第23話 ココで生きる為に
黄金の光を放つ大剣クレイモアを地面から抜き取って、あの神獣バハムートを倒した飛翠さんを、私は見上げた。未だ剣の黄金の光は消えてないけど、彼の身体を覆っていた金色の光は消えてる。意を決した。これは我慢ならない。
「あの〜……聞いていいですか?」
「あ? 手短に。」
その言葉を聞いて私は、取り敢えず す~は〜深呼吸した。意を決するというのは心を整えなければならんのじゃ。ので、心置きなく聴いた。
「どぉなってんのっ!? 何がどぉなってんのっ!?」
「あ?」
私がそう聞いても彼は平然、ドライ、クール対応、無表情、どっかに感情捨ててきたんかいっ!
いや、落ち着け。うん。
私は飛翠の腕を掴んだ。そしたら、彼はやっと……私を見てくれました。
「ねぇ? 聴いて? お願いだからっ!」
(それになんか……飛翠……違うんだよ……、何かが。聴いてよ。怖い。)
そう言うと飛翠は、私の顔を見てフッと軽く笑ったんだ。え? 私はちょっとどころだけじゃなく、ビックリして眼をぱっくり開いてたと思う。うん。
「お前のハナシはいつも同じだ。」
え? 笑いながら彼は言った。だから私はビックリしていて、聞き返すことしか出来なかった。
「聴いて、どうなってるの?」
飛翠がそう言ったので、私は はっ。とした。確かにいつもそればっかりだ。私は飛翠に聴いてばかり。でも、解らないから。
けど、彼は言った。
「聴いてどーなるモンじゃねー。」
そう言ったあと、彼は強く真剣な顔をして、肩に乗せていた黄金の光に包まれた剣を構えた。
「受け入れろ、いい加減。」
ハッキリとそう言った。
「受け入れるって……何を?」
聞くしかなかった……、解らない。何をどう? でも、飛翠は私を見る事もなく言った。
「蒼華。俺は何回も言ってる、目に見えてるモン、感じてる現実、受け入れてその先を見ろ。じゃねーと死ぬ、そーゆう世界だ、ココは。」
え? 私は驚いてしまって、剣を構える飛翠を見て言ったんだ。
「でも! 私、ロッド無いんだよ?? どっちにしたって死ぬじゃん!」
叫んでたんだ。けど、彼は剣を構えたまま振り返らず言った。
「何で、“ロッド”が消えたか考えろ。」
「え?」
飛翠は更に言った。
「何で、今、俺の手にこの“剣”があんのか考えろ、何で俺らが狙われるか考えろ、何で俺らは生きてるのか考えろ、何で“力”が必要なのか考えろ。」
飛翠がこんなに色々と言うのが珍しくて……私は言葉の重みとか、意味とかそんなのより、飛翠が饒舌な事がビッくり仰天だった。
「え?……なんで?」
「阿保、俺に聞くな。」
「すみません。」
飛翠は ふぅ。と、息を吐くと構えてた剣を肩に乗せた。私を見ると言った。何時ものクールフェイスで。
「考える事が“力”に繋がる。いーか? そのクソな脳内こっからフル回転させろ、じゃねぇと犯す。」
「は?? え? 今……とんでもねぇ発言……」
「泣くまで犯す。以上。」
「は??」
食い気味で会話をブッた切られた……。でも、考える事が……力に繋がる? 私は引っ掛かった。
でも、とても大切な言葉を言われた気がした。
「ディアマントス!! 殺せっ!! 奴らをブッた切れ!!」
メンヘラ王女の叫び声が聞こえた。ディアマントスは覆面騎士団みたいな召喚獣だ。ティア王女の声で持ってるサーベルを空に掲げた。10人の騎士だ。暗雲が彼等の上空を覆う。
「飛翠! 考えてもロッドはありません!」
「まじお前、犯してーわ!」
なんか、ブチ切れられた。
「蒼華ちゃん! ハウザーの後ろへ! 」
ネフェルさんの声だった。私は目の前の飛翠に言った。
「死なないで。」
「お前と違げぇから、グリード!」
「おぅ!」
飛翠はグリードさんと、一緒に剣を構えてる騎士団みたいな召喚獣に向かって突っ込んでいった。私がハウザーさんのところに行くと、既にネフェルさんが神道書開いてた。
