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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第5章 秩序が崩れるとき
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第24話 月読の塔▷▷シロ吠える。

 私達が行き急いで飛翠(ひすい)犬獣人族(コボルト)の蒼狼犬グリードさんの所に さぁ! 行くぞ! チームお尋ね者っ! と、駆け足準備の時に背後から声を掛けられたんだ。

 

 「待たぬか、蒼華(そうか)ちゃん、シロ。」

 

 その声は少し苦しそうな声、でも直ぐに解る。もう何度も聞いて来た声、姿は変わっても声は変わらない。私はこの人と2年間、ほぼ毎日一緒の時を過ごして来たのだから。

 

 「ゼクセンさん?」

 

 振り返ると樫の木の杖を地面に立てて、その身体を支えてる銀色の髪をしたお爺さんが居る、白いローブを着た偉大なる大魔導士ゼクセンさん、私の世界では“古書店月読(つくよみ)の店主 黒崎さん”だったんですけども。

 

 「“魔法剣”を使うには“魔法使い”にならなくてはならぬ、そなたらにはまだその“資格”が無い。」

 「あ、そうだった……私もシロくんも、中途半端だった。」

 

 同じ魔導士を目指す“ミリア”から話は聴いたけれども、何か私の理解力が無さ過ぎて、良く解かんなかったんだ。結局、このアズール魔導館に来れば解る、そう結論付けて今に至る……。

 

 この際だ、私は聞こうと思った。でも……。

 

 ゼクセンさんは少し苦しそうに呼吸しながら、杖を支えにしゃがみ込んでる、ちょっと様子が可怪しい。怪我も確かにそうだけど、何か……顔色が悪過ぎる。

 

 私は思うより早くだった、彼の前に走ったんだ。そしたら、シロくんも追い掛けて来てくれた。私とシロくんはゼクセンさんの前にしゃがんで、必死で杖で支えてるその身体を少しでも支えようと手を伸ばした。いや、勿論、彼の身体を後ろで横で支えてるローブ着た魔導士の皆様居るんですけども。

 

 でも、ゼクセンさんは言った。

 

 「()い、そこに2人……立って並びなさい。」

 「え??」

 「ですが……ゼクセン様……、確かに怪我はしておられますが……何故? “回復魔法(アミナス)”が、効かないんですか?」

 

 へ?? 私は2度ビックリだよ! 思わず、ゼクセンさんと紀州犬に似た可愛い白いわんこを見比べちゃったよ!

 

 「ど……どーゆうこと?? ごめん……シロくん……お手数ですが…説明して貰っても??」

 「はい……、ゼクセン様の周りにいらっしゃる魔導士様達は、確かに先程まで、とても酷い怪我をされてました。けれども、“回復魔法(アミナス)”をお使いになられ既に、回復されてます。」

 

 私はその声にゼクセンさんを支える魔導士達を見たんだ、ここ迄、あんま気にしてなかったんだけれども、彼等、や? 女の人も居るので“皆様”は、青いローブを着ていてその胸元には金色の刺繍がしてあった。その刺繍を見て……私、はっ。としたんだ。

 

 (待って? これ“月読”の壁に掛けてあったタペストリー……あの模様っ!?)

 

 私が通ってた“古書店月読”、その壁に青いタペストリーがあったんだ、金色の枠で囲まれたその◁のタペストリー。その中央に金色の刺繍……、そう“剣と杖”が交差した刺繍だった。彼等の胸元には剣と杖が刺繍されてたんだ。

 

 私はそんなの特に興味なくて……ああ、飾ってあんなー、程度の装飾の一部としか見てなかった……、でも、まさかそれが……毎日、見てたソレが…ここでまた見るとは思ってなかった、それも、今なら解る。どんな意味があるのか。

 

 この金色の“杖と剣”交差した紋章は、このアズール魔導館の“象徴”! 気付こうと思えば気付ける所に、私は存在してた。

 

 (いや? 待って。でも、そんなの解らん! だって、ちょい異国混じりのショップなんてゴロゴロよ? いや……でも……。)

 

 私はこの時、もしも……気付けて、黒崎さんにタペストリーの事を聞いていたら、何か変わったんじゃないかと、思ったんだ。

 

 でも、とにかく怪我の状態、私は気を取り直して皆様の身体を失礼ながらジロジロと見た。綺麗なんだよね、うん、確かに。顔色もむっちゃ宜しいし、肌ツヤもばっちり。至って健康優良体に見える。

 

 「うん……怪我の痕とかないね? ローブも新品同様。」

 

 私がシロくんに言うと彼は隣で既に立ち上がっていて、ロッドを地に着けて握ってたんだ。

 (え?? さっきまでしゃがんでたよね??)

 

 私はその行動の速さに驚いてしまった、私なんて未だしゃがみ込んでるのに。

 

 「え? シロ………くん??」

 

 でも、それよりもいつも可愛いくりくりっとした愛くるしいお目々が、鋭くてなんか恐かったんだ。そう……この眼は、野良犬……、私は昔、野良犬に追いかけ回されたことがある。その時の……あの警戒して、何も受付けない、お前を噛んでやる。みたいな、獰猛な眼を思い出したんだ。その眼に似ていてゾクッとした。

 

 でも、シロくんは凄く凛々しい顔をしてゼクセンさんを見て言ったんだ。

 

 「ゼクセン様、僕は貴方に救われ貴方の様な“大魔導士”になる事が目標です、今でもとても尊敬しています、生かされた命で何が出来るのかを考えている所に、蒼華姉様、飛翠さんが僕の前に現れたんです。」

 

 シロくんはとても淡々と……けれど、見た事も無い恐い顔でそれにいつもより低い声で話してたんだ。私は彼を見てることしか出来なかった。

 

 「彼等は失礼ですが、僕の眼で見ても“弱き者”でした、コカトリスを前に“敵前逃亡”……正直、何をしてるんだろう? と、思いました、だって、剣もロッドも持ってるのに。」

 

 「えっ!?」

 

 私は驚愕の事実を知った!! 彼は私と飛翠を呆れて見ていたのか!! コカトリスからの脱兎(だっと)を!!

