【作者樣向け】設定考察~学園編~
初投稿です。
読者としてなろう150作品ぐらい読んだ私が、その中で見た「学園(学校)」について考察します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
目次
◆はじめに
◆学園を登場させるメリット
◆学園を登場させるデメリット
◆例
◆あとがき
◆参考文献
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆はじめに
同年代のヒロインや友人を登場させたり、学園生活というものを描写するために学園という存在を作りあげるファンタジー小説をたびたび見かけます。
しかし、私は安易に学園を登場させる手法は稚拙だと思う。
舞台はファンタジーであり、現代ではないのですから。
・なぜ学園が存在するのか。
・なぜ学園に主人公は通わないといけないのか。
・(現代の)学園と何が違うのか。
そういった現実では説明不要な点を、全て設定として(必要に応じて)読者に説明しなければいけません。
この部分をきちんと説明しないと、作者のご都合を押し付けているようにしか見えないでしょう。
この部分が説明不足な作品を最近よく見かけるので、こうして筆を執った次第です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆学園を登場させるメリット
作者樣方。そもそもなぜ、学園を登場させなければならないのでしょうか。
いろいろな理由が考えられますが、私が読んできた小説の中では、大きく以下の3つのメリットがあるからだと思います。
1.学園生活をさせたい
2.人間関係を作りたい
3.主人公を成長させたい
1.学園生活をさせたい
これが一番良く見る理由です。
主人公たちに、同年代の少年少女と触れ合ったり、学んだり、学外活動をしたりする機会を与えます。
ファンタジー独特の点としては、魔法を学んだり、モンスターを討伐したりとかもありますね。
学園という環境は読者の理解が追いつくイベントを簡単に起こせるというのが最大の利点です。
オリジナル設定をいちいち一から作らなくとも、学園で起こるイベントは現実でのそれの延長なので、読者が「あぁ、文化祭ね」と理解してくれます。
その他にも、友人を作るとか、恋人を作るとか、身分の違いを肌で感じるとか、座学の点数を他人と競い合うとか。
ファンタジー的なお約束としては魔法を暴発させてしまったとか、野外訓練でゴブリンを倒すとかですかね。
……話のネタには事欠きませんね。
なんといっても家にずっと引きこもってては話が進みませんからね(笑)
主人公を精神的に成長させるためにはこれ以上無い便利な環境だと言えます。
2.人間関係を作りたい
1と関連するのですが、1は学生時代のイベントと人間関係を作ることに対し、
こちらは「成人後のストーリーの展開のために」必要なキャラクターを登場させるという意味です。
学園設定であれば、同年代の友人・ライバル・ヒロイン等、さまざまな人間関係を作成することが非常に容易です。
なにせ全員が同年代の少年少女ですからね。たとえ10人20人と登場させても全く不自然ではないです。
しかも、他国の貴族・王子・貴族の子供・平民の子供など、様々な身分の人間を登場させることが出来ます。
とくに主人公が平民などの身分が低い設定の場合、学園という環境なしで、貴族や王子といったレベルの高貴な身分にある名家の子息と友誼を結ぶのは非常に難しいでしょう。
全員が同年代の少年少女であることを利用して、読者に「誰が重要なキャラか」を隠すことが出来るという点も良いですね。
実はちょい役だった彼は王族の隠し子だったとか、ヒロインAとヒロインBのどちらと結ばれるのか?など……
そういう設定を、読者の反応を見てから後出しで作ることが出来ます。
後出しでキャラクターを増やすことも簡単です。
メインキャラの友達のようなモブキャラを昇格させるとか、
合同授業とか、保健室など、ちょっと違う状況で新しく出逢いを作ればいいのですから。
もし学園がなければ、周りは当然大人の比率が高くなります。
登場人物が大人3人・少女1人とかであると、あ、この少女がヒロインだな……とすぐバレてしまいます(笑)
3.主人公を成長させたい
これも2と同様、「成人後のストーリーの展開のために」必要な実力を身につけるという意味です。
よくある主人公のチート能力を更に開花させたり、新しい魔法や体術を覚えたりする、いわゆる下積み時代です。
また、パーティーメンバーが出来た場合、主人公のチートの恩恵を分け与える行為をすることが多いです。
もし学園がなければ、主人公は自力で師匠のような人物を見つけなければいけません。
子供という行動が不自由な状況下で師匠を見つける設定を考えるのは大変です。
また、信頼できるパーティーメンバー(チートレベルを打ち明けられるぐらい)を何人も作るのはなかなか難しいでしょう。
なぜなら他人を信頼するためには、普通はある程度長い期間その人物と関係する時間を送り、その人となりを知る必要があります。
学園設定なしで、家族以外の人物と「ある程度長い期間その人物と関係する時間」を作れるような設定を考えるのはなかなか面倒です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆学園を登場させるデメリット
まず最も大きなデメリット。
それは、「学園」という環境に主人公が縛られることです。
主人公は学園へ通い、勉強して、休みの時期には家に帰らなければなりません。
勝手に外国にいったりすることは出来ません。
理由もなく勝手に退学することは出来ません。
どれだけチート性能な主人公でも、学園にいる限りそういうお約束を守ることになります。
次に、学園が存在すること自体のデメリットです。
こちらのデメリットについて、あまり考えていない作者様が結構多いです。
そもそも学園(学校)とは何かというと、
