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~第二の錦織圭たちに贈る言葉(29)~ 『故障は命取り、テニスエルボーと緊張の糸切れには注意せよ!』

作者: 目賀見勝利

           〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(29)〜

     『故障は命取り、テニスエルボーと緊張の糸切れには注意せよ!』


1. まえがき;

2019年6月17日(月)、テレビ朝日のTV番組・報道ステーションの中で、松岡修造氏が卓球の張本智和選手(世界ランク4位)にインタビューをしていた。

4月25日、ブダペストで行われた世界選手権の4回戦で張本選手は韓国の若手選手(世界ランク157位)に2−4で敗れた。また、6月14日のジャパンオープン1回戦でも599位の中国の若手選手に0−4で敗れた。


その映像を見たが、普通のラリーでは相手の打球を打ち返していたが、コースを狙った強打に対して打ち返すことが出来ず、ラケットさえ振ろうとしなかった。(出来なかった?)

私の見るところ、明らかに気力が失せていた。

世界選手権の10日後に松岡修三氏がTV番組の収録を行ったと云う。

「僕が張本選手のコーチだったら『何をしているんだ。しっかりしろ!!』と怒鳴っていただろう。」と松岡選手は本気で言った。

それを聞いた張本選手は《はっと気が付いたような反応を示した》。

張本選手はコーチからも言われなかった叱咤しったを熱血漢の松岡氏から言われ、目が覚めたようだった。それ以後、本音をぽつりぽつりと述べはじめた。

曰く

「気力が出ないのです。何故に勝たなければならないのかを考えてしまうのです。」等々。

プレーの映像と張本選手の言葉から私は世界選手権の4回戦の前に『緊張の糸が切れた』な、と思った。

昔から「あまり根(魂)を詰め過ぎると『緊張の糸が切れる』よ。」と云われている。これは、いろいろな人が経験してきたことである。張本選手は自らを追い込んで気力を奮い立たせるタイプで、特に『緊張の糸が切れる』可能性が大きい選手であった。


『緊張の糸が切れる』ことは心(精神)の故障である。

また、体の故障は、腰痛やテニスエルボー(筋断裂)である。

(技に故障はない。未熟があるだけである。)

私の経験談を踏まえて、その防止方法を今回は考える。


2. 贈る言葉;

まず、心(精神)の故障である『緊張の糸切れ』について経験と対処法を述べる。

若いころ、私は「来年の大会では優勝する。」と周囲に宣言して、1年前から練習を強化し始めた。(何故にそのような事をしたかは不問とする)

その時、まず考えたことは『勝つとはどういう事か?』であった。それが判らなければ、『どのような練習をして、どのような技術を身につけなければならないか』が判らない。

宮本武蔵の五輪書、孫子に兵法、我が空手五輪書(大山倍達)、韓非子入門、六韜・三略入門、クラウセウィッツ兵法、諸葛孔明の兵法、三十六計、間書、用兵と軍略、勝者の戦略・敗者の論理、戦国参謀、心眼を開く、等々、多くの兵法・人を制する事に関する本を読み漁った。(これらの本は今でも私の本棚にある)

そして、立ち至った結論は孫子の兵法が述べていることであった。

『勢い』に乗り、『節』を感じて強打し、ネットを取り、ボレーでエースを奪うことができる必要がある、であった(いわゆるネットプレー)。また、ネットに出ればロビングを上げられるからスマッシュを必ず打つ決心をした。そうしなければ、ネットを取られることに対する恐怖心が相手には湧かない。すなわち、相手に余裕を与え、パッシングを決められる心配がある。

また、五輪書入門(奈良本辰也)には『勝つとは、天理における拍子リズムの奪い合いに勝つ』と述べられていた。打球が速いだけではなく、相手のリズムを崩す必要がある。それには戦略・戦術を正しく選択し、それが実行できる技術が身についていなければならない。

また、宮本武蔵は火の巻きで『敵の打ち出す太刀には、足にて踏み付ける心、身にても踏み、心にても踏み付け、もちろん太刀にても踏み付けて、次の太刀を振らせないと云う事が出来なければならない。』と述べている。体や技で踏む事は判るが、心で相手を踏み付けるとは何か?心理戦に勝てと云っているのである。そのための戦略・戦術が必要になる。

等々を四六時中考え続け、練習に励んだものである。テニスをしていない時でもテニスの事を考え、イメージし、緊張は続きっぱなしであった。ラケットを握っていないときのイメージトレーニングはコートで試合している緊張感を持ちながらショットを放つ事を練習した。

そして、大会の三週間前にドローが決まり、大会に向けて戦う気持ち(闘争心)を少しづつ高めて行った。大会が始まる一週間前であった。仕事をしている時『プツン』と『緊張の糸が切れる音』が聞こえた。そして、緊張感がなくなっていくのを感じた。心で感じたのかもしれないが、いずれにしても『プツン』と音が聞こえた印象がいまでも残っている。『緊張の糸が切れる』と云う言葉は以前から知っていたので、その瞬間「あっ、緊張の糸が切れた」と思った。そして、試合に臨むために一年間溜めてきた気力が失せてしまった事をその時に感じた。

