第10話 本格的にダンジョン攻略
今回は「第4話」に続き、考察回です。しかも今回はモンスター解説すら登場しません。
そういった内容ですので、退屈に思われるかもしれません。しかし今後の物語において指針や方針を決める回になりますので、なにとぞご理解の程お願い致します。
ダンジョン――オリティエ大墳墓。それは神代の時代に造られ、そして神々が眠る場所だった。
生ける彫像と出会い、このダンジョンに関する情報を大雑把ではあるが得る。その情報を基にダンジョンを攻略して行こうと思っている。
当初からの目的でもある、このダンジョンの謎を解き明かすこと。それを達成するには生ける彫像が言っていた、神々が眠るとされている最深部を目指すのが一番だろう。というわけで、今現在いる上層部を探索して行こうと思う。
え? なんで最深部に直行しないのかって? そりゃあ、物事には順序というものがあるからだ。それこそRPGで例えるならゲーム開始直後からラストダンジョンに行けるわけがない。それ相応の準備が整ってから向かうのが定石だからだ。あの竜の王である居城とて目の前にあるけど直行出来ないのと同じこと。
最深部へ行く前にこの上層部で出来るだけの準備をしておきたい、だから今なおここを探索しているのだ。これまでと違って明確に目的があるのは良いな。当てもなく歩くのは存外に辛い……RPGで言うところ、次の目的地がわからないままフィールドを歩き続けているようなものだ。うん、これは辛い。
最深部を目指す為に必要なもの――情報と道具だ。
この二つを揃えなければとても最深部までに到達するなど不可能だと、俺は考えている。RPGでは得た情報を頼りに攻略を進めるものだ、けれど現状では情報不足であると言わざるを得ない。
生ける彫像は言っていた。
『創造主もまたこのオリティエ大墳墓を探求しようとした一人に過ぎぬ。そして、この大墳墓に生涯を捧げその身を埋めた』
探求しようとした一人に過ぎぬと。つまりこのダンジョンを探索している者は、その創造主の他にも存在していたことになる。となれば、より詳しいダンジョンの情報を得られるはず。なによりも広大過ぎるのだから、情報はあっても困るどころか必須とも言える。
その証拠に現在地でもある上層部に関して知っているのは、上層部は10階構成でその全てが迷宮区であるということだけ。そして中層以降に関しては何も知り得ていない……うん、こんな少ない情報だけでは不安過ぎる。こんな状態で最深部を目指すなんて自殺行為に他ならない。
出来るだけ多くの情報を得ることが目的の一つだ。上層部に関してすらまともな知識が無い、せめて一部が記された地図だけでも手に入れたい。それと最深部に行くとなれば、中層部と下層部をも通らなけらばならないのだ。この二つに関する道順と、どのような場所であるのかという情報が欲しい。まぁ、中層部には元々居たこともあってある程度は知ってはいるけども、それでは不十分。
地図も欲しいところではあるけど、実のところ一番欲しいのは生息しているモンスターについてだったりする。これは俺の趣味でもあるけど、どのようなモンスターが生息しているのか、さらにその分布はどのようなものであるか、ということが知りたい。安全な道のりを確保する為にもこれは必要不可欠だ。
中層部に居た頃を思い出してみよう――タラスクスを見かけました。ワイアームが通路の入り口を陣取っていました。どちらもモンスターとして最強種と名高いドラゴン種です。しかも、中層部において上階にて出会いました。そんな階層です。危険極まりない場所です。それもまだ中層部の上階で、その下にはまだまだ階層があります。
そんな危険地帯をなんの準備もなく、散歩気分で通り抜けたいと思うかい? 思わないだろう? そういうことです。まぁ散歩気分でここまで来てるけどね。
この上層部最下層である10階層にも関わらず、大したモンスターは生息していないと思われる。まだ全容を掴みきれていないけれど、これまで上層で生息しているモンスターはゴースト系、マンドレイク、スケルトン、生ける彫像。
しかし、中層ではミノタウロス、グリフォン、ヒポグリフ、キマイラ、タラスクス、ワイアーム。と上層と比べると、その生息数も多く危険度が異様なまでに高くなっている。これらに加えてG系モンスターまでもが生息している。
これは上層部と中層部の構造の違いによるものだと思う。上層部は迷宮区で食物連鎖が成立しにくいが、中層部は大自然が広がる区域なのだから必然的に生物が多くなる。
その様な場所を横断しようと言うのだから準備を怠るわけにはいかない。
そう、そこで重要となるのが “道具” だ。
俺はスライムの亜種であるゼラチナス・キューブだ。はっきり言って弱い……倒すのに苦労するだけであって、戦闘力があるわけではない。RPGなら防御型と言える種族だ。
ただ、俺自身に戦闘力が無いのであればそれを他で補えば良いだけだ。そう装備品を揃えるのも、目的の一つだ。この上層部には、人間が数多く残した物があるはずだ。それらを利用して中層部と下層部を突破する。出来れば、装備品よりは道具のが好ましい。いわゆる『聖水』系統のアイテムが最適と言える。
所詮、俺は弱いモンスター……実力でバニップに勝ったと思いたいけど、実際は運が良かっただけに過ぎない。だから出来るだけ強いモンスターと出会わないようにするのが得策だと考えた。
RPGでの聖水の役割は大半、自身が浴びれば敵を寄せ付けない効果、敵に浴びせれば少量のダメージと共に敵を強制的に逃げさせる効果などがある。
これに類する道具を入手するのが最優先だ。戦うだけの力がないのであれば、戦わずして勝つ! これに限る。ここに至るまでもそれなりに苦労したし危険を避けてきたが、最深部を目指すのであればこれまでと同じよう上手くことが運ぶとは思えない。向かう場所は常に危険と隣り合わせ――いや死と隣り合わせな場所だろうからな。
俺の目的は戦闘経験値を高めてラスボスを倒すことなんかじゃない。このダンジョンの謎を解き明かす事なのだから、無理して戦闘する必要がない。むしろ安全を考慮した探索が重要なのである、実際の探検や冒険においても安全確保は最優先事項。ゲームではいくらでもリトライが可能だけど、現実はそんなわけにはいかない。
現実での冒険において失敗は死という意味になる。
戦闘しながら旅を続けてることを楽しめるのはそれはゲームだからだ。ここは紛れまない現実、なら求められるのは生きること――常に生還者でいなければならない。
現実なのにゲームに出てくるような都合の良い敵を避ける道具が存在しているのか……そう考えるのが普通かもしれない。けれど、俺はそれに類似したものは必ず在ると思っている。
話を聞いたところ、この上層部第10階層に到達するにはそれ相応の実力がなければ不可能のようだ。この複雑に入り組んだ広大な迷宮区もさることながら、モンスターが行く先を阻んでいる。現実問題として危険生物がいる場合に毎回排除して先に進むか、という懸念点が発生する。もちろん、答えは避けて別の道を行くだ。
長い道のりにおいて安全面を考慮するの当然である。体力や食料そして休息を考えた結果、安全確保を第一とするのは必然。
そこで考えられるのがモンスター避けの道具の存在。生ける彫像を創造するだけの魔法技術があるのだから、そのような効果を持つ道具があってもなんら不思議ではない。むしろそのような道具がなければこの上層部第10階層に到達できるとは考えにくい。ゆえに確信を以て言えるのだ、聖水のような効果を持つ道具が在ると。
そして装備品――つまり武具だ。武具を装備して己の攻撃力と防御力を底上げするのが目的。
いくら聖水を所持していたとしても避けられない戦闘は必ずある。聖水の効果が無いモンスターがいることも考えられる。その際には、あのバニップ同様に戦闘に発展するだろう。あの時の戦闘を思い出すと攻撃の手に欠けるのは否めない。であれば武器を使用して攻撃手段を増やすのが早道。
防具に関しては悩む……防具を身に着けては形状変化による回避が出来なくなる。防御力を取るか、回避率は取るかと悩みどころ。
俺の形状変化はかなり使える能力だと思っている、バニップ戦で戦えたのもこの能力のおかげだしな。ただし、相手の素早さが低ければ有効なだけなのが欠点。しかも俺はスライムなので素早さは低い、かと言って元々鈍い動きの俺が防具を装備して更に素早さを犠牲にするのは自殺行為なのでは? という懸念点が拭えない。
まぁ、装備品に関しては武具よりは特殊効果のある物のが好ましいけど。RPGで言うところのアクセサリー装備品だ。これは以前から思っていたことで、読心や念話を可能とする道具があると便利だなと考えている。その類似品が手に入れば今後の散策が助かるかもしれないからだ。他のモンスターを仲間にすることが可能かもしれない。生ける彫像は守護者ゆえにあの場を離れられなかったが会話は可能だった。それはつまり、交渉の余地があるとも言える。条件さえ合えば仲間に引き入れることも可能だろう。とは言えこれは望みは薄い……楽観視とも言える。他者頼りでは生き抜くのは無理だ、それが確実なら話は変わるがそんなことはないはず。
例えば、会話が可能な強いモンスターと出会ったとしてだ、そこで『仲間になってくれないか?』と頼んでみる。頼まれた場合なんて答える? 普通は『なんでお前の仲間にならないといけないんだ』とならないか。見ず知らずの者がそんな頼み事をしてきても、二つ返事で了承するとは考えにくい。
まず他人を頼るのではなく己を強化することがRPGでも常套手段だから、俺はそれに倣うことにする。
何はともあれ、今は最深部を目指す為に情報と道具を入手するのが先決。




