コバルトブルー
あの鳥が鳴いていた。
外来種であろうか。
正体知れず、鳥の鳴き声がコバルトブルー一色の空にぽかんと飛んでいる。
坂を登ったり、降りたりするのは老体には堪える。
今日も川に釣り人が居て、ただ日向ぼっこしている。天気の良い春空。
緑が多いその山々は、土砂崩れの影響を感じさせない。緑生い茂っていた。
何の花なのか?
わからないが、話の種にはなったから良いや。
古びた町工場の窓が全開。
火花散る鉄加工中に暑そうな作業服姿でタオルを巻いている。
トラックの運転手は黒いサングラスを常用している。
昨日も今日も、分譲マンションを創設するため、土方の男達が工事音を響かせている。
文化財になっている、という触れ紙に観覧無料という文字にそそられはした。
が、平日の昼間にお邪魔するのは気が引けて申し訳ないと思い、その場を後に。
霊園前は緑を意識しているのか、緑の風景を大事に切り取られている。
空気がおいしい。
別に線香の香りが嫌いではない。現に線香の香りに癒されている。
人間関係に嫌気が差すと、お墓参りという名目の霊園回りを行う。
子供の頃は幽霊なんて大嫌い。という感じではあったが、今では人間より幽霊のほうがマシだ。といった具合だ。
大人になれば、趣向は変わってくると誰が言ったのか。正解。
公園をぐるりと回り、帰りの道を考え始める頃へと過ぎ去る気持ち。
なんとなく、空しい。
横一線の道沿いに歩いて、田んぼを駆け巡った後に見える山々を眺めながら、帰路へ。
あの鳥が鳴いていた。
正体知れず、鳥の鳴き声がコバルトブルー一色の空にぽかんと飛んでいた。
外来種であろうか。