妹さんとデート?
「高久くん、椎奈さんは妹なんだよな? だったら可愛がらないとダメだろ。それこそゆかちゃんは、そんなことで怒らないはずだぞ。キミはもっと積極的だったはずだが……恋人になれたことで安心したか?」
「いえいえいえ、そんなことはないです! だって、クリスマスからひと月しか経ってないのに何というか、安心する余裕が無くなって来てますから……はは」
「とにかくゆかちゃんも忙しそうにしててここに来なくなってるし、椎奈さんとデートでも行ってきたらどうだ? 妹なんだし意識も何もないだろ」
「えええっ? 妹ってそれはだって……」
師匠改め、ゆかりなさんの元パパさんは考えも行動もワイルドすぎる。だからそんなことが言えるんだと諦めることしか出来ないわけだけど。当の妹さんであるしいちゃんはキョトンとしていた。
天然女子だし、学校でもそんなに意識して話しかけてくるわけじゃないんだけど、どうにも俺とゆかりなさんとの関係を変な感じで理解したようで、何やら急に近づいて来たではありませんか。
「デート? する。お兄さんとデート好き」
「デートが好きってことかな? で、でも、俺にはゆかりなさんがいるわけであって」
「妹だから問題なし。OK?」
「い、いえす」
血の繋がりが無いってことだけど、押しの強さは姉妹そのもののようです。うぅ、それにしても、ゆかりなさんに会えていないのはどうしてなんだろう。外で会えなくしているのも彼女の厳しさなのだとしたら、あえて俺も外では妹も含めて、モテていることを見せるべきなのか?
「じゃあ、お疲れさまでした! あの、本当に明日休んでいいんですか?」
「いいよ。高久くん頑張ってるし、妹さんとデート行って来いよ! あぁ、ゆかちゃんには言わないでおくよ。彼女はヤキモチ妬きだしな」
「そ、そうですね。いや、さすがに黙っておくのは良くないので連絡で……」
「いや、駄目だ。椎奈さんもそれだと気を遣うはずだ。だからこんな何てことないことでゆかちゃんにしても、椎奈さんにしても気を遣わせたら駄目だ。だから後で俺から言っとく。それでいいかな」
「は、はい」
元パパさんに逆らってはいけないと俺の中の誰かが警告している。料理人としては師匠だけど、ゆかりなさんの元パパさんとしては恐ろしく怖い。別に浮気でも何でもないし、いや、妹だしな。
「えっと、しいちゃん」
「……デート?」
「そ、そうだね。明日にでも行こうか?」
「うん、好き。お兄さんと行くの楽しみ。そのまま籍入れる?」
「いやいやいやいや! 飛躍しすぎだからね? と、とにかく明日ね」
「理解。お兄さん、よろしく」
「う、うん」
妹とデート? デートだよな。うん。浮気じゃないし、そもそもゆかりなさんは怒らないはずだし大丈夫ダイジョブ……大丈夫なはずだ。これを機に俺は外を出歩き回ろう。運動無能者からの脱却だ!