ネフェルさんは私の顔を見ると言った。
「ディアマントスはその名の通り戦死者の亡霊が集った召喚獣です、一撃必殺の技ばかりです、本来なら魔導士の術で防ぐんですが、今の貴女にその力は無い。」
「はい、すみません。」
私はその声に頭を下げるしかなかった。でも、神道書を開くネフェルさんは言った。
「怒ってるワケじゃないんですよ、貴女、何時もそうやって僕を恐がってますが。」
え?? 私は頭を上げた。ネフェルさんは笑ってくれた。
「言わないと貴女は暴走するんで。」
すると、私の後ろでハウザーさんが言った。
「嬢ちゃん、ネフェルはな? 飛翠よりも嬢ちゃんがお気に入り♪」
「えっ!?」
「ハウザー!! 殺すぞ!」
だははっ。と、ハウザーさんは笑った。 私は驚いたけども、ネフェルさんは直ぐに神道書に目を通した。パラパラと勝手に捲れるこの本は不思議だ。
「ディアマントスに立ち向かうには、本来なら力技に対し防御の術を放ち、その後で“魔法剣”なんです。」
え? 私は顔を上げた。ネフェルさんは続けた。
「防御に関しては多少は僕と……」
ネフェルさんはちらっと後ろのゼクセンさんを見たんだ。けれども、彼はかなり負傷してる。すると、彼はシロくんを見たんだ。
「シロくん、君は魔法を幾つか継承してるね?」
「はいっ!」
シロくんはロッドを握って嬉しそうな顔をした。まるで待ち望んでいたかの様に。
ネフェルさんは言った。
「特攻隊は飛翠くんと、グリードで大丈夫でしょう、特に飛翠くんの剣。アレは未知です。バハムートを撃退する戦士、剣士、闘士は幾らでもいます。只、僕が驚いたのは“天空から降ってきたこと”……」
あ。私もそれは思っていた、しかも、飛翠! 使え! って言ったんだよね。
「あの力です。」
え? 私はネフェルさんを見た。すると、彼は困惑した顔をしていた。
「あれは剣技でもなく、魔法剣でもない、ちょっと解らない力なんですよ。」
「それな。俺もだから驚いてたんだ、飛翠は剣技使ったよな? あ〜アイツが俺より慕ってるジジィ。」
ハウザーさんが少しムッとしながら言った。
(なんかカルデラさんに嫉妬してる。ハウザーさん。)
私は可笑しくなってしまった。
「剣技を放った後に黄金の炎で爆破……、アレはちょっとねーな。魔法との合成技の魔法剣とは違うんだよな。」
ハウザーさんは首を傾げた。
「そう、貴女達は元々、何か違う力を持ってました、それは初めて会った時から感じていて、気になって追いかけたんです、アイリーンの事もありましたが、けれどそれは僕の“我儘”です。」
ネフェルさんがとても真剣な顔をしていた。でも、ハウザーさんは少し悲しそうな顔をしていた。でも、ネフェルさんは言った。
「貴女達には何かがある。だから同行してます、蒼華ちゃん、いいですか? これからは僕を恐がらない様に。言いたい事はいいますが。」
私はそれを聴いて嬉しくなった。ロッドが無い私をきっと、凄く元気付けてくれてるんだろうな。と。
「はい!」
私が返事するとネフェルさんは笑ってくれた。
「で? どーするよ? ネフェル、今の所は飛翠の剣で防いでるみてーだが? 正直、オーディーン来られたらムリだぞ?」
ハウザーさんはそう言った。
「解ってます。」
「あの……僕の魔法とハウザーさんの剣技は、魔法剣にならないんでしょうか?」
シロくんが言ったんだ。すると、ハウザーさんが あ!と、明るく笑ったんだ。しかも即しゃがんで、シロくんの肩を掴んだ。
「お前はすげぇ! いや、まじ。すっげ冷静! ネフェルより使える!」
「あ"?」
まぁ、直ぐにネフェルさんにキレられるよね。そりや。
「すみません……出来たらいいな。と、思ったので。」
シロくんが俯いたので、私達は言った。
「「やろう!!!」」
そう言ったらシロくんは笑ってた。よしっ! 皆で撃退じゃっ!!