第12話 強行突破する?
お久しぶりです。相変わらずの不定期更新です。
今回は新たな目的を見言い出す話となっております。そこからダンジョンの謎が少し明かされるかもしれません。
そんな序章をお楽しみ下さい。
最深部を目指す為に役立つ情報とアイテムを入手しようとしたが……見事失敗に終わる。
その理由は至って簡単、ゼラチナス・キューブというモンスターであり、アイテムの詳細が理解できなかったからである。
この異世界に対する知識が無いのが一番の理由、その辺りを調べるのも一つの手かもしれない。
――アイテムや装備を手に入れたが俺には使用することは出来なかった。
当初の予定と違った結果、まぁよくよく考えればわかることで、そこは自分の落ち度である。なぜに俺は異世界の知識が無いことを失念していたのだろうか。ここの生活に慣れたからかもしれないな。
このオリティエ大墳墓に来てから1年ほどになる。ここは陽が沈まないから正確な日数はわからないけど、体感ではそのくらいの時間が経過している。
ゼラチナス・キューブに転生してからもう1年にもなるのか。いつの間にか人間性が欠如してしまったのかもしれない、この世界に順応する為に精神なんかがモンスターとして近付いている――それはないなー。
だってこんな思考してる時点で人間味溢れる行為じゃないですか、だから俺はまだ人間なんだろう。ど忘れや大ポカなんてそれこそ人間の特徴、だから精神だけは俺はまだ人間だと思う。
さてさて、これからどうするか。
アイテムや装備は諦めるしかないけど情報だけは話は別。この異世界の言語は解読出来ないが、以前出会った生ける彫像のように口頭でなら理解することは可能だ。そういった相手を探すのも一つの手かな。ただ問答無用で襲ってこないか、という不安は残る。
それにしばらく上層部第10階層を探索してものの、彼のような存在に出会える可能性がかなり低い。その理由は簡単で未だにまともにモンスターにすら出会っていない、この場はエンカウント率が非常に低い。
そして人間がこの10階層に到達するのは極稀な存在である、知識や情報が残されているとは考えにくい。
……となると、もう中層部に向かおうかな。
元々居た場所である程度は把握してる。それとモンスターの生息率も圧倒的に多い、それは情報を得る可能性が高いとも言える。
知能の高いミノタウロスも居たから他に知能の高いモンスターも期待できるはず。会話や意思疎通は叶わないけど、ミノタウロスを観察するのも良い案かもしれない。以前は物珍しさだけで見てただけだが、今回は行動範囲などを注視していけば自ずと中層をより把握できる可能性がある。彼らが近寄らない場所は危険度が高いということだろう。安全に中層を調べるならそっちのが得策かな、彼はゼラチナス・キューブを敵対視してないから争うこともない。だから安全面を確保できる、これは大変有益だ。
ただ問題点が……それもかなり厄介なもの、以前に見かけたワイアーム。
脇道から裏ダンジョンを経由して上層部に出たことを考えると、あの通り道が上層と中層を繋ぐ道である可能性がある。だとしたらワイアームを避けて通ることは出来ない。あれをどうにか出来ないものか、とは言えとても倒せる相手じゃない。戦いを挑むこと自体が自殺行為そのもの。
あの時通った脇道のような都合の良い道は無いだろうし、それと裏ダンジョンは複雑な構造をしているから正しく階層を移動できる保証もない。下手をしたら、いきなり最深部に到達してしまうかもしれない、一見それは良い事と思えるかもしれないが大間違いだ。RPGで例えるなら、最初の村を出た途端にラスボスに辿り着いてしまうバグみたいなもの。レベル1でラスボスに勝てると思うかい? もちろん無理である。
危険を回避する為のアイテム入所と情報収集だったんだけどなぁ。
とりあえず、生ける彫像に会いに行こう。彼から中層への道順を教えてもらい、そのまま向かうことにする。
問題は山積みだけども、今は行動を起こさないと現状を変えることは出来ない。運が良ければ何事もなく中層に行ける……と思う。これまでの経験上、無事に済むとは考えにくいという悲しい事実。
上層は迷路ではあるが中層と違い道があるのが救いだ、道なき道を進むのよりよほど楽である。だからこそ大まかなではるけどもこれまで進んだ道を覚えている、彼の居る場所まで迷わずに辿り着けるだろう。まぁ少しばかり楽観的かもしれんが、今は行動あるのみ。
――無事に生ける彫像の場所まで辿り着く。それも当然と言えば当然だ、なにせここまでモンスターに出会っていないのだから。
それはそれとして、本題の中層への道順を教えてもらおうじゃないか。とは言えこの広大なダンジョンの道順を覚えられるわけがない。以前もそんな話をした記憶がある。だから今回は目印や指標となるものをなるべく教えてもらうことにした。
目印になりそうなものは3つ。
壁画が描かれた半壊している壁。これは判りやすいので助かる。それに壁画というのも気になる、歴史を後世に残すためのものが壁画であるはず。だとすれば、このダンジョンについて新たな情報を得ることが出来るかもしれない。
二つ目は、なんとスケルトンの群れだそうだ。どうやらその場所は墓地のようなものらしく、スケルトンが大量にいるらしい。以前に出会ったスケルトンは、はぐれた個体だったのかもしれないなぁ。それと墓地のような物があるということは、やっぱりこの階層に居住区があるということじゃないかと思う。最深部とは別の墓所だろうし、わざわざ別にそのような場所を設けるってことはそういうことだろう。
最後は、木々が自生している場所。中層部に近いせいか、低木がいくつか生えているらしい。この先に例の大通路があると言う。
『異なる世界より来訪せし異形の人間よ。我が主と同じく深淵を求めるか』
道順の説明を終えると生ける彫像が問いかけてくる。
難しいところだなぁ……確かにこの墳墓を知りたいと思ってはいるけどもどちらかと言えば興味本位。なによりも俺としては、単純にモンスターの生態を見たい欲求のが強い。地下に広がる場所での希有な生態系なんて不思議そのものだ。ここの生態を知るうえで墳墓の存在理由を知りたいというくらい。
『……探究者は得てして己の欲望に忠実なる者。我が主も然り』
そんなもんなのかねぇ。俺はモンスターが好きだからその実態を見てみたいだけ。創造主とはまったく違うと思うけどなぁ。誰も見たことのない場所である最深部にはいったいどんなモンスターが生息しているのか、それを見てみたいという欲求。真理を求める人と比べるのはおこがましい。
『主の言葉を借りるならば “偏屈者こそ真なる希求する者” とのことだ』
なんというか理解はするし、できる。ただ肯定して良いものかと悩む。まぁ確かに生前――でいいのか? 日本で生活してる時も周囲から変わり者扱いはされていたけどもさ。
日本ではモンスターなんてお目に掛かれないからこそ見たいという欲求。それは普通だと思うけどなぁ、日本人ってわりとRPG好きな人が多いと思うし。ヲタクと呼ばれていない人でも一度は触れたことあるだろうし、ゲームだけに限らず映画とかでもハイファンタジーに触れる機会は多い。
だから俺の思考は普通だ。
『剣難な旅路であろうと汝に幸あらことを、言葉を交わした一人として願おう…………』
以前と変わらぬ別れの言葉を受け、生ける彫像と別れる。
ここから最初の目的地である壁画までの道は迷わずに行けるとのこと。説明を聞いた感じではわかりやすい道順ではあると、しかし現在地からはかなり距離があると言われた。人間の足でも約10日間は掛かる距離、ゼラチナス・キューブの俺だと……倍はいかないにしても、かなり時間を要するだろう。
壁画の内容が気になるところ。このダンジョンに深く関わるようなものだと期待できる。それは是非とも確認せねばなるまいて。
謎の壁画へ向けて歩を進める――足は無いけどね。




