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第13話 道標 ―壁画― Ⅰ

お久しぶりです。お元気ですか? 私は元気です。

年も明けたので、とりあえず更新と言ったところです。


 オリティエ大墳墓、上層部ではこれ以上の情報を得ることはないと判断した。

 そこで改めて最初に居た場所である中層部に戻ることを決意する。元々居た場所とは言え、モンスターを観察していただけに終わっていた。だからこの墳墓の謎を解き明かす為にも中層部へと向かう。

 しかしここに来たのはあくまでも偶然。そこで以前に出会った生ける彫像(リビングスタチュー)に大まかな道のりを教えてもらった。

 まず目指すは――壁画。


 ――あれから3日。

 これまでと変わらない迷宮区を歩き続ける。相変わらずモンスターには出会わない、俺としては大変つまらない道のり。

 それにしても()()失敗してしまった。壁画の内容についても彼に聞いておけばよかったな。アイテムに続いての失敗だ、どうしたものかと悩む。

 生前は完璧超人ではないにしてもあまりこういった凡ミスはしない方だったはずなんだがなぁ。ゼラチナス・キューブに成ってからというもの上手くいかないことが増えたような気がする。人間とは異なる生物なのだから勝手が違うのは当然ではあるが、それでも考えが至らないことが本当に増えたと思う。少しばかり気が緩み過ぎなのかもしれない。やっぱりそれはモンスターに出会わないことに起因しているのだろう。

 中層部では常に死と隣り合わせだったが、この上層部では安全と言えてしまう。

 そのせいかもしれないと……しかし “油断大敵” に “油断禁物” という先人の残したありがたい言葉がある。


 さらに3日。

 油断せずにここまで歩き続けたが、やっぱり何事もなかった。無事なのはありがたいのだが拍子抜けしてしまう、この気の緩みが中層部では命取りになる。しかしどうにも気合が入らない。

 そんなことを考えている最中、このダンジョンに迷い込んでから初めての災難に出くわすことになる。

 地震だ。ダンジョン全体が揺れている感覚が全身に伝わってくる。

 しかし、地震大国とも呼ばれる日本生まれだけに慣れている。慌てず騒がずに様子を窺う、揺れは大きいは大きいけれども体感としては震度4くらいだろうか。広大過ぎる地下墳墓だけにどうやら頑丈な造りをしているみたいで視界内で壁や床が崩れることはなかった。

 揺れが収まり静けさが戻る。余震もないようで一安心と言ったところかな。それにしても大変危険な地震ではあるが、どこか懐かしい気持ちにさせられる。

 俺自身は体験したことはないが、日本では過去において何度も大地震によって甚大な被害が出ている。それと確か日本列島は3つの海底プレートがる為に他国に比べて頻繁に地震が発生しやすいと聞いた気がする。それゆえに耐震技術も世界に誇れる程とか聞いた。

 我ながら不謹慎とは思うのだが地震によって思郷(しきょう)の心が切なく胸を締めつけたようである。


 ――――上京からはや数年。気が付けば社会に出てごく普通のサラリーマンとして働いた。

 夢に思いを馳せながら故郷(くに)を出た。しかし夢は叶わなかった……幼い頃から幻想や空想といったものに強い憧れを抱いていた。幻想を現実のものとする職――小説家になりたかった。

 社会人となって働き始めた頃はまだ小説家になる夢を捨てきれないでいたが、現実の壁というものを目の当たりにする。生活をしていくにはお金が必要不可欠、だからこそ働かなければならない。そんな日々の中では夢を追い続けている余裕は無い。そして、いつしか夢を諦め会社の歯車の一つとして生きること受け入れていた。

 ブラック企業というわけでもなく不平不満は一切ない。しかし両親には少しばかり後ろめたい気持ちになる。就職したと報告した際には両親は喜んでくれたし、俺自身も嬉しかった。けれど両親は反対してはいたが小説家になると言い上京した俺を送り出してくれた。そのことを考えると申し訳ないとも思う、まぁ両親としては安定した職のが喜ばしいのだろうけども。


 サラリーマンとして3年が経過した。3年も務めれば仕事に慣れ生活にも余裕が出てくる。

 私生活での空き時間が増えたこともあり数年ぶりに小説を書いてみることに……それは夢ではなく趣味としての小説だった。誰にも見せることのない幻想(しょうせつ)ではあったが、それでも俺は楽しかった。本当に久方ぶりの幻想世界に浸るのは童心に帰る思いでいっぱいになる。

 小説を書くことが趣味となった日々を送る。以前はプロデビューを果たす為に躍起になって執筆し続けた。それは義務感にも似た感覚であったと今では思う、けれど現在のはあくまでも趣味のもの。気負うことなく気軽気ままに自分の好きなままに世界を作り上げるのは解放感に溢れてとても楽しかった。


 ――――両親や友人たちは今頃どうしているだろうか。俺が死んだことに悲しんでくれていると報われるんだがね。

 ここに転生してからというものまともな食事は取っていない、味覚が無いからあまり実感していなかったけども日本を思い出した途端に母の料理の味が恋しくなる。特に田舎雑炊は絶品だったなぁ、あとはひゅうが丼も美味しかったなぁ。

 ()()()な程に日本のことを忘れていた。しかし、一度(ひとたび)思い出したら走馬灯のごとくとめどなく溢れ出る記憶。

 日本に帰りたい――そう思わずにはいられなかった。ただその方法も分からなければ、今の自分は怪物だ。そんな姿の俺が帰れたとしても…………二つの意味で日本には帰れないと思い知らされる。