案の定、大会に入って、一回戦は技術だけで勝利したが、二回戦は気力が出ず、忍耐が出来ずに敗退した。

しかし、大会に向けて身に着けた心、技、体、そして知識はその後の進化成長には役立った。

頭の中(大脳皮質の記憶回路)では気力を出さなければと考えるのであるが、海馬(頭脳の司令塔)から気力(意志力)が発せられないのである。明かに『緊張の糸が切れる』とは頭脳の機能が働かない状態であり、心脳(海馬とその伝達機能)の故障である。

善く言われることであるが『根(魂)を詰めない』ことが『緊張の糸切れ』を防ぐ。

お釈迦様は悟りを開いて言っている。

「私は中道を往く。(右にも、左にも偏らない考え方で物事に対処する)」である。

極端な事は避け、地味ちに練習し、適度に気を休める事が肝要である。


次に、身体の故障である『テニスエルボー(肘の筋が断裂)』について述べる。

『緊張の糸が切れた』の後も、私は技術向上に励んだ。

強く速い打球を打てるように、ゴム糸の端にテニスボール(空気が入っていないゴムボールで通常の試合球より重い)が付いて、ゴム糸の他端には金属の重りが付いているストローク練習道具を使って練習した。

ラケットでボールを強打すると前方に飛んで行き、ゴムが伸びきったところでボールは地面落ち、反転してボールは戻ってくる。地面に置いてある重りの位置に戻ってきたボールは最速になっている。その位置で再び強打する。かなりの反力がラケットを通じて腕にかかる。これを何度も繰り返した。

この練習を続けていて、テニスコートで対人相手にストローク練習すると、腕がしなるように感じて、打球スピードが上がるのを感じるようになった。

「筋力が付いて強い球が飛んで行くようになった。」と私は思った。しかし、これが感違いであり、危険信号であったことにその時は気が付かなかった。「腕の筋力が付いた」のではなく、筋肉を働かせる為の『小脳からの命令電気信号の電力(電圧と電流)が大きくなった』だけなのである。そのため、ボールから受ける反力に肘の筋が耐えられず、疲労して断裂したのである。

贈る言葉(1)の人とボールの衝突問題で述べように、打球スピードが時速150キロで飛んで行く時は85Kgf、時速100キロだと36Kgf程度の反力が腕や肘に掛る。これを何度も繰り返すのであるから弾力のない肘の筋は耐えられずに疲労断裂してしまう。

これを避けるためには、90Kgや50Kgの鉄アレイを片手で持って肘を曲げることを繰り返して、筋力を着けておかなければならない。

ナダル選手がマッチョマンである理由がここにある。強打を打ちたいなら『腕の筋力をつける』トレーニングをしておかないとテニスエルボーになる。

「テニスエルボーになると箸が持てない」と聞いていた私は、それが本当であることを身をもって知ったのである。

テニスエルボーから回復するのに3か月かかる。そして、打球した時に肘が感じる『痛み』が完全に消えるまでに1年以上かかった。6ケ月くらいはテニスの練習が出来ない。テニスのプレー感覚を忘れないために右利きだった私は左でラケットを振る練習をしたのであるが、それもそれほど役に立たなかった。左手で弱くボールが打てる程度になっただけである。ただ、練習を再開した当初はフォワーハンドストロークもバックハンドストロークも両手打ちで練習が始められたのは良かった。片腕に掛るボールからの反力を半減できた。エルボーはバックハンドでの影響が大きいから、バックハンドは両手打ちをお勧めします。

プロテニスプレーヤーで生きていくにはエルボーには特に注意しなければならない。致命傷になる可能性が大きい。



3. あとがき;

15歳の若さで『緊張の糸切れ』になった張本選手の今後の活躍を注目したい。本当に強い選手になってもらいたいものである。




           『諸君の健闘を祈る』

        目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ

           2019年7月4日



追記:2019年7月13日のウィンブルドン女子決勝をみた。

   セリーナ・ウィリアムズ選手 VS シモナ・ハレブ選手であった。

   この試合、試合の初めからウィリアムズ選手に気力が感じられ無かった。

   どこか身体を故障したのかなと私は思ったが、痛そうな表情はない。

むしろ、やる気が無いと云うか、自分でもどうしようもないと云った態度と表情を凡ミスでポイントを失うたびに繰り返していた。

   準決勝では見せなかった仕草と表情である。そして、第一セットは2-6であっさり取られた。

   第二セットは時折気力を出して強打したが、ほとんどはサービスエースでのポイントだった。

   私は、準決勝の後、『緊張の糸切れ』が発生したのではないかと思い、試合状況を見つめた。

   矢張り、身体の故障ではなく、心の故障が発生したなと思った。

   結局、6-2、6-2でハレブ選手が勝利し、優勝した。

   技術だけでなく気力を高揚させて試合に臨むタイプの選手は注意が必要である。 


                2019年7月14日 追記


追記2:テニスエルボーや緊張の糸切れが選手にとって何故命取りになるのか。

    テニスエルボーになると1年間試合ができない。

    気力を養うには、気をぶつけ合う相手が必要なのである。

    お互いに気をぶつけ合うことによって気のレベルは維持向上できる。

    対戦相手がいる試合をしないと気が衰えていく。

    故障が癒えて試合を再開してもテニス大会で勝ち進むことが難しくなり、

    強い気を持った選手と対戦することが少なくなり、

    結局は故障前の気のレベルには戻れないのである。

    テニスの試合は技術、体力だけの戦いではない事を理解してください。

    心・技・体の心には気が関係しているのです。

    

               2021年7月6日 追記

    


    

    

         


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