ティアドロップの宝石
“大地の継承石” 金色の宝石、ブリリアントカット。ダイアモンドカット。
“碧風の継承石” サファイアみたいなハート型の碧石。
それらが私のバングルに納まって煌めいていた。




