第14話 道標 ―壁画― Ⅱ
本当にお久しぶりです。
モチベーションが上がらずに書けない日々でしたが、大変ありがたいことに先日『更新はしないのか?』とご質問を頂きまして。ええ、それはもう嬉しくて書き上げましたよ(笑)
中層部へと帰る為に3つの道標を目指す。
その内の一つにして最初の道標である壁画へと……その道中に地震が起こる。地震によって生前の日本での記憶が蘇る。それは同時に思郷の心が切なく胸を締めることでもあった。
それによって半ば放心状態で歩き続けていると、いつの間にか目的地に辿り着いていた。
――浸水によって池と化した壁画の間。元々半壊していたものが水没し更に全容が判別しにくいものへと。
これは困ったなぁ、この世界の言語や文明などは理解していないのにこのような有様では壁画が “何” を示しているのか理解できるか不安だ。
さてさて、専門知識はなくとも調べていきますかね。とりあえず部屋の形は五角形となっている、一つは入口だから壁画は全部で4つ。ゲームやハイファンタジー小説なんかだとこういう形式の壁画は時代ごとに別れ、その一連の流れを後世に伝えるものが定番のはず。しかしだ、素人目でも4つの内2つは描かれたものは判別できない。半壊し亀裂から水が漏れており、絵はほぼ消えているようなもの。これではまったく判らない。
残りの2つを見るとまだなんとなくだけども、内容を理解できなくない……かもしれない。その2つを見比べるとおそらく入口から見て左から始まる物語のようで時系列の2番目と最後が、かろうじて絵が残っている状態。
なぜそう読み解けるのかと言うと、最後と思わしき壁画の内容からそう察することができる。
そこに描かれていたのは――祭壇ような場所に眠る男が神様らしき人物に祝福されているような印象を受けるものだった。
まぁなぜこれが最後なのか判るのかは、わりと簡単である。物語の最後は決まって『幸せになりましたとさ。めでたしめでたし』だからだ。この絵からはそれが伝わってくる。
もちろん、ちゃんとした理由もある。
それはここが墳墓であるからだ。つまりこの眠る人の為にここは建てられたと推察できる。この人の生涯を描いた壁画であり、死が物語の最後になるのは必然。だからこそ、この絵で終わりだと判別できるわけ。
左から2番目の壁画には――最後の壁画に描かれていた男が人々から崇められている、それか先導しているような絵だった。
ありふれた物語だったら、この彼が人々を災厄から守った末に亡くなったというのが妥当かもしれない。
大雑把にこの二つから読み解けるのはこのくらいかなぁ。
ただ少し……いや、かなりこの壁画には違和感がある。ここはオリティエ大墳墓なのだから亡くなった人が眠るという点においては確かに正しい。しかし、あの生ける彫像の話ではここは神によって造られたと言っていた。いくら救世主と言えど、たった一人の人間の為だけに神が墓所を用意するものだろうか、それも広大過ぎるものをだ。
明らかにこれはおかしい。この壁画以外にも彼の偉業や伝説があったとしてもだ。
そもそもだ、果たして神なんて存在が実在するものだろうか。確かにここは異世界で俺がいた日本とは常識や理が異なっている。それこそモンスターなんて幻想の中での存在がいる。けれども生ける彫像の話から察するに、この異世界においても神というのはまことしやかなようである。
とは言え、俺としては神は実在していると思っている。なんたってこの俺がその証明とも言えるからだ。
日本からこの異世界にゼラチナス・キューブに転生してしまっているのだから。これは神様以外にできる芸当ではないのは明白だ。
だからこそ、だからこそ壁画の彼の為だけに神がこんな広大な墳墓を作るのが不可解極まりないと思ってしまう。墓所であるならここまで広大である必要性はないはず……いや待てよ、元の世界ではピラミッドというものがあったなぁ。あれは人が作ったものだけれども墓所としてはかなり大きいと言える。そうなると神様基準だとこの広大さは人間でいうところのピラミッドくらいだったりするのだろうか。そう考えればなくはない、のかなぁ。
でもやっぱり人間一人の為だけってのが気になるんだよなぁ……。
それにしてもこの壁画の場所を知っているにも関わらずに、あの生ける彫像はこの壁画にある彼の為の大墳墓であることを教えてくれなかったのだろうか。壁画の存在を知っているのであればその内容も把握してそうなもんだけど。もしかして生ける彫像の創造主も俺と同じように疑問を抱いて答えに辿り着かなかったからあえて教えなかった。それならまぁ辻褄は合うと思う。
構造もよくわからんし、なんで迷宮に大自然溢れる墓所なのだろうか。ピラミッドの構造も確かに複雑ではあったがここまでの規模ではない。不必要とも言えるほどにだ。本来、複雑な作りというものは侵入者を拒む為のもの。
