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■Prologue 童話【Fantasy】
「お話聞かせて!」
小さな頃わたしは寝る前にそうやって、母親に『お話』をねだるのが習慣になっていました。
母親は色々な国の色々な人の童話や、時には自分で作った童話を話すこともあります。
語り口はとても優しいのですが、いつもお話の結末を聞くことなく眠ってしまうのです。
「どんなお話が聞きたいの?」
「……不思議なお話!」
わたしがそう言うと、母親は少し考えました。
「それなら服を着て時計を持ったウサギさんを追いかけ、色々なところを旅する女の子のお話がいいわね」
「うん!」
元気よくうなづいたわたしに、母親はその物語を話し出そうとしましたが、
「ねえ、ママ」
「どうしたの?」
「その女の子の名前はなんて言うの?」
わたしの素朴な質問に、いつものように優しく、そして微笑んで答えたのでした。
「アリスよ」
……それからわたしの『お話』は始まったのかもしれません。
■Channel 1 Shamash:
■Scene 1 人魚【Mermaid】に続く