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君と剣と魔法を紡ぐ物語〜私達がお尋ね者っ!?〜  作者: 高見 燈
第5章 秩序が崩れるとき
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第21話 月読の塔▷▷私達の武器はっ!?

静まり返る……。何もかも。

 (もう解らない……、なに? 何かパワーワード出た。“監視者”って何?? “皇帝ルシエド”って!? え? 待ってよ! カーミラさんって 支配者の側に居たあの“魔女”だよね?? )

 

 私は隣に居る筈の飛翠を見た。腕を掴んでいるから居るんだけれども。

 

 「飛翠! どーゆうことっ!?」

 彼はサラ艶の黒髪をぐしゃっ。と、掴んだ。前髪を掴み、少し俯き……、ふぅ。と、息を吐いた。

 「飛翠? 聞いて? 私、、解んない!」

 パニック状態の私は彼を見上げた、けれども彼は前髪から手を離し、何処を見るともなく……強い眼をしていた。いや……“怒り”。彼の顔が……眉間にシワを寄せ……“ケンカ”の前の臨戦態勢状態の顔付きになったんだ。

 

 私は隣で……ひぇっ! と、息をのんだ。

 (ちょ……ちょっと待ってよ! ココでこの御方がキレたら、誰が私の弱い脳をサポートしてくれんのよ?? )

 

 私はもうパニック状態だ、だって後から後から色んな情報が入って来て……色んな感情も“上書き”されて、どうしたらいいか解んないのに、何時も大ピンチ。 アップデート多過ぎなんだよ! この世界!!

 

 「蒼華……。“ブッ潰す”。」

 「え?…何??」

 

 私が隣でパニックになってるのに、この御方は“ブチ切れ”。私が聞くと、飛翠は私の腕を掴んだ。がしっ。と、金色のバングル付いてる右腕を。

 

 「もういい、ブチ壊す。帰れなくても喚くな。」

 「はぁ??」

 

 けれども、飛翠は目の前のミントグリーンの“風の精霊(シルフィード)の王“シーラさんに向かって言った。

 

 「クソ餓鬼、さっさと俺等をあのブッ壊れた塔に運べ。出来んよな?」

 (あ…悪魔の命令っ!? )

 私は隣で冷や汗ダラダラですよ、だって、シーラさんが顳かみにブチブチっと青筋立ててるんで。

 私は飛翠の腕を掴んだ。

 「ちょ……飛翠!」

 けれども、彼は言った。

 

 「救って欲しいんじゃねーの? 結局、お前も何も出来ねーんだろ? この世界の為に。」


 (はぁぁ!? 何言ってるん?? あ〜可怪しくなった! 遂に飛翠がバカになった!!)

 私は頭を抱え込んだ。けれども、彼は言ったんだ……。

 

 「もうウンザリだ、お前らの“ご都合主義”には。さっさと連れてけよ、そこでお前らが死ぬか、俺等が死ぬかの問題なんだろーが。」

 

 え?? 

 

 私は飛翠とシーラさんをキョトキョトと見比べてしまった。けれども、シーラさんはフッ……と、冷たく笑った。更に右手を上げた。

 

 「だったら死ねばいい! 人間がっ! お前らが死ぬか、我等“イシュタリアの民”が死ぬか、お前ら人間は……”クソ“だっ!!」

 

 カッ!!

 

 「きゃあぁっ!!」

 碧の閃光ーー、私はその眩しさに眼を閉じていた。けれども聞こえた……、飛翠の声が。

 

 「お前ら全員……結局、“偽善者”だよな。」

 

 その言葉の意味とか彼の表情とか解らなかったけど、私は……何となく……彼がとても悲しそうに呟いた気がした。

 

 ▷▷▷

 

 ぶはっ!!

