第11話 装備品を手に入れた⁉
お久しぶりです。果たして覚えてる方は居られるのだろうか、と思っている作者です。
色々とありまして、執筆する時間を割けなかったんですよね。それで、ようやく取れたので久しぶりの投稿です。
待っている方がいたら、ぼくぁ幸せだなぁ。
オリティエ大墳墓の最深部を目指す為に、現在上層部第10階層を探索中。
その目的はこれから赴く中層部以下に関する情報を得る事とアイテム入手の為である。
――生ける彫像と別れてから5日が経過した。何も見つからない……どういうことだ。安全性を考慮すれば人が住む場所には人が集まるはずなのに、あの創造主が住処していた場所からかなり歩いてきたが他の住居などを見つけられない。ついでにモンスターすらも見つけられない。
これはおかしい……モンスターを1体も見ないということは、それなりに安全という証拠でもある。それこそ、この場に住む者がモンスター除けを使用しているからとも考えられる。しかし、その主の住居が無い。安全であれば住居を構えてもいいものだと思うんだがなぁ。
う~ん、魔法とか使えるような世界だから巧妙に隠してたりするんだろうか。そうなると見つけるのは困難になるな。けれども、生ける彫像の創造主はあんなにも堂々と住居を構えていたしな……まぁその生ける彫像という守り手が居るからこそなんだろうけど。
それを鑑みても不自然だ。生活感と言えばいいのか……人間が居た形跡が無い。
そう、思い返せばこの上層部は不自然なことばかりだ。その最たる例は、死体が一切見当たらない。人間だけに限らずにモンスターのものまでも見たことがない。白骨死体すら見掛けないのはあまりにも不自然過ぎる。全身の骨格、全てが残ってるのは稀なことだろうけど……骨の一部分も落ちていない。
危険地帯でそんなことが有り得るのか。考えられる可能性は二つ――
死体にゴースト系モンスターが憑依しアンデッド化した為。生ける屍と成りこの階層を守護の為に歩き回っているから、と考えるのが無難かな。侵入を妨害すると同時に戦力の増強とかも出来るから、お得な方法と言えるだろう。
それにしても死体の痕跡すら無いのは不自然極まりないんだけどね。
二つ目。ここが迷宮区であることに起因している可能性。
巨大な迷路に人が探索に入れば、ゴミが多く出ることになるだろう。そのゴミが散乱していては冒険者たちにとっても邪魔であるのは間違いない。ゴミを片付けると言えば――そう俺だ。
ダンジョンの掃除屋であるゼラチナス・キューブが徘徊している為。それも数多くのだ、これだけ広い場所なら相当の数が必要不可欠。
しかしこの可能性は低いだろうなぁ。なぜなら、多くのゼラチナス・キューブが放たれているのなら出会っていてもおかしくないはず。でも、実際には一匹も出会っていない。さすがに少数のゼラチナス・キューブだけでここまで綺麗になるとは考えにくい。
まぁどちらかだけってことはないだろうねぇ。原因が一つだけなんてのは、まず有り得ないだろうし。この二つの要素が合わさっているからこその現状と考えるのが一番妥当なんだよね。
さてさて、アイテム捜索に精を出しますか! 考えていても答えは出ないし、目的も別なんだ。だったら探すことに専念すべきだな。それに俺の予想通りだったとしも害があると思えない。このままアイテム探しを続けても支障が出ることはないから、今は気にする必要ないかな。
――あれから一週間後。ついに念願のモノを見つけるに至った。
そこはベースキャンプ地にでも使われていたような野営地跡。この場はあのマンドレイク畑に似た様相をしている。実際に規則正しく並んだ草が生えている、これはきっと見たまんま畑なんだろうな。この迷宮区に大量の食糧を持ち込むのは現実的じゃない。マンドレイクが自生していることを知っていれば、そこで作物を育てられると考えてもおかしくない。なによりそちらのが食糧を確保するには最適とも言え理に適っている。
物が散乱し、端には木箱がいくつか積まれている。ここでなら目的の聖水系アイテムが入手できそうだ、ついでに武具も。
しっかし、これはこれで不安なんだよね。今まで綺麗さっぱり痕跡が無かったのに、ここにきて急にこうも乱雑に物が置かれているのも不自然なんだよね。もしかしたら、これは罠なんじゃないかと思う。野営跡が残された場所というのは、野営に向いていると考えるのが普通だろう。新たに侵入して来た冒険者たちを陥れる為にここは用意された場所とも考えられる。
う、う~ん……これは悩みどころだなぁ。下手したら “ミミック” の巣だったりするのかねぇ。
ミミック――宝箱のモンスターとして有名。しかしこの認識は正確なものではない。
その実態は誰も知らない、実体とは全く異なる姿に “擬態” 或いは “変身” している謎の生物の総称である。
倒したとしても擬態のまま絶命してしまう為に、実体が分らぬままということである。
ミミックの最大の特徴でもある擬態を使った捕食方法。それは、いかにも宝とかがありそうな場所でその物に擬態し獲物を待つというものだ。
今まさに俺が居るこの場所が、いかにもな場所だ。どう見ても怪しい、ここは上層部最下層、ここまでの道のりは相当なものであるのは明白。そんな所に休憩が出来そうな場所を見つける。それも心身共に疲労困憊な状態でだ、人間にとっては安堵を覚えてしまうだろう。しかし、それこそがミミックにとっての恰好の獲物。
ヤベーよ、この場所本当にヤベーって……だって、謎に包まれたミミックの実体を拝めるかもしれないんだもの! このまま観察を続けてればその内に姿を現す可能性が高い。
いやいや少し落ち着け、このまま観察するは良しとしてだ。仮に戦うことになったらどうだ? 俺は勝てるのか? う~む、硬さ頼りでの物理攻撃が主体だと思われる……けど、実は擬態じゃなくて幻惑系の魔法を使ってるモンスターって見解もあるんだよねぇ。魔法が使えるとしたら勝てる気がしないんだよなぁ、RPGでも攻撃呪文使ってたりするのもあるから油断できない。
これは観察を続けて、その辺りを見極めるのが得策かな。確かにアイテムは欲しいけど、ここで下手に手を出してミミックと戦闘になるのは避けたいところ。慎重に慎重を重ねていくべきだよな、いつどこで死ぬかわからないんだ。
――三日間、観察を続けてみた。
その結果、残念ながらミミックは居ないようだ。確かに、俺以外のモンスターがここを訪れていないから、一概には居ないと断言は出来ない。けれども、どうにも生物がいる気配がない。いや相手はミミックだから気配なんぞ無いのかもしれんけども。様々な角度からこの場を観察し続けた、それこそ天井に貼り付いて観察したほどに。だから何かしらの生物が潜んでいるとは到底思えなかった。
遺憾ではあるけどもミミックは諦めて、当初の目的であるアイテム漁りを始めようかね。とは言え、まだ怖いので再び天井に貼り付き小石を体内から吐き出して木箱などに当ててみる。無反応……やっぱりミミックは居ないみたいだ。最終的な安全確認を行ったが、大丈夫だと判断できる。
というわけで、比較的破損が少ない木箱から中身を確認していくことにした。
観察を続けて解かったことはここは放置されてから、かなり時が経っていること。おそらく年単位、少なくても5年くらいかな? いや、専門家じゃないから詳しくはわからんし、もっと経過してる可能性もある。物の劣化具合が結構激しい、まぁ日本の技術水準とこの世界を比較すると保存期間は短いのは明白なんだけど。
それと、もう一つ解かったことはここで戦闘行為は行われていないこと。
死体が無いことが最たる例と言える、それと物がそこまで散乱していないことも要因の一つ。強いて言うなら、近所に買い物に出掛けてそのまま帰らぬ人となった部屋のように、生活用品が片付けられていない様相と言ったところ。
しかし食糧があまりないように思える……それっぽいのはあるけど腐り果てて判別不能なんだよね。瓶に入ってるのは水かな、なんかイメージでは冒険者の飲み物ってワインという印象が強い。まぁそれは長期保存ができるからなんだろうけど。けど飲料の数が少なすぎる気がする、これは残り少なくなって帰還したからか、それとも近場の水場でもあるのかもしれない。水場があればある程度の長期滞在にも耐え得るだろうし、水は生命線だからこそ確保の必要がある。
よくよく考えてみれば、あの生ける彫像の主もここに住んでいたということは、このダンジョンには水源が存在しているのだろう。でなければ、ここに住むなんて出来ないはずだから。まぁ俺が最初に居た中層には川とか池とかあったしな、それに裏側にはバニップの住処の地底湖もあったし、その辺りが水源になっているのかね。
う~ん、となるとやっぱりここは墳墓じゃないんじゃないかなぁ。元々は住居――いやダンジョンの規模を考えれば、国と言う方がしっくりくる。国が滅び人々がいなくなり、やがてモンスターの巣窟と成った。長い年月によって国の存在は忘れ去られ、それ故にいつからか墳墓と認識されるようになった。
これもまた浪漫だよねぇ、失われた謎の文明。これは是が非でも解き明かさねば! てなわけでその第一歩となる、色々と考えながら残された資材の仕分けを終えた。この中に役立つアイテムがあることを祈るばかりだ。
とりあえず腐っている物、使えそうな物、用途不明な物に仕分けした。ここで少しばかり食事にありつくとしよう、腐っている物を体内に取り込み栄養源とさせてもらおう。この程度には慣れている、最初のミノタウロスの集落で経験済みで躊躇なんぞ今さらしない。なによりも、あのアティアグの巣と比べたら……ね。
気を取り直して、まずは使えそうな物からじっくりと拝見してくかね。使えそう物としてまとめた物の主は武具の類いだ。とは言っても特殊な武具ではないことだけは判る。RPGで言うところの鉄の剣や鋼の剣等といった感じのもの。まぁでもこれで攻撃力を補えるのだからありがたいことだ、さて早速装備してみるか。
………………持てない! 掴めない!
当然か、俺には手が無いのだから。しかしまだ慌てるような時間じゃない。手が無いであれば作ればいいじゃない。そうだ俺には形状変化という技がある、それを屈指すれば――無理無理! 体全体ならいざ知らず、一部分だけを変化させる芸当なんて出来ない。そもそも仕分けした時だって体内に取り込んで持ち運びしてたんだから。その時点で気付けよ、俺。
ま、まぁ武具は補う為の物で本命じゃない。俺の目的はあくまでもモンスター除けの効果がある薬品だ。この用途不明な物がきっとそうに違いない。粉末の入った小瓶や液体の入った小瓶、おそらくこれらは回復薬にあたる物だろう。
そう、用途不明な物……なぜ用途不明なのか。その答えは簡単だ、この世界の言語を俺は読めないからだ。文字らしきものは描かれている、しかしそれがなにを意味するものなのか俺は知らない。これがゲームだったら――
『回復薬を入手しました。HPを少量回復できる』
なんて説明してくれるだろうが、ここは現実でそんなご都合主義なんてものは存在していない。不明な物は己で解き明かすしか術がないのだ。それに、これらが経年劣化して効力を失っている可能性が高い。なによりも、使えたとしてどう持ち運ぶ? 体内に入れたら溶ける。
あれ……これは、まさかの……俺やらかしちゃいました?
ようやくアイテム等を入手したが、その全てが無駄骨であったことに気付く。そして、当初の計画が脆くも崩れ去るの様を心の中で感じた瞬間でもあった。