 

 「戦う意志の無い者が“魔法の杖”(ロッド)を与えられる、それを見て僕は正直……許せなくなりました……、だって僕はずっと求めてそれを手に入れる為に、お金を集めて……より良い物を探して……。」

 

 はっ。とした、シロくんの握る右手が爪が刺さって……血が……紅い血が滴り落ちてたから。俯いている彼の表情は解らない、でも、今、彼は自身の胸の中の“溢れる感情”、それと戦ってるんだと悟った。肉球を突き破る程……彼はその手を丸く握り、爪を立てていたんだ。

 

 だから、私はシロくんのその右腕掴んだ。叫ばすにはいられなかった。

 

 「シロくん! ごめん! 私がバカだからっ!!」

 「蒼華姉様っ!!」

 

 はっ。と……私は固まった。彼は怒鳴ったんだ。

 

 (え……? 何?……シロくん……?)

 

 

 シロくんは俯いているけど、その声に私は……彼の腕から手を離していた……、咄嗟に。解らないけど、何か邪魔すんな。って、飛翠に言われた気がしたみたいな……気持ちになって……。

 

 顔が見えなくても解る、彼は今……“憤怒”を表してるって。だって、彼の右手は震えていた。けれども、彼は言った。

 

 「何なんだ? と、思いました、けれども、蒼華姉様達は“何も知らぬ人間”の様で、その中でも何やら必死で…お互いを護り、仲間を救おうとしてました、何かを考えながら剣を握り、ロッドを振り……それを見て僕は“心が震えた”んです。」

 

 シロくんは顔を上げた。真っ直ぐとゼクセンさんを見据えていた。

 

 「いえ……その表現は正しくないかもしれません、突き動かされたんです、僕は何かこの人達の為に出来ないか。と、弱き者と思ってた人達が、一瞬で“強き者”に変わったんです、それは力ではなくて!」

 

 シロくんは最後……叫ぶとゼクセンさんを睨みつけた。あの、憧れてると言う彼を睨んだんだ。

 

 「シロくん!」

 

 恐くなって……叫んだけど、彼は言った。

 

 「僕は! ずっと“力”が欲しいと思ってました! 奴隷の時を過ごしながら、どうすれば仲間を救えるのかそればかり考えてました!」

 

 シロくんが……吠える様に叫んでいた。

 

 「そんな時に貴方が現れた、“光”だったんです!! 貴方は僕の色んな感情、色んな視界を照らしてくれる“光”だった!!」

 

 シロくんは顔を上げてゼクセンさんを睨んでいたんだ。でも、とても悲しそうに見えて……私は、恐くなって彼が壊れると。

 

 「シロくんっ!!」

 

 だから、抱きしめてた。でも、彼はそんな私の右肩にポンと、血だらけの右手乗せたんだ。さっきまで握り締めた肉球すら突き刺すほどの右手を。私は顔を直様あげた。けど……。

 

 ゾッとした。

 

 彼は私を見てはいなくて、まるで吠える前の“獣”の様な顔で。グルル…と、唸る事はしてないけど、牙を剥き出しにして、憎悪をゼクセンさんに向けてたんだ。

 

 「シロくん!!」

 

 私は恐くなって……もうシロくんがシロくんじゃなくなる。そう思って叫んでた。飛翠が飛翠でなくなる様な感覚に似ていて、とにかく恐くて叫んでた。

 

 でも、そんな私にお構いなしで、彼は怒鳴ったんだ。

 

 「貴方は何者ですかっ!? そして、蒼華姉様と飛翠さんを傷つける“悪意の塊”なら、僕は絶対に許しません!!」

 

 そう言って彼は蒼く光るロッドを、尊敬と、救いの神であろうゼクセンさんに向けた。

 

 「貴方は逃げてるだけだ! 力があるのに! どうして大切な者を守れないんですかっ! 貴方は臆病者だっ!!」

 

 シロくんがそう叫んだ時だった。

 

 カッ!!

 

 と、私達の上空に光が輝いたんだ。

 

 「え??」

 

 私はシロくんに横からめっちゃ抱きつきながら、頭を上げた。降り注ぐ……金色の光の雨みたいなのが。

 

 「何?? シロくん! 何なの??」

 「ご……ごめんなさい……蒼華姉様……僕にも解りません……。」

 

 シロくんもその光を見上げて……驚いていた。でも、聞こえる。眩く光る金色の雨の中で、その声は。

 

 『使いなさい、強き者たち。貴女達は弱き者ではない。』

 

 美しい声だった。寝る前に聞いたら秒で眠れるみたいな。

 

 でも、その光の中……ゆっくりと空から金色の光に包まれたそれは、降りて来た。私達の目の前に。

 

 「「ロッド!?」」

 

 私とシロくんは同時に叫んでたんだ。

  

 

 

 

 

 

 

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