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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第5章 秩序が崩れるとき
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第31話 別離

 「飛翠(ひすい)っ!!」

 私は叫んでいた。目の前で大きな音を立てて、崩れてゆく“月読(つきよみ)の塔”を見て。

 

 「わぁぁ!」

 「離れろっ!!」

 「ゼクセンさまっ!!」

 「ムリだ! 逃げるのが先だっ!!」

 

 慌てる魔導士達の声も聞こえた。けれども、私は見た。白いローブを纏ったゼクセンさんが、地に伏していて、地面に投げ出してる右手が骸骨の様に骨なのを。

 

 彼が握っていた樫の木の杖、それがその骸骨の様になってしまった右手の傍に落ちていて、それが……黒く靄を出して蒸発していくのを。

 

 そして、それらを放置して……今迄、寄り添っていた魔導士達が去っていくのを。

 

 けれども、その彼の背後で……塔は崩落していく。真っ赤な紅炎に包まれて……大きな音を立てて、ガラガラと崩れ落ちてゆく。

 

 「黒崎さんっ!!」

 

 私はその瓦礫の大きな破片に潰される彼を見て叫んだ。

 

 「やだっ! 黒崎さんっ!!!」

 

 叫んで走り出そうとした、降り注ぐ塔の外壁の塊に潰される彼の元に。

 

  「蒼華(そうか)っ!!」

 「蒼華姉様っ!!」

 「蒼華ちゃんっ!!」

 

 色んな声が聴こえる。でも!!


  私は、その腕を飛翠に掴まれた。

 

 「蒼華っ!!」

 

 私はその声に振り返り怒鳴っていたんだ。

 

 「離してっ!! 死んじゃう!! 黒崎さんがお父さんみたいに死んじゃうっ!!」

 

 でも、飛翠は私の倍以上の声で、怒鳴った。

 

 「死んでんだよっ!! とっくに!!」

 

 (え…………?)

 

 私は飛翠の声に何も言えずにいた。けれど、彼は言った。

 

 「“あの姿”で出て来た時点で、死に際。つか、お前とシロに魔法使いになる為の“儀式”、それを施した時点で死んだ。お前とシロに託した。けどな!」

 

 飛翠は険しい表情で私を見た。その眼は……とても冷たかった。

 

 「そんなんで許されることじゃねー、いいか? アイツは“逃げた”、美談で受け止めてっとガチで死ぬぞ? お前。」

 

 「え………?」

 

 私が驚いてると、ネフェルさんから激が飛んだんだ。

 

 「来ます!! 構えて!!」

 

 その声に飛翠は私から手を離して黄金の光に包まれた剣を握り、構えていた。

 

 「蒼華姉様っ! “闇の魔導士”ブラックマジシャンは、その名の通り、“闇術の使い手”です! 」

 

 (待って……シロくん……待って………。)

 

 「つまり、イレーネ王と同じです!

 “闇魔石”の使い手です、僕等の魔法は通用しません!」

 

 (だから……待って……黒崎さんが……黒崎さんが………)

 

 「だから、“魔法剣”です! 蒼華姉様は、今、ゼクセン様から“その資格”を継承しました! 僕もですが! でも、魔法剣は、戦士と魔法使いが……」

 「待って!! やめて!! 黒崎さんが死んだのになに言ってんのっ!? は? 意味分かんない!!」

 

 怒鳴っていた。

 

 「蒼華ちゃん! 頼むから! しっかりしてくれ!」

 

 ネフェルさんの言葉が聴こえる。

 

 (しっかりしてるよ……でも……黒崎さんが……死んだ……、なのに何?? 魔法剣とか……魔法が何とかこーにかとか、そうじゃねぇだろ!!)

 

 私は何か解らないけど、むっちゃハラたってて……、でも何なのか解らなくて……ぎゅっ。と、黄金の翼が羽ばたくロッドを見てた。

 

 黄金の光を煌めかせるロッドを。

両手で握ってた。

 

 (ああ……そうね……元々……“生命(いのち)生命”に優しくない世界だった、何の罪も無い私と飛翠を使って……お国事情に巻き込んで、そのまま今度は私と一緒に居る人達を、犯罪者扱い。魔導士目指してるミリアの夢も……この塔ブっ壊して奪った。)

 

 ぎゅっ。

 

 私はロッドを握った。もう、これでもかと言うぐらいに。色んな感情、色んな想いが巡る。

 

 でも、憤怒が湧いた。何故か。

 

 睨むのは死神の姿をした“闇の魔導士”。

 

 (お前達は何なんだ! 黒崎さんを殺した闇皇帝とやらの仲間なのか? だったら!! ココで………)

 

 「ブチ殺してやるっ!!」

 

 私は黄金のロッドをふわり、ふわりと浮く“死神”に似た闇の魔導士に突き出した。 

 

 「“聖なる制裁(キルアス)”!!」

 

 私は叫んでいた。

 

 カッ!! 黄金の砲丸みたいな円石がロッドの尖端で煌めいて、黄金の両翼が光と共に、バサッ!! と、その翼広げた。

 

 その後は眩い黄金の光が浮いてる死神みたいな、闇魔導士に向かって行く。

 

 それはネフェルさんが放った様な光の槍に似た現象で、でも私のは矢だった。鋭い刃先をした黄金の矢、それが飛んで行った。本数が半端なくて……死神の全身を突き刺した。そう、ダーツの矢を一気に的に当てたみたいに。

 

 余す所なく死神の全身に黄金の矢が突き刺さり、死神の身体はまるで磔にされたみたいに、両腕広げて項垂れた。

 

 ネフェルさんの声が聞こえた。

 

 黄金の光放つその死神の前で。

 

 「“聖光の檻(ルイーナ)”!!」

 

 ネフェルさんの唱えと共に、私の放った金色の矢で身体を拘束されてる、闇の魔導士の頭上から黄金の光が降り注ぐ。

 それが彼の身体をまるで凍結させたかの様に、動かなくした。

 

 ネフェルさんは叫んだ。

 

 「飛翠くんっ!!」

 

 それを受けて彼は黄金の光に包まれた大剣を握り走った。

シロくんが叫んだ。

 

 「“水流の守護(アミナティス)”!!」

 

 彼は走る飛翠にロッドを向けて叫んでいた。

 カッ!! と、彼のロッドから水色の光が放たれて、飛翠の身体はその光に包まれた。

 

 飛翠は全身硬直状態の闇の魔導士めがけて、突っ走り、飛び上がる。黄金の大剣を振り上げて。

 

 「“聖なる悲鳴(セイントスクリーム)”!!」

 

 彼は振り降ろした。

 

 ズバアッ!!

 

 風刃の如く剣を振り下ろす音が聞こえた。死神の身体は真っ二つに切り裂かれて、更に カッ!! と、黄金の光に包まれた。そう、バハムートを切り裂いた時と同じ……、 黄金の炎が死神を覆った。

 

 飛翠が剣を持ち着地すると、爆破した。

 

 ドォォン!!

 

 物凄い音をたてて。

 

 死神は……爆破したんだ。

 

 私は……またもや茫然としていた。 

 

 

 

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