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ゆかりなさんと小悪魔さん


「高久くん、いる~?」


「はいはい~今開けるよ」


 妹として一緒に暮らしていたゆかりなさんは、今はお母さんの所に住んでいる。親父と別れたわけではなく、単にお母さんが多忙なだけであって親父は邪魔をしたくないらしいが、かなり寂しいらしい。


 家族として俺の家にいた妹さんの部屋はもちろんそのままだ。立ち入り禁止になっていて、彼女が泊まりに来るときや、遊びに来る時だけその扉が開放される。恋仲になっても妹さんの部屋に入ることは許されなかった。


「その後どうなの? ちゃんと鍛えてる? 試しにお腹にパンチするけどいいよね」


「い、いやっ、ちょっとまっ――」


「なにビビッてんの? 冗談に決まってるじゃん!」


「ですよね~はは……は……ぐふぁっ!? ズ、ズルイ」


 ゆかりなさんは俺と付き合う前から蹴りとかを繰り出す女子ではあったけど、最近の自分の軟弱ぶりが相当ムカついているらしく、こうして顔を合わせるたびに彼女なりの愛情表現を繰り出して来るようになった。


「わたしのパンチなんて痛くないじゃん。そんなに大げさに痛がるなよ! 高久のくせに!」


「痛くないけど、不意打ちは結構クるものがありまして……もう少しおしとやかさをですね」


「ふぅん? そうゆうこと言っちゃうんだ。わたしのコト、いじめる?」


 ああ、ちくしょう。そういうセリフを上目遣いで言うのは反則じゃないですかね。


「め、滅相もございません! いじめたことなんてないじゃないですか」


「いーや、あるね。えーと、イベント会場の時の神隠しとか、学校の時のジャンピング蹴りとか、バレーボールを狙ったように頭にぶつけたサーブとか……」


「ごっ――ごめんなさぁい! 俺が悪かったです」


 くそう、惚れた弱みすぎる。元が近すぎた妹なだけに、ゆかりなさんは俺の弱点を知りすぎているのが割と困りものだったりする。


「で、どうなの? しいちゃんと仲良くしてる? 彼女にお兄さん呼ばわりされているお兄ちゃんとしては嬉しいのかな? ねっ、高久くん」


「彼女天然だよね」


「そんなことないけど? もしかして、高久くんがそうさせてるんじゃないの? 妹好きだもんね~」


「妹だからってそんな誰でも好きになるわけじゃないよ? 俺はゆかりなさ――」


「はい、ありがと。とにかくさ、高久くんは成長中だと思うんだ。だから、バイトもそうだし運動もだし、もっと外に出まくれよ。ということで、明日暇だよね? 暇じゃなくても一緒に歩きたい! ダメ?」


「あ、明日? いや、えーと……約束がありまして明日は無理でございます」


 パパさん曰く、椎奈さんとのデートはゆかりなさんには言わない方がイイらしく、ここは個人名を出さない方がいいと判断した。妹さんとお出かけだから隠すことでもないんだけど。


「へぇ~? パパと買い出しとか?」


「そ、そうでございます」


「ふーん……? じゃあ仕方ないかな~朝早いの?」


「た、たぶん、ゆっくりかな」


「そっか、おけおけ。じゃ、別の日にしとくよ。わたしと出かけたいんだもんね? ね?」


「さようでございます。ゆかりなさんと一緒にいると幸福になるのでございますよ」


「うし、わたし帰るね」


 何と気まぐれな。詳しく聞かないし、しつこくしない所が彼女のサバサバしたところと言えばそうなんだけど、あっさり過ぎて何となく寂しい感じがしなくもない。


「ゆかりなさん、またね」


「うん。またね、高久くん」


 以前は別れの度に、どこの新婚さんですかくらいにキスを求められたのに、今やナンテコトダ。


「くよくよすんなよ! 好きなのは変わらないんだしさ。そう泣きそうな顔をされるといじめてるみたいじゃん。わたしのこと、好きだろ?」


「好きだ」


「うんうん、またね!」


 やはりキス禁止はそう簡単には解かれないらしい。何にしても明日は椎奈さんとデートだ。妹さんだから丁重に相手をするだけだけど。

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