 流れるはずのない涙が零れ落ちた気がした。


 ――思郷(しきょう)の心が切なく胸を締めつけた、あの日から7日。

 未だ心に刻まれた思郷(しきょう)の残滓が足取りを重くし壁画の場所に到達していない。

 モンスターと出会うことが楽しみだったはずなのに今はそんな風に思えないでいる。楽しかった日々から一転し気の重い毎日。生きる希望を失う……とはこういった気持ちなのだろうか。生き抜くことだけを考えていたが、もしこのダンジョンで死んだら俺は日本に帰れるのではないか? と思い始める。

 そもそもこのダンジョンに来たのも唐突な死が原因だったはず、それならば逆もあり得るかもしれない。

 幻想はあり得ない事象をも指す言葉、そしてここはその幻想の中にある異世界。だとすればあり得ないことが起こり()るのも不思議ではない。

 おそらく俺の身に起こったのは異世界転生というやつだ、だったらここで死ねば元の姿でなくても日本に転生するかもしれない。

 それでも……それでも……死ぬのは怖い。


 いつの間にか足元が水気を帯び始めていた。

 あぁ前にもこんなことがあったな、あれは確か裏ダンジョンだ。またもや変なところにでも迷い込んだか? 道順なんて気にせずにひたすら歩き続けていたしな、そんなこともあるだろう。ただ生ける彫像(リビングスタチュー)の説明に水場の話は一切出てこなかったはず。

 疑問が頭を()ぎる、それは思考を促し脳の働きが明瞭にして活性化していく証でもある。

 明らかにおかしい状況だ、道を逸れたにしてもそれほど本来の順路から外れていないはずだ。それなのに水気のある場所に出るのはあり得ない。生ける彫像(リビングスタチュー)も壁画付近に水場があるとは言っていない、なぜこんなところに水気が……。

 考えられる理由は、実は道を大きく外れ全く別の場所に来た可能性。けれどそこまで道順を間違えるているとは到底思えない。


 次の可能性は年月による変化。生ける彫像(リビングスタチュー)はあの場から動けない、このダンジョンはかなりの年数が経過しているのは明白、であれば劣化によって裏ダンジョンの水脈などが表側に漏れ出していると考えられる。又は、類する形で飲料水として誰かが作り出したとも。彼が知らないからこその情報の誤り。


 可能性としてはかなり低いが道順として認識されていない。前に思ったことがある、それはこの広大なダンジョン内の移動法。墳墓であるのだから作り上げた後であれば人が入ることはないが、建造中であれば話は別。これだけの規模を造るにはそれ相応の技術と搬入が必要不可欠。近道の存在、これが水路とすれば確認するのは困難であり誰もが通れるものでもない。ただし資材が水浸しにならないように、とは無理だと思う。以前にアイテムを見つけた時も劣化が激しく耐久性が高いとは思えない、この世界の技術水準は中世程度と言える。まぁその辺りは詳しくはないし、科学的に検査したわけでもないから実際は近世代くらいかもしれないけども。


 規模を考えると近道……日本で言えばエレベーターのようなものがないと上下の移動が困難極まりないんだよなぁ。だからそんなようなものがあっても不思議ではないけど、それが水路とは考えにくい。あーでもウォータースライダーだったらそれも可能か? いや下から上には利用できないか。

 あっそもそもここは神が造ったんだったけか、中層部なんて意味不明だしなぁ。俺には理解できない力で可能としてるとも考えられるのか。


 ふ~む、考えれば考える程に答えが出る気がしない。まぁなんにしても自分の目で確かめればいい話だな。その為に俺は最下層を目指しているのだから。

 とりあえずは水気を頼りに水源の場所まで行ってみるかね。裏ダンジョンを思い出すが、明度の違いは明らかで視界は良好だ。前回の失敗を教訓に水場が見えたら気を付けよう。またバニップのような水棲モンスターに出くわすかもしれない。

 慎重に進み続けた先には開けた場所だった。裏側の地底湖とは違いどちらかと言えば池といった感じだ。それも水に沈んだ遺跡跡の様相を呈していた。

 まずは周囲に気を配るがモンスターはいないようで一安心だな。次は目の前に広がる池を注視する。手――というより体を伸ばし水面を波立たせてみる。しばらく様子を見たが、モンスターが寄ってくることはなかった。どうやらこの池の中にはモンスターは生息していないようだ。


 モンスターを警戒すると同時に調べたところ、水源は壁のところどころの亀裂から漏れ出ているのが溜まった結果だと言える。先日の地震によって出来たの亀裂かと思ったが、そうであれば水が濁っているはず。しかし水は透き通り水底までくっきりと見える。そのことから昨日今日で溜まったのではないと理解(わか)る。

 よくよく見てみれば、一部の壁に絵が描かれている。つまりここが最初の道標である壁画ということだ。

 怪我の功名とでも言うのか、知らず知らずのうちに目的地に辿り着いていた。

最近はモンスターが出てきませんから、モンスター好きの人にとっては少しばかり退屈かもしれません。しかし中層部に辿り着けば話は変わります。中層部の為にモンスターを温存しています。小出しにしないと物語がもたなくなってしまうので。

相変わらず、不定期更新なので気長にお付き合いして頂けると助かります。

どうかこれからも楽しんでもらえるように頑張りますので、気軽に楽しんでくださいませ。

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