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ゆかりなさんは尾行したい


「じゃ、じゃあ、行こうか?」


「こっちに連れて行く?」


「あ、行きたい所があったの? それじゃあ、しいちゃんについて行こうかな」


「違う。お兄さんが私をエスコート?」


 何故疑問形なのか、先に行く人が分からないならどうにも出来ないと思うけど。


「俺に聞かれても分からないけど、えーと……手を繋ぐ、でいいのかな」


「そう、私と手を繋ぐ。右手出す? 左手?」


 ううーん? しいちゃんというか、椎奈さんはもっとサバサバ系でお姉さんっぽかった……いや、不思議系だったはずなんだけど、どうしてこうなったのだろう。俺の妹さんになることを決めた辺りから、精神年齢をコントロールしたのかってくらいに幼くなってる気がするんだけど。


「ひ、左手を出してくれる?」


「ん、恋人繋ぎ」


「いえいえいえ、普通に繋ごうか」


「ヘタレ?」


「~~っ」


 本当にもう参るなぁ。椎奈さんは絶対に妹キャラを演じているとしか思えない。ここはヘタレ野郎と思われても、むしろ兄として率先して手を繋いでみせる。いくら妹さんでもゆかりなさんに見られでもしたら、また叱られてしまうのは目に見えているからだ。


「普通繋ぎ?」


「ごめんね、とにかくこっちに歩けばいいのかな? っていっても商店街通りしかないけど」


「それでいい。デートするお兄さんが好きだから」


「はは……よくわからないけどありがとう?」


 もし椎奈さんが姉という立場を選んでいたら、俺が弟として甘えるキャラになっていたのだろうか。そこだけはちょっとだけ興味がある。でも今はお兄さんと呼ぶ妹さんが俺の手を繋いできている。それでいいじゃないか! 妹サイコー! だからこれは決してゆかりなさんを裏切る行為ではないのだ。


「何食べるか決めた?」


「いや、あの……まだ商店街の手前であって、お昼でもないよ? しいちゃんが行きたい所に行くから、決まっているなら遠慮なく手を引っ張っていいからね」


「……そうする。お兄さん、全力疾走」


「っと……うわわわ!」


「走る。走って、早く早く」


「わ、分かったから引っ張らないで~」


 そして連れて来られた場所がスーパーというオチである。確か俺はデートに誘ったはずじゃなかったかな。それに財閥のお嬢様が特売スーパーのタイムセールに走るとか、誰の影響なの?


「しいちゃん、あの、別にそんな特売じゃなくても俺が奢るよ? デートなんだし……」


「駄目。お兄さん、貧乏だから。だから頑張る」


「いや、貧乏って……」


「知ってる。だからこの時間を使う。OK?」


「オーケー……」


 デートという名を使用して貧乏な俺を救済する日でしたか、そうですか。泣ける……お兄さんと呼ぶ割には、彼女から慕いの感情やら好意やらをあまり感じられなかったのだが、そういうことだったのか。


 近所のおば様たちに交じって、妹さんである椎奈さんがタイムセールで頑張る姿は、色んな意味で泣ける。考えなくても分かる通り、ゆかりなさんという嫁【仮】がいるのに、お兄さんと呼んでくる妹さんに何を求めるというのか。


「しいちゃん、ガンバレー」


 とまぁ、一応応援の声を掛けるも、セール棚に夢中ですかそうですか。挫けずに生温かい目で椎奈さんが戻って来るまで端の方で突っ立っていた俺だったのだが、どこからか冷気を……ではなく、冷たい視線を感じているような気がしてならない。


「……じー」


 この視線には覚えがある。まさかと思うが、尾行して来ているのか? 近くにいるはずなのに姿が全く見えないんだが、どこにいるというのか。これはデートじゃないんですよ? いるなら声をかけてくれY!

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