プロローグ
面白いと思ったら是非ブックマークをよろしくお願いします。
「おもしろい」や「つまらない」と言った一言でもいいので感想を下さい。モチベーションに繋がります。
学校それは生徒にとって地獄のような言葉だ。殆どの生徒は授業が面倒でため息をしているだろう。しかし、ほんの一部の生徒は授業以外の理由で憂鬱なのだ。
それは...いじめだ。結城リヒトもいじめが理由で学校が嫌なのだ。しかも、異能でいじめてくるのだから、たちが悪い。
異能、それは世界各国に突如として現れた超能力だ。電気を操る者、身体能力を向上させる等の異能から他人の治癒力を活発にさせたり、病気にかかりにくくなる異能など多種多様な異能が存在する。
異能が世界各国に発現したことにより人々の生活は豊かになった。力仕事の大工などは身体能力強化系の異能者が職に就き、治癒力強化系の異能者は医者になったりとしたことが理由だ。
しかし、その代償と言わんばかりに世界各国に問題が生じた。それは魔物の存在だ。人々はそれに対抗すべく異能学校を設立し魔物を倒す若い世代を創ろうとした。
そして今、その異能中学校で異能を使い男子トイレでいじめが行われているのだ。
「おいリヒト、いい加減してくれよ。学校に来るなって何回言えばわかるんだ」
「ほら、『治癒C』ランクの俺が治癒してやるよ。これでまた殴られても平気だろ」
ゲラゲラと笑いながら言ってくるのはクラスメイトの木村大地と今藤武だ。2人は不良でいつも俺をいじめてくるのだ。
「ハァ~こいつ引き換えに【九魔王】が死ぬなら、喜んで殺すのになぁ」
「違いない」
またも、ゲラゲラとした笑い声が男子トイレに響く。
俺の命で【九魔王】が殺せるわけない。
九魔王それは...魔物の中でも特に強力な個体で彼らは知性を持ち人々と同じ異能を操ることができるのだ。しかも、異能もランクで言えばSSSランクの天災級だ。そんな9人の魔王と俺の命を等価交換できるなら、喜んでしよう。なにせ俺は異能が無いからな。
いや、正確には持っている。だが役立たずの【契約】と言う異能が。家族と契約しようとした時に【契約】が失敗したのだ。専門家の話では魂の器が小さすぎて他人の異能を受けれないらしい。
こうして無能が誕生したのだ。ハァ、異能を使わない一般企業に就職しよう...
そんな事を考えていると木村大地が喋りだした。
「そろそろ授業だし、もう行こうぜ」
木村大地の言葉に今藤武が頷き2人は一足先に教室に向かった。
リヒトもそれから教室に向かった。ガヤガヤとうるさい喋り声に隠れるようにそっと教室に入った。俺は影が薄いので普通ならば何事もなく授業を迎えられる。しかし....
「あっ!いたいた。リヒト君おはよう。今日も授業数分前に到着だね」
満面の笑みと共に話しかけてきたのはクラスの女神椎名楓だ。告白は毎週行われてると噂される程の美少女だ。しかも、異能は今藤武と同じ【治癒】しかし、ランクはSだ。つまり俺とは違い超優等生だ。
そんな椎名さんが笑顔で俺に挨拶をしてくれる。つい守ってあげたくなるような笑顔を俺に向けないでほしい。
椎名さんが俺に話しかけてきたと同時にクラス中の生徒が一斉にこちらを見た。
嫉妬や憎悪の視線の中で話しかけたらクラスの反応は...「何気安く話しかけてんだよ」「異能が使えない分際で生意気なんだよ」と言った視線を送られるだろう。
しかし、無視したらしたで...「椎名さんが話しかけているのに無視してんじゃねーよ」「異能が使えない分際で生意気なんだよ」と言った視線が送られるだろう。
結局のところ、どちらに転んでも地獄行きだ。全くもって理不尽だ。
そんな俺に助け船がきた。
「よお楓、朝から元気だな」
「高御堂君...」
椎名さんに話しかけてきたのはクラスのイケメン高御堂湊だ。勿論異能も【身体強化】でAAランクの優等生。そんな高御堂と椎名さんは家が隣で親戚らしい。美男美女で家が隣なんて、それだけで一つの恋愛小説が書けそうなものだ。
「それより楓、お前の席は向こうだろ?どうしたんだこんなところまで..」
「今ね、リヒト君と喋ろうと思ってねそれでここにいるの。高御堂君こそ席は向こうだよね」
「俺は..可愛い幼馴染に悪い虫が寄ってこないか心配できた」
悪い虫とは間違いなく俺の事だろう。席に座って授業を待つだけでこれだ。それに近づいてきたのは椎名さんからで俺からではない...だがそんなことを言っても仕方がない。
先ほどから睨むような高御堂の視線、後でこっそり「楓に近づくなよ」と言われることだろう。
とりあえず、今はこの状況を乗り越えよう...
「本当にお似合いだね高御堂君と椎名さんは」
このセルフを言った時の2人の反応は真逆だ。
高御堂の方は良くわかっているなといった表所で俺を見て
椎名さんの方は何故だか悲しそうな表情だ。何故だろう、こんなイケメン優等生とお似合いなんて言われたら女子は普通に喜ぶ筈なんだが...
そんな事を思っていると葵先生が教室に入ってきた。
「おーい授業を授業を始めるから席につけ」
彼女の名前は橘葵だ。少々いや、かなり口が悪いが根はやさしい先生で噂ではかなり優秀だったらしい。魔物を倒す専門職『勇者』として最前線で活躍していたとか...何故こんな学校にいるのだろう?
「よし、席に着いたな。それじゃあ授業を始める」
午前は一般的な5教科や家庭科などが行われる。そして、午後からは異能を使った訓練が行われるのだ。それは、異能を使わない俺も受けなくてはならない。それが一番嫌なのだ。
異能が使えないのに異能を使う授業...クラスメイトからの笑われ、惨めな気持ちになる。授業と言うよりも、ただの公開処刑だ。
そして今は、午前の授業を終え午後の訓練だ。今日の内容は2人一組になって模擬戦を行う..というものらしい。だが、この内容はハッキリ言って意味がない。皆、仲良しの友達とペアを作り異能自慢大会が行われているだけだ。真剣に行っているのは椎名さんや高御堂と言った一部の生徒だけだ。
「おい、結城。俺と組もうぜ」
そう言って来たのは朝に俺をいじめた、木村大地だ。彼の異能は【盾】だ。自分の半径1メートル以内にシールドをを展開できるのだ。シールドを展開して突進なんかしてきたりもする。
結果は秒殺...もう一度言おう秒殺だ。
ハッキリ言えば鬼ごっこだった。必死に逃げる俺を木村が追いかけてタックルするいつものシナリオだ。
こうして1日の授業を終えた俺は急いで家に帰ろうとする。ぶっちゃけ学校にいたくないのだ。
木村や今藤はゲーセンに行きたいが為、放課後はあまり、いじめられない平和だ..
教室で荷物をまとめ急いで帰ろうとする...だが、急いで帰ろうとする俺を阻止する者もいる。それは女神....椎名楓だ。
「リヒト君一緒に帰ろ」
女神からのお誘いだ。普通ならば喜んでご一緒させていただくところだが...
「で、でも今日、新作のゲーム買いたいし椎名さんは高御堂君たちと帰ったら」
「ゲーム買いたいなら付き合うよ。折角だし寄り道いっぱいしよ」
この展開はハッキリ言って最悪だ。女神と連れまわしたなんてクラスメイトいや学校の生徒に知られては、いじめが酷くなる可能性が...だが、椎名さんを無理矢理置いていくことも出来ない。これがゲームならクソゲーだ。
そんな事を考えている場合ではない、早く打開策を...
「兎に角、ゲーム買いに行こ」
打開策を考えていた俺の手を引っ張って椎名さんは教室を出た。
こうなってはバレないように行動するしかない。...そう思い校門に向かった。
すると、そこには高御堂とその親友の清水健斗、それから椎名さんの親友の綾小路桃花と神崎志保だ。
「楓、一緒に帰ろう」
「えっ?....」
高御堂が椎名さんをを誘ったが椎名さんが困惑している。迷わずそっちに行ってくれれば楽なのに...
「ごめんね。今日はリヒト君と一緒に帰りたいから...」
椎名さんの発言に全員が俺の方を見てきた。
「ハァ...流石によくないよ。嫌がる相手に無理矢理連れ出すなんて」
「ち..違うよ。私が誘ったの一緒に帰ろうって」
「分かってるよ。そう言えって言われてるんだね」
「だから..違うよ...」
カッコいいじゃないか高御堂。そのまま椎名さんを連れて行ってくれ。
いや、俺から離れて行けばいいのか...
「折角、高御堂君達が誘っているんだから皆と一緒に帰りなよ。俺は一人で大丈夫だから」
そう言って椎名さんを置いて1人帰って行った。ゲームを買いたいと言ったのは椎名さんを置いていく言い訳なので行く必要はない。
そして現在俺は一人で下校中だ。ゲームを買いに行くと言う話は、椎名さんを置いていくために言った嘘なので買いに行く必要はない。
もう少しで家だ。早く帰って寝ようと思って家に向かっていると....俺の足元に魔法陣が現れた。
何か嫌な予感がする。そう思い、魔法陣から出ようと思ったが身体が言うことを聞かない。
こうして俺は神隠しにあったのだ。