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シューシャンボーイとヴァイオリン~今日は何の日短編集・3月15日~

作者: 白兎 扇一

今日は何の日短編集

→今日は何の日か調べて、短編小説を書く白兎扇一の企画。同人絵・同人小説大歓迎。


3月15日→靴の記念日


日本靴連盟が1932(昭和7)年に制定。

1870(明治3)年のこの日、西村勝三が、東京・築地入船町に日本初の西洋靴の工場「伊勢勝造靴場」を開設した。

陸軍の創始者・大村益次郎の提案によるもので、輸入された軍靴が大きすぎたため、日本人の足に合う靴を作る為に開設された。

思い出は過ぎ去ってから光り輝く

─イギリスのことわざ


継ぎ接ぎだらけの薄い布団で目が覚めたジョンは驚愕していた。質の良くないカーペットの上に、綺麗に直っているヴァイオリンがのっていたのだ。彼は喜びの表情を浮かべ、ヴァイオリンを抱きしめた。

まだ8歳のこのシューシャンボーイ(靴磨きと言った方が聞こえがいいか)は雀の涙ほどの収入で買った宝物である。ことあるたびに、近所の幼馴染達にその腕前を聞かせていた。彼には遠い存在であるお金持ちの子供達もみんな彼の演奏に惹かれていた。しかし、その素晴らしい才能を楽器ごと、彼の父親はその靴で踏み砕いた。そして、皇帝のようにこう命令したのだ─「うちにはそんなことをやる余裕はない。一銭にもならない音楽をやるより、靴磨きをやれ」と。そこから彼は幼馴染に会うことも許されず、泣きながらシューシャンボーイに甘んじた。毎日毎日彼は願った。「ヴァイオリンをやりたい。仲間に会いたい。親から離れたい」と。その、あの時崩された夢が、宝物が戻ってきたのだ。

(これを直してくれた親父に感謝しなきゃ)

ジョンは台所に向かう。ドアを開けた。いつも、ウイスキーを飲んで床に転がっている父親がいないのだ。それを見て泣きわめく母親もいない。

(こいつはどういうことだ?)

台所の窓から子供の声が聞こえた。窓から外を見る。不思議な光景に気づいた。外を歩くのはみんな子供なのだ。みんな、走り回って、おもちゃを使って、遊んでいる。一人たりとも大人がいないのだ。

台所内に視線を戻す。白い壁に、見覚えのない貼り紙が貼られていた。


〈ここは子供の国!みんなでいつまでも仲良く、好きなことをして暮らそう!それを許さない大人の国は敵!〉



ジョンは突如現れたこの子供の国で暮らして、大体勝手が分かってきた。この国には子供しかいない。あの貼り紙通り、みんなで仲良く好きな事をして暮らしている。そこには仕事という概念はない。じゃあどうやって食べているのか?大人の国というところから、食べ物が送られてきているのだ。それで食いつないでいる。しかし、大人の国の大人達はその食べ物に命令文の紙を付けて送ってくるのだ。ある日には「好きなことだけするのはよくない。現実を見ろ」という文章がハンバーグと共に。またある日には「誰のおかげで生きていられるのだ。食べ物を与えている俺たちのおかげだろ?いい加減にしろ!」という文章が鮭のムニエルと共に。子供達が嫌がるのはそういった部分なのだ。そこが嫌で、彼らは両国の国境で大人達と戦っているのだ。

そんな事情で、ジョンはこの国では靴磨きのジョンではなくヴァイオリン弾きのジョンになった。毎日毎日楽器に触れ、多くの子供達を感心させた。ジョンはこの国を所々おかしく思いつつも、満喫していた。



そこから10年ぐらい経った頃だろうか。ジョンは、だんだんこの国に吐き気がしてきた。いつまで経ってもこの国の人々は好きなことしかしないのだ。そんでもって、毎日のように大人達からの命令文を捨てて、戦いに行くのだ。この国で刺激といえばそれぐらいだ。

「ジョン君、こちらに来て見ないか」

ある日の夕方、家に帰る時にジョンはこう声をかけられた。自分よりも背丈が高く、口に髭を生やした男だった。子供の国の子供達が寝静まる夜中、ジョンは男の後に続いてこの国を出た。



男は大人の国の軍事担当だった。何やらよくわからない機械が沢山ある場所で男はジョンに子供の国の内情を聞いた。ジョンは別に子供の国に執着がなかったので、思い当たることなどを一通り話した。

ある時、男は部屋にいなかった。ジョンは一通り機械をいじってみると、スクリーンに戦場が映った。子供の国と大人の国の戦いだった。スクリーンに映った前線の兵士は、彼の幼馴染だった。幼馴染は槍を持って走っている。しかし、大人の国の銃は生きようとする彼の心臓を貫いた。幼馴染は倒れた。伏した体の下から赤い血が流れでて、地面を濡らしていく。

部屋に戻ってきた男は嬉々として、先ほどの戦場の話をしてくれた。あの兵士は倒そうと思っても倒せなかったが、お前の情報で倒せた、感謝する、と。男はジョンにこれからも情報を提供してほしい、紙に書いてくれと頼んだ。


その日からジョンは狂ったように紙に書き始めた。靴磨きの合間を縫ってまで彼らと会ったあの日を、子供の国に移動してから楽しんだあの時を振り切ったように見えた。

しかし、ジョンは部屋の端に置かれたヴァイオリンが視界に入ると、忘れたと見えたそれは一気にこみ上げてきた。銃で射抜かれた獣のように苦しみ、泣いた。


(こんなんじゃダメだ。もう戻れやしないんだ……)


今朝、大人の国の廃棄場。使い込まれたもののまだまだ使えるヴァイオリンが出されたのはそんな所以である。

ご閲覧ありがとうございました。

すみません、これは失敗作です。あまりにも出来が悪いです。忘れてください。

最近、小説が書けなくなってるんです。前まではちゃんと物語が思いついて、構成も練れてたのに出来なくなってきたんです。嫌だな。死にたい。


では、また明日。

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