“学校(がっこう、英語: school)は、教育のための建物、または幼児・児童・生徒・学生その他に対して教育が行われる場所のことである。また、そこでことに当たる人々のことをいうこともある。”(wikipediaより)
……これが現実の学校と言えるでしょう。
しかし、このような学校が整備されるようになったのは、そもそも近代に入ってからです。
理由はフランス革命からの人民主体の政治形態が勃興したことにあります。
・近代化により人間社会の生産力が向上し、社会に余裕ができたこと。
・革命により、平民の知識を制限するような王族や貴族がほぼ居なくなったこと。
・高貴な身分ではない平民が、学を身につけることが許され、学を身につけることが必要になったこと。
これらの理由があって初めて、誰にでも門戸を開いた学校という制度が出来たのです。
この点を理解していれば、学園を登場させる大きなデメリットが理解していただけるかと思います。
つまり、学園が存在するという事自体が、そのファンタジー小説の、その国の、その都市の文明レベルをある程度制限してしまうのです。
具体的には以下のデメリットが有ります。
・学園が存在するのであれば、その国家は学園を営むことが出来る程度には裕福であり、平和である。
(すべての子供を労働力や兵力にせずとも、社会が回っている)
・その国家の王or指導者は、学園の存在意義を理解していなければならない。
(教育というすぐに効果が現れない事業を、長い目で見て利益だと考えることが出来る)
・学園が存在するのであれば、ある程度身分に寛容な社会でなければならない。
(身分の低いものが栄達する手段として、学園が利用されるはず)
・上の項目と相反するが、王族・貴族、騎士、大商人などの高い身分のみの学園という設定なのであれば、
設定上出会う人物の範囲が制限される。
また、(騎士階級以外の)儀礼以上の戦闘教練は不必要なので描写出来ない。
・(都にある)学園に地方出身の貴族階級が在籍しているのであれば、
ある程度交通は発達していなければならない。(道中に危険な土地などはあってはならない)
貴族の親が地方に残っているのであれば、その貴族の親は王や、都の治安を信用していなければならない。(子息が人質になりうるので)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆例
主になろう小説の中からです
・ゼ○の使い魔
主人公は生徒じゃないので、厳密には学園モノじゃないかもしれませんが……
タ○サのような他国の王に連なる人物を出すには学園は必須でしょうね。
デメリット1~2はきちんとクリアされています。
デメリット4については、魔法がかなり強力で万能であり、特権階級に必要な力としての側面も持っているため、
魔法という戦闘訓練を行う授業があり理由となっています。それ以外の剣術などの描写は無くても問題なし。
デメリット5は女王が圧倒的カリスマ&学園長はかなり強いため、生徒の親からの信頼という点で十分クリアされています。
・リビティウム皇国のブタクサ姫(n6517bw)
女主人公。学園以前の交友関係が殆ど無かったうえ、以前の正体を隠しているので、
「身分を隠しても」なんとか入れる、という先ほど上に述べた以外のメリットがあります。
またメリット1~2の交友関係を広げられる所として学園は重要な場を果たしています。
ライバルや恋人役?のキャラクターに、メリット3の為の師匠枠の学園長が登場。
完全にお約束通りの学園の使われ方ですね。
デメリット1~3については作中で仄めかされている超帝国が関わってそうな気がします。
ただ、学園編は1年間だけ。
・賢者の孫(n5881cl)
主人公はすでに最強で、かなり世間知らずなので、祖父母が求めたはずのメリット1の学園生活が中心になるかと思いきや……
パーティーの強化話と恋愛という、今後に向けたメリット2と3を中心になっていますね。
最新話あたり(2015/03)あたりからパーティー戦闘が起こっているので、そのための布石だったのでしょう。
デメリット1~3はクリアされていますね。デメリット5については、地方貴族出身者が全く出てこないので不明です。
デメリット1~3がクリアされている国家では政情が安定しているため、通常急に戦争になることはないので、
魔人という突発的な存在によって、ストーリー的に矛盾しないように戦争を起こしています。この点はうまいですね。
・【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~(n3347cf)
主人公はすでに最強なので教師役は要りませんね。
しかし、メリット3のパーティー強化のような話もあまり入りません。メリット2メインですね。
デメリット1~3についてはあまり説明されていない気がします……。
デメリット5は地方キャラはいないのでわかりません。
こちらの作品は僭越ながら、あまり学園設定を生かせていない気がします。
魔闘大会編がしたいのであれば、別に学生という身分じゃなくても参加できそうですしね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆あとがき
なんかもっと適当に書き殴るはずだったのに気づいたら論文風になってた……
もうこれは大学で染み付いてしまった癖ですね。
というわけで、ファンタジー小説における学園のメリットとデメリットはこんな感じだと思うんだ。
作者樣方、どうか面白い作品をかいてくださいな。俺は基本読み専なんだよ!
そして小説で学園を登場させる時に、本書が一助となれば幸いです。
今更だけどこれ、他作品の実名出しても大丈夫なんだろうか。……大丈夫だよね?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆参考文献
学校-wikipedia
ゼ○の使い魔-MF文庫
リビティウム皇国のブタクサ姫(n6517bw)
賢者の孫(n5881cl)
【異世界転生戦記】~チートなスキルをもらい生きて行く~(n3347cf)
2015/04/05 一部改稿