ゆかりなさん、動く。
とてつもなく個性的すぎる令嬢を二人同時に相手する事なんて、今まで無いことだった。
ただ一人のダイダイ大好き過ぎた妹だけでも、相当手一杯だったからかもしれないが、俺ってまさかの人見知りだったのか!?
そう考えると、あんなチャラ男でも案外役に立つサトルのことを、これからはあまり適当にあしらわれないことになるが、今だけは一ミリくらいは尊敬しておく。
「たかくんはどんな子がお好きですか?」
「葛城高久さんはどんな子が?」
「え、えーと……」
こうも急に変わられると、逆に言葉に困る。
サトル口調で通すのは厳しいのですぐ元の口調に戻ったのに、綾羅木さんは多分キッカケが欲しかったのかもしれない。
ありふれた返事になるけど、とりあえず……
「じ、自分が気になって、気になり過ぎて仕草とか色々なことに夢中になるくらいに、好きになった子……かな」
「承知しました。そのように致しますので、どうか綾羅木を宜しくお願い致します」
「あ、はい……」
これはとんでもない恋に発展しそうな予感がしそうだけど、ゆりなさんは責任なんて取ってくれるんだろうか。
俺の終着点は、言わずと知れた小悪魔過ぎる彼女に他ならないというのに。
「チラ……」
「ん? いや、それは仕草じゃなくて……」
「じー……」
「いや、それも」
そう言えばこの子は、陰から俺を見つめるのが好きだと言っていて、ゆかりなさんと付き合っていることも知っている筈なのだが、まるで気にしていないどころか綾羅木さんに話してもいないように見える。
二人一緒にいるからといって、お互いにそういう話が出来そうな感じには見えないとはいえ、ゆかりなさんのことはいいのだろうか。
ゆかりなさんとチヒロとの関係にもヤキモキしているのに、本当にどうすればいいのやら。
◇◇
「――はっ? 何でそんなことさせてるの?」
「ゆかりん、高久くんとは一時別れ中でしょ? だったら、彼にもそういう経験をさせないと不公平じゃない」
「え、だって……」
「分かってるくせに~! 彼の恋愛の成長を希望してて、それで見せつけていたんじゃないの?」
「それはそうだけど……ママが協力とか、おかしくない?」
「私が協力するのがそんなにおかしなこと? 長く息子として世話をして来た男の子だし、将来も息子になるのよ? ゆかりんだけが高久くんにショックを与えるのは、それこそ公平ではないわね」
「嘘でしょ……? よりにもよって、何であの店で……」
ゆりなさんは店を後にした足で、そのままゆかりなさんに伝えていたらしい。
まさか、あっさりと俺と喫茶店でのことを話しているなんて思うはずもなく、俺は俺で綾羅木さんと那月さんとの恋愛関係を進めて……行く可能性が出て来た。
「勝手な事させないし、高久くんめ……ママの協力が得られて彼女を作るとか、そういうの許さないよ?」
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