第15話 道標 ―墓地― Ⅰ
お久しぶりです。お元気ですか? 私は元気です。
いや~前回の予告とは違うモンスターを登場させてしまいましたね。久しぶりの執筆なので少し盛り上がりが必要かな~なんて。
まぁいつも通りに気長に気ままに読んでくださいな。
中層部へと帰る為に3つの道標を目指す。
その一つ目である壁画の場所に辿り着いた。しかし、そこで有益な情報は得られなかった。ただ、まぁある程度ではあるがこのオリティエ大墳墓の手掛かりになりそうな壁画から推察することはできた。
次の目的地はスケルトンの大群がいる墓地。
――道中、スケルトンへの対抗策を考えておくことにしよう。生前の知識でのスケルトンと想定し考えていくことにするか。
スケルトン――『骨組み』や『動く骸骨』が名前の由来であり、骸骨に魔法や悪霊が憑依したことによって疑似生命を与えられたモンスター。
戦闘力自体は人間と比較すると、やや劣るというところだろう。それは自我が無く思考しない為、単純動作しかしないからである。
しかし武器による攻撃で骨格を砕いたとしても完全に倒すこができず、バラバラになった程度ではすぐに身体を成す骨格が復元してしまう。不死への対抗策は聖なる魔法で浄化するか、高熱を伴う火炎系の魔法で焼き尽くすのが定番と言える。魔法を使えない場合は、粉々に叩き潰す力押しが有効でもある。
…………魔法なんて使えません。力押し? このスライム状の俺にできるわけはない。あの大人気RPGのスライムは強くなると『火炎の息』を使えたのが羨ましい。
それにしても生前の知識から鑑みるとスケルトンへの対抗策が無い。このままじゃ殺されに行くようなものだ、どうにかせねば。以前に見たスケルトンを思い出してみよう、そこからなにか打開策を見い出せるかもしれない。
右手にショートソードを持ち、左手には円形盾、胴体には兵士鎧、このことから武具に関しては十分と言えるだろう。だたし、よく思い出してみればあまり手入れがされた物とは言い難い。まぁそれも当然ではあるが、生前からの武具を使い続け自分で研いだりする知能はスケルトンにはないのだから。とはいえ、このようなスケルトンが大量にいるというのが脅威にほかならない。なにか一網打尽にする妙案はないだろうか……ゲームのRPGと違って俺自身ができることは無いに等しい。それでもそこから考えなければ死が待っている。
生前の記憶――歴史の授業とかで水攻めや火攻めがあったがこれが出来ればなんとかなりそうではある。しかしリスクのが高いんだよなぁ。水と火は俺自身も弱点だし、なにより用意することができない。仮に用意できたとしても自滅するのが目に見える。
はてさて、これは困った。どうしたもんかなぁ……このまま行くわけにはいかない。いや、思考を変えてみるべきか、戦闘をせずにどうにか通り抜けることを模索する方が有益なのでなかろうか。無理に戦闘を行う必要はないわけで、かといって相手は大群なわけで避けられない可能性が高いんだよね。
まずは墓地の地形などを把握してから対策を練るのが無難かな。着いたら潜伏しながら調査して抜け道を探してみるか。それでも避けられるとは考えにくいからやはり対策は必要か……なんか堂々巡りしてるな。強さにもよるけど、五体くらいなら多分なんとかなるけど大群なんだよなぁ……少なく見積もっても数十体だよな。
あれれ、これ詰んでねーか。
別の道を進んでみるか? いや道順がわからないからやめた方がいいな。前に迷い込んだ裏ダンジョンの二の舞だ。ん? 待てよ、そういえば以前会ったスケルトンからは敵意を感じなかった。そもそもミノタウロスもゼラチナス・キューブに対して敵対している様子はなかった。となると、安全に通り抜けられるかもしれない。何食わぬ顔で『私はダンジョンの掃除屋でーす。ちょっとこの辺りを掃除しますねー』なんて感じでいけるか⁉ いやいや、さすがにそれは楽観視しすぎだろうなぁ。
……現地調査の後に対策を講じるとしよう、そうしよう。
問題を先送りにしているだけに見えるが実は違う。そう、現状では情報が無いからだ。情報が無い状態で作戦を立案する指揮官など古今東西いないのだから。
――しばらく歩いていると、暗闇の中から大きな目玉が二つ浮かび上がる。
久しぶりのモンスターとの邂逅だ。眼の浮いている位置から推察するにかなり大型のモンスターであるのが見て取れる。
考えごとをしていて注意散漫となっていた。これは非常にまずい事態になった、このまま戦闘になるのは避けたい。しかし不幸中の幸いなことに向こうはこちらに気付いていない様子、なんとかこの場から移動したいところではあるが……動けば気付かれる。
この魔物の体が告げている本能だろう、生存本能が動くなと教えてくれている。バニップと対峙した時にでさえこんな警告を感じなかった、それはつまり目の前のモンスターはそれほどの強さであるというのだ。
正体が解かればやりようもあったかもしれないが、時すでに遅し。モンスターとの出会いはいつの時も突然である、だからこそゲームのRPGもランダムエンカウント制が取り入れられているのだろう。
さて動くべきか、動かざるべきか。この選択しを間違えたら死ぬのは間違いない。ほんの少し、1分にも満たない時間動かずに相手のを様子を窺う、そこから活路を見い出すしか生き残る術はない。
この一瞬の観察に全てを賭けろ!
暗がりから緩徐の動きで目玉が動く。モンスターがあと半歩も動けば全体像が見えてくる、正体が――見えない⁉ まさか姿を消す能力を持つモンスターか……いや、コイツは “フロータイボール”。
フロータイボール――空中を漂う巨大な目玉。本体が目玉だけあって物理攻撃手段は体当たりくらいしかできない。しかしそれよりも恐ろしい攻撃手段を有している。
それは凝視……その視線には対象者を『麻痺』又は『昏睡』に陥れるという効果であり、最悪は脳の機能を停滞させ死に至らしめる『死の宣告』をも使用可能である。
まずい⁉ 観察が仇となってしまった。このまま視線を合わせるわけにはいかない。
いや待てよ今の俺はゼラチナス・キューブだ、目というものを持ち合わせてなどいない。それでどうやって視線を合わせられるというのだろうか。まぁ以前から目が無いはずなのにこうして見てはいるのだが。
とにかく死の宣告を無効にする保証はどこにもないのだからセオリー通りに視線を逸らしつつも視界内に相手を留めておけば対処は可能だ。そう視線さえ合わなければいいのだ、戦っても勝てるとは思うがここは逃げの一手だ最善だろう。
敵は二体、視線合わせないようにするのは難しいが今はやるしかない。動かずに様子を窺い、いざ戦闘となれば相手を包み込み徐々に溶かしていけば勝てるはず。問題は二体いることだけか。
フロータイボールは相変わらず緩徐の動きで通路を移動している。やはりこちらには気付いていないようだ。
すると突如 “ギョロリ” と爛々とした眼球がこちらに視線を向けようとしているのが目に映る。
先手必勝! 一体に対して全てを包み込むようにして覆い被さる。これなら視線なんて関係ない……しかし相手は二体である。仕方ない、ここは目をつぶりもう一体の視線を防ぐことにするしかない。バニップと同様に我慢比べだ。
そう思った矢先、ベシャリ――と地面へと身体が崩れ落ちる。なにが起き……た? 身体が思うように動かない。全神経を集中し身体の異変を確かめる、感じたのは痺れだ。もう一体の麻痺の視線の効果かと思ったが、これは電気を感じる。つまりどちらが放ったかは判別できないが、いわゆる雷撃魔法を使ったということか。
ま、まずい。雷属性は弱点だ、幸いなのは痛覚が鈍化しているから痛みをさほど感じないことか。それでもまともに動くことができない。このままじゃ、なぶり殺しにされる。
すると目の前に通路を覆う程の炎の渦が迫ってくる。今度は火炎魔法か、それも規模からして二体分の魔法だろう。これは避けられない……このゼラチナス・キューブの身体が耐えるのを信じるしかない。そして成す術なく俺は炎に飲み込まれた。身体が徐々に灼かれ蒸発していくのがわかる。この感覚は厭悪する。
死を確信する感覚――――
――――意識が目覚める。
なにが遭った? 俺は確か電車に乗ろうとして意識を失った……いや、フロータイボールに灼き殺されそうに。
どうやら記憶が混濁しているようだ、今は人間かそれともモンスターか。それを確かめるべく全身を見ようとするが激痛が襲う。その痛みで全てを悟った、俺はまだモンスターのままだ。
運が良かったのか、死んだと勘違いしたのか、それとも見逃されたのか。それは解らないがフロータイボールからなんとか生き延びたことは確かなようである。
意識を取り戻したものの、瀕死である。まともに動けない状態で辺りを確認する、フロータイボールはまずいないことに安堵する。他のモンスターもいないようで良かった。しかし瀕死で身動きができない……回復アイテムや回復魔法なんてそんな便利なものは無い。なるべく安全を確保できる場所に移動して自然治癒に頼るしか方法がない。
しかし不思議だ、瀕死であるにも関わらず意識だけはこうもはっきりとしっかりしている。普通なら意識すらまともに機能しないと思うのだが。まぁ日本での生活でも重症を負って入院などしたことないから実際は知らんが、それでもここまで意識を保てるものだろうか。これはやはり転生した影響なのだろうか。
ノロノロと移動しているとマンドレイク畑を見つける。
これは助かる。以前にマンドレイクを観察し知り得たことだが、彼らは危険を察知すると警戒行動をする習性がある。これを利用してしばらくここで療養するとしよう。今はとにかく寝たい気分だ。
ここに転生してから初めての眠気に誘われ眠ることに……。
次回の更新はいつになるのやら……まぁそういった意見などがありましたらお気軽にどうぞ。
やはり読者の声というものは作者のモチベーションに繋がりますので。
それでは今後ともよろしくお願い致します。