 

 飛翠の言葉で激昂したのか、シーラさんの“瞬間移動”? 空間移動は優しくなく、砂嵐で運ばれた。ので、息もまともに出来ず放置されたのだ、解放されたので取り敢えず息を吐き、深呼吸した。隣には飛翠が居て、彼は即座に立ち上がった。

 

 「見ろ、蒼華。」

 

 そう言って指差した。私は息苦しさにゴホッ……ゴホッ……と、咳き込んでいたけれども、彼が“気になって”直ぐに顔を上げた。

 

 「えっ!?」

 

 目の前には解っていたけども……“月読の塔”と言われるアズール魔導館の観光スポ……違う! 魔導士になりたい人達が目指す塔だ。初めて見たんだけれども……業火の中で……、“夢と希望の塔”には見えなかった。

 

 何よりもその塔の下には白銀の長い髪をした、ゼクセンさんが居たのだ。樫の木の杖を空に向けていた。周りには“ローブ”を着たロッドを持った魔導士たち。彼等が空中に向けて放つのは、まるで“砲弾”。四方八方から彼等は光の砲弾を放っていた。

 

 私は上空を見上げる、さっきまで居た街中とは違くて、空は“鴉の大群”が覆うみたいに、黒い大きな影が旋回してる。もうわかる、、、“黒龍”だった。

 

 そして、崩壊して炎に包まれてる月読の塔の上には、まるでマウントとるかの様に、あの“黒い化身”……“神獣バハムート”が居たんだ。その大きな口から辺りに黒い破光を撒き散らしていた。まるで、消防車の放水の様に。

 

 「ゼクセンさんっ!!」

 

 ようやくだった。私達は、彼の元に駆け寄ったのだ。けれども、彼は、目の前にしゃがみこんだ私を抱き寄せた……。

 

 (え………?)

 

 ビックリした。けれども、ゼクセンさんは私の身体をぎゅっと抱き、

 「すまん、ワシが……“間違って”おった……。」

 私の頭の上でそう言ったんだ。

 私は彼の広い胸の中で眼を見開き聞くと言うことしか出来なかった。ゼクセンさんは、私の頭を抱き言った。

 

 「すまぬ………。巻き込んで。何よりも……“嘘”を重ねて……。」

 

 ゼクセンさんはそう言った。

 

 (ま……巻き込んで?? 嘘を重ねて?)

 私はぎゅっ。と、ゼクセンさんの胸元掴みながら、彼の身体の温もりを感じながら……叫んでいた。

 

 「これからすっげー戦いになんのに、ロッドも剣も無いんスよっ!私と飛翠、コレでも生命(いのち)張って来たんで! アンタ勝手に悲観して、諦めてっけど、ウチらの生命(いのち)ナメんじゃねーよ!!」

 

 怒鳴っていたんだ。

 

 けれども、ゼクセンさんが、私の身体をぎゅっ。と、抱き締めた。

 

 (え??)

 

 その力の強さにビックリして、顔を上げた。彼は、とても険しい表情をして、いつの間にか樫の木の杖を向けていた。私はその動向に、自然と、振り返る。

 

 黄金の髪を揺らした美しい人……、その隣に立つ……騎士。もう、解ってしまう。高貴なその立ち振舞、そして余裕のある笑みを零す2人を見て。

 

 私達がこの世界に巻き込まれる“発端”……シェイド、ティアだと。 

 「あら? こんな所に何の用? “力無き者たち”。」

 

 綺麗なのよ……ええ、ほんとに。

 サイコさんの役やってる女優さんみたいなの、ホント。でも、ココはノンフィクションじゃないって事は、解ってる。だから、この人の“サイコ”は、リアル。

 

 私はゼクセンさんの前に何故か立っていた……、ロッドも無いのに。金色のロッド持つティア王女を私は見据えた。

 

 「貴女は我儘だ!」

 「え?」

 

 ティア王女が眼を丸くした。私は言った。

 

 「何が不満なの!? シェイドさんって言う大切な人がいて、貴女を守ろうとしたゼクセンさんが居て、貴女はクソだっ!」

 「クソ? 御免なさい、解らないわ。シェイド、解る?」

 

 美しい人は寄り添うイケメン騎士❨飛翠にとっても良く似た騎士❩に聞いていた。けれど、彼は さぁ? と、首を傾げた。けど、私はブチっとキレた。

 

 「うっさい! バカっぷる! お前らなんて絶対許さない!!」

 

 と、怒鳴ったんだけれども、彼女はクスっ。と、笑い、

 

 あっはっハッハッハッハッ!! 

