新規パン仲間と不思議な彼女。
「はははっ、そりゃあお前が悪いな。花城と付き合っていながら姉? いや、妹だっけか。その子とデートってそれは駄目だろ。花城は一途女子って分かってるくせに、内緒にするとかそれはないだろ」
「い、いや、師匠……じゃなくて彼女の元パパさんがそうした方がいいって言うから」
「謝っとけよ? 俺が言う立場じゃないけど、あの子は本気なんだし」
「う、うん」
「それはともかくとして、今日は紹介したい奴がいるんだけど……会うだろ? 聞いて喜んでいいぞ。パン仲間の新メンバー加入だ。ってか、学校生活残り一年でパン仲間増えるのはマジでレア!」
ゆかりなさんのことをサトルに相談というか、話をするのは正直言って微妙だった。だけど、全く関わって来なかったわけでもないし、一度どころか何度か助けてもらっているし一時的に恋敵を演じられただけに、サトルには言うしかなかった。でも何となくスッキリした気がした。
「というか、パン仲間加入かよ! じゃあ、帰りは俺らと同じようにコンビニに行くのか?」
「そうなるな。ただ……そいつは恥ずかしがり屋なんだよな。だから、何というか気を悪くするなよ?」
「なるわけないだろ。だって仲間が増えるとか、それは真面目に嬉しいし」
「おし、じゃあいつものコンビニにそいつが先に行ってるはずだから行こうぜ」
「おー」
パン仲間はかつては俺とサトル、そして同じクラスのぼっち男子とで楽しんでいた。しかし春になると俺たちは最後の高校生活を送ることになる。さすがに3年にもなると、そんな余裕は無くなるのか新作パンを楽しむパン仲間は自然脱退をしていった。
今では俺とサトルだけになってしまっただけに、嬉しくて仕方がなかった。サトルはソイツだとか奴だとかしか言わなかったので、特に気にすることなくコンビニに向かったものの、まさか……そんな、ねえ?
「サトル……そいつ同じクラス? なんて奴?」
「あーうん。隣クラスだ。で、名前は本人から聞いてくれ。ちなみに女子な」
「ホワット? 女子って! 聞いてない」
「その方が喜び倍増かなと思った。怒ったか?」
「怒ってないけど、女子か……気を遣いそうなんだよな~」
「それはたぶん大丈夫だろ。タイプが花城に似てるし……うん、平気だろ……」
「んん?」
ゆかりなさんのことを諦めたはずのサトルが、何でよりにもよって彼女似のパン仲間を紹介するのやら。
「ジー……」
「えっ? もしかしてゆかりなさんが来てる?」
「あ、来てたな。高久、彼女が新加入だ。花城に似てるかもだけど違うぞ」
いやいや、この視線はどう感じてもゆかりなさんの尾行時の視線力なんだけどな。
「高久、新作見に行こうぜ」
「や、彼女に声かけないのか? 仲間だよな?」
「彼女からお前に話しかけてくるまで放っておいていいぞ。すぐ慣れる」
「何が? 慣れるって何? や、外にいたしパン買わないのか?」
「気にするな。そういう子だから。とりま、パンを買うぞ!」
「何が何で? 仲間なの? なんかずっと陰から見られてるんだけど、何で声をかけて来ないんだ……」
視線こそゆかりなさんのような感じがしたのに、新しいパン仲間の女子は何故か近づくこともなく、ずっと陰で俺を見つめているみたいだった。これはどういう出会いなんだろうか。まずは声を聞くことを目指してみよう。