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ゆかりなさんと修羅場的な何か 1-3


 まさかの内部告発とか、どこまで修羅場空間が形成されるというのか。せっかくゆかりなさんの機嫌の悪さが終結しそうだったというのに、何故に新たに勃発をさせるのですか。


「高久くん、もしかしてマリカに告った?」

「ホワイ!? いやいや、どうしてそういう答えになるのかな? おかしいって! ねえ、マリカさ――」

「ゆかりなには言っておくけど、私と高久さんは付き合うことになったから。ゆかりなだって、高久さんを捨てて他の人と付き合いを始めたんでしょ?」

「ふぅん? マリカと高久くんが? へぇぇ……付き合う、ねえ? じゃあ祝ってあげなきゃだよね。ウチに上がらせたってことは、これから何かするつもりだったとか?」


 ゆかりなさんの声色の変化は見逃していない。これはかつてないほどの恐怖感、そして絶望が迫っている。


「何もしないよ! マリカさんはお茶を淹れてくれただけだし、それに付き合うとか……そういうことじゃなくて、そ、そんなことよりお前はどうなんだよ! 何でアイツと付き合うとか言い出したんだよ? サトルの話に出て来たけど、ゆかりなとチヒロの関係は何なんだよ!」


 これを言ったらさすがのゆかりなさんでも反論出来ないはずだ。俺とマリカさんのことを言う権利なんて存在していないのだから。


「関係? 何度も見てるのに高久くんのその目は近眼なの? それともメガネが必要? メガネ貸そうか?」

「つ、付き合っている!? そ、そんな馬鹿な……俺と別れてもいないのに、何でどうして?」

「籍を入れたわけでもないのに、咎められるの? いいでしょ、それくらい。高久くんだって、この機会に他の女子と付き合って成長しなよ。初めから何度も言ってるけど、キミには成長して欲しいんだよね。足りないのは、そこ! そこなの。ねえ、泣きそうになってないでさ、付き合いなよ! マリカもまんざらでもなさそうだし?」


 何を言うかと思えば、成長しろとおっしゃる。ずっと言われて来た言葉だが、ゆかりなさんは俺と結婚する関係でありながら、何故に成長することにこだわっているのか。


「キミのことをこんなにも想っているのに、まだ足りないとでも?」

「キスしたいの?」

「したいに決まってるだろ! 言わせ――」

「うん、駄目。それが駄目なんだよ、高久くん。ずっとずっと一緒にいることが決まっているのに、わたしに求めるのはいつもキス。そういうことじゃないんだよねー」

「ワッツ、ハプン!?」

「どうもしないよ? たださ、男の子はキスの先も求めるようになるんだ。わたしも高久くんもまだまだ子供なの。子供のままでいいの? それも含めてのことなんだ。だから他の子……今なら気持ちの入ったマリカが一緒にいてくれるよ。いいじゃん、付き合えば」


 何という事態。修羅場は通り過ぎて、他の女子と付き合えとおっしゃる。確かに彼女の言う通り、好きだからこそしたいのはいつもキスだ。願わくばその先にも……俺には何かが足りないということなのか。


「私をバカにしているの?」

「ううん、してないし。マリカは本気? それとも同情? 同情なら認めたくないけど」

「好き。ずっと好きだったの。だから今、やっと気持ちを伝えられて……ゆかりなが他の男子と付き合っているなら、私が高久さんを支えようとしていたの。それなのに、成長って……そういうことじゃないのに」


 (オウ……ハッキリくっきり気持ち伝えてしまったではないですか)


「んー……」


 (やばい、マリカさんマジすぎる。修羅場から励まし合いの場にチェンジですか?)


「それで、高久君はゆかりんとこの子とどっちを選ぶつもりなのかな?」

「ふぁっ!? ゆりなお母さん!? え、何で……」

「自宅ですからね。時々は帰っているんですよ? もちろん、昼間に。今回は偶然に出くわしてしまったけれど、もしかしなくてもタイミングが悪かった?」


 まさかのママさんご降臨である。修羅の、いや、夜叉のような方が姿を見せてきたら俺はもうどうにも出来ない。ここは素直にするしかなさそうだ。


「わ、私帰りますね。あの、高久さん。また来週の集いに」

「そ、そうだね。またね、マリカさん」

「はい、じゃあ……」


「お待ちなさい、垣根さん。まだたっぷりと時間はありますよ? 彼からの気持ちも聞きたいんじゃないかな? そうでしょう?」

「は……い。き、聞きたいです」

「そうでしょ? だから高久君は垣根さんにきちんと伝えなさい! 女の子を引き留めずにそのまま帰させるなんて、お母さん許しませんからね?」

「ハ、ハイ……」


 ゆりなお母さんの登場で、ゆかりなさんはお母さんに託したらしく、ずっと無言である。俺はきちんと言うしか無いのか。仮初め彼女として付き合う……いや、いいのかこれで? 今すぐ……消えてしまいたい。

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