 

 気狂いの様に…笑ったんだ。更に私にその金色の光に包まれたロッドを向けた。

 

 「お前は死ぬの、ココで、ゼクセンと共に。なぁんにも出来ない“救世主”。はははははははっ」

 

 恐ろしいと言うよりも……悍しいが勝つ……薄気味悪い笑顔を彼女は向けて……。でも。

 (ロッドも無い、飛翠に剣も……“絶望的状況”!どうすれば。)

 

 と、私が思っていると、ティア王女のロッドから放たれる。

 

 「“月夜の殺戮者(ムーンマーダー)”!!」

 カッ!!

 黄金のロッドから放たれるその光の槍の散雨。私達の身体を貫く金色の光の槍達。逃れる事の出来ない呪縛、それに身体は捕えられて身体に熱い槍が突き刺さる。

 

 「飛翠っ!!」

 隣で地面に突っ伏して、血だらけの飛翠が居た。私はダメ元で叫んだ。

 「“水流の雫(アミナス)”!」

 

 回復魔法だ。これで、飛翠や見えないけど皆の身体を癒やすことが出来る。でも、私の“右腕のバングル”……そこに嵌る灰色のリヴァイアサンの継承石は何の反応もしてくれなかった。

 

 (どうして!? アバウトでオールフリーな世界じゃないのっ!? 何でこんな”理不尽“なのっ!!)

 

 私はぎゅっ。と、右手を握りしめた。

 

 (何なのよ……”この世界“、何も守られてないじゃん? 曖昧で、当たり障りなくて……、必要な時に逃げるじゃんっ!!)

 

 私は立ち上がっていた。でも、ティア王女がロッドを向けていた。

 

 「お前は”危険“なの、私達には無い”何か“を持ち過ぎてる、それはこの世界にとって“不必要”な存在なの。初めから気に入らなかった!」

 

 は?

 

 ティア王女は、私に金色のロッドを向けて言った。

 

 「お前は私を滅ぼす存在なのだからっ!! バハムート!! 殺せっ! コイツらを殺せっ!!」

 

 その瞬間、ゼクセンさんの声が響いた。

 「“水流の雫(アミナス)!!」

 

 私達の身体は蒼く光る……回復魔法だ。

 

 カッ!!

 

 上空に黒い雲……、月読の塔の最上部に居るバハムートが、その黒い雲に向かって飛び立つ。大きな両翼、それを羽ばたかせることもなく弾丸の如く、その暗雲の渦に突進する。

 

 (何? なんなのっ!?)

 

 私は見えるモノしか視えない! ですよね? 皆様も。けど、見える。バハムートはその黒い渦に突っ込み、その瞬間空は唸った。


 解らない、聞いたこともない空が唸るとか、でも、真っ黒な渦にバハムートが突っ込んだら、うぅっ。って、何か気味悪い声が聞こえたんだ。でも……、

 

 カッ!!

 

 またもや、閃光が地上を覆ったんだ。

 

 「きゃぁ!」

 

 何度目かの突風。目を閉じていてはいけない、そんな気がして、私は腕で風から視界を突発的に守って、薄目開けた。真っ黒な上空から黒い塊が下降してくる。突撃するかの様に猛スピードで、けれども、そいつは地面に頭を突っ込む瞬間に、方向転換した。

 

 私達に直進して来たんだ。地上に突っ込む瞬間に回避して、私達に突進してくる。ロケットみたいに。

 

 「飛翠っ!!」

 

 私は飛翠の腕を掴む。後ろでゼクセンさんが叫んだ。

 

 「前を見よっ!!」

 

 その声に私達は、前を見た。それは、上空に金色の光が射していて、その光の中、空から回転しながら何かが降ってきた。ぐるん、グルンとバハムートの前に回転して、彼の前に降って来て……地面に突き刺さった……。

 

 その瞬間……地面に突き刺さった何かは、カッ!! と、金色の光を放ちバハムートを払い除けたんだ。グアッ! 初めてだった、バハムートの苦しそうな呻き声は。彼はまるで、金色の光の炎に焼かれる様に身体が燃えていて、そのまま仰け反ったんだ。

 

 更に……

 『使え! 飛翠っ!』

 

 男の人の声が空から聞こえたんだ。

 

 けど、飛翠は燃え盛るバハムートの前に突き立つ、ソレに向かって走って行った。

 

「飛翠っ!!」

 

 私が叫んだ時だったーー。

    

 

 

 

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