拒む……拒むかぁ、彼は神と関りがあるから死してなお何人も近づけさせるわけにはいかないだけの理由があるからと考えるのが妥当なのかもしれない。
まぁそれはそれでまたおかしなことになるんだけども。秘匿したいのならこんな広大な墳墓ではなく、秘境にでもひっそりと墓所を作れば事足りるはず。
これはもしかして物語にありがちな神の選定というやつなのか。
壁画の彼が神から与えられた力かそれに類似する何か。それは人間にとって重要ではあるが、それ故容易に手に入っては困りもの。大墳墓攻略という選ばれし者だけが神の力なりを引き継ぐ為と、そう考えればこの構造も納得というものだ。まぁその答えは最下層部に到達した際に解かるだろう。
さて、他に得られるものはないだろうか。それこそ中層部以降の情報とか。
水面から水底を覗いてみるが、瓦礫以外にはなにも無さそうだ。うーむ、何かしらあってもよさそうなもんだが期待を裏切られた。他に調べられそうな物は……残念ながら無いようである。
もう一度、壁画を調べてみるか。さっきは大雑把に絵を読み解いただけだしな、細かく調べればなにか情報を得られるかもしれん。
とは言えだ、かろうじて壁画として残されている程度でなんとなく描かれ方から勝手に補完して内容を想像してるに過ぎない。ここから先は専門知識などがなければ理解できるとは思えん。ただ、このまま何もしないのは俺の主義に反する。
端の方に目をやると擦れてはいるがなにやら文字が刻まれている。もちろん、なんと書かれているかは俺には理解らない。以前に見つけた道具に書かれていた時と同じだ、だた一点を除いては。そう、あの時に見た文字とこの書跡は使われているものが異なる。
単純に考えればこの壁画の文字はいわゆる古代文字の類いか。書き留めて生ける彫像に聞いて――筆記用具なんて持ってないじゃん! そもそも俺の身体じゃ書くことさえ無理じゃん! まぁここから戻るのは面倒だ……かなり面倒だ、そう思うことで自分を納得させよう。
それにしても古代文字かぁ。まぁ話によれば、神がここを造ったのだから神代の文字なのは当然と言えば当然か。
あの創造主もこの文字の解析はできていないようだし、かなり難解なのだろう。その彼は探究者らしいが、元の世界で言うところの考古学者という認識のが適切なのかもしれないなぁ。
これが読めればこの大墳墓の謎が紐解ける可能性が高いんだが今は無理か。やはり知恵者や賢者と称されるようなモンスターを探し出して、聞いてみるのが一番か。よしんば仲間になってくれたらこれほど頼れる存在はいないしな。この方針は変えずにこのまま進むとするのが良いだろう。
残りの壁画がもう少し保存状態が良ければ他のことも判ったんだけどなぁ。う~む、仮にこの物語が有り体なものだとした場合――
二つ目の壁画が人々を導いているとすると、その前になる最初は彼が誕生した時にものになるのかな。それか最後に神が描かれているからここで神から使命や力を授かった時のものか。
そして、三つ目が厄災などから護った時と考えるのが妥当だと思う。壁画なのだからあくまでもの概要や要約したものが描かれるはず、だから内容はそう複雑なものじゃないと思うんだよねぇ。
あーでも、さっきみたいにピラミッドを例に出すと違うかもしれないのか。昔TVなどでピラミッドの壁画を見たけど、素人の俺には内容がてんで理解できなかったしなぁ……。実はこの壁画も今考えたような単純なものではなく、もっと複雑だったり神聖な意味合いのあるものだったりするとか。
まっいくら考えたところで答えは出ないんだし、ここは素直に諦めよう。
さてここからは気合を入れないとな、なにせ次の目的地は――スケルトンの大群が蔓延る墓地なのだから。
以前に一度だけスケルトンとは出会っている。その際に襲われることはなかったが、今回もそうだとは限らない。なにせ墓地に向かうのだから、それは彼らの住処に侵入するも同義だ。敵対行動と思われても仕方ないこと。それに一体だけなら戦闘になってもなんとかなる気がするが……さすがに大群となると死ぬ可能性が高い。 “墓地” だけに死地ってか、笑えない冗談だね。
用心してそして対策を講じながら次の目的地へと向かうとするか。
次回(予定)は久しぶりにモンスターが登場します。とは言え作中にも記載している通りに一度出ているモンスターではあります。
しかし、活躍はしていないので次回(予定)は見せ場があればいいなぁと(笑)
あのモンスターは好きなモンスターの一つなので。
本当に不定期更新で申し訳ないです。でもなんとか読み続けて頂けると大変嬉しいです。
あまり催促するのは好きではないのですが、やはりモチベーションに繋がりますので。
気軽に感想などもどうぞ。また感想以外でも大丈夫です。
それでは今後ともよろしくお願